🔶はじめに🔶
みなさん、こんにちは。所属カウンセラーの安澤です。
「段々と」「徐々に」などとは言えないような、「急に」「一気に」気候が変わったこの頃、
皆さん、体調はいかがですか?崩されていませんか?
以前も申し上げたように、秋めいた感覚を通り越して、夏から冬へという感覚に近いのですが、
いかがでしょうか。寒暖差が激しい日もありますので、皆さまくれぐれもお身体に気を付けてお過ごし下さいねm(__)m
この1ヶ月の間にも、様々なニュースが舞い込みました。喜怒哀楽、様々な感情を抱かせる出来事が多数ありましたが、2つ挙げたいと思います。
1つは、イスラエルとパレスチナのガザ地区イスラム原理主義組織ハマスの衝突です。今回はハマスが突如とイスラエル側に乗り込み、一般市民の虐殺を行いました。非常に許しがたい惨状を、メディアを通じて目の当たりにしました。
ロシアによるウクライナ国民の虐殺の惨状が昨年あったばかりですし、他にもアゼルバイジャンとアルメニアの軍事衝突(現在は停戦)、アフリカ大陸ではスーダン紛争やエチオピア内戦などがこの間にもありました。私がすぐに思い浮かぶのはこの程度ですが、他にも各国では多数の争いが続いています。
これらの衝突で、反論出来ぬままに最も被害を受けるのは、子どもです。子どもは社会的弱者です。
今回も泣き叫ぶ、恐れ慄いている、無言のままの子どもたちの映像を多数観ました。
聖地エルサレムを巡る戦争はこれまでに何度も起きてきました。私も世界史でやたら勉強したところだったので、額面上の歴史については把握しているつもりです。なので、今回のハマスの虐殺は決して許されないことではありますが、パレスチナ側にも、これまでに積もるに積もった、イスラエル側への複雑な感情、もっと言えば、1915~1917に掛けてのフサイン=マクマホン協定、サイクス=ピコ協定、バルフォア宣言という三枚舌外交を象徴とした、欧州側の裏切り行為に対する憎しみもあるのだろうと思います。
いずれの国も、様々な経験から、傷つけられた先代や同胞が多いのだろうと思います。従って、単純に「戦争反対」「戦争はダメ」ということでまとまらない話なのだと思います。
そして、きっと第三者には分からない感情が、パレスチナ側にもイスラエル側にもたくさんあるのだろうと想像しています。
とは言え、ジェノサイドはダメです。ジェノサイドをしても生まれるものは憎しみだけです。
そして、今後、イスラエル側に欧米が、ハマス側にイランがついて、大きな宗教戦争とならないことを祈るばかりです…。
恐らく世界でも最も危険な地域の極めて複雑で難解な問題なのでしょうが、とにかく一般国民が無碍に殺されることだけは誰しもが望まないことです。
人道回廊や難民受け入れなど、状況が困難な中、どうしたら良いのか私には全然分かりませんし無力極まりありませんが、本当に救世主が現れてくれないものだろうか…と思うばかりです。
サラディンのような。。。
もう一つは、シンガーソングライターの谷村新司さんの逝去でした。
アリス全盛期の時代は私が産まれる前後だったので、リアルタイムではありませんでしたが、今もなお時々カラオケで歌っています。
「チャンピオン」、「冬の稲妻」は代表曲でよくテレビでも流れています。私が好きなのは、「遠くで汽笛を聞きながら」です。
「いい日旅立ち」は、「いい日旅立ち、西へ」も含めて、JRソングとしてよく耳にしましたし、名曲中の名曲な訳です。「昴~すばる~」や「サライ」も私たちの心に残り続ける曲でしょう。
凄い偉大な方を失ったという印象です。
今度、谷村新司メモリーのカラオケを一人でやる予定です。(10月17日は、カラオケ文化の日でもあります)
心よりご冥福をお祈りいたします。
さて、上記の悲しいニュースによって、複数の喪失感が募りました。
ストレスとはまた違いますが、とは言え、ストレスと同様に、怒る、憂う、悲しむといった感情は決して我慢すべきではないのだろうと思います。
誰かに聴いてもらう、気持ちを綴る、失くした人の大切なものを持ち続ける、関連する音楽を聴くなど、多くのコーピング(対処)を施すことで、少しでも情緒面の安定を図ることが大切です。
これまでに、ストレスコーピングとして取り上げて来たものも、利用できるスキルでありツールです。
今回は、『「ストレス」について触れてみる』第6弾として、よく使うリラックス「法」と言いますか、「するもの」について述べます。
ちなみに、前回までの『「ストレス」について触れてみる』のコラムは下記からも御覧いただけます。
【学齢期の子どもの心理】「ストレス」について触れてみる① 「ストレス」について
【学齢期の子どもの心理】「ストレス」について触れてみる② 「認知的ストレス理論」
【学齢期の子どもの心理】「ストレス」について触れてみる③ 「筋弛緩法」
【学齢期の子どもの心理】「ストレス」について触れてみる④ 「10秒呼吸法」
【学齢期の子どもの心理】「ストレス」について触れてみる⑤ 「リラックス法のいろいろ」
ぬいぐるみ
みなさんが、普段自宅に置いてあるだけでリラックス効果を生み出しているものには何が浮かびますか?
色々なものがあるのではないでしょうか。
お香、お守り、日記、手紙、写真、人形、毛布などなど…人には理解を得られないものの、置いてある、持っているだけでリラックス出来るものは様々あるかと思います。
ここでは、「あるだけ」で癒されるものの1つを取り上げます。
ぬいぐるみです。
恐らくぬいぐるみでホッとする体験をしたことがある方は多いというかほとんどではないでしょうか。
ぬいぐるみをギューすると落ち着く人。
ぬいぐるみをただただ持ち歩いている人。
ぬいぐるみを抱きしめて寝る人。
ベッドや布団にぬいぐるみをたくさん置いている人。
ぬいぐるみを見ると「ほっこり」する人。
緊張や不安な時、「お守り」のように小さいぬいぐるみを握りしめる人。
などなど…。
そして、ぬいぐるみを常に持ち歩いている子どもたちもよく見かけます。どんなに糸がほつれても、汚れても、ボロボロになっても、ずっと持ち続ける子がいます。
幼い子どもは、ぬいぐるみを持っているだけで、緊張や不安を軽減出来る、すなわち安心感を得ているようです。実際に理論的にも実証されています。
🔷ハーロウによるアカゲザルの代理母実験
古い研究になりますが、1953年頃から行ったアメリカの心理学者のハーロウ(Harry Frederick Harlow)によるアカゲザルの代理母実験があります。
針金製の母親には哺乳瓶がついており、布製の母親には哺乳瓶がついていないが、アカゲザルの子ザルは、布製の母親といる時間が長く、不安な場面では布製の母親にしがみつくという行動が観られ、「接触」こそが愛着形成の主要因であるとしました。
この研究は倫理基準から外れており現在では行われない研究ではあるものの、「肌ざわり」が子どもにとっては大切であることを実証した有名な研究です。
🔷ウィニコットよる「移行対象(torasitional object)」理論
また、イギリスの小児科医であり精神分析家であるウィニコット(Winncott,D.W)は、1951年に毛布や人形、そして動物のぬいぐるみを「移行対象(torasitional object)」(Winncott,D.W ,1951)と呼びました。
これは、乳幼児が、母親がいない場やいない時に、自身の分離不安や抑うつ不安から自身を防衛するために、安らぎを与えてくれる対象(モノ)を言います。
母親が、赤ちゃんの泣き声に対して、ほぼ全て反応し、赤ちゃんの欲求が充足されて万能的な体験(満たされた体験)をすることで、赤ちゃんは、「母親のおっぱいは自分の一部」という錯覚を体験していきます。
しかし、離乳や母子分離の体験が増えていく流れの中で、「母親のおっぱいは自分とは別のもの」という脱錯覚を体験していきます。
この錯覚から脱錯覚への移行プロセスへと展開していく中間領域(neutral area)において、赤ちゃんの心の世界と、現実の世界の橋渡し的な、繋ぎ役として「移行対象」が役割を果たします。
当然、この「移行対象」という概念は、乳児の時代だけではなく、大人になってからもあり続けます。
このように、「移行対象」としてのぬいぐるみは、私たちの傍にあるだけで、ギューとするだけで、私たちに癒しと安心を与え、緊張や不安、そしてストレスの軽減をもたらします。
これらの研究や理論、考え方によって、「スキンシップ」や「肌ざわり」、そして人ではないものの安心を与える「モノ」としてのぬいぐるみは、一つのストレスコーピングとして考えることが出来ます。
私の勤めてきた幾つかの職場の相談室や面接室などには、ぬいぐるみが置いてあります。
当然、その場で初めて見るぬいぐるみやまだ手元にないぬいぐるみへの愛着は希薄ですが、いわゆる「お気に入り」や「推し」のぬいぐるみならば、感情移入されていますので、あとはそのぬいぐるみとの関わりの機会を増やしていけば、愛着が湧いてきます。
だからこそ、子どもに限らず、緊張や不安が強い人が来る場には、ぬいぐるみがあると、ホッとします。ぬいぐるみのあるとないでは、雲泥の差なのです。
ぜひぬいぐるみは、一つのストレスコーピングとして、色々なところに置いておくことをお勧めいたします。これは大人向けの言葉になりますね。
子どもたちは、大人に、いかにぬいぐるみが、心の安定に大事なものなのか伝え続けてくださいね。
最後に、ぬいぐるみにまつわる私自身のどうでも良いエピソードで締めくくりたいと思います。本当にどうでも良い内容なので、読まなくて結構ですが、ご一読していただけるのであれば、嘲笑っていただければ本望です(笑)
思いのほか、長文となってしまいましたが、蛇足で記載致しますm(__)m
🔷ぬいぐるみのエピソード
私自身はぬいぐるみが嫌いなわけでもないのですが、めちゃくちゃ好きかと言われると、実はそこまでの愛着はありません。
しかしながら、UFOキャッチャーでぬいぐるみをゲットすることが大好きなのです。
私の最古のUFOキャッチャーの記憶は、小6の頃になります。当時は今ほどUFOキャッチャーがたくさんあったという感覚は無いのですが…いや、私自身が小学生だからその世界を知らないだけだったのかもしれません。
都内のボウリング場に行った時のお話です。ボウリング場ってエレベーターで到着して扉が開くと目の前にUFOキャッチャーが置いてありがちですよね。それを見て、当時小学生だった僕は、ボウリングよりもUFOキャッチャーが無性にやりたくなりまして、UFOキャッチャーの方に駆け出していったのです。
すると、そのUFOキャッチャーには、当時非常に有名人だった一般人の、御長寿双子の金さん銀さんの人形がありました。その時、私のこころがざわつきました。
「取るしかないだろ」と。
「金さん銀さんが『私たちを取って』と言ってるだろ」と。
(言ってないと思いますが、そこは突っ込んではいけないのです)
記憶が確かなのは1000~2000円くらいは使ったと思います。
正直申し上げると、私は金さんが好きでした。金さんに愛着があったんです。
しかし、金さんは振り向いてくれませんでした。
そして、当時の私には、金さんをゲット出来るほどの巧みな技術を持ち合わせていなかったのです。
青かった私。
金さんをどうしても取れない…。
私の思いが金さんには届きませんでした。
すれ違い…。
ここは気持ちを変えるかどうするか、未熟者ながらも思い悩みました。
そして、決めました。ゲットできる方を確実にゲットしようと。
金さん、そして銀さん、ごめんなさい。
でも、当時の私にはそれしか出来なかったのです。
狙いを銀さんに定め、銀さんに猛烈にアタックしました。
そして、1つ目の銀さんをゲットしました。
しかし、どこか物足りない…
欲深い私は、「もう1つ…」と思い、2つ目の銀さんもゲットしようとしました。
その時には残り2~3回ほどありました。
2回は失敗に終わりました。
残り1回に私の全てを捧げました。
しかし、的を射ることが出来ず、本体を掴むことが出来ませんでした…
万事休す。銀さんへの思いももはやこれまでか…と思った瞬間。
銀さんの座る座布団の端っこをアームの先端で僅かながらつまみ上げたのです。
ひっくり返った状態で銀さんはアームにつままれて、出口へと向かっていきました。
そして、私のもとにおいでくださいました。
二兎を追う者が二兎を得たのです。
あの時の奇跡と感動は忘れもしません。
2つの銀さんを手中に収めた時の高鳴る胸の熱い鼓動は、私の中に何かをもたらしました。
1つ目の銀さんはバレンタインデーのお返しに1人の女の子にキャンディと共に差し上げました。
受け取ってくれましたが、苦笑されてリアクションに困っているようでした。
〇〇ちゃん、そして銀さん、ごめんなさい。
もう1つの銀さんは私が自宅で暫く飾っていましたが、そのうち行方不明となってしまいました。
銀さんは僕のもとからいなくなりました。
喪失感です。気持ちが失せた訳ではありません。捨てた訳でもありません。
言い訳ですね。ごめんなさい、銀さんm(__)m
しかし、今でも心の中に、銀さんはずっといます。決して忘れることはありません。
心の中に宿り続けている銀さん。ありがとう、銀さん。
そんな私は、今でも金さんの方が好きです。
こんなに長くなると思いもせず、本当ならば、ぬいぐるみついでにUFOキャッチャーについて話そうと思ったのですが、あまりに文章が長くなりそうなため、またの機会にしたいと思います。
そもそもコラムの筋に即さないので、掲載する内容でもありませんが(笑)
🔶さいごに🔶
今回は、ぬいぐるみの効用について述べました。リラックス方法ではないですが、あるだけでホッとするものとして物凄く大事な対象なのだと感じます。
また、『「ストレス」について触れてみる』については、今回で一区切り致します。
ストレスや疲労が蓄積される年末に向け、何かの足しになれば幸いです。
くれぐれも溜め込まないようにして、日々をお過ごしくださいね。
それでは、また次回まで!!
🔶参考文献🔶
●中島義明ら(編)2002 心理学辞典 有斐閣
●ジャン・エイブラハム著 舘直彦 監訳 2006 ウィニコット用語辞典 誠信書房
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