COLUMNコラム

【精神科医が解説】他人に迷惑をかけずに生きていく方法

こんにちは!所属精神科医のT.Sです。

このコラムでは、

私が精神科医として患者さんと接する中で手に入れ、磨き上げてきた様々な武器
つまりは「幸せになるコツ」

を紹介しています。

そろそろ衣替えしないとな、と思っていたのも束の間、いつの間にか夏は過ぎ去って秋になってしまいました。

新年の宣言はどこへやら、夏の暑さに負けて自転車通勤をしていた私ですが、再び徒歩通勤に戻して頑張っております。

また今年もあっという間に、気づけば冬、そして2024年になっていそうですね…

2023年も残りわずか。最後まで、頑張ってともに走り抜けましょう!

 

さて、本日のテーマですが、「他人に迷惑をかけずに生きていく方法」です。

このテーマで記事を書こうと決めたきっかけは、一人の患者さんからの、とあるお悩み相談でした。
(守秘義務に配慮した上で、本人を特定できない形であればコラムの題材として取り扱っても良い、とご本人の同意を得ています)

「迷惑をかけてはいけない」という強迫観念

「私には年齢が近く、発達障害の弟がいます。親は私が小さな頃から弟に付きっきりで、物心ついたときから我慢することが当たり前になっていました。
その結果、親はもちろん、周りの誰に対しても、”迷惑をかけてはいけない” と強迫的に思うようになってしまいました。
今では、本当に自分が困っているときでさえ、私が助けを求めたら迷惑がかかるのではないか…と考えてしまい、誰にも相談することができず、気づけば精神が崩壊していました。」

この方のように、「他人に迷惑をかけること」に対して異常なほどに苦手意識を持っている、という人は、実は結構いらっしゃいます。

そもそも、できる限り他人に迷惑をかけないようにしよう、と心がけること自体は、全く悪いものではありません。
むしろそう思えるあなたは、とても優しい心をお持ちであると言って良いでしょう。

ただし、良いことにも悪いことにも、やはり程度というものがあります。

他人を大切にするためには、まず自分を大切にしないといけませんので、それが出来なくなるほどに自分を追い詰めては本末転倒です。

その優しい心は捨て去らず大事にしたうえで、自分も他人も大切に、幸せにできる方法を探す必要があります。

他人に迷惑をかけずに生きていく方法とは

まず最初に、ハッキリと示してしまいましょう。

ズバリ、他人に迷惑をかけずに生きていく方法とは…

 

そんなもの、ありません。

大方予想はついていたかもしれませんが、残念ながらそんな方法はありません。

結論を言うと、人は死ぬまで迷惑をかけながら生きていくしかない、ということになります。
とってもシンプルですね。

それでは皆さん、また次回のコラムでお会いしましょう!

 

…と終わるわけにもいかないので、ちゃんと補足していきます。

まず、精神科の診察でよく相談される「他人に迷惑をかけてしまう」シチュエーションとして、以下のケースが多く見られます。

◯精神疾患で休職せざるを得なくなり、職場の人に迷惑をかける
◯家族や友人、恋人に、自分のことで心配させてしまい、迷惑をかける
◯引きこもっており、誰の役にも立っていない自分の存在は迷惑そのものである

程度こそ違えど、皆さんも同じような思いを抱いたことがあるのではないでしょうか。

たとえば病気や急用で仕事を休んでしまったり、家族や友達との約束をドタキャンしてしまったり、「誰にも必要とされていない」という感覚に陥ったり…

そんなとき、「迷惑をかけてしまった…」という思いを抱くこと自体、悪いことではありませんし、むしろ人として自然なことです。

私達の目指すところは、これらの思いが生まれなくすることではありません。
たとえそのような思いが顔を出しても、思いが強くなりすぎないように上手く受け流したり、
抱えながら生きていく方法を見つけることになります。

陥りやすい思い込み

さて、「周りに迷惑をかけてしまう、そんな自分はダメな人間だ」という強いネガティブ思考に陥ってしまうとき、実はいくつかの「思い込み」にハマってしまっていることが多いのです。

そのいくつかをピックアップしてご紹介します。

◯頑張れば迷惑をかけずに生きていける、という思い込み

人は社会の中で生きていく動物です。
どれだけ自立、孤立しているように見えても、必ずどこかで繋がっています。

生きている以上、誰かに迷惑をかけてしまうことは必然で、避けようがありません。
しかしその逆もまた然りで、生きている限り誰かの役に立っている、というのも必然です。

信じられないかもしれませんが、誰とも接すること無く家に引きこもっているとしても、あなたが生きているだけで間接的に誰かの役に立っているのです。
(例えば、あなたが食べている食べ物も、使っている電気やガスも、着ている服も、どこかの誰かがそれを売ることで収入を得ています)

◯自分だけが迷惑をかけている、という思い込み

先程も述べたように、人は迷惑をかけながら生きていくもの。

そしてそれはあなたに限らず、すべての人に言えることです。

完璧に見える周りの人も、あなたと同じように、周りに迷惑をかけながら生きているのです。
自分だけを責めたり、卑下する必要はありません。

◯迷惑に違いない、という思い込み

そもそもそれが迷惑ではない、という可能性を考えたことはありますか?

例えば、あなたにとって大切な人が、病気で寝込んでしまったとしましょう。

あなたは、その人を看病するとき、「迷惑かけやがって…」と思いますか?
大切な人であれば、そんなことは思わないのではないでしょうか。

それは迷惑ではなく、ただの “心配” です。似ているようで、全く異なるものです。

「迷惑をかける」より「力を借りる」

「あっ、その思い込みにハマってた…」という方もいらっしゃったのではないでしょうか。

そんな「他人に迷惑をかけてはいけない」と強迫的に考えてしまいやすい人へ、最後に提案です。

「迷惑をかける」という言葉は一方的で、ネガティブなパワーが強すぎるので、なるべく使わないようにしましょう。

そしてその代わりに、「力を借りる」という言葉に置き換えてください。

・家族に迷惑をかける、ではなく、家族に力を借りる。
・同僚に迷惑をかける、ではなく、同僚に力を借りる。

この言葉の良いところは、「迷惑」というネガティブワードが含まれていないことに加え、双方向性を感じられる点にあります。

つまり、貸し借りができる、というイメージがしやすいのです。

「迷惑」は常に循環していて、”お互い様”です。常に迷惑をかける側であり続けることはない、というイメージを持ってください。

今はあなたが力を借りる番だけど、返せる余裕があるときが来たら、そのときは逆にあなたが、周りの人に力を貸せば良い。

家族が病気になったときは、今度はあなたが看病してあげれば良い。
同僚が病気になったときは、今度はあなたが穴埋めをしてあげれば良い。

なので、今はあなたが受け取っても良いのです。

いつか大切な人を救えるように、まずは今、自分を救ってあげてください。

そのためにも根気強く、気長にメンタルトレーニングを続けましょうね!

それでは、本日はこのあたりで。
また次回のコラムでお会いしましょう!

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Writing by T.S

 

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