COLUMNコラム

【学齢期の子どもの心理】「ストレス」について触れてみる②

🔶はじめに🔶

こんにちは。所属カウンセラーの安澤です。

梅雨真っ盛り。じめじめ、むしむしして過ごしにくい日々ではないでしょうか。
間もなく6月が終わり、7月になります。
夏に向かっています。子どもであれ、大人であれ、楽しみな夏休みまでもうすぐです。
もう少しですので、1日1日カウントダウンしながら、過ごしていきましょう!!

他方、毎年の発言になりますが、1年の半分が間もなく終わりです。
早いですね………。
あっという間ですね………。
このことを、どう捉えるかは、人それぞれではありますが、
1年の半分を過ごしてきたご自身に、ひとまず「おつかれさま」と労ってあげていいのではないでしょうか。

このコラムでも、徐々に新型コロナウイルス、ウクライナ情勢について触れる機会が減ってきており、それが適切なのかどうか考えることもあるのですが、少なからず、依然いずれの問題も解決した訳ではないことは様々なニュースを通じて感じています。

新型コロナウイルスは、5類感染症移行から1か月半程度が経過しました。各自で感染リスクの低下を感じ始めたでしょうし、この梅雨や暑さの増す時期にマスクを外す方も多いことでしょう。しかし、これから暑気払い、海開き、旅行の時期が近づく中、また感染リスクが高まる可能性は否定出来ません。

ウクライナ情勢では、南部へルソン州のカホフカ水力発電所のダム決壊という衝撃的なニュースが舞い込んできました。街が水没していき、一般市民が悲嘆に暮れる映像を見て、「一般市民に何の非があるのか」と改めて感じずにはいられません。
この決壊が、ロシアによるものかウクライナによるものかについては全く無知であり分かりません。そして、ウクライナの反転攻勢が果たしてどういった戦果をもたらすのかも知り得ません。
ただ、いずれにせよ、それらについてド素人ながら、最も犠牲を被るのは一般市民の生活であるということだけは分かります。
一刻も早い戦争の終結であれ停戦であれ祈るしかありません。
この祈りすら、軽薄な発言ではないかと考えてしまいますが、その祈りしかありません。

さて、梅雨、新型コロナウイルス、ウクライナ情勢…こういう事象について、ストレッサーとして考え、捉え続けるならば、私たちのストレスは耐えることはありません。大なり小なり感じるものはあるのではないでしょうか。

前回のコラムでは、『「ストレス」について触れてみる』の第1弾とし「そもそもストレスとは?」について述べました。

【学齢期の子どもの心理】「ストレス」について触れてみる①

今回は、『「ストレス」ついて触れてみる』の第2弾となります。
前回の続きである「認知的ストレス理論」についての説明から取り上げていきます。

認知的ストレス理論

改めてとなりますが、ラザルス(Lazarus,R.S)とフォルクマン(Folkman,S)が、「認知的ストレス理論(1984)」を提唱しました。これは、「ストレッサー」が、「認知的評価」と「コーピング」を介して、ストレス反応として表れるという理論です。今や大分前の理論となり、ストレス理論も発展していますが、その中でも変わらず欠かせない理論と言えるでしょう。

この理論では、ストレス反応は、様々な出来事という「ストレッサー」に対する、個人的な意味づけ(認知的評価)が大切であることを述べています。認知的評価には、「一次的評価」と「二次的評価」を設けています。前回掲示した図で再度確認してみましょう(図-1)。

図-1 認知的ストレス理論

簡単に述べると、ストレッサーが同じものであっても、そのストレッサーが、個人にどのような害をもたらすのか、どれだけのストレスに曝されるのか(脅かされるのか)などによって、ストレス反応も異なってくるということです。すなわち、個人が、ストレッサーをどのように捉えるかで、ストレス反応の種類や質、そして程度も変化していくという考え方です。

ストレスには個人差があります。「そのストレッサーが私たちにとって大きな脅威となるかどうか」についての「一次的評価」、そして、「そのストレスの根源となるストレッサーは、私たちにとって解決可能なものなのかどうか」が「二次的評価」で、個人にとってストレスがどういうものなのか判断されます。

ちなみに、一次的評価には、「無関係」、「無害―肯定的」、「ストレスフル」という3つの評価に分かれます。個人にとって「無関係」なものか「関係」あるものか区別されます。
そして、「関係」あるものならば、「無害で肯定的」なものかどうか、それとも「ストレスフル」なのかどうかに分かれます。さらに、「ストレスフル」には、「害‐喪失」、「脅威」、「挑戦」という3つの項目に分けられます。
また、新しい情報によって、評価が変わることを「再評価」と言います。

それから、これらの評価(判断)によって、私たちが抱く「ストレス」の基となる「ストレッサー」を解決しようとしたり、その「ストレス」を少しでも軽快しようとしたりする対処行動が「コーピング」となります。

ストレスの原因となるストレッサーの解決を図るコーピングを「問題焦点型コーピング」と言い、「ストレス」による反応を軽減させるコーピングを「情動焦点型コーピング」と呼んでいます。

他にも、いくつかのコーピング様式がありますが、「認知的再評価型コーピング」と言って、ストレッサーに対する捉え方を改めて捉え直してみるというコーピングもあります。リフレーミングとも言えますね。

私たちは、ストレスに対して様々な「コーピング」を行い、ストレスを軽減させ、心身の健康(メンタルヘルス)を維持していければ、日常生活を安定的に過ごすことが可能となります。

しかし、上手く「コーピング」されずに、ストレスを蓄積していくと、心理的、行動的、身体的、生理的なストレス反応、行く末として、問題行動や疾患やとして表れるようになっていく可能性があります。

私が以前取り上げた、心理コラム第2弾で、『子どものストレスのあらわれ方』でストレスの4パターンをご紹介しましたが、その内容にある問題行動や症状、そして疾患もその一例となります(図-2)。

【学齢期の子どもの心理】子どものストレスのあらわれ方を整えてみる

図-2 子どものストレスのあらわれ方(4パターン)

認知的ストレス理論の具体例

ここまで「認知的ストレス理論」について理論的に説明をしてきましたが、イメージが浮かぶような浮かばないような、分かりにくさもあるかもしれませんので、実際に例えて説明してみます。

今回のコラムの導入で触れた話題の1つ、「梅雨」で考えてみます。

6月の私たちは、毎年「梅雨」というストレッサーに曝されています。その「梅雨」に対して評価は人それぞれかと思います。
例えば、「梅雨」によって、じめじめ、むしむしして、汗を掻いて衣服が湿ってしまいイライラしてしまう人、雨が降り続いて約束していた遊びにも行けない人にとっては、「ストレスフル」という「一次的評価」を下すでしょう。
一方、「梅雨」の時期は、傘が数多く売れるため、傘の製造会社の人たちにとっては利益が見込め、喜ばしく感じるため、「無害―肯定的」な「一次的評価」と捉える人もいるかもしれません。

きっと「梅雨」のない国の人たちからすれば、それによって影響を受けることが少ないため、「無関係」という「一次的評価」で終わってしまうかもしれません。

その上で、「梅雨」というストレッサーへの対処は可能かどうか、例えばじめじめ、むしむし、イライラが軽減出来る方法を見出せるかどうかの「二次的評価」によって、ストレスコーピングを通じて、ストレス反応が改善されれば、ストレス反応が軽くなったり、精神的にも追い込まれなくなっていったりするのではないでしょうか。イライラもしませんから、何かに当たることも回避出来るかもしれません。

また、「梅雨」というストレッサーに対して、様々なストレスコーピングがあると思いますが、「外に出ることを控えること」や「制汗剤」を用いることなどは、「問題焦点型コーピング」となります。

そして、じめじめ、むしむしによってイライラが生じた時に、そのイライラという感情を少しでも和らげるために感情コントロールの方法やリラックス法を行うことが、「情動焦点型コーピング」と言えるかと思います。

このように例えると、分かりやすくイメージ出来るかと思います。

こうやって、いつの間にか、私たちも梅雨に対する対処をしながら、なんとか梅雨の時期を乗り越えているのでしょうね。

以上のような形で、普段、ご自身でストレスを感じていることについて、1つ思い浮かべてみて、この認知的ストレス理論の項目に当てはめて考えてみて下さい。実際に自分がどのように評価しているか(捉えているか)、どのようなコーピングを取っているか、どういうストレス反応を示しているのか、気づくこともあると思います(図-3)。

図-3 当てはめて、考えてみよう

いかがでしょうか。
ご自身がこうやってどんなストレスにどのように対応しているのか、一つ一つ考えてみると、ストレスへの構えの幅も広がっていくと思います。

近年のストレス理論では、「認知的ストレス理論」を経て、プロアクティブコーピング理論といった、ストレッサーを自己成長的なものとして捉えていく理論も展開されています。

理論が難しくなっていくと、私たちの生活に照らし合わせにくいように思いがちですが、じっくり自分たちの習性や生活習慣に当てはめて考えてみると理解を深められ、自分自身の視野が広がっていくのだろう、それが精神的余裕にも繋がるのだろうと考えています。

🔶さいごに🔶

ここでは、認知的ストレス理論について、具体的に述べてきました。
少し堅い説明が続いてしまいまして、「ストレス」を抱かれたかもしれません。
しかし、この説明が無いと、「コーピング」一つ一つについて触れられず、何のために行うのか分からぬままの説明となってしまいますので、説明を続けさせていただきました。

次回、メンタルヘルスを維持するための「コーピング」の具体例としての方法をご紹介していけたらと思っております。
私のコラムの根幹である「実利的・具体的」な内容で取り上げて参ります。

梅雨の時期、酷暑の時期、温度差の激しい時期、今後も続きますが、くれぐれもご無理せず、ストレスを溜め込まず、早めに気づきの時間を設けて、ストレスコーピングを行い、心身の健康を保たれながら、日々お過ごしください。

それでは、また次回まで!!

🔶お知らせ🔶

親子関係の問題、お子様とのかかわり方、育児、DVのほか、発達段階(幼児期、児童期、思春期、青年期、壮年期)、発達面の課題、非行、ひきこもり、ストレス・不安・躁うつ・強迫・依存など様々な精神症状に関すること、自己理解、対人スキルといった個人や関係性に関わる内容、不登校、いじめ、特別支援、高校への進路支援など学校と関連する内容など、様々なご相談に対応させていただきます。

昨今、コロナ禍で閉鎖的な風潮が加速化する中、お一人に悩まれ続け、辛い思いをされている方も多くおられると思いますが、一人で抱え込まず、誰かに吐きだして、少し軽くなったり、気持ちに余裕が生まれたりしていくことも時には必要かもしれません。

人それぞれ必ずご自身で感じ取る力、考える力は備えられています。しかし、精神的に余裕がない時には、その力を発揮することが難しくなります。ちょっとだけ、ゆっくり、じっくり、のんびりと、呟いたり、ご自身と見つめ合ったり、誰かと共有したりすると、ほっこりと、リラックス出来て、ご自身の感じ取る力や考える力が増していければ何よりです。

何か思うところがありましたら、いつでもご相談をお受け致します。

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過去の【学齢期の子どもと心理】コラム by 安澤 好秀


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Writing by 安澤 好秀

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