COLUMNコラム

【学齢期の子どもの心理】「ストレス」について触れてみる①

🔶はじめに🔶

こんにちは。所属カウンセラーの安澤です。

本来ならば5月24日(水曜日)に掲載するはずでしたが、諸事情により、遅ればせながら本日の掲載となりましたことをお詫び申し上げます。ぜひご覧下さい。

さて、徐々に暑さが増していく一方で、寒暖差も感じられる今日この頃、皆さま、心身をいたわっておられますでしょうか?
心も身体も気づかぬうちにダメージは受けていくものです。気づいた時には、結構大きな問題になっていることも充分にありまえす。こまめに、ご自身の心と身体のメンテナンスを行ってくださいね。

前回のコラムはこちらからご覧になれます。

➡【学齢期の子どもの心理】 「チック」について考えてみる③

前回のコラム以降、各地で地震、それも大きな地震が相次いでおり、毎日不安な日々を送られている方も多いかと存じます。
4月下旬から、日本国外になりますが、太平洋沖やインドネシア付近でマグニチュード7を超える地震が起きていました。

それから、国内でも5月GW中に石川県能登地方で震度6強の地震の後、震度4~5地震が頻発し、死傷者、家屋倒壊など様々な被害が生じています。その後も千葉県やトカラ列島近海、直近では新島・神津島近海で震度5の強い地震が続いています。震度4の地震を入れるとかなりの回数に及んでいます。

「地震大国」と言われる日本ではありますが、最近は肌で感じられる地震が多いのか、報道による影響なのか、地震に対して意識が傾いている自分がおりますが、皆さまはいかがでしょうか?敏感に反応したり、不安やストレスを感じたりしている方も多いのではないでしょうか。

地震はなかなか防げるものではありませんし、私個人も地球物理学や地質学、そして地震学といった専門家ではないため、地震について語れる立場ではないですが、心理臨床家の立場として出来ることは、地震に限らずですが、様々な現象や出来事によって、私たちの中で生じる強い不安やストレスにいかに向き合っていくか、軽減していくか、予防していくかについて考えることなのだろうと感じています。

これまでも様々な場所で、「ストレス」という感覚や「不安」や「怒り」等の精神症状への理解と対応についてお伝えしてきました。その経験を踏まえ、ここではごく簡単にではありますが、「ストレス」についての理解と対応をテーマについて触れてみます。

最初は「ストレス」の理論について取り上げるので、長々とした文章が「ストレッサー」となり、堅苦しさを感じて「ストレス」となりえますが、出来る限り簡潔に取り上げていきます。

そもそもストレスとは?

みなさんはストレスという言葉にどういう印象を持たれていますか?

「圧力」や「圧迫」という感覚で使われることもありますし、「嫌なもの」「振りかかってくるもの」といった漠然としたイメージで用いることもあると思います。
そもそも「ストレス」は、ラテン語の「districtus(引き離す、妨げる)」にルーツがあり、英語の「distress(悲しみ・苦悩)」に由来していると言われています。

そう考えると、もともとは「否定的」な意味合いが強かったのだろうと思いますが、「eustress」という「快ストレス」という言葉も使われているように、「ストレス」には、ネガティブな意味づけだけではなく、ポジティブな意味づけもされています。

学問的には、物理学や工学に端を発しており、「物体に加えられる圧力」や「物体に力を加えられた時に生じる歪み」を意味しています。

その後、生理学者の「キャノン博士(Canon,W,B)が犬と猫の実験を通じて、感情的な興奮が身体に及ぼす影響について研究しており、交感神経-副腎髄質系が活性化されていることを論じています。

これは、いわゆる「闘争-逃走反応」の理論ですが、何か非常に怖い対象が自分に振りかかってきた時に、生体に緊急事態が発動されます。すると、生体の恐怖感や緊迫感、興奮といった感情によって、生体の心拍数が上がり、血圧が上昇し、瞳孔が開くなど、身体が一気に反応して、「闘うか逃げるか」という状況に至ります。
簡単に例えると、大きな動物、クマやライオン、サメなどが人を襲ってくる時に生じる緊急アラート反応です。
しかし、書いてはみたものの、サメに襲われる時はあまりに一瞬で水中にいるため緊急アラートの発動間もなく…ですね…。

話は戻りますが、その「ストレス」という用語を、セリエ博士(Selye.H,1936)が生体(生きているもの)の生物学的変化を表す概念として正式に医学に導入しました。

生体側の反応である「ストレス」は、「ストレッサー」によって引き起こされます。「ストレッサー」とは、有害な刺激(外的な刺激、環境刺激)を表し、物理的、化学的、生物的、心理的なものがあるとされています。
セリエ博士は、その「ストレス」と「ストレッサー」について、主に以下のポイントを挙げています。

●「ストレッサー」の種類や内容に関係なく、生体のストレスの3大兆候(胸腺の萎縮、副腎皮質の肥大、胃潰瘍)といった身体の変化が生じること(非特異的な反応)

●「ストレス」への反応を、「汎適応症候群」とし、①警告期(ストレスに曝されてショックを受ける時期)、②一般適応反応期(ストレッサーに対して抵抗出来るようになり一定の均衡を保てる時期)、③疲弊期(長期的にストレスを被ってしまい、耐えられなくなる時期)の3つの段階を経ていくこと

彼は、これらの「ストレス」と「ストレッサー」の関係性や経過について、「ストレス学説」として唱えており、現在までに至る人間の「ストレス」についての理論に大きな影響を与えています。

「ストレスとは?」の説明は以上となります。非常に重要な内容ですが、やはり堅苦しくなってしまいましたので、最後に「ストレス」と「ストレッサー」について、物凄くラフに図示してみます(図-1)。

ひどい創作で申し訳ありませんが、「ストレス」はそれほど掛からないと思われます。

図-1 ストレスとストレッサー

分かりにくいかもしれませんが…

よく書籍やネットでも、「ストレス」と「ストレッサー」の組み合わせを、風船やボールを使って例えられていますが、最近の動向に即して例えてみると、Yogibo(ヨギボー)に人間が思い切り飛び込んだ時の、人間側の押し潰そうとする力を「ストレッサー」、yogibo(ヨギボー)が潰れて歪んだ状態を「ストレス」と言えるでしょう。

ストレス理論の発展

「ストレス」と「ストレッサー」、そしてストレス反応については、セリエ博士の研究以降、様々な視点での研究が行われています。

例えば、「内分泌系ストレス反応」です。これは、「視床下部-下垂体-副腎系(HPA系)」を辿るストレス反応です。生理的なストレス反応であり、様々な精神症状との関連性が指摘されています。

そして、「心理社会的ストレス」です。これは、アメリカの精神科医のホームズ(Holmes)とレイエ(Rahe)による「社会的再適応評価尺度」を用いた研究です(1975)。人生のライフイベントが「ストレッサー」となり、私たちの「ストレス」を作り出す程度についてストレス値で表したものです。
以前に私のコラムでも一部取り上げていますが、以下に再掲します(図-2)。
【学齢期の子どもの心理:番外編】『対象喪失』と『モーニング』について触れてみる

また、ラザルス(Lazarus,R.S)とフォルクマン(Folkman,S)による「認知的ストレス理論(1984)」が非常に有名です。「ストレッサー」は、「認知的評価」と「コーピング」を介して、ストレス反応として表れるという理論です。
ストレス反応は、様々な出来事という「ストレッサー」に対する、個人的な意味づけ(認知的評価)が大切であることを述べています。認知的評価には、「一次的評価」と「二次的評価」を設けています。
また、ホームズ(Holmes)とレイエ(Rahe)が唱えた人生のライフイベントのような大きな出来事に限らず、日々の苛立ちといった日常生活の些細な出来事である「デイリーハッスルズ」にも着目しています。
この理論は、必ず取り上げられる「ストレス理論」であり、以下に簡単に図示してみます(図-3)。

図-3 認知的ストレス理論

🔶さいごに🔶

今回は、「そもそもストレスとは?」と、「ストレス」に関する幾つかの理論を取り上げました。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回は、第二弾となりますが、ストレス理論についてもう少し触れていき、その上で「認知的ストレス理論」の「コーピング」の部分について述べていきたいと考えております。

これから梅雨の時期が「ストレッサー」となっていきますが、少しでも上手く「梅雨の時期」を捉えつつ、コーピングが出来ると、ストレスも緩和すると思います。
体調に気を付けて、梅雨を乗り切っていきましょうね。
それでは、また次回まで!!

🔶参考文献🔶

小此木啓吾 1979 対象喪失 中央公論新社
本明寛ら(監) 1991 ラザルスRS:ストレスの心理学-認知的評価と対処の研究 実務教育出版

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親子関係の問題、お子様とのかかわり方、育児、DVのほか、発達段階(幼児期、児童期、思春期、青年期、壮年期)、発達面の課題、非行、ひきこもり、ストレス・不安・躁うつ・強迫・依存など様々な精神症状に関すること、自己理解、対人スキルといった個人や関係性に関わる内容、不登校、いじめ、特別支援、高校への進路支援など学校と関連する内容など、様々なご相談に対応させていただきます。

昨今、コロナ禍で閉鎖的な風潮が加速化する中、お一人に悩まれ続け、辛い思いをされている方も多くおられると思いますが、一人で抱え込まず、誰かに吐きだして、少し軽くなったり、気持ちに余裕が生まれたりしていくことも時には必要かもしれません。

人それぞれ必ずご自身で感じ取る力、考える力は備えられています。しかし、精神的に余裕がない時には、その力を発揮することが難しくなります。ちょっとだけ、ゆっくり、じっくり、のんびりと、呟いたり、ご自身と見つめ合ったり、誰かと共有したりすると、ほっこりと、リラックス出来て、ご自身の感じ取る力や考える力が増していければ何よりです。

何か思うところがありましたら、いつでもご相談をお受け致します。

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過去の【学齢期の子どもと心理】コラム by 安澤 好秀


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Writing by 安澤 好秀

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