COLUMNコラム

【学齢期の子どもの心理】 「チック」について考えてみる③

🔶はじめに🔶

こんにちは。所属カウンセラーの安澤です。

4月も間もなく終わりを迎え、新しい環境、新しい人間関係、新しい活動なの中で、日々一生懸命にお過ごしのことと思います。
その中で、もう慣れたという人、少しずつ慣れてきている人、まだまだ慣れていない人…様々でしょう。
そして、ゴールデンウィークが間もなく突入する時期でもあります。
しっかりと休息を取っていただきたいですし、遊びを通じて楽しい時間を送って欲しいです。

他方、このゴールデンウィークによって、この新年度の数週間、突っ走ってきた生活リズム、睡眠リズム、活動リズムが乱れてしまうリスクがあります。

突っ走っている時期は、自律神経系の「交感神経」が優位であり、興奮状態が先行しています。しかし、連休が訪れるということは、休息の時間によって、「副交感神経」が優位となり、急激な弛緩(気持ちが緩む)の状態が増える可能性があることも意味します。

自律神経系は私たち自身でコントロール出来るものではありません。
上手くいかないと、極端な「反動」によって、私たち自身の生活リズム、体内リズムが乱れてしまうリスクを孕んでいます。

大事なことは、「一気に」、「急激に」、「激しく」といった極端な感覚を減らすことです。
切り替えには反動が付き物です。
表現が難しいですが、「徐々に」、「ゆっくりと」、「穏やかな」切り替えが、リズムの乱れの予防となりうるでしょう。
例えると、マニュアルの自動車で、アクセルとブレーキの繰り返しは、反動が大きいので、クラッチで調節するような感じです。
動くことも、休むことも、自分のペースで切り替えていったり、休み休み動いたり、休みの中に動きを入れ続けたりしていくこと、そのバランスによって負担をかけないことに繋がっていきます。

今回のゴールデンウィークは、コロナ規制の解除、コロナ不安の低減に伴い、外出して「行楽の春」とされる方も多いことでしょう。
ぜひ、負担が掛からず、ほどよく動いて、ほどよく休んで、充実した連休をお過ごし下さいね。

各チックへの症状に合わせた対応法

さて、今回もチックのコラムの続編となります。

前回では、チックに対する「基本的な心構え」について述べました。

➡【学齢期の子どもの心理】「チック」について考えてみる②

今回は、主に「各種のチック症状に合わせた対応法」について取り上げます。
正直、細かい内容であり、答えという答えはありません。あくまで経験から踏まえて、1つの工夫策を述べるに留めます。あまり書く内容ではないかもしれない位、細かいかもしれません。

重症な状態や生活に支障が出ていない程度の場合、前回も述べた通り、「その相談者の生活観に即した、可能な対応方法を考えること」が大切だと感じております。いかに、親子が少しでもリラックスして過ごせるようになるか、その視点を大切に、実利性のある具体的な方法について考えていきます。

子どもの特性や生活観によっても対応法は異なると思いますが、1つの参考程度にお受け止めいただければと思います。

【学齢期の子どもの心理】「チック」について考えてみる①では、チックの分類をご紹介しました。
そのコラムでご紹介した、チックの分類の表を再度以下に掲載します(図-1)。

図-1 チックの分類

この表にも記載されている主なチックの具体例を含めた、各チックへの対応の大前提を以下に取り上げます。

🔷各チックへの対応の大前提🔷

🔷別の対象に意識を向けさせるように促す

チック症状が見られたら、内容にもよりますが、子どものチックが現れている時にしていたことや考えていたことから切り離すため、別のことを一緒にしたり、その空間にずっといることを避けたりして、その時間と空間、思考から距離をとる意識を持つことが大切です。

🔷チック症状を見る側である周囲の大人たちもずっと見続けないようにする

周囲の大人たちも、チック症状をずっと見続けると、ストレスが溜まります。かといって、見続ければ消えるものでもありません。イライラや不安が増すばかりです。注意したり怒りたくなったりするだけです。周囲の側の人たちも、その場から離れることや違うことをして、気持ちを別の対象に逸らすことが大切です。
また、1つのチック症状が改善されたとしても、また違ったチック症状が発現する場合もありますので、あまり気にし過ぎないようにすることが必要です。

🔷どういう状況でどのようなチックが起こりうるかを見当つけておく

これまでのチックのコラムでも述べましたが、緊張や不安、ストレス状況下でチックは起こりやすいと思われますが、子ども自身が、どのような時に緊張や不安を抱えやすいか、ストレスを抱きやすいのかについて、簡単に、大体で構わないので、把握しておくと良いと思います。
例えば、集団場面の時、大人に注意されそうになる時、手持無沙汰な時、〇〇をしている時などです。そのような場面をもともと作らないように予防的な対応をすることも重要です。

🔷チック症状に対する代替行動を考えておく

一つ一つのチック症状に対して、そのチックの症状を一時的に止められるような、身体の部位に応じた代替行動を考えておくと良いと思います。なかなかご家族だけで浮かばない時には、対応したご親族やご友人ら経験者の方々、行政の子育てに関わる相談窓口などに相談されることをお勧めします。そして、この「代替行動」についての一例を、経験的にいくつか取り上げます。

🔷代替行動(各部位毎に)🔷

各部位毎に代替行動の例を取り上げます。ただし、前述したましたが、基本的には緊張や不安、ストレス状況下から離れるようにすることをベースにしての工夫策となります。

🔷目

まばたきのチックがあります。非常に早く目をパチパチすることもあれば、ぎゅっと開けたり閉じたりするのもあるでしょう。また、白目をむくこともあります。
安心感を与えられる工夫ならば、どのような方法でも良く、段々と通常通りに戻っていくでしょう。例えば、好きなアニメ、漫画、ゲームなどを用いても構いませんので、「〇〇を見てごらん」など、本人が注目に値するものを視覚出来るように促していくのも一案でしょう。

🔷顔

しかめ面をすることがあります。声掛けしてお喋りしたり、面白いものを見て笑ったりする、顔の体操をするなど、顔の違う筋肉を使うように方向づけすることも一案です。

🔷口・鼻

口を使ったチックは色々あります。音声チックでは、「ヒューヒュー」と言ったり、「あ、あ、あ」・「ん、ん、ん」と言ったりするものもあれば、咳払い、鼻をすすったり喉を鳴らしたりするものもあります。また、うなり声、「バカ」といったような汚音、舌打ち、相手の発言を繰り返す(反響言語)など、相手も少し不快度が強い気分になるようなチックもあります。運動性チックでは、つばを吐くものもあります。

「音」が聞こえるものは、どうしても気になってしまうと思います。本人に対しては、口を別の方法で使うことを意識し、会話を重ねたり、歌を歌ったり、一緒に深呼吸したりすることも良いでしょう。周囲の人たちが傍を離れることも1つの方法です。

🔷身体

頭を振る、首振り、肩をすくめる、ジャンプ、地団駄を踏む、倒れこむ、叩くといったものがあります。身体全体を使うものです。基本的に動作を変えるスタンスが良いでしょう。
別のことをするために、「〇〇しようよ」、「〇〇やってごらん」など、異なる動作に気持ちを向けさせると良いでしょう。
例えば、洗濯物を一緒に畳む、皿洗い、お買い物といったお手伝いをお願いする、ダンスや体操をする、腕や足を使ったストレッチをしてみる、走る、ボールなどで遊ぶ、ゲームをするなど、身体を別のことで使うようにすることが一案です。

「あまりにひどい場合の受診含めた対応」

チック症状がずっと治まらない、チック症状が重複している、他の疾患との合併症状がある、トゥレット症候群の可能性など、単純な症状ではない場合には、親族だけで抑えることなく、すぐに相談されることをお勧めします。

医療機関ならば、小児科、小児発達外来、小児神経科、児童精神科などの診療科で受診すると良いでしょう。状況が思わしくないようであれば、薬物療法(漢方薬含)なども取り入れながら治療を進めていくと思います。

医療機関までではなない場合でも、行政機関にある子育て相談窓口(電話相談含)、発達支援センター、保健センター、教育相談、スクールカウンセラー、民間の相談機関など、子どものことに関する相談機関は多数ありますので、相談してどのように進めていけば良いか、どのように対応すれば良いかを相談して下さい。

生活に即した対応のほか、チックの症状を軽減させるために「認知行動療法」を通じて、緊張や不安の生じる場面やストレス状況での思考・感情の分析、チック症状となる言動に代わる行動を習慣化するよう行動改善していくこと可能です。

🔷まとめ(チックコラム①~③)🔷

●チックは、子どもによく見られる、自分の意思に関係なく繰り返し勝手に生じる発声や身体の動き(運動)である。専門的には、「突発的、急速、反復的、非律動性の運動または発声」と言われる。おおよそ就学前から学齢期(4歳~11歳)の子ども、特に男児に出現しやすい症状となる。

●チックには、「運動性チック」と「音声チック」がある。さらに「単純性運動性チック」、「複雑性運動性チック」、「単純性音声チック」、「複雑性音声チック」に細かく分類することが出来る。

●チックの原因には、「身体的・心理的要因」、「環境的要因」、「生物学的要因」が挙げられる。

●チックへの対応を行う際に重要なことは、「その相談者の生活観に即した、可能な対応方法を考えること」である。そして、「基本的な心構え」と「各チック症状に合わせた対応法」、「あまりにひどい場合の受診含めた対応」の3つの段階で捉えていくことが大切である。

「基本的な心構え」は10点挙げている。この10点について、どのチック症状に対しても向き合うことが大切である。

●各チック症状に合わせた対応の大前提として、「別の対象に意識を向けさせるように促す」
「チック症状を見る側である周囲の大人たちもずっと見続けないようにする」、「どういう状況でどのようなチックが起こりうるかを見当つけておく」、「チック症状に対する代替行動を考えておく」を留めておくことが必要です。

●チック症状がずっと治まらない、チック症状が重複している、他の疾患との合併症状がある、トゥレット症候群の可能性など、単純な症状ではない場合には、親族だけで抑えることなく、すぐに相談した方が良い。

🔶さいごに🔶

今回は、「各チック症状に合わせた対応法」、「あまりにひどい場合の受診含めた対応」について述べてみました。細かい内容だったかもしれませんが、普段の生活の中で、チック症状が見られた時に、対応の工夫策として思い浮かべていただければ幸いです。

「チックについて考えてみる」のコラムは、今回で終了となります。チックは様々な子どもたちに、しばしば発現される症状ですし、今後のコラムのテーマでも時々出てくるかと思います。その時にまた今回取り上げられていない内容があれば、その都度お伝えしていけたらと思います。

色々と書かせていただきましたが、

子どもたちの「チック」よりも、「通常の暮らしぶり」に目を向けて下さい。

白いTシャツの「シミ」ではなく、「白い部分」を見続けて下さい。

それが一番大事なことです。

それでは、充実したゴールデンウィークをお過ごし下さい!!
また次回まで!!

🔶お知らせ🔶

親子関係の問題、お子様とのかかわり方、育児、DVのほか、発達段階(幼児期、児童期、思春期、青年期、壮年期)、発達面の課題、非行、ひきこもり、ストレス・不安・躁うつ・強迫・依存など様々な精神症状に関すること、自己理解、対人スキルといった個人や関係性に関わる内容、不登校、いじめ、特別支援、高校への進路支援など学校と関連する内容など、様々なご相談に対応させていただきます。

昨今、コロナ禍で閉鎖的な風潮が加速化する中、お一人に悩まれ続け、辛い思いをされている方も多くおられると思いますが、一人で抱え込まず、誰かに吐きだして、少し軽くなったり、気持ちに余裕が生まれたりしていくことも時には必要かもしれません。

人それぞれ必ずご自身で感じ取る力、考える力は備えられています。しかし、精神的に余裕がない時には、その力を発揮することが難しくなります。ちょっとだけ、ゆっくり、じっくり、のんびりと、呟いたり、ご自身と見つめ合ったり、誰かと共有したりすると、ほっこりと、リラックス出来て、ご自身の感じ取る力や考える力が増していければ何よりです。

何か思うところがありましたら、いつでもご相談をお受け致します。

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過去の【学齢期の子どもと心理】コラム by 安澤 好秀


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Writing by 安澤 好秀

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