COLUMNコラム

【学齢期の子どもの心理:番外編 新年のご挨拶】保護者が子どもとかかわる時の大切なこと(全ての時期の親子関係に言えること)

🔶はじめに🔶

 

「もしじしんをな~くして くじけそうにな〜ったら~🎵

    いいことだけ いいことだけ おもいだせ~🎵」

 

みなさん、こんにちは。所属カウンセラーの安澤です。

1月も間もなく終わりを迎えますね。
遅れ馳せながらではありますが、新年のご挨拶をさせて下さい。

明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。

昨年は、ロシアによるウクライナ侵攻、新型コロナウイルスの蔓延化、世界各国での物価高騰、カタールワールドカップ開催など、本当に世界全体での動きが良くも悪くも活発だった1年でした。

2023年は、ストレスが少ない、少しでも平穏で、安心したくらしが全世界に訪れますように。

その2023年も早くも1ヶ月が過ぎようとしていますが、みなさんはどのようなスタートを切られたでしょうか?

私は、平穏ではないスタートでした。年末年始に耳からばい菌が入り、リンパ腺が腫れてしまいました。それから、数日後、スマートフォンがトイレに水没してしまい………やろうとしていたことも全てスケジュールが崩れてしまい、何ともいいがたい始まりでした。

「ところで」と言いましょうか、「だからこそ」と言いましょうか、私は最初に掲げた、アンパンマンたいそうの歌が大好きなのですが、この冒頭のフレーズが、特にとてつもなく好きでたまりません。

最初にこの歌を聴いた時、「やなせたかしさんはやっぱり天才だ、秀才だ、苦労人だ」と改めて感じた次第です。

冒頭の「もしじしんをな~くして、くじけそうにな~ったら~、いいことだけ、いいことだけ、おもいだせ~」のフレーズは、認知(行動)療法を凝縮した、中身の濃い言葉たちだと思っています。

認知行動療法は、嫌な考えや思いが浮かび、その後の感情や行動にも影響が出てしまうことを修正して、新しい・異なる物事の考え方や感じ方について一人で、あるいは誰かと考えてみる心理療法ですが、この1文にいっぱい詰まっていると感じています。

本当に辛い時、苦しい時、困った時、自信の無い時、このフレーズを思い出すだけで、ちょっとだけでも、救われることがあるかもしれません。

アンパンマンは、幼児向けのアニメかもしれませんが、実はかなり中身の濃い、やなせたかしさんの人生から生み出された深いストーリーだと思いますし、万人向けの内容でしょう。

ちょっとした時に、例えば、お風呂に浸かっている時、トイレに入っている時、夜の暗い帰り道を歩いている時、一人で何かを考えている時、布団に横たわり寝る前に、朝に学校や職場に向かっている時、何かで失敗した後に、忙しくしている合間に………などなど、

ぜひこのフレーズは、今年1年も時折思い出してみて下さい。

 

さて、今回は、新年1回目のコラムで、どのような内容にしようかずっと考え込みました。かなり悩みましたが、答えは出ませんでした。

「1回目だから新鮮なテーマが良いかな」とか、「昨年からの続きである【『思春期』という時期について理解を深めてみる】の第4弾を取り上げた方が良いかな」とか、「他のテーマも捨てがたいな」とか色々と、モヤモヤし続けました。

結局、この心の葛藤は、年を明けても、そして今こうやって書いている間にも、消化されることがなく、ただその悩んで途方に暮れる気持ちを抱きながら、答えを見出せず、時の流れに身を任せています。しかし、どこかで決断して選択しなければなりません。

このモヤモヤと悩み続けている時間は、おおよそ中学生以降の、思春期の後半に現れるであろう「心理的葛藤」と、現実的な選択を行うまでの「猶予期間(心理社会的モラトリアム)」という特徴と被るところもありますが、どうやら私には、もう少し「モラトリアム」が必要なようです(笑)

その上で………

今年は最初から余りディープな話題は扱わず、番外編として、普段のコラムでなかなか上手く取り上げられていない、学齢期の子どもたちと向き合う時の基本的な視点、もっと言えば、どの世代に対するかかわりでも重要な視点について、触れようと思います。

「モラトリアム中に行っているバイト」のような一時的な行動の決断です…。

もちろん、中身は必要な視点で、私個人は、全ての方々に伝えている内容です。あまりに基礎中の基礎の内容ですが、逆に後で取り上げるよりも、今年最初のタイミングの方が妥当と判断しました。ある意味、振り返りです。

なお、前回までに「思春期の子どもの7つの特徴」、「思春期前後の子どもの心の有り様」、「思春期における親子関係」、「思春期の子どもとかかわる上で大前提にあるもの」、「思春期の子どもとのかかわり方」について述べてきました。
詳しくは以下のURLから御覧下さい。

【学齢期の子どもの心理】『思春期』という時期について理解を深めてみる①

【学齢期の子どもの心理】『思春期』という時期について理解を深めてみる②

【学齢期の子どもの心理】『思春期』という時期について理解を深めてみる③

 

 

子どもの成長に対する保護者の見方

子どもたちは、保護者の見ているところでも、見ていないところでも、日に日に成長していきます。ある時には、「え?いつの間に…」ということは、幼児期の時代から感じることもあったのではないでしょうか。

慣れてくると、子どもの成長を見ても「当たり前」、「もっと頑張らないとだめでしょ」そして「他の子よりも遅い」といった見方を、いつの間にかしてしまうこともあります。

このことの良し悪しを問うてる訳ではなく、大人は、多忙な日々の中で、子どもの成長について「当然の現象」と捉えるようになってしまいがちなのです。その姿勢やマインドになってしまうのですが、その感覚に慣れないようにしていくことが大切となります。

保護者側が、「ちょっと待てよ」、「この見方はまずい」と、子どもに対する見方に気づきを得ることがとても重要となります。

そして、以下に掲げる子どもの成長を促すための「3つのスキル(「褒める」・「認める」・「気づく」)」を用いて、子どもと触れ合っていただくことが、「子どもの成長」、「親子関係の安定」、「保護者の安心」という結果に繋がるだろうと感じています(図-1)。

図-1 子どもとかかわる時の保護者の3つの視点と子どもの変化

子どもとかかわる時の3つの視点

3つの視点ですが、普段から人々が誰かに対して、意識的ないし無意識的にやっていることです。そのことを強く意識づけすることが重要です。無意識的であれば、ぜひこの機会に意識して、子どもと向き合っていただければと思います。

🔷褒める(行動の強化→肯定感)🔷

どの書籍でも、どの講座でも、どの専門家でも、この「褒める」というのは、よく耳にするワードでしょう。飽きる位に聞く言葉のはずで、それでもダメということもしばしばあるはずです。ですが、実際に重要な視点です。「良くできたね」、「頑張ったね」、「偉いね」と言われると、子どもは当然嬉しくなります。

褒められて嫌がるタイプの人も正直いますが、子どもの場合には、保護者から褒められれば、自己肯定感が上がりますし、不安な中で「これでいいんだ」と自信にも繋がります。

そして、その褒められた体験を何度も経験したい子どもの場合には、同様の行動を何度も何度も取ります。それは、自己肯定感や自己有用感、自己効力感といった、ポジティブな感情が醸成され、ひとまとまりで表現するならば、自尊心が向上するからです。

色々な「褒め方」があると思います。目で見える形を取ったり、言葉で伝えたり、何かを上げたり、好きな食べ物を作って上げたり、ギューしてあげたりなど、子どもに響く方法で褒めると思いますが、褒められることで、褒められる行動が増えていき、「成功体験」を積み重ねていくという、「ポジティブな循環」が生まれます。

この「褒める」の視点は、年代や所属を超えて、対人関係の安定にも必要な要素ですが、親子関係においては、子どもの成長だけに留まらず、親子関係がちょっとでも落ち着いたり、保護者自身の気分が楽になったりしますので、ぜひ褒めている方は続けていただき、褒めてはいない方は時折取り入れていただくと良いでしょう。

🔷認める(情緒の安定→安心感)🔷

この行為は、「褒める」に比べると、大人側もあまり意識していないかもしれません。この「認める」という行為は「褒める」行為ではありません。故に、どのタイミングでどのように言えばいいかも難しいでしょう。

「良い行為をしたら認める」でも良いですが、どちらかと言うと、子どもがどことなく不安そうに、何かをしている時に、「それでいいんだよ」、「大丈夫だよ」、「そのままやっていこう」と伝えることが主な視点です。

「褒める」が、「0からプラスへという考え方」ならば、この「認める」は「マイナスではないという考え方」や「0でもOK、プラスになっているという考え方」と言いましょうか。

「認める」の狙いは、「安心感」を与えることです。例えば、子どもが初めての体験をしている時には当然不安が付き物になります。新しい行動を獲得したら「褒める」と思いますが、特に褒める内容は無いながらも、不安を抱きながらそれなりに取り組んでいる時に、「大丈夫だよ」、「それでいいよ」と言われると、不安が減っていきます。

大人でも、この言葉を言われると安心しますよね。良いのかどうか分からない時に、この一言を言われたら、どれだけ開放される気持ちになるか。自己肯定感などが上がるというよりは、子どもの抱いている不安感や緊張感、劣等感などが減る効果なのだと思います。

この「認める」の視点は、何気に意識づけしておかないと、日々の生活では出来ない声掛けだと思います。しかし、子どもにとっては、想像以上に安心感を得られる機会となります。ぜひこの視点を意識しながら関わっていただくと良いでしょう。

🔷気づく(新しい体験→高揚感)🔷

この行為は、「褒める」でもなければ、「認める」でもない行為です。恐らく大人は常に行っている行為かもしれません。しかし、それほど意識している行為ではないかもしれません。あくまで「気づいた時だけ」ではないでしょうか。

良いことをしていなくても、何かに取り組んでいなくても、子ども自身が「無意識に振る舞っている言動」や「いつもと違う変化」に気づいて、伝えてあげることです。「最近、〇〇だね」、「~をするようになったね」、「~が変わったね」といった、気づきを与える視点です。

この気づく行為は、プラスにするでもなく、マイナスではないことを伝える訳でもなく、0やプラスを肯定するような行為でもありません。子どもの変化に気づいているという、強いて言うならば、「0を与える考え方」でしょうか。

しかし、顕示欲の強い子も多いですし、見てくれていることを知って喜び、嬉しがる子もいます。その時には何の反応もない子でも頭に残って追々に子どもに変化がもたらされる場合もありうるでしょう。

この「気づく」という行為は、「褒める」や「認める」のように、即効性があるとは限りませんが、「大人が僕を、私を見てくれている」という感覚をもたらし、「知らないところでも見てくれているんだ」という自己肯定や安心感を、自然と与えうるものかと考えます。

また、親子にとっては、新しい発見にも繋がります。子どもは気づかれた時、照れ臭い場合もありますが、ネガティブな内容でなければ、決して嬉しくないことはありません。心の中では、高揚感が生まれているかもしれません。

この行為は、大人側も、自然な流れで、最初から意識して行う行為ではないと思いますが、「気づく」ことを、意識して、回数を増やしていくためには、常に子どもの言動にアンテナを張り続けることでしょう。すると、常に変化に気づきます。その見守り、見届けが、必ず子どもに、何らかの肯定的な影響を与えるでしょう。

「気づく」の視点は、「褒める」や「認める」よりも地道な行為ですが、その分、最も「信頼の蓄積」に繋がる行為ではないでしょうか。この行為もぜひ意識して生活の中で取り入れていただければと思います。

以上、「褒める」、「認める」、「気づく」という3本柱を自覚して、子どもとかかわると、好循環の礎を築けるのではないでしょうか。

なかなか難しいのは重々承知ですが、とはいえ、必要な3つのスキルだろうと感じます。「怒鳴る」、「否定する」、「そのままにする」というかかわり方を100%否定するものではないですが、肯定的な効果を見込んだかかわり方として、必要な方法だと経験上感じています。

シンプルに、「褒める」・「認める」・「気づく」という3つのワードを呟きながら、日々過ごしてみてください。この3つの言葉たちを呟いて、ストレスが溜まってきたら、誰かに相談しつつ、愚痴吐きをしながら、保護者自身のメンタルヘルスを維持していくことが必要です。

 

「褒める」

     「認める」  

「気づく」

 

🔶まとめ🔶

●「アンパンマンたいそう」の冒頭のフレーズは、認知(行動)療法を凝縮した、中身の濃い言葉である。「もしじしんをなくして、くじけそうになったら、いいことだけ、いいことだけ、おもいだせ」は、ネガティブな時ほど、思い出して欲しいフレーズである。

●子どもは日に日に成長していくが、大人は、良し悪し問わず「当然の現象」として捉えてしまう場合がある。保護者側が、「ちょっと待てよ」、「この見方はまずい」と、子どもに対する見方に気づきを得ることがとても大切である。

●子どもとかかわる時の3つの視点として、「褒める」、「認める」、「気づく」という3つのスキルを意識して、子どもとかかわっていくことが重要である。

「褒める」の視点は、親子関係においては、子どもの成長だけに留まらず、親子関係がちょっとでも落ち着いたり、保護者自身の気分が楽になったりするため、褒めている方は続けていただき、褒めてはいない方は時折取り入れていただくと良い。

「認める」の視点は、何気に意識づけしておかないと、日々の生活では出来ない声掛けである。しかし、子どもにとっては、想像以上に安心感を得られる機会となる。「認める」の視点を意識しながらかかわっていただくと良い。

「気づく」の視点は、「褒める」や「認める」よりも地道な行為だが、その分、最も「信頼の蓄積」に繋がる行為ではないだろうか。この行為も意識して生活の中で取り入れていただくと良い。

シンプルに「褒める」・「認める」・「気づく」を呟きながら、日々過ごしてみて欲しい。この3つの言葉を呟いて、ストレスが溜まってきたら、誰かに相談しつつ、愚痴吐きをしながら、保護者自身のメンタルヘルスを維持していくことが必要である。

 

🔶さいごに🔶

今回は、新年1回目でもあり、ディープな内容を避けるために、番外的に、保護者の子どもとのかかわり方の大前提となる3つの視点を取り上げました。これまで取り上げられなかったので、このタイミングで掲げ、今後のコラムの内容にも反映させていけたらと思っています。

結局、思春期からより全体的な時期の親子関係に当てはまるテーマとなりましたが、次回以降も心理社会的なモラトリアム期間にならぬよう、よく考えて、テーマを絞っていく予定です。もしかしたらディープな内容となりますが、読みやすく書けるよう心掛けていきます。

それでは、今年も1年間、安澤や他メンバーもよりよいコラムを作成して参りますので、ぜひコラムをご一読ください。
皆様にとって、本年が、健康で、充実した、素晴らしい1年となりますように。
本年もどうぞ宜しくお願いいたします。
それでは、また来月お会いしましょう!!

 

🔶引用楽曲(歌詞一部抜粋)🔶

●やなせたかし・魚住勉(作詞)・馬飼野康二(作曲) 2002 アンパンマンたいそう

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過去の【学齢期の子どもと心理】コラム by 安澤 好秀


 

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Writing by 安澤 好秀

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