COLUMNコラム

【里親制度を考える】③世界のフォスターケアと日本の里親制度

こんにちは、所属カウンセラーの古宇田です。

昨今の社会で起きている子ども虐待のすえに起きている耳を疑いたくなるニュースはあとを絶つことがありません。事件が起きるたびに、さまざまな改善策や検証は行われていますが、なぜ事件は起きてしまうのでしょうか。その背景にはいろいろな要因があると考えられています。その一つに「孤独な子育て」があり、家族が社会から孤立し、本来であれば人間に備わっている子どもを育てる力が削がれてしまっているのではないでしょうか。一つの理由でこうした社会問題が起きるとは言いません。家族を支えるいくつもの力が、そうした支えを必要とする家族に行き届かない現状があるように思います。もっと根本的に家族を社会でしっかりと見守るシステムのよりよい充実が期待されます。

さて、その一端を担うシステムに社会的養護があります。その社会的養護を必要とする子どもにとって、家庭的環境の中で育てられるのは望ましいことと言われています。いくつかのシステムの一つに里親制度があります。ここ2カ月に渡ってコラムで取り上げている「里親制度」ですが、74年前にかつての厚生省から里親制度について通達がでたことによって里親制度が明確化されました。そしてこの通達が10月であったので10月は「里親月間」となり、10月4日は「里親の日」とされています。そのため里親制度に関する啓発活動やキャンペーンが行われているので、さまざまな場所で里親制度について目に触れる機会もあるかと思います。このコラムに限らず、ぜひ色々な情報に出会って里親制度に興味をもってもらいたいと思います。

一方でこれだけの長い月日を経てはいますが、里親制度の充実やそうした環境を取り巻く動きは進んではきているものの、まだまだこれからといった印象を受けています。

前回コラムでは「里親養育の実際について」をご紹介しました。里親になるための要件、里親を取り巻く環境、そして里親委託以前の子どもとの共有しない「過去」や子どもが長くとも18歳を迎えると措置委託解除となる里親子関係の期限があることとして里親養育の特徴をお伝えしました。

詳しくはこちらをご覧ください。
【里親制度を考える】②里親養育の実際について

さて今回はそうした日本の里親制度と海外の里親制度(フォスターケアシステム)についてお伝えし、さらに里親について理解を深めていきたいと思っています。

海外では里親を一般的には「フォスターケア」と言っています。フォスターケアという言葉の定義が国によって違っていますが、分かりやすくするために国外の里親はフォスターケアとして今回お伝えしていきます。

ちなみにフォスターケアという言葉の意味を明確にするためには、①親族によるケアを含むか、含まないか、②認定された権限をもつ機関が仲介した委託だけを含むかどうか、③一時的な委託だけをふくむのかどうか、④24時間のケアを意味するのかどうか、⑤西洋的な意味での「プライベートなホーム」を含むのかどうか、という5つの基準にそって考える必要があると言われています。こうした視点が世界の里親を理解する際には必要ということですね。日本における里親制度の理解やこれからの発展においても、大切な基準なのだと考えられます。

里親制度にも関連があります「子どもの人権」「児童虐待」などのコラムはこちらからご覧になれます。
【子どもの心との向き合い方】コラム

【施設養護中心の日本と欧米の里親制度の発展】

実は日本は先進国の中で唯一施設養護中心の国とされています。要保護児童の約80%は児童福祉施設で生活をしています。里親への委託がここ10年で伸びてきてはいるものの、約20%程度となっています。欧米などと比較するとこれらの数字は逆転していて、欧米ではほぼ里親委託が占めています。

日本の児童養護施設では戦後の混乱期には大舎制といって、数十人という子どもを同じ場で育てる環境が多かったようです。現在の児童養護施設は、子どもを育てる環境の変化が起きていて、地域に家などを借りてより家庭的な環境作りをしながら生活をすることが多くなってきています。施設自体もユニット制となっていて、一つの家庭としての単位をより意識した取り組みがなされています。このような影響は世界の大きな流れである里親養育のスタンダード化の影響もあると考えられます。

こうした施設中心の養育の背景には、日本ならではの事情もあります。里親制度が発展しない要因として、日本の文化的要因が挙げられます。わが国では血縁が重視されることもあり、血の繋がらない子どもを受け入れるという姿勢が、欧米のキリスト教との姿勢の違いもあり、里親をすること自体への意識が進まないのだと考えられています。

さらには欧米でのホスピタリズム(病院や施設に入院することによって心身に悪影響が生じること)についての研究がなされることで、施設環境の改善が試みられ、子どもには家庭が必要であるという考えが広まったことも大きな影響だと言われています。こうした流れから海外では脱施設化がすすみました。

また大きなもう一つの理由として施設養護よりも里親委託のほうが安いという経済的理由もあったようです。近年では、どの国でも親族里親制度が普及していて、子どもの文化的アイデンティティが保たれること、実親との関係が維持されやすいことともに、経費が少なくてすむこともあるようです。フォスターケアの大きな目的の一つには、実家族との再統合を促進することであり、それは子どもが個人的にも、文化的なアイデンティティの感覚を持つうえでも必要だからです。

【海外でのキンシップケアという取り組み】

海外でのフォスターケアの取り組みの一つに「キンシップケア」というものがあります。これは親族やその関係者による生みの親との共同養育、または生みの親にかわる代替養育のことです。つまり日本でいう親族里親になります。こうした取り組みを聞いてびっくりしたのが、生みの親との共同養育にも力を入れているという点でした。生みの親がキンシップケアをしている親族の家庭に同居したり行き来したりする場合もあるというのです。親族里親に近いですが、より生みの親が関わることが促進されており、子どもの視点にたった、そして家族をつなぐよい仕組みだと考えられます。

ちなみに日本ではこのキンシップケアにあたる親族里親は社会的養護の1%であり、十分に活用されていません。日本では、親族に扶養義務があるため、公的資金の使われにくさが、親族の里親支援に及び腰になっている要因もあるのではないでしょうか。

もちろん養育する人が子どもの後見人となって親権者(生みの親)よりも強い権限をもつこともあれば、生みの親が子どもにネガティブな影響を与える場合は同居や接触が制限されることはあるようですが、まずは親族の力を選択するという視点はこれからの日本にとっても必要な選択肢となってくるのではないかと考えられます。

さまざまな公的な支援があるフォーマルなキンシップケアと私的なインフォーマルなキンシップケア、つまりボランティアの形をもつキンシップケアが国によっては主流になっているようです。海外ではこのボランティアに頼る国も多くあり、これはその国の文化が反映されてもいるからだと見ることもできます。

キンシップケアの利点として、親族内で子どもの世話ができること、家族からの分離と見知らぬ人へ委託されることにともなうトラウマを最小限にできること、文化的アイデンティティを保持できること、そして一般的な里親への委託よりかは委託の破綻が少ないことが証明されています。

一方でキンシップケアにおける課題もあります。虐待をする親のケースの場合はその親から十分に保護されにくいこと、委託期間が長くなりやすいこと、親族家庭への公的支援、ケースワーク支援が不十分なことが挙げられます。

世界的には家族、親族、コミュニティでの養育優先の原則からまずはこのキンシップケアが選択されることもあり、次にフォスターケアが選択されることが多いのだと言われています。

【国際フォスターケア機構にみる信念】

里親に関する国際的な団体にIFCO(International Foster Care Organisation)『イフコ』と呼ばれる、フォスターケアの促進と援助を目的とした世界で唯一の国際的ネットワーク機構があります。設立は1981年であり、現在ではその会員が世界60カ国以上に広がっています。IFCOは全てがボランティアで運営されていて、フォスターケアに関わる個人や組織で構成された会員制をとっています。IFCOは、文化・宗教・地域を超えた活動の場となっています。フォスターケアに関わる全ての人の出会いの場であり、社会的養護を受けるすべての子どもたちの権利を守るために、一致団結となって、経験を分かち合い、互いに支え合います。

IFCOはいくつかの信念をもって活動しています。そうした信念がフォスターケアに通ずるものであると思うので、ここに紹介をします。

◆子どもは、可能な限り、実親またはそれに代わる親族のもとで暮らすこと。しかし、それが困難な場合は、社会的養護として、少しでも家庭に近い環境を基盤とした解決策が優先されること。

◆子どものケアは、子どもとその家族に焦点を当てた上で、その多様性が考慮されること。

◆フォスターケアは可能な限り、その子どもの実家庭にできるだけ近い地域で行われること。そのためIFCOは国際養子縁組や国際里親に関わっていないこと。

こうした信念をもとに、フォスターケアに関わる人々を繋ぎ、世界の社会的養護の情報や実践例を交わし、さまざまなネットワークを作っており、専門機関や組織への助言や里親の為のサービス向上や権利擁護を行っています。またフォスターケアに関わるさまざまな分野でのトレーニングや国際的なガイドラインとして認められるようなサービスの導入もしています。

世界中の国々で、フォスターケアを必要とする子どもたちは年齢が高く、健康状態が不良で、トラブルを起こしやすい子どもたちであると言われています。いやおうなしに「困難な状況にある」子どもへのケアをすることへと、里親制度のシステムの移行が生じてきているのです。また世界的にフォスターケア制度の主要な問題の一つに養育者をリクルートすることの困難さがあると言われています。多くの子どもに一時的なケアを提供するボランティア的サービスから、個人そして家族の複雑な問題を抱えた継続的なケアを必要とする里親の専門家への動きも大きな課題の一つです。

【最後に】

子どもの育ちをみんなで支えるための一つの選択肢として里親委託という社会的養護があるのだと思います。里親養育か施設養育かという、どちらが良いかという視点よりも、子どもにとったらどちらの養育が良いのかという個別のケースを考えて、社会的養護を捉えていく必要があると考えています。そうした視点を踏まえていくことで日本の社会的養護をよりよく作り上げていけるのではないかと感じています。孤独な子育てにならないよう助け合うシステムも、こうした里親制度が何かしらのヒントを与えてくれるのではないかと信じています。

その根底にはどれほど人が助け合いながら、支え合いながら共同養育ができるかという思いが大切なのだと考えています。また海外での取り組みの主流となってきているキンシップケア(親族里親)による取り組みも児童福祉サービスの重要な選択肢の一つであるという認識をもつことも必要なのではないでしょうか。

多様性のある里親制度の発展を期待したいと思うと同時に、子どもの福祉の現場で働く身として、いろいろな取り組みを知ることそして伝えること、読者のみなさまが「知ることもアクション」という姿勢を持って、今後の里親制度についてのコラムも楽しみしていただけると幸いです。

【里親制度を考える】のシリーズコラムはこちらからご覧になれます。
【里親制度を考える】①日本の里親制度とは?
【里親制度を考える】②里親養育の実際について
【里親制度を考える】④里親養育の理念や基本となる考え方
【里親制度を考える】⑤里親養育への支援

次回は里親養育の理念や基本となる考え方から社会的養護についても触れていきたいと思います。

【参考資料:『里親養育を知るための基礎知識・第2版』編著:庄司順一・2009、『世界のフォスターケア・21の国と地域における里親制度』編者:マシュー・コルトン他・監訳者:庄司順一・2008、『フォスター』著者:白井千晶2019】

長期に渡るコロナ禍での不安やストレスは、さまざまな形で表出されていることがあります。ポジティブな考えを持つきっかけとして、そして安心・安全な人との関わりを通して生きる力を養うサポートもカウンセリングの一側面とも考えています。子育てや子どもの抱える不安やストレスに関してのご相談もお受けしております。

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Writing by古宇田エステバン英記

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