COLUMNコラム

【里親制度を考える】②里親養育の実際について

こんにちは、所属カウンセラーの古宇田です。

日に日に秋に向けて季節が変わり始めていますね。激動の世界ですが、変わらないものもあるのだなと、しみじみ思う今日この頃です。

さて前回コラムでは、現在の日本における里親の役割について、またどのような形の里親があるのかをご紹介しました。令和の時代になり、子どもを保護することから子どもが権利の主体であるという社会的養護の方向転換を機に、家族と同じような暮らしができる環境の提供が必須の課題となっています。その一端を担う里親制度。その趣旨は「家庭での養育に欠ける児童等に、その人格の完全かつ調和のとれた発達のための温かい愛情と正しい理解をもった家庭を与えることにより、愛着関係の形成など児童の健全な育成を図るものであること」とされており、日本の里親制度の概観をお伝えしました。

詳しくは前回のコラムをご覧ください。
【里親制度を考える】①日本の里親制度とは?

里親養育を社会的養護という視点から見ると、もう一方側にある社会的養護である児童養護施設や乳児院では、チームで対応することもありますし、職員が交代で子どもを養育していきます。多くの志ある大人たちが支えあって子どもを育てていきます。そうした視点からすると里親が単独で問題解決に当たらなければならないことになります。とはいっても児童相談所フォスタリング機関(里親養育包括支援機関のことであり、里親登録をしている人に対して、日々の子育ての悩みや、養育の中で生じる困り事などを共有し、解決に向けた支援を行う機関)、里親関連団体の活動などの支援体制がある中での養育となります。

里親がどのような支援体制や環境のもと里親になることを決め、そして子どもたちを養育していくのかを今回はお伝えしていきたいと思います。社会の中における里親制度を理解していくきっかけの一つになることを願っています。

里親制度にも関連があります「子どもの人権」「児童虐待」などのコラムはこちらからご覧になれます。
【子どもの心との向き合い方】コラム

【里親になるためには?】

まずは里親になるための方法を見ていきましょう。子どもを預かり、育てるために特別な資格が必要なのでしょうか?いいえ、特別な資格は必要ありません。しかしすぐに子どもを委託される訳ではありません。自分が住んでいる地域の担当となる児童相談所に申し込み、都道府県知事により認可され、住んでいる都道府県の里親として登録されて、やっと里親委託の道へとつながるのです。登録までには時間がかかります。また里親の種類(前回の記事に載せていますのでご参考ください)によっても、登録するための要件が定められています。実際に子どもを委託されるまでには、さまざまな準備が必要となるのです。

基本的な要件は以下の通りです。
①要保護児童の養育についての理解及び熱意並びに児童に対する豊かな愛情を有していること。
②経済的に困窮していないこと(親族里親は除く)。
③里親本人又はその同居人が次の欠格事由に該当していないこと。
・禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者。
・児童福祉法等、福祉関係法律の規定により罰金の刑に処され、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者。
・児童虐待又は被措置児童等虐待を行った者その他児童の福祉に関し著しく不適当な行為をした者。

これら3つの基本要件に加えて各里親における要件もあります。

養育里親:養育里親研修を修了していること。※年齢に一律の上限は設けない。養育可能な年齢であるかどうかを判断。

専門里親:専門里親研修を修了していること。
次の要件のいずれかに該当すること
①養育里親として3年以上の委託児童の養育の経験を有すること。
②3年以上児童福祉事業に従事した者であって、都道府県知事が適当と認めたものであること。
③都道府県知事が①又は②に該当する者と同等以上の能力を有すると認めた者であること。
委託児童の養育に専念できること。
※年齢に一律の上限は設けない。養育可能な年齢であるかどうかを判断。

養子縁組里親:養子縁組里親研修を修了していること。
※一定の年齢に達していることや、夫婦共働きであること、特定の疾病に罹患した経験があることだけをもって排除しない。子どもの成長の過程に応じて必要な気力、体力、経済力等が求められることなど、里親希望者と先の見通しを具体的に話し合いながら検討。

親族里親:要保護児童の扶養義務者及びその配偶者の親族であること。要保護児童の両親等が死亡、行方不明、拘禁、疾病による入院等の状態となったことにより、これらの者による養育が期待できない要保護児童の養育を希望する者であること。

こうした要件をクリアし、都道府県児童福祉審議会(児童福祉法に基づき、子どもや妊産婦らの福祉について調査、審議する都道府県・市町村に設けられる諮問機関)の意見聴取がなされて、認定を受けると、里親名簿への登録となります。また5年ごとの登録の更新も必要であり、更新研修の受講をすることで改めて里親として登録されます。※専門里親は2年ごとに更新研修があります。

 

【里親を取り巻く環境】

現在の日本での里親を取り巻く課題として、里親が正しく認知されていないこと里親の高齢化委託できる里親が少ないこと里親に対する相談体制が整っていないなどの課題が指摘されています。

一方で里親制度の推進のためにさまざまな取り組みがなされています。
・平成14年度に親族里親、専門里親を創設。
・平成20年の児童福祉法改正で「養育里親」と「養子縁組を希望する里親」とを制度上区分。
・平成21年度から養育里親と専門里親について研修を義務化。
・平成29年度から里親の新規開拓から委託児童の自立支援までの一貫した里親支援を都道府県(児童相談所)の業務として位置付けるとともに、養子縁組里親を法定化し、研修を義務化。

こうした取り組みがなされたことで、徐々に里親委託率も上昇してきています。そこには行政や児童相談所、施設の社会的養護に対してのポジティブな姿勢も影響しているとも考えられます。里親を取り巻く環境はさらに良くなっていくことでしょう。

実際どれくらいの里親が登録されていて、委託されている子どもは何人くらいなのか、また里親になった動機などを見ていきたいと思います。

里親委託率の推移
里親等委託率は、平成22年3月末の11.1%から、令和2年3月末には21.5%に上昇してきています。実際の委託児童数は4055人から7512人に増加しています。里親養育は望ましいと思われても、昭和30年代をピークに委託率や里親登録率は減少を続けてきました。また先進国の中で比較すると、この委託率はまだまだ十分とは言い難いところです。
ちなみに里親登録数(令和2年度3月末現在)は養育里親では11047世帯、専門里親では716世帯、養子縁組里親では5053世帯、親族里親では618世帯となっています。

登録はしているものの、すべての登録里親に委託されるわけではなく、実際に委託される里親数は養育里親3627世帯(11047世帯のうち)、専門里親188世帯(716世帯のうち)、養子縁組里親351世帯(5053世帯のうち)、親族里親576世帯(618世帯のうち)となっているのが現実です。

里親になった動機
里親委託の子ども、児童福祉施設を対象とした「児童養護施設入所児童等調査」という大規模な実態調査がおおむね5年ごとに行われています。近年の発表によると「児童福祉への理解から」が41.7%、「子どもを育てたいから」が30.8%、「養子を得たいから」10.7%、その他(理由不明含め)は16.7%となっています。調査結果を見ると、社会的養育が認知されるようになってきたと言えるのではないでしょうか。
※児童養護施設入所児童等調査(平成30年2月1日現在)

里親登録期間
子どもを預かっている里親家庭の登録期間は「5年未満」が一番多く43.8%(1845世帯)、次いで「5年~9年」が29%(1224世帯)、10年~14年と15年以上の里親もいますが、10%台に留まっています。
※児童養護施設入所児童等調査(平成30年2月1日現在)

里親への委託理由としてよく話題になるのが、虐待を受けた子どもと、実親の精神疾患のため家庭へ返すに返せない子どもが増え続けているという現実です。社会全体で子どもを見ていく必要があり、今までお伝えしたように、そうした制度の一つに里親制度があります。

【最後に】

里親は、常に子どもと向き合った生活をしています。当たり前ですが、1年365日24時間を子どもと共に暮らすということです。今まで一緒に暮らしたことがない人と生活を共にすることは、それだけでもさまざまな困難に直面しますが、委託をされる子どもの生育歴は過酷なケースが多く一筋縄ではいきません。里親委託以前の子どもとの共有しない「過去」や、子どもが長くとも18歳を迎えると措置委託解除となる里親子関係の期限は、里親養育の特徴とも言えます。子どもと共有しない「過去」において、子どもも里親もさまざまな葛藤を生じえます。子どもを預かれば親子になれるのかというテーマは大きいと考えられます。こうした視点は福祉的役割を里親が担っているからなのでしょう。

子どもの生育歴、子どもの希望や里親になった動機などをすり合わせて「その子どもにとって適切な里親」であることを模索しつつ、個々の子どもの生育歴や個別性を重視した「理解」を試みようとする心性が働くと考えられています。社会的養護としての養育であることは、里親の知らない子どもの過去と向き合わねばならないことを意味しているのです。

今後も里親制度についてお伝えします。日本の里親について理解をするきっかけとして頂ければ幸いです。社会に里親の居場所が当たり前となるよう願っています。

次回のコラムでは、「海外のフォスターケア」についてお伝えしたいと思います。日本の里親と海外の里親(フォスターケア)の比較などをご紹介しつつ、さらに里親制度について深めていきたいと思います。次回10月のコラムも楽しみにしていてください。

【里親制度を考える】のシリーズコラムはこちらからご覧になれます。
【里親制度を考える】①日本の里親制度とは?
【里親制度を考える】③世界のフォスターケアと日本の里親制度
【里親制度を考える】④里親養育の理念や基本となる考え方
【里親制度を考える】⑤里親養育への支援

【参考資料:「里親制度(資料集)」厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課・2021、『里親養育を知るための基礎知識・第2版』編:庄司順一・2009、『里親になりませんか子どもを救う制度と周辺知識』著:吉田菜穂子・2022】

長期に渡るコロナ禍での不安やストレスは、さまざまな形で表出されていることがあります。ポジティブな考えを持つきっかけとして、そして安心・安全な人との関わりを通して生きる力を養うサポートもカウンセリングの一側面とも考えています。9月になりますと学校も始まり、不登校の問題が取り沙汰されることが多くなります。子育てや子どもの抱える不安やストレスに関してのご相談もお受けしております。

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Writing by古宇田エステバン英記

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