COLUMNコラム

【学齢期の子どもの心理】「不登校」という現象について考えてみる⑦

みなさん、こんにちは。所属カウンセラーのY.Yです。

夏休みが終わり、パラリンピックも終わり、「祭りのあと」となりました。この時期、季節の変わり目です。少々疲れが生じやすく、体調を崩しやすい時期と言えます。

他方、新型コロナウイルスは変異しながら猛威を振るい、日本の外出自粛はもとより、世界各国でロックダウンが度々行われています。この社会的現象は、人々のライフスタイルや心理状態にも大きな影響をもたらしています。今以上にコロナワクチン接種の浸透や抗体カクテル療法の普及が待たれますが、とはいえ、セルフケアによる工夫が今後も強く求められるのではないでしょうか。

新種の異物という「刺激」に脅かされ、コロナ不安やコロナストレスという「反応」がなされ続けることで、「怖い」とか「逃げたい」という気持ちも、もっとエスカレートしていきます。
しかし、その恐怖心や逃避感情を、ひとりで悩まず、抱え込まずに、必ず誰かに相談するようにしてくださいね。

さて、今回は『「不登校」という現象について考えてみる』の第7弾です。
このテーマもいつまで続くのでしょうか……。継続そのものが、人間には大きなストレスであり飽きとなるのに…
と言いつつもですが、今回のテーマは、学齢期の「登校刺激」です。

前回述べようとしていた内容が余りにも多かったため、今回に持ってきました。
「登校刺激」という言葉は、恐らくどこかで一度は聞いたことがあるかもしれません。
ここでは、「登校刺激」について、どのように考えていけばいいのかについて伝えていきます。

「登校刺激」について

≪そもそも「登校刺激」という言葉って何??》

前回のコラムでほんの少し触れましたが、登校刺激は、保護者や教職員を始め、どのような人であれ、子どもが登校するように、あらゆる言動を用いて働きかけを行うことを言います。言葉で伝えることも、無理矢理学校に連れていくことも、部分的な登校や家庭訪問といった徐々に登校を促していく行為も、手紙やプリント等でメッセージを残すことも、全て「登校刺激」です。

不登校の歴史の詳細については、他の書物や記事に譲りますが、「学校に行かない、行けない子ども」については、アメリカで1930年代に「怠け」の亜型、1940年代に「学校恐怖症」や「登校拒否」の概念で説明されるようになりました。その流れを受け、日本でも1960年前後から学校を長期欠席する子どもたちについて、それらの概念や「学校嫌い」という概念(現在の「不登校」のくくり)で捉えられるようになりました。

当時、長期欠席する小学生は非常に少なかったため、登校出来ない理由が分からない子どもや家族にとっては、非常にストレスフルな状況に追い詰められていたようです。この時代も、登校刺激、すなわち何とか学校に行けるように手を打っていたようですが、心理的な圧力でもあり、次第に登校刺激を与えず、子どもの気持ちとペースを尊重しながら問題と向き合っていく流れとなったようです。

≪登校刺激って効くの?効かないの?≫

登校刺激については、学齢期でも、小学生と中学生で登校刺激の心理的な影響は異なる調査があります。

まず、小学生は、川島ら(2003)や山本(2015)によれば、登校刺激を与えることについて「低年齢であるほど強い登校刺激が有効にはたらく」と結論づけています。

他方、中学生は、川島ら(2003)では、登校刺激を与えることについて、「嫌悪となり有効にはたらかない」と指摘する一方、山本(2015)は、「不登校状態を吟味することによって中学生に対しても有効な支援方法である」と述べています。

私自身は、登校刺激についての統計的な分析を行ったことがありませんので、確かなことは申し上げられませんが、経験的には上記の調査結果の通りの印象を抱いています。さらに言えば、小学生と中学生という区分よりも、思春期以前と以後で登校刺激に対する子どもたちの心理的な影響が異なるのではないかと感じています。
中西(2017)は、年齢を重ねるにつれて、登校刺激は「有効性」が低下する一方、「危険性や侵襲性」が増大していくと述べています。

≪登校刺激についての個人的な意見≫

時代の社会的背景による影響があると思いますが、私の経験からは、登校刺激が、思春期以前の子には「登校へ導くもの」であり、思春期以後の子には「その子自身を脅かすもの」というイメージがあります。この背景には、思春期の「自我の芽生え」があるのではないかと考えています。すなわち、自分に対するイメージが強くなる中で、自然と自分自身や周囲に対して過敏に反応し、登校することへの受け止め方にも違いが生じているのではないかと思い巡らしています。

そして、「登校刺激は望ましくない」という意見もあり、現在も問われるテーマですが、登校刺激の是非を問うのではなく、以下のイメージが大切だと考えています。

■ 登校刺激を「する」か「しない」かの二極化な考え方を持たないこと
■ 「過ぎたるは猶及ばざるがごとし」のような濃淡なイメージで考えること
■ 登校刺激を行うタイミングや方法を掴むこと
■ 大人側の意図が子どもにしっかりと伝わっているかどうかだということ
■ 子どもの心身の状態やその時の気持ちがどのようなものなのかを理解すること

これらを大切にしつつ、以下の「学齢期の登校刺激のこころづもり」を踏まえて、「する側」の周囲の大人も、「される側」の子ども自身も、それぞれの立場で登校刺激について考えていくことが一案です(図-1、図-2)。

図-1 学齢期の登校刺激のこころづもり(大人側)

図-2 学齢期の登校刺激のこころづもり(子ども側)

もちろん、こればかりではなく、他にもあるはずです。そして、全て実行する必要もありません。どれか一つでも良いです。子ども一人ひとりで方法も工夫策も異なります。その場その場で、その時の子どもの気分と状態に合わせた方法を、子どもと確認し合っていくことが重要でしょう。
そして、大前提となりますが、学校に登校することではなく、子どもが将来に向けて色々なことにチャレンジしていき、子どもが行く末に、自分自身で前を向いて歩むようになることを、大人と子どもで共有していくことが大切でしょう。

ふと思うこと

ちょっと登校刺激のコラムから脱線しますが、このコラムを書いていて連想したことを綴ります。

1950年代前半、多数長期欠席者がいた頃の社会的背景には、「戦後の混乱期」がありました。貧困や衛生面の欠如等の問題とそれに対応出来るような社会制度が未整備だった時代だったのだろうと思います。

その後、先にも記載した1960年代前後にも長期欠席者が小学生に続出しましたが、「高度経済成長期」の最中でした。滝川(2005)が言うように、都市の近代化が進み、家庭生活が豊かで居心地が良く、保護者と離れることに不安(分離不安)を感じる小学生が増え、保護者への依存も強くなった状態です。これは、社会経済の成長と家庭の暮らしやすさに伴う、学校環境への不適応が生じた時期だったのでしょう。

1975年以降(高度経済成長期以降)は、家庭が裕福になり進学率が高くなり、「高学歴社会」となりました。努力や主体性というよりも、経済面と義務感で進学出来る時勢が、個々の登校意欲を削いだ時期だったのではないかと感じます。

1980年代以降は、不登校の要因にも、いじめ、暴力、体罰といった問題が増え、メディアに報道されて社会全体に問題が拡がっていったのだろうと思います。

何が言いたいのかと言うと、これまで社会の大きな変革期の度に、不登校の問題についても動きが見られるということです。

今まさに、これまでとは異なるような社会の流れが起こっています。現在も、そしてこれからも、不登校の人数増加や質的な変容がもたらされうるのではないかと懸念されます。そして、個々のライフスタイルや心理的な問題が、社会的問題として表れるのではないかと感じるところです。

もう一つ言えることは、不登校の問題に対しても、その都度向き合う人々が現れて、支援の輪が広がっていくという事実です。私たちとしては、これらの流れを認識すると共に、対応していく心構えをしておくことが大切だろうと考えています。

 

 

【まとめ】
● 登校刺激は、保護者や教職員を始め、どのような人であれ、子どもが登校するように、あらゆる言動を用いて働きかけを行うことを言います。
● 「登校刺激は望ましくない」という考え方もあるが、登校刺激の是非ではなく、登校刺激の程度、タイミングや方法、そしてその意味が子どもに伝わっているかどうかが大切である。
● 子どもの心身の状態やその時の気持ちがどのようなものなのかを理解し、学齢期の登校刺激のこころづもりを参照して、登校刺激について考えていくことが一案である。
● 子どもが将来に向けて色々なことにチャレンジしていき、子どもが行く末に、自分自身で前を向いて歩むようになることを大人と子どもで共有することが大切である。

以上、「登校刺激」についてでした。改めてになりますが、登校刺激を与えることがダメなのではなく、適切な与え「方」が重要です。

前回取り上げた、「不登校の子どもの心のエネルギー」で、不登校の子どもたちは、登校や学習について、登校する子どもよりも倍以上のエネルギーを要すると述べました。そういうエッセンスや今回のこころづもりを念頭に置いた上で、登校刺激を、子ども一人ひとりの心身の状態に応じて、選択肢を設けて提示していけると大人も子どもも安心感が増すのではないかと考えます。

次回は、「登校刺激」を行うにあたり、もう一つ子どもの心の状態として、念頭に置いておいて欲しいエッセンスである、「不安・恐怖対象の拡大」についてです。不登校は長期化すればするほど、問題が複雑化していきますが、その一因と思われることです。

また次回もご一読ください。

【引用・参考資料】

・中西 康介(2017) 家族と向きあう不登校臨床  誠信書房
・滝川一廣(2005) 臨床心理学 「不登校」 不登校理解の基礎 金剛出版
・山本 奬(2015)  不登校支援の効果に関する校種間比較 -不登校状態と支援方法の適用関係の再分析から- 岩手大学教育学部研究年報 第74巻 P.93 ~106
・川島 一夫・西澤佳代・片山洋一(2003) 教師のための不登校タイプ別10ステップ対応法 信州心理臨床紀要、2,1-10

 


 

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Writing byY.Y

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