COLUMNコラム

【学齢期の子どもの心理】「不登校」という現象について考えてみる⑨《不登校生徒の進路選択》

みなさん、こんにちは。所属カウンセラーの安澤です(※Y.Yから本名に変更しました)。

今回は、つれづれに書きます。

今年も残り1カ月ちょっととなりました。
紅葉が散るごとく、憂いの秋が幕を閉じようとしています。
やはりノスタルジーの漂う時期ですね。
それだけ、この時期は、様々な感情が入り交じり、揺れてしまいます。

学齢期の子どもたちについても、同じことが言えます。
学級や学年の終わり。そして、卒業。それらが近づきつつあることを意識します。
特に、小学校6年生や中学校3年生(※9年生とする場合有)でも、受験する子どもたちにとっては、進路選択の最終決定の時期にきています。

この1年も、コロナ禍で、数々の影響を受けてきたことでしょう。
コロナストレスに生活のストレス、それに加えて受験のストレスが振りかかる時期、体調も崩しやすくなると思います。
とにかく、困ったら、寝る、食べる、遊ぶ。その時間をちょっと自分に与えてあげてください。

本当に、みなさん、悔いのない進路選択となることを願って止みません。

登校する子でも、不登校の子でも、進学の希望がある限り、その可能性は最後まで抱いていて欲しいです。その際、中学校は義務教育ですので、私学受験をせずとも、問題なく進学は出来ます。しかし、高校進学となると何らかの試験があります。

この時、大体出てくるのが、「うちの子、高校行けるところあるのかしら?」という保護者からの言葉です。学習の苦手な子どもや不登校傾向の子どもがいる保護者のほとんどはそう思ったことがあるのではないでしょうか。

結論から申し上げると、「行けます」。行ける学校はあります。
もっと言えば、次のステージには必ず進めます。

そこで、今回のテーマは、「不登校の子どもの進路選択」です。
主には不登校の中学生の「進路選択」とその「取り組み方」について取り上げます。
なお、以後の「子ども」の表記は「生徒」に置き換えます。

もはやこのテーマは、心理コラムではありません(笑)
しかしですね…このテーマは奥深いんです。

 

 

不登校生徒の進路選択を考える

子どもにとって進路選択は、人生を左右する岐路です。

大人だってこれからの人生を左右する仕事や恋愛、結婚などの大きな岐路に立たされた時、良し悪し問わず、色々なことを思い巡らし、心のエネルギーを相当量使用しています。
そのことを想像すれば簡単かもしれませんが、子どもにとって進路選択は、計り知れない心理的な葛藤を招きます。

特に不登校生徒の多くは、既にこの先、「前に進めるのか、進めないのか」という進路選択以前の、進学先が「あるのか、ないのか」で思い悩んでいる子たちなのです。

成功か失敗か。
希望か絶望か。
成長か停滞か。
達成か挫折か。
自信か自己不信か。

つまり、将来を見通した時に、まさに「光か暗闇か」の分岐点なのです。
心のありようが、大きく大きく変わりうる、人生を左右すると言っても過言ではありません。

ちなみに、進路選択は、「進路指導」の領域と言ったらそうでしょう。
しかし、「進路指導」は中学校に登校している生徒が受験するような公立や私立の全日制についての指導がほとんどであることも実情です。

私も14年間、教育現場、中学校の不登校生徒と携わってきました。

勉強が得意な子、何か一つでも秀でている子、将来の目標が明確で努力出来る子、活動的な子などは、自らの力で打開する能力があるでしょう。

しかし、不登校の生徒たちは、もうこの時期のカウンセリングでは、「進路どうしよう」の気持ちでいっぱいな子も多く、どうしたらいいかただただ悩んでいます。

私もカウンセラーとして、最初はどうしようと暗中模索でした。しかし、導き出した結論は、何でも良いから、この子たちに、「成功の体験を」「自信に繋がる体験を」「将来、後悔しない体験を」ということでした。

とにかく、今目の前にいる、困っている生徒にとって、少しでもメリットが得られるような時間にしようということだけでした。

そして、辿り着いたのが、「進路支援」でした。造語です(笑)
「進路指導」という言葉が使えないからです(笑)

とある校長からは、「Yさん、塾開けるな」とも言っていただきました。それだけ、不登校生徒の進路支援について、携わってきたと思いますし、必要なサポートだと感じています。
つまりは、この時期、カウンセリングでの話題にも「進路」の話題が多く、子どもたちにとっては切実な問題なのです。

結局、不登校の生徒なので、クラスの担任と会うよりも、カウンセラーの方が多く会う生徒も多数います。その時に、カウンセラーがある程度、不登校の生徒の進路の道筋について知識や選択肢を持っていないと、担任らも現実的に時間が無い中で、子どもたちが苦労してしまうことは想像に難くありませんでした。

次第に、カウンセリングよりも、進路支援が得意となってしまいましたが(笑)
でも、これが生徒に限らず、親子や教職員からも、いつも喜ばれることであり、ある種、私のオプション機能になっています。

不登校生徒の進学について

やや古いデータになりますが、そもそも文科省によると、平成23年度の調査では、不登校生徒の高校進学率が85,1%、そのうち、一度は進学しても中途退学してしまう人が14,0%でした。平成13年度の調査では高校進学率が65,3%、中途退学者が37,9%であったことを踏まえると、10年間で高校進学率は増加し、中途退学は半分以下になりました。

この背景には、通信制高校、サポート校といった進学先の多様化、不登校生徒や中途退学者への進学出来るような支援が充実化してきた経過があると思います。その中で、柔軟な試験対策のあり方も豊富になっていたのではないかと考えます。

教える方々によっても、様々な方法があることも確かですが、私の考え方は「子ども視点」以外の何物でもありません。いかに生徒が「頑張ってみようかな」「やってみようかな」「これなら出来るかも…」と思えるように働きかけるための、最低限の伝え方です。たくさんの情報はキャパオーバーしてしまい、やる気が失せてしまいます。

その子が可能な、合格するための、「ちょっぴりのやる気」、「ちょっぴりの思考」、「ちょっぴりの行動」、「ちょっぴりの作業」。これだけを大切にしています。

具体的な手立てとしては、様々ですが、主に『進学先の決め方』『実際の進学先の選択肢』『実際の準備・心構え』は挙げられます。

【進学先の決め方】

まずは、不登校生徒の進路に関する意識や意向がどういうものなのか大人と子どもで共有する必要があります。

登校している生徒の場合には、学校見学や説明会への参加もスムーズです。問題なく外出出来ますから。

しかし、不登校の生徒は、行動範囲は様々ですが、まず外に出ることへのためらいがあります。そして、高校の情報もなく、高校のホームページやリーフレットの参照を勧められても、ゲームや動画の方に時間を削ぐことが多いかと思います。そして、将来の自分について考えることも不安であるため、「~になりたい」とか「~に興味がある」というところまで至りにくいのです。

従って、「どこの高校がいいか」とか「~になるために〇〇高校がいい」とかを浮かべることにも、時間を要したり、最後まで思いつかなかったりすることがあります。

将来の目標や見通しを立てている不登校生徒ももちろんいますが、それが難しい生徒に対しては、以下の点を考慮しつつ、具体的なところから一緒にイメージをしていきます。

●あいまいな目標や方向性では分からないままである。
情報がない生徒や自信のない生徒に、イメージしづらい先々の質問をしても、答えが見つかりにくいです。

●具体的で、今この瞬間に感じている希望を共に探す。
この希望は、この先どういう形であれ、いつでも変更して構いません。そして、希望の内容についても、「ずっとゲームしたい」、「何もしたくない」、「家にずっといたい」、「勉強したくない」などの希望でも構いません。まず、今抱いている気持ちを言葉にして、明確にすることが大切です。

●現実的な条件を聞いていく。
例えば、交通機関の乗り換え回数や通学時間の限度、部活内容、人混みの多少、共学の是非、受験科目、授業時間の希望、バイトの可否などの「条件」を確認していくと、生徒自身が話していくうちに、「あ、自分って~なんだ」と気づいていくことがあります。このプロセスを辿ると、必然と絞れてきます。

【実際の進学先の選択肢】

全国的に様々なパターンが考えられ、全てを挙げることが出来ませんが、想定される選択肢を以下に図示します(図―1)。

図-1 主な進路のかたち

<全日制>
ほとんどの小中学校の生活と同様に、朝から登校し、クラスで一斉授業を実施するパターンが多いです。中には単位制を設けている学校もあります。
なお、都立には「エンカレッジスクール」という高校があります。エンカレッジスクールは、学習に自信が無い生徒や不登校生徒が進学する場合もあります。学力考査ではなく、各高校の特徴に合わせた実技検査が設けられています。また、入学後には習熟度別の授業などが盛り込まれており、基礎学力を改めて身に付けたい生徒には適しています。

<定時制>
もともとは夜間のイメージがあると思いますが、現在では昼夜間定時制も多く、1部、2部、3部のように時間で割り振られています。都立のチャレンジスクールは昼夜間定時制単位制の総合学科です。詳細は東京都教育委員会等のホームページに譲ります。

★チャレンジスクールの特色:これまで設置してきた多様なタイプの学校|東京都教育委員会ホームページ (tokyo.lg.jp)

★現在設置済および設置予定のチャレンジスクール校(2021年11月末現在):都立高校等検索|東京都教育委員会 (tokyo.lg.jp)

※フリーワード検索で「チャレンジスクール」とご入力いただくと絞ってご覧いただけます。

 

<通信制>
毎日登校する必要が無く、自宅学習やレポート提出、時々登校してスクーリングを受けるという形式です。最近では、私立通信制高校においては、週1日、3日、5日コース等のバリエーションもあり、通信制も多様化しています。サポート校との連携も図られています。

<サポート校>
実質的には、高校ではありません。民間企業等が運営する、「学習塾」や「予備校」のような教育をサポートする場です。通信制高校との連携によって、高校生活を充実にするよう工夫されています。

【実際の準備・心構え】

基本的に、都立チャレンジスクールや通信制高校では、面接や作文が主な試験内容となるでしょう。
まずは、学校見学を通じて、学校の特徴を知ることです。最初はなかなか浸透しませんが、繰り返していくうちに、高校の特徴等は徐々に覚えていきます。

作文対策としては、私がお願いしているのは、主に二つだけです。まずは、科目試験の有無に関わらず、必ず力量を問われるのは、「国語」です。具体的に言えば、「漢字」です。願書や自己PR書、そして作文などでも必ず必要になります。これは、不登校になった瞬間(1~3年間)から、少しでも取り組んで欲しいと考えています。どんな取り組み方でも構いません。例えば、好きなゲームや動画に出てくる漢字から始めてOKです。

もう一つは、「短文」です。漢字の読み書きとは別に、実際に文章慣れすることが大切です。いきなり用紙1枚といった文字数は厳しいですが、例えば「1日の出来事」として、「〇〇をした」こと、「具体的に〇〇をした」こと、「どう思ったか」ということを3行からでも良いので書くということを勧めています。

面接は、正直、受験直前で良いかと思います。それよりも、何度も高校での自分をイメージしておくことで、結果的に本番で言えるようになっていると思います。
なお、自己PRでの長所探しが、不登校生徒は非常に不得意のようです。その意味では、長所と短所(課題)の部分を、ネット上のものでも良いので、性格テスト等を用いながら、見つけていくことが有用でしょう。

いかがでしたでしょうか。

「当たり前じゃない?」
「普通のことじゃない?」
「これくらいは出来るでしょう」

などと、思った方もいらっしゃるかもしれません。

その発想も決して間違いではありません。

しかし、全てにおいて、やる気が無かったり、将来を悲観していたり、見通しを持てなかったり、家にいるが故に何をしていいかさっぱり分からなかったりする生徒にとっては、上記のことを考えるだけでも、辛くて向き合いたくない、向き合えない、怖いと思うことがあります。

「当然」のことと思っている方々は、私の第1回のコラムをご覧いただきたいのですが、不登校の子は、心の状態が「逆三角形」です。つまり、「逆三角形」の3段階の上部にアプローチすることが「当然」と考えていることを意味します。その時点で、大人と子どもの心の状態に対する考え方の「ズレ」が生じており、上手く進めていくことが出来ません。

逆三角形の子たちに必要なのは、「安心」です。安心を得るためには、その子たちに出来ることを確認しながら、極力行う作業を減らして、「やってみる」気持ちと、「やってみた」という達成感、そして、「これでいいんだ」という自信を抱いてもらうことが大切です。

【まとめ】

●子どもにとっての進路選択は人生を左右する岐路であるが、不登校生徒の多くは、進路選択以前の、進学先が「あるのか、ないのか」で思い悩んでいる子たちである。関わりの中で「成功の体験を」「自信に繋がる体験を」「将来、後悔しない体験を」してもらうことが大切である。
●不登校生徒の進学率は徐々に高まってきているが、「子ども視点」で支援を行い、彼らがちょっぴりでも「やってみようかな」と思えるように働きかけていくことが重要である。具体的な支援の手立てとしては、『進学先の決め方』、『実際の進学先の選択肢』、『実際の準備・心構え』が挙げられる。それらの内容を踏まえて対応することが重要である。
●不登校生徒は、第1回コラムで触れた、「逆三角形」の心の状態にある。彼らに必要なのは「安心」である。安心を得るためには、「やってみる」気持ちと、「やってみた」という達成感、そして、「これでいいんだ」という自信を抱いてもらうことが大切である。

とにかく、どんな形であれ、子どもたちが、「これいいな」と思えることを一つ見出していく作業、そして、「今、自分頑張っているな」と思える時間を共有していくこと、その先に、成功体験が待っています。

過去の自分を振り返り、現在から未来への自分が少しでもイメージ出来れば、子どもも周りも大成功です。結果的に受験に向き合っていることでしょう。

そのお手伝いによって、将来、子どもが、「あの時、~があったから、今の自分がいる」と思えれば、この上ないことです。地道なプロセスが可能性を生み出していくという体験が重要です。

以上、「進路支援」についての概要から、「もう少し詳細が知りたい」、「どのように組み立てていけば良いかを知りたい」と思った場合には、ぜひご相談ください。より具体的なことをお伝え出来ると思います。

次回は、漸く不登校コラムの最終回となります。正直、まだまだ多角的に伝えられることはありますが、一先ず区切りたいと思います。具体的なテーマは無く、「まとめ」です(笑)。
宜しかったら、ご一読ください!!


★追記★

不登校のコラムは、『不登校という現象について考えてみる』というテーマでシリーズ化(①~⑩)しました。それぞれサブタイトルの内容を主に取り上げております。ご一読しやすいよう、いずれの不登校コラムにもURLを追記致しましたので、良かったらご覧下さいm(__)m

<『不登校』についてのコラム URL>
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる① 《不登校とは?/不登校の考え方》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる② 《子どもが求める居場所/不登校への向き合い方①》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる③ 《不登校への向き合い方②》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる④ 《不登校への向き合い方③》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる⑤ 《子どもが成長する段階的な歩み》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる⑥  《不登校の子どもたちの心のエネルギー/2学期の心構え》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる⑦ 《登校刺激》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる⑧ 《子どもが抱く不安・不安対象の移行プロセス》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる⑨ 《不登校生徒の進路選択》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる⑩ 《不登校についてふと思うこと/2冊の本》


 

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Writing byY.Y

 

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