COLUMNコラム

【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる④《不登校への向き合い方③》

みなさん、こんにちは。所属カウンセラーの安澤です(※Y.Yから本名に変更しました)。
もうすぐ雨の多いジメジメした時期の6月が終わろうとしています。5月のGW明け以降、1カ月以上も祝日が無い中、地道に1日1日を過ごしてきた方々が多いと思います。

本当におつかれさまです。

「間もなく7月」と想像すると、何となくですが、ちょっとしたトンネルの出口のような、日差しを浴びるような感覚を得るのは私だけでしょうか。「あとちょっとで夏休み♪」「お盆休みはどうしよう~♪」と考えると、下向きな気持ちが少し上向きな気持ちになりませんか?
相変わらずコロナ不安やコロナストレスはあります。本来ならばテンションの上がる話であろうオリンピックの開催による人の流れも心配です。ただ、7月がどのような社会情勢になるのか分かりませんが、大人も子どもも、オリンピックによる連休や夏休み、お盆休みはありますから、心身の疲れが取れるような有意義な日々になることを切に願っています。

さて、『「不登校」という現象について考えてみる』の第4弾になりますが、今回でひとまず「不登校への向き合い方」についてのテーマは終わります。最後は、学校の中にいる存在である「クラスメイト」と「教職員」の立場で、どのように不登校に向き合あっていけば良いのか考えてみます。

色々な立場での『不登校』への向き合い方

●クラスメイト

クラスメイトとして、周りに学校を休みがち、あるいは登校していない子がいた場合、心の中で「どうしたんだろう」と気に掛けることもあるでしょう。とはいえ、詳しいことは分からないまま、また登校することを待っている日々が続きます。不登校(傾向)の子とトラブルがあった場合には、最初はわだかまりや気まずさもあり、素知らぬ振りを続けることもあるのではないかと思います。しかし、登校しない日々が続くと、段々と気にしてきますし、時には「自分のせいかな」と考え込んだりすることもあるでしょう。こればかりは子どもの気持ちも様々であり、ここで全てを挙げることは出来ませんが、確実に言えるのは、絶対に名前や存在を忘れていないということです。

それでは、どのように向き合っていこうとすれば良いのでしょうか。

クラスメイトは、宮田(2017)も言うように、「かかわり続ける」ことが大切です。時々登校する子に対しては、何か気になることがあれば、「どうしたの?気になることがあれば言ってね」「お手伝い出来ることがあればやるからね」といった声掛けでも良いし、日々の雑談や趣味の話を持ち出し、会話を重ねるだけでも大きな意義を持ちます。また、あまり話し掛けてほしくない、話し掛けにくい雰囲気ならば、「何かあればいつでも話を聴くからね」「ゆっくり休んでね」だけでも良いので、ぜひ周りにいた場合には「つながり」を意識してもらえたらと思います。

休みがちな子にとっての大きな不安は「ブランク」です。クラスメイトとの会話にブランクが出来ることで、朝の時間、休み時間、そして下校の時間をどのように過ごせば良いのかが悩みの種になります。上述した声掛け以外には、「おはよう」「ばいばい」「頑張ろう」「今日は~~があるね」「前に言っていた~はどうなった?」といった、ブランクを取っ払えるような会話をちょっとだけしたり、そっとしておいたりすることが、安心に繋がることでしょう。

登校していない子が、どこであれ「今は話したくない」「会いたい気分ではない」と言っている場合や全く無反応の場合には、そっとしておく向き合い方が互いにとって負担にならないと思います。誰しもが「今は一人になりたい」と思うことがあるでしょう。その気持ちを尊重されると、ホッとしませんか?その気持ちと同じように、自分の時間を持つことは心の整理に大切なことです。

また、【きょうだいの向き合い方】で述べたように、登校していない子だけではなく、きょうだいにもあまり負担を掛けないことが大切になります。本人であれ、きょうだいであれ、あまり突っ込んだことは質問せず、必要な時にだけ声掛けをしたり、ただ話を聴いたりする存在であるだけで、大人よりも重要な存在として役割を果たしています。

●教職員

教職員の方々の中にも「何とかしないと!」や「何とかしてあげたい!」と思われる方がいらっしゃるかと思います。時には、段々と子どもとの距離を感じ、焦った対応を取ってしまうこともあるのではないでしょうか。
他方、担任は学級運営をしなければなりません。他の子どもたちへの指導もあり、時間の制約もありますから、常に頭では学校に来られていない子のことを考えてはいるものの、対応が行き届かないということが現状であり、もどかしい気持ちや申し訳ない気持ちで一杯ではないかと思います。

それでは、どのように向き合っていこうとすれば良いのでしょうか。

子ども本人や保護者とよく話し合い、「この子が今出来ることは何なのか」の視点を大前提に、「今大人がその子に出来ることは何なのか」について周囲で意見を共有していくことが重要です。
子ども本人に対しては、くれぐれも「勉強が遅れてしまう」「登校日数が減ってしまう」という視点を強調せず、「体調は大丈夫かな」「生活リズムを整えるところから始めよう」「何か理由があるなら一緒に考えたい」という生活面や感情に焦点を充て、子ども本人と共に悩んでいくことが大切です。このスタンスについては、私の心理コラム①をご参照ください。

子ども本人となかなか会えない場合、連絡の取れない場合の大事なことは、「保護者と繋がり続けること」です。保護者も、我が子が不登校になった時には「なぜ」と混乱して訳が分からずに途方に暮れてしまいます。子ども本人とは会えないかもしれませんが、保護者に襲い掛かる衝撃、混乱、苦悩、そして不安といった様々な感情や感覚を一緒に共有していくことが重要となります。

担任だけでどうしてもカバー出来ない時には、学年主任や特別支援コーディネーター、養護教諭、部活顧問、スクールカウンセラーといったチームで役割を分担しながら、親子に真摯に向き合っていく必要があります。そして、管理職も含めて、学校として具体的に出来ることと出来ないことをしっかりと親子に伝えていくことが大切です。教職員が行う具体的な向き合い方としては、以下の内容を段階的に留意することが重要です。

① 子どもの気持ちやペースを尊重し、子ども本人と学校との繋がり方を考えること(放課後、担任の空き時間、保健室や相談室等の個室、家庭訪問、電話、手紙等)。
② ①が困難な場合には無理強いせず、専門機関や居場所(例:教育相談、適応指導教室、スクールソーシャルワーカー(以下、SSW)、児童館、民生児童委員、子ども食堂、その他繋がれている大人)との繋がりを優先させること。
③ 子どもと接触が困難であり、保護者とやり取りを続けていく場合には、保護者にとって毎朝の学校への連絡が最も負担となるので、「登校する時に連絡する」や「詳細は週に1回のみのやりとり」といった工夫を考慮していくこと。

 

●最後に

人は、精神的な余裕が無くなると、視野が狭くなりがちになります。すると、見通しを持った、前向きな視点が消えかけてしまいます。
『不登校』という問題の出口が何なのかと問われれば、定義上『登校すること』でしょう。しかし、子どもたちの『不登校』の背景には様々なものがあり、それは登校したところで完全に解決する問題ではありません。むしろ『不登校』というトンネルの出口は、子どもたちが何かをきっかけにして「これしたいな」「やってみよう」「~になりたい」という気持ちを持って行動すること。そうだとするならば、子どもの周囲にいる人たち(図―1)が、その視点や環境づくりの選択肢やきっかけを、子ども自身のペースに合わせて、子どもに与えていくことが、子どもにとっての一番のサポートとなります。

図-1 子どもの周囲にいる人たち

【まとめ】
<クラスメイト>
○不登校の子とは「かかわり続ける」ことが大切である。
○学校に時々来ている子には、適度な声掛け、日々の雑談や趣味の話で良いので、会話を重ねるだけでも大きな意義がある。
○ほぼ登校していない子には、「今は会いたくない」という気持ちを尊重し、そっとしておくことも大切である。
○きょうだいに対して、余り不登校の子の件については突っ込むことはせず、必要な時に気に掛ける程度で良い。

<教職員>
○子どもたちや保護者とよく話し合い、「この子が今出来ることは何なのか」の視点を大前提に、「今大人が出来ることは何なのか」について周囲で意見を共有していくことが重要である。
○子ども本人には、「登校」や「学習」の視点よりも、「生活」や「感情」を焦点に充てて話していく。
○子ども本人となかなか会えない場合には、「保護者と繋がり続けること」が大切である。
○担任の他、様々な学校の教職員がチームとして役割分担を行い、真摯に親子に向き合っていく。その際、具体的で段階的な向き合い方について3点取り上げた。

<最後に>
○『不登校』というトンネルの出口は、子どもたちが何かをきっかけにして「これしたいな」「やってみよう」「~になりたい」という気持ちを持って行動することである。周囲はそれぞれの立場で、子どもが行動するためのきっかけを作ることが役割である。

まだまだ専門職や専門機関の向き合い方について触れていませんが、この記事では、あくまで日々関わる立場の人たちの向き合い方を中心に取り上げました。何かを考えたり行動に移したりするきっかけの一つとなれば幸いです。次回は、不登校の向き合っている周囲の人たちの支えと子ども本人の成長についての段階的な歩みについて触れてみます。

【引用資料】
宮田 雄吾 2017 14歳からの精神医学 心の病気ってなんだろう 日本評論社


★追記★

不登校のコラムは、『不登校という現象について考えてみる』というテーマでシリーズ化(①~⑩)しました。それぞれサブタイトルの内容を主に取り上げております。ご一読しやすいよう、いずれの不登校コラムにもURLを追記致しましたので、良かったらご覧下さいm(__)m

<『不登校』についてのコラム URL>
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる① 《不登校とは?/不登校の考え方》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる② 《子どもが求める居場所/不登校への向き合い方①》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる③ 《不登校への向き合い方②》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる④ 《不登校への向き合い方③》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる⑤ 《子どもが成長する段階的な歩み》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる⑥  《不登校の子どもたちの心のエネルギー/2学期の心構え》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる⑦ 《登校刺激》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる⑧ 《子どもが抱く不安・不安対象の移行プロセス》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる⑨ 《不登校生徒の進路選択》
【学齢期の子どもの心理】『不登校』という現象について考えてみる⑩ 《不登校についてふと思うこと/2冊の本》


 

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Writing byY.Y

 

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