COLUMNコラム

【新連載:学齢期の子どもの心理】子どもの心を三角形で考えてみる

《はじめに》
はじめまして。所属カウンセラーの安澤と申します(※Y.Yから実名に変更・公開しました)。
私は小中学校のスクールカウンセラーや児童福祉機関のケースワーカー、そして医療機関の心理技術者(職種名がこれでした)などの立場で10年以上子どもと関わってきました。

私の信条は「相手から学ぶ」です。

これまで出会ってきた数多くの子どもたちや保護者の方々、そして支援者と話し合う中で、彼らが抱いた感情や感覚から、多くのことを学ばせていただきました。
これらの実践から得られた学びと既存の様々な理論や技術を紡ぎ合わせながら、「学齢期の子どもの心理」について、具体的で実用的な考え方や心づもりを、徒然なるままにお伝えしていけたらと思っています。
どうぞ宜しくお願いいたします。

学齢期では、子どもは学習や進路の問題、親子関係、友人関係など様々な諸問題を通じて成長・発達していきます。
その中には、健康で活発に生活している子もいれば、何かしらの出来事でストレスを抱える子もいます。

ストレスをため続けていくと、不登校やいじめ、非行といった問題行動に発展する場合もありますし、親子関係においては虐待という問題にもなりえます。
問題が大きくなるにつれて、子どもの心も、根深く、そして複雑に思い悩み、時にはどうして良いか、子どもも大人もわからなくなります。

このような時に、何かイメージ出来るものがあると少しだけ楽になりませんか?

「今こんな感じだなあ」とか「こういう気持ちになるんですね」とか「なんとなくわかります」など、子どもも大人も、そのイメージを抱きながら問題に向き合うだけで、「なるほど!」というアハ体験(ひらめきの体験)となり、少しすっきりします。
そして、一歩立ち止まって考える機会をもたらし、問題が深刻化、複雑化することの予防にも繋がります。
そのような、ちょっとしたひらめきやエッセンスとして気楽に使ってもらえたら嬉しいです。

さて、第1回は、「子どもの心を三角形で考えてみる」です。
ピラミッド型(三角形)で表す理論には様々ありますが、アメリカの心理学者マズローが提唱した5段階欲求説は有名な理論です。
弊社のHPにも掲載していますので(こちら)、是非ご覧ください。

この理論は、下位欲求からしっかりと満たされていくことで、上位欲求の成立にも繋がっていく考え方です。
ここでは、もっとシンプルに、そしてもっと子どもに沿った三角形のイメージです。
これまで関わってきた子どもたちとの関わりの中で作られた、とっても簡単なイメージです。

《子どもの心の三角形》
★子どもの健康な心の状態を三角形として描いてみましょう!★
三角形の中に2本の線を入れます。
そして、3つに分けられた部分に、下から「生活習慣」「遊び」「勉強・登校」と書きます。非常にシンプルです。

「勉強・登校」とは、「授業」「宿題」など子どもに課されている全てを含みます。
「遊び」とは、「趣味」や「友人関係」「わいわい遊ぶこと」です。
「生活習慣」とは、簡単に言えば「食べること」と「寝ること」「ルーティン」です。

土台となる「生活習慣」や「遊び」といった部分の面積が適度にあれば、生活リズムがバランス良く保たれ、子どもの心の状態である三角形は、何の支えもなく、どっしりと安定して構えることが出来ます。
つまり、三角形として成立します。
この時、誰しもが「勉強・登校」に働きかけて面積を増やしても、ある程度ならば問題ありません。
子どもなら「遊んだら勉強するか」「よく寝たし学校行こう」となります。
親なら「勉強しなさい!」「早く行かないと遅れるわよ!」と言いますし、それに子どもは面倒ながらも応じることが出来ます。
このイメージに近い三角形ならば、それなりに生活は上手くいくことでしょう。

しかし、この心の三角形がしっかりと作られていない子どもたちはどうなるでしょうか?

ストレスが振りかかっている時、何かに思い悩んでいる時、病気の時などでは、健康な心の状態ではありません。

健康な心の三角形は、心の逆三角形と化します。

《子どもの心の逆三角形》

この逆三角形の時に、三角形の時の受け止め方や働きかけを続けてしまうと、子どもの心の問題がさらに困難な様相を呈していきます。
逆三角形では、当然「生活習慣」と「遊び」の面積が少なく、「勉強・登校」が面積の大半を占めています。
「勉強・登校」など、子どもに振りかかっている様々な課題があるため、遊ぶこともままならず、眠れなかったり、食欲が落ちたり、普段何気なくしていることに頭が回らなかったりしてきます。

子どもは、「何でもない」「わかんない」「別に…」と話を逸らしたり、黙り込んだり、「うるせえな!」と苛立ちを隠せなかったりします。
大人は、子どもの様子が違うと気づきながらも、どうして良いかわからないまま、健康な心の状態(三角形)のままの解釈で、子どもたちに関わり続けます。

すると、どうなるでしょうか?

「勉強・登校」へのアプローチを悪気なく続けてしまいます。
大人としては、いつものようにやるだけですから、上手くいかなければ、いつものことをするように何度も働きかけます。

「いい加減にしなさい!」
「何回言えば分かるの!」
「何もしてないで遊んでばかりいて!」

このままだと三角形はどうなるでしょうか?

逆三角形がどんどん膨らんでいくだけです。
これは、子どもにも大人にも、決して上手くいくアプローチではありません。
なぜなら、逆三角形の上部に注目し続けると、振り子のように、カンカンと揺さぶられ、それがなくなればパタッと倒れるだけだからです。

ここで必要なことは、逆三角形を大きくすることではありません。
逆三角形を可能な限り三角形へ、それが難しくても、ひし形や台形にしていくことです。
つまり、三角形の上部よりも下部の面積を大きくしていくこと(「遊び」や「生活習慣」へのアプローチ)です。

この気づきを持たないと、子どもも大人も辛い方向に進んでしまいます。

「遊び」ならば、
「少し好きなことしてリラックスしたら?」
「友達とおしゃべりしてきたら?」
などなど・・・

「生活習慣」ならば、
「今日は好きな○○作ったよ」
「寝不足なんだからゆっくり寝なさい」
などなど・・・

といった「遊び」「生活習慣」の面積が増える
ような声掛けになります。

「勉強・登校」については
「ここまでやったんだから今日は充分じゃない?」
「よく頑張ってるね」
「無理しなくていいよ」
などなど・・・

「勉強・登校」の面積が増えないような言葉を言います。

この心の逆三角形から三角形への地道な移行プロセスは、不健康な心の状態を、徐々に健康的な心の状態へと変容させていくことを意味します。
子どもの心が逆三角形の時には、三角形の時とは異なり、「生活習慣」や「遊び」に働きかけることが大切です。
土台のない逆三角形を両側から支えてあげることによって、逆三角形でも構え立つことが出来ます。

【子どもの心の状態の移行】

【まとめ】
●子どもが元気な時には「心の三角形」をイメージする。
●子どもが元気のない時には、「心の逆三角形」をイメージする。
●子どもの心の状態が「逆三角形」と思った時には、「勉強・登校」ではなく「生活習慣」や「遊び」に着目する。
逆三角形が倒れないように支え、三角形に戻していくにはどうしたら良いか考えるイメージを持つ。

このように、心の逆三角形を少しずつ三角形に移行させていくことは、とても時間の要することではありますが、「子どもの様子がおかしいな?」「何かあったのかな?」と思った時には、上述のエッセンスを留めていただき、一度立ち止まって、次に何をしたら良いかを考えてみてください!

「心の三角形」の考え方については、子どもがどんな状況下に置かれていても、大前提として心理状態を把握する時に有意義です。
子ども自身の問題、親子関係の問題、学校生活上の課題など、何か気になることがあれば、ご相談ください。

 


 

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Writing byY.Y

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