COLUMNコラム

【メンタルヘルス】コロナ不安や困難に、“ニーバーの祈り” で打ち勝つ

こんにちは!精神科医のT.Sです(実名非公開)。

このコラムでは、

僕が精神科医として患者さんと接する中で手に入れ、磨き上げてきた様々な武器
つまりは「幸せになるコツ」

を紹介しています。
読んでいただいた皆さんにとって少しでもタメになる記事をお届け出来るように、僕自身も勉強を深めながら楽しんで更新していきます!
どうぞよろしくお願いします!

さて、今回の記事では、前回に引き続き、「コロナ不安と戦うためのヒント」をもう1つお伝えします。
これも僕が多くの患者さんに繰り返し伝えていることであり、前回同様、コロナストレスケアに限らずメンタルヘルスケア全般で重要になってくるテクニックですので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

ニーバーの祈り

皆さんは、“ニーバーの祈り” をご存知でしょうか。
アメリカの神学者、ラインホルド・ニーバーが作者とされる、とある祈りの言葉を指します。

僕はこの祈りを初めて目にした時、「こんなところに隠れていたのね…最強のメンタルヘルスケア…!」と嬉し泣きしながらノートに書き写し、即パクろうと決めました。笑

ここでは、祈りの出自や歴史などには触れずに、その内容のみ、重要な一部を抜粋して紹介いたします。


ニーバーの祈り(一部抜粋)

God, give us grace to accept with serenity the things that cannot be changed,
Courage to change the things which should be changed,
and the Wisdom to distinguish the one from the other.

<日本語訳>

神よ

“変えることができないもの” に対しては
それをそのまま受け入れるだけの平静さを

“変えることができるもの” に対しては
それを変えるだけの勇気を

そして
“変えることができるもの” と “変えることができないもの” とを
見定める知恵を

どうか我らに与えたまえ


 

…その気持ち、わかります…流石に名言過ぎて、痺れますよね…

さて、これだけでも十分わかりやすいといえば分かりやすいのですが、この中でも特に僕が伝えたいポイントを抽出するために、びっくりするくらいシンプルにまとめてみました。それが以下です。

「悩まなくてもいいことで悩まないでください!」

…ええ、こんな感じです。

ストレスや悩み事に直面したときの対処法

とはいえこのままだと、乱暴すぎてニーバーさんに怒られてしまいそうです。

というわけで、実際にストレスや悩み事などの問題に直面してしまったとき、このニーバーの祈りをどう活かすことができるのか。
まずはこの祈りを並び替えて、そのプロセスをより分かりやすくしてみます。


ストレスや悩み事に直面したときの対処法

1. Distinguish:課題を分離する
まずは、「自分の問題なのか」「自分以外の問題なのか」を冷静に見極めること。
そして自分の問題であれば、それを更に
変えることができるもの” と “変えることができないもの” に分けてみよう。
自分にできることもあるし、自分にはどうにもできないことだってある。
まずは、大きすぎる(あるいは自分で大きくしてしまっている)問題を、細分化してみること。

2. Accept:受容する
“変えることができないもの” は、潔くそのまま受け入れよう。
自分にはどうにもできないことに時間と労力を費やすのは、損だし疲れるだけ。

3. Change:行動を起こして変えていく
“変えることができるもの”は、勇気を出して変えてみよう。
最初の課題の分離がきちんとできていれば、できることは自然と見つかるはず。


少し理解しやすくなったでしょうか。
今度は更にイメージしやすくするため、身近なお悩み例をいくつかあげたうえで、この対処法を実践してみます。

  例1:「明日のコロナの感染者数が◯人を超えたらどうしよう…」
僕たち個人が感染者数を心配したところで、明日急に0になることはありえません。(出来る人がいたら今すぐお願いします…)
感染者数そのものは、事実として受け止めるしかないでしょう。
しかし、手洗いやうがい、マスク着用や外出自粛を心がけることはできます。そしてそれは、自分がコロナにかからないことだけでなく感染拡大防止にもなり、結果として感染者数が減ることに繋がります。

  例2:「明日の天気は雨になりそうだ…どうしよう…」
朝から晩まで悩んでいても、明日の天気を人間の力で変えることはできません。
しかし、雨だと分かっているなら傘の準備ができるし、いっそ雨でも楽しめる方法を探すのはどうでしょう。
たとえば雨の音を聞きながら読書をする、なんてのも素敵ですよね。

  例3:「医師国家試験に落ちていたらどうしよう…」
残念ですが、試験はもう終わってしまいました。今更どう足掻いても、すでに結果は決まっています。
今のあなたにできるのは、この「人生最後の夏休み」とも呼ばれる束の間の休日を、限りなく実りあるものにすることです。
友達や恋人と話すも良し、趣味の時間に充てるも良し。あるいは不合格の自信が満々なら、来年を見据えて今から勉強するという手もありますね…僕はそれでも勉強できませんでしたが笑
(※ちなみに、来たる3月16日は医師国家試験の合格発表日です!皆さん受かってますように!)

何が問題かが分からない、という問題

道を歩いていて障害物を見つけたとき、小さな石なら蹴飛ばしたり移動させてしまえば、そのまま進むことができます。

でも、目の前に山が現れたとき、「先に進むためにはこの山を動かすしかない…」と悩む人がいるでしょうか。
「それならもっと歩きやすい他の道で行けばいいじゃん」と、誰だって思うはず。

しかし我々人間は弱い生き物なので、追い詰められると、こんな奇妙なことでも大真面目にしてしまうのです。

小さな問題なら1つ1つ片付けられても、それがどんどん積み重なったり、時間に追われたり、行動を制限されて心に余裕が無くなってくると、これまでひょいっと飛び越えられていたものでも簡単に躓くようになる。
ついには自分のキャパシティを超え、どこから手を付ければ良いのか分からなくなり、困難に圧倒されてしまう。

そして気づいたときには、訳も分からず、動くはずのない山を動かそうと死物狂いで押しているのです。

さて、今我々が戦っているコロナには、以下のような特徴があります。

◯人類が初めて直面する事態であり、確かな情報が得にくい
◯終りが見えず、問題の全体像も把握しにくい
◯実体が見えにくいことで、実際よりも大きく、より困難な問題に見えてしまう
◯何をどうすればいいのか分からない、という漠然とした不安に陥りやすい

そして、このような性質を内包する問題は、コロナに限らずこれからの人生で必ず遭遇することがあるでしょう。

僕たちはこれらに直面した時、漠然とした不安・恐怖を必要以上に強く感じてしまい、思考を奪われます。
分かりやすく言うと、「なんだかわからないけどヤバい。でもどうすればいいのかわからないし、どうしようもないんだろうな」という思考に陥ってしまいます。まさに問題が「山」のように見えている状態です。

問題は、分析→小さく分解→できることからやる!

そんなとき、この “ニーバーの祈り” を思い出してください。

その山は、本当にあなたが動かさなければいけないものでしょうか。
あなたの本当の目的は、山を動かすことでしょうか。それとも、山のその先に進むことでしょうか。
山の先に進みたいなら、他に道はないでしょうか。
そしてそもそも…山のように見えているそれは、本当に山なのでしょうか。

大きすぎる悩みや不安には圧倒されがちですが、焦らず小さく切り崩して、取り組めそうな小さな問題から取り組みましょう。
あるいは実際にやってみると、「あれ?案外大したことないかも…」と気づけるかもしれません。
もしどうしても解決できない問題が残ってしまったとしても、大丈夫。確実に今までより前には進んでいるはずです。
それに前進して違った景色が見えてくれば、これまでならどうにも出来なかった問題でも、解決できる糸口が見つかるかもしれません。

 

さて、今回の記事では、人生をより生きやすくしてくれる名言である  “ニーバーの祈り”  をご紹介しました。
このような先人のありがたい御言葉は、僕たちが波乱万丈な人生を生き抜く上で、非常に強力な武器となります。

僕は個人的に、メンタルヘルスケアの助けになる名言を集めるのが大好きなので、引き続きこのコラムを通じて皆さんにお伝えしていけたらと思っております。
自分の感性にぴったりな考え方を見つけたら、是非使いこなして自分の武器にしてみてくださいね!

 

それでは、また次回のコラムで!

 


 

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Writing by T.S

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