こんにちは!所属精神科医のT.Sです(実名非公開)。
このコラムでは、
僕が精神科医として患者さんと接する中で手に入れ、磨き上げてきた様々な武器
つまりは「幸せになるコツ」
を紹介していきます。
読んでいただいた皆さんにとって少しでもタメになる記事をお届け出来るよう、頑張って更新していきますので、どうぞよろしくお願いします!
さて、新型コロナが猛威を振るい、各地で緊急事態宣言が発表されるなど、まだまだ気が抜けない日々が続いています。
僕も毎週、自分の外来で患者さんと色々なお話をしますが、きまって出るのがコロナの話題です。
「唯一の楽しみだった友人とのお茶も行けなくて参っています…」
「コロナで倒産してしまって、うつが悪化しました…」
「病院に来るにも、公共交通機関を使うのが怖くて…」
新型コロナによって多くの人々の “当たり前の生活” は制限されており、身体の健康・メンタルヘルス・対人関係・お金…などなど、あらゆる方面からダメージを受ける危険性と常に隣り合わせ。
「コロナはただの風邪」と一部では囁かれておりましたが、これだけの影響を及ぼしている現状を見るに、もはやこのようにバッサリと言い切ることができないのは火を見るより明らかです。
これまでに誰も経験したことがない危機に直面し、僕自身もどのような言葉をかけながら患者さんに接していくべきか、非常に苦労しながら診療にあたっています。
しかし、なにもネガティブなことばかりというわけではありません。
こんなご時世だからこそ、これまでは見向きもしてこなかった “当たり前” に目を向け、そのありがたさを再認識することができる。
あれこれと悩んでいるからこそ、ふと素敵な気づきを得ることができる。
今回のコラムでは、患者さんとのコロナに関するやり取りの中から、僕が最近感じたことや学んだこと、そして僕の中で少しずつまとまってきた “コロナとの上手な付き合い方” を1つ、お伝えしようと思います。
コロナでもストレスフリーでへっちゃらな人がいる?
突然ですが、皆さんは「コロナのこのご時世でも、ストレスを感じずへっちゃらな人」って、いると思いますか?
「えっ、そんな人いるわけないじゃん!!友達や家族とも会えないし、行きたいとこも行けないこんな世の中じゃ…」
…と、多くの人は思いますよね。
でも事実、僕の患者さんの中には、コロナによるネガティブな影響を感じさせることなく、
「コロナで世間は大変ですけど、私は特に変わりないです〜!困りごとも別にありません!」
とおっしゃる人が、実は一定数いるのです。これって結構すごいことだと思いませんか?
「他の人達と違って、彼らはどうしてこんなにピンピンしているんだろう…?」
僕は気になって仕方がなかったので、その理由について色々考察してみました。
まず、 “コロナ前後で生活が全く(あるいはほぼ)変わっていない” ケースはどうでしょうか。
“もともと外出はほとんどせず、友人や家族と食事・旅行に行くという習慣もなければ願望もない…
経済的に困窮もしていないし、仕事内容もほぼ変わらない…”
なるほど、確かにそのような方も0ではないでしょうし、これならたとえコロナ禍でも影響は少なそうです。
…が、実際のところ、このようなケースは稀。
むしろ、コロナ禍により “何らかの生活上の変化を余儀なくされた” 人が大多数を占めています。
(少なくとも僕の患者さんにおいては)
つまり、
「彼らがピンピンしているのは、必ずしも”生活が変わっていないから” という理由では説明できない」
と言えます。
ほとんどの人はコロナ禍で何らかの変化を強制されていますが、その中でも
●途方に暮れて落ち込んでいる人
●ピンピンして過ごしている人
に分けられるということです。
では、どうしてコロナ禍の影響で大打撃を受け沈みゆく人と、華麗に波を乗りこなしていく人に分かれてしまうのか。その差はどこにあるのか。
多くの患者さんと接してお話しているうち、僕は大きな分岐ポイントに気づきました。
そしてこれは、決して今回のコロナに限らず、実はメンタルヘルスケア全般で鍵となってくる重要なポイントだったのです。
“出来ていたことが出来なくなる” ギャップを受け入れられるか
飲み会に行けなくなって困るのは、もともと飲み会に好んで行っていた人たちですよね。
そして、もともとカラオケが嫌いな人にとって、「感染予防のためカラオケ禁止!」というのは何のストレスにもなりません。
つまり何が言いたいかと言うと…
日々僕たちが感じている抑うつ気分、閉塞感、物足りなさ、といったネガティブな気持ちには、“これまで出来ていたことかが出来なくなった” ということが大きく影響しているのです。
交友関係にせよ仕事にせよ、 “これまでの当たり前が当たり前ではなくなってしまったから” 、人々は落ち込み、やりきれなさ、物足りなさを感じているのです。
(この “当たり前” については普段から思うところが多々あるので、また別の記事でご紹介します)
そして僕の肌感覚として、
「もともと出来ていたことが出来なくなる、というギャップを受け入れる」のが難しい人ほど、今回のコロナ禍では苦労している印象を受けます。
ちなみに僕の統計上、このタイプの人たちは、以下の特徴も兼ね備えていることが多いです。
●基本的な能力が高く、多くのタスクをこなす生活に慣れている
●活動的で暇を嫌い、なにかしていないと落ち着かない
●詳細に予定を立てたり、メモを取る・まとめるのが好き
●責任感が強く、完璧主義者で中途半端を嫌う
●自分に厳しく、自分を褒めるのが苦手
●どちらかというと否定的な言葉を使いがち
こう聞くと、「自他ともに厳しく、高い能力とバイタリティで仕事もプライベートも華麗にこなす、デキるビジネスマン」が頭に浮かんできませんか?
そのイメージは決して間違っていません。実際、そういう人が多いんです。
しかし案外こういった人のほうが、むしろこのコロナ禍の影響をまともに受けてしまっている印象があります。
上に挙げた特徴を見て、「あれ?結構自分に近いぞ…?」と思った人もいるでしょう。
あなたは必ず、コロナのせいでメンタルがやられます!…とは決して言いません。
しかし、まず「自分はもしかして、ギャップを受け入れるのが苦手かもしれない」という考えを頭の片隅に持っておくことは重要なので、覚えておいて損はないでしょう。
コロナにやられない理想のメンタルとは
逆にコロナの影響を最小限に抑えられる人は、「ギャップを比較的抵抗なく受け入れる」ことに長けています。
そして、コロナ禍にうまく順応している僕の患者さんたちを見てみると、以下のような特徴を持つ傾向があることに気づきました。
●執着が弱く、変化に順応するのが早い
●何事においても “良いところ” を見つけるのが得意
●“今自分に与えられているもの” で満足できる、あるいは満足できるようにと工夫できる
●他人からのアドバイスを柔軟に受け入れて、実践することが出来る
●自分のことが好き、あるいは自分のことを好きになろうという気持ちがある
●否定的な言葉をあまり口にしない
まとめると、コロナ禍でも大きなストレスを感じることなく過ごすことが出来る、いわば「コロナにやられない理想のメンタル」を保つには、以下の点に気をつけることが重要です。
出来ていたことが出来なくなっても、
決して否定的な発言や気持ちに支配されず、
今自分に与えられたもの・環境の中で
やりたいことや楽しみを見つけて、それに打ち込むこと。
そして現状に満足し、そんな自分をきちんと評価してあげること。
これらはもちろん、一朝一夕で出来るわけではありません。
じゃあ明日からそうしますね〜!と身につくスキルじゃないことは十分承知の上です。
しかし何事も、「現状を把握した上でゴールを見据える」のが基本。
今回の記事を参考に、まずは自分がどちらのタイプの人間なのかを認識するところから始めてみてください。
なお、これらのスキルを身につける方法は、今後のコラムでちゃんと紹介していきますから安心してくださいね!
(今回は長さの関係で割愛…)
コロナの先を見据えたメンタルヘルスケアを
最後になりますが、先ほど僕が「このポイントは、実はメンタルヘルスケア全般で鍵となってくる」とお話したのを覚えているでしょうか。
今、病気などに悩まされることもなく健康に過ごし、仕事・プライベートともに充実している人にとって、あまり想像がつかないかもしれません。
しかしコロナを差し置いても、「出来ていたことが出来なくなる」という可能性は誰にも等しく存在し、やがて必ず訪れるのです。それは一体何でしょうか。
ズバリ、 “老化” です。
人は誰しも歳を取ります。歳を取れば、必ず身体の機能は低下します。
そうなると、やりたいと思っても出来ないことが増えてくる。
そして同時に、これまで当たり前に出来ていたことが出来なくなっていきます。
ちなみに、若い頃に「バリバリ働いていた」「各地を旅行で飛び回っていた」ようなバイタリティ溢れる人ほど、老化に伴うギャップは大きくなりがちです。
しかしそのギャップを受け入れるのは難しく、これまで出来ていたことが出来ない自分を責めてしまう。過去の万能な自分に戻る、という決して叶うことのない夢を追い続け、つまずくたびに落ち込んだりイライラしたり…
このような負のスパイラルに陥るのは、容易に想像がつくでしょう。
しかし逆に言うと、このコロナ禍に立ち向かうにあたり、「ギャップを受け入れ、今与えられた環境の中で工夫し、日々の生活に楽しさを見出して現状に満足する」という考え方、スキルを身につけることが出来たら…
その武器は、これからあなたが歳を取っていくなかでも、十分に活かすことが出来るのです。
さて、今回の記事をまとめると、次のようになります。
●コロナ禍の苦しみの多くは、「今まで出来ていたことが出来なくなった」ことから来ている
●そしてこの苦しみは、「人間が歳を取る」という過程で、誰しもが必ず経験することになる
●よって、「今与えられた環境で出来ること、楽しみを見出して打ち込み、現状に満足すること」が重要である
まだまだ苦しい現状が続くかと思いますが、試練があるからこそ得られるものがある。
少しでもポジティブな気持ちで、ゆっくりと乗り越えていきましょう!
ちなみに次回の記事では、今回に引き続きもう1つ、コロナ禍でのストレスと戦うためのヒントをお伝えするつもりです。
次回の更新を楽しみにしていてくださいね。それでは。
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