COLUMNコラム

【折れない心を育む|番外編】「秋バテ対策」で寒い冬に“心を備えよう”!-喪失と再生の狭間で-<親子でできるセルフケア付>

所属カウンセラーの水野です。

11月になり、とても寒い日々が続いています。
今年はまるで秋を飛び越えて、いきなり冬がやってきたような気候ですね。皆さまはいかがお過ごしでしょうか。

私は脚に金属を入れていることもあってか、10月中旬にグッと気温が下がった頃から、急に「内側から沁みいる冷たさ」を感じるようになりました。まさに「身に沁みる」という言葉そのものです。季節や気温が、これほどまでに身体に影響を与えるのだと強く感じる体験です。

こうした「冷たさ」は、きっと私だけが感じているわけではありませんね。持病をお持ちの方や、心身に痛みを抱える方も、同じように感じておられるかもしれません。どうか皆さまにも、ご自身の体と心を大切にお過ごいただきたいと思います。

そして、このような気候では、身体だけでなく心も堪えてしまいます寒くなると「今年がもう終わってしまう」という感覚や、どこか置いていかれるような寂しさ、不安を感じやすくなる方も多いように思います。目の前の景色や体感が、急激に冬へと変わると、心はそのスピードに追いつけず、焦りや不安、寂しさが生まれてしまうのです。

そこで本日は、
「秋バテ対策をしっかりして、冬を迎えるエネルギーを蓄えよう!〜小さい秋の過ごし方〜」
をテーマにお届けします。
小さな「秋」を意識的に体感することが、折れない心を育み、冬を迎える力になります。

現在は、
【折れない心を育む】心理士(師)が伝える:子育て相談をお受けする時の視点シリーズ
を連載中ですが、本日は、<番外編>として、この時期だからこそお伝えしたい【折れない心】を育む小さな手助けについてお話します。

【折れない心を育む】心理士(師)が伝える:子育て相談をお受けする時の視点シリーズの記事はこちらです⇩
心理士(師)が伝える「子育てで大切なこと」-part1-
心理士(師)が伝える「自分の心のキャパシティを守る大切さ」-part2-

<番外編>とはいえ、「心を冬に備えていくこと」は、子育てやお子さまのメンタルヘルスにとっても非常に重要です。なぜなら、お子さまは大人よりも、外界(体感)と内界(感情)の区別が未分化なため、「体感の寒さ」が「心身の不調」に結びつきやすいからです。

つまり、
寒い=なんだか不安・落ち着かない
というふうに、感覚と感情が強く連動しやすいのです。

また、寒さが堪えるのは、お子さまだけではありません。「秋バテ」に悩む大人の方が増えているのが現状です。本日は、この「秋バテ」に触れながら、短い秋をどう過ごすかを具体的にお伝えします。どうぞ、お役立てください。

現代人を悩ます「秋バテ」とは

「秋バテ」とは、夏の疲れが抜けきらないうちに秋を迎え、さらに寒さが加わることで起こる自律神経の乱れや心身の不調のことを指します。代表的なサインとして、次のようなものが挙げられています。

・朝起きるのがつらい、だるさが続く
・頭がモヤモヤする、集中しにくい
・なんとなく気持ちが沈みやすい
・食欲が落ちる、または逆に過食してしまう
・消化器の不調を感じる
・頭痛・肩こり・冷えが強くなる
・寝付きが悪い、夜中に目が覚める
・「もう今年も終わるのか…」という焦りや寂しさが強くなる

ご覧の通り、「秋バテ」は、身体の不調に加えて、心の不安や焦燥感も招く可能性があります。

近年のように「猛暑から急に寒い冬へ」変わる気候では、心と身体の準備が整わないまま、冬の寒さと向き合うことになります。

ただでさえ猛暑により、私たちの身体はクタクタです。その自律神経の不調や疲れが残る中、「冬の寒さにも耐えなさい」というオーダーが入るわけです。その結果、心身ともに「もう無理!」という状態に陥りやすくなります。身体の不調に加え心理的なストレスが、「心寂しさ」を増幅することに繋がると考えられます。

言い換えれば、「心と身体が気候に合わせて切り替えることができず、置き去りになってしまっている状態」が、心の不調を招いていると考えられます。

「移行期」を大切にするということ

心理学やカウンセリングの世界では、「移行期」という考え方をとても大切にしています。なぜなら、「移行期」は次に安全に繋げるための「クッション」になるからです。

その象徴的な場面のひとつが、カウンセリングの「終結(終了)」です。

カウンセラーとして、クライエントが
・自分の力で課題に対処できるようになったとき
・カウンセリング開始の課題や不安感を自分で抱えられるようになったとき
カウンセリングの終了を提案することがあります。

しかし、「急に」カウンセリングを終わらせることはしません。
むしろ、その移行していくプロセスを丁寧に過ごすことこそが、とても重要なのです。

カウンセラーは、
・「終了」と聞き、どのような気持ちになったか、何か不安なことがあるかを尋ね、
・これまで共に歩んできた時間や達成したことを一緒に振り返り、
・クライエントに合ったペースで終了の準備をしていきます。

なぜなら、安心して安全に、終わりを経験する>という体験がクライエントの心にとって大きな意味を持つからです。

信頼関係が深ければ深いほど、別れは不安や痛みを伴うものです。
「もう一人でやっていける」とカウンセラーが感じることは、大きな信頼の証でもありますが、同時にクライエントに喪失感をもたらすことでもあります。
その気持ちの狭間でクライエントの気持ちは大きく動き、一時的に、状態が揺れる方も少なくありません。

また、クライエントとの別れは、カウンセラーにとっても寂しいものです。もちろん、カウンセラーの寂しさによって、クライエントの旅立ちを妨げることはあってはなりません。しかし、その寂しさもまた「2人でプロセスを歩んできた証拠」であり、大切な感情でもあります。

・一緒に別れの準備をして、別れていくこと
・この“揺れ”を受け止めながら、<安心して安全に、終わりを経験する>こと
が、次の一歩を踏み出す力になるのです。
このプロセスこそが、カウンセリングの大きな醍醐味のひとつであると私は考えています。

<安心して安全に、終わりを経験すること>の重要さは、クライエント-カウンセラーの関係性だけの課題ではありません。「どなたにとっても」大切なことです。

秋がもたらす<心のクッション>

この「移行」の感覚は、カウンセリングの世界に限った話ではありません。
私たちの日常の中にも、さまざまな移行期があります。
そのひとつが、季節の移り変わりです。

冬を迎えるということは、広い意味で「今年を手放し、新しい年を迎える」という喪失と再生のプロセスを迎えることであり、とても心理的に意義深い時期なのです。

本来、今年に終わりを告げる冬が来る前には、「秋」という準備期間がありました。

食や芸術、スポーツを楽しみ、紅葉の美しさに心を動かされ、「この景色が雪に変わるのも風情があるなぁ」とロマンスを感じながら、「さぁ!冬を迎えよう!」という気持ちを育む——。

秋を経ることで、寒さに立ち向かうエネルギーや「冬もいいじゃん!」という前向きさが生まれていたのだと思います。

つまり、秋という移行期は、この「喪失」をやわらげ、「新しい年」を前向きに迎えられるための、クッションのような役割を担っていたと考えられます。

しかし、近年は、その秋が駆け足で過ぎていきます。
喪失と再生がめまぐるしく進むこの時期は、本来であれば心の準備を整える大切な時間ですが、多くの方がその「移行のための時間」を十分に取れないまま冬を迎えています。

心と身体が切り替わる前に季節だけが進んでしまうと、心は置き去りにされ、知らず知らずのうちに疲弊してしまいます。結果として、前向きな気持ちが育ちにくくなり、「心寂しさ」が強調され、喪失感の方が強く体感されてしまうのです。

移行期を丁寧に感じることは、「終わり」を<前向きなはじまり>に変えることです。

カウンセリングの終結も、季節の移ろいも、人生のなかにある大切な節目です。急がず、「喪失と再生」の時間を感じ、受けとめ、味わうことが、次の一歩を支える力になるのです。

だからこそ、「秋」を意識的に感じることは、「折れない心を育む」ためのひとつの対処になるのです。

小さい秋を意識的に感じるヒント

ここで、日常生活の中で「小さな秋」を感じるためのヒントをいくつかご紹介します。
どれも「意識を向ける」ことで冬に向かう心の準備を手助けできる、シンプルなものです。

1) 五感で感じる秋
・朝晩の空気を深呼吸してみる
・涼しい風を感じながら日光を浴びる
・木の葉が舞う音や足元のカサカサという音を楽しむ
・お気に入りのマグで温かい飲み物を味わう
・秋の香り(キンモクセイ、焼き芋、銀杏、落ち葉など)を意識して感じる

2) 季節の色を感じる
・落ち葉を拾って飾ってみる
・紅葉や夕焼けを写真に収めて残す
・秋色(ブラウン・オレンジ・ボルドー)を服や小物に取り入れる

3) 文化的で感じる
・秋の詩や俳句、小説を読む
・秋がテーマ音楽をかけて過ごす
・秋の味覚(栗、さつまいも、柿、きのこなど)を味わう

例えば、朝の澄んだ空気を深く吸い込み、落ち葉を踏んで音を楽しむ。
ほんの些細なことでも、私たちは「秋」をここに感じ取ることができます。
五感を刺激することは、幸福感にも繋がり、心を元気にして、温めてくれます。これは単なる気分転換ではなく、心をやさしく温める「折れない心を育むための方法」なのです。

親子でできる秋の心ケア

お子さまに対しては、「体感」と「心」をつなぐ関わりを意識してみましょう。

1) 言語化を手伝う
「秋のどんなところが好き?」「今日は空気がひんやりしてるね。寒いって感じる?」など、体の感覚と言葉を結びつける声かけをしてみる。また、もしお子さまが不安定な場合は、「季節の変わり目は、誰でも不安定になりやすいよ」など声掛けし、自分の傾向の理解に加え、季節の変わり目の不安定さを「誰にでもあること」と伝えることも大切です。

2) 具体的な対処を一緒に考える
膝掛け・湯たんぽ・温かい飲み物・お風呂の時間など、「あたたまる選択肢」を一緒にリスト化してみる。何をしたら、ホッとできるのかを実際に試してみましょう。

3) ルーティン化
温かい飲み物→お風呂→ストレッチ→就寝のように、自律神経を整える流れを作ってみましょう。

4) 成功体験を積む
「寒いときはこうしたら楽になったね」と振り返り、自身の心の落ち着け方を学び、リラックスの感覚を育んでみましょう。このことは自己効力感を高めることにも繋がります。

このような関わりは、季節の変化に対する「折れない心を育む」大切なステップにもなりますので、親子でぜひ一緒に楽しみながら、取り入れてみてくださいね。

まとめ

本日のコラムでは、
1) 秋の心の不調は、自律神経の乱れに加え、喪失と再生が目まぐるしく進むことによる心の負担感の表れであること
2) 秋は、1年を手放す(喪失する)前の移行期(心理的クッション)の役割を果たすこと
3) 移行期を丁寧に感じることは、「終わり」を“前向きなはじまり”に変えること
4) 五感・色・文化・生活リズムで小さな秋を少しでも感じることが、冬を迎えるエネルギーを蓄えること
5) そのエネルギーが、新しい年を前向きに迎える力になること
6) 親子で「体感」と「心」をつなぐ関わりが、折れない心を育てる土台になること
をお伝えしました。

秋は、「一年を手放す前の心のクッション」です。
たとえ短い秋でも、五感をとおして意識的に感じることで、冬を迎える心のエネルギーを少しずつ蓄えることができます。
「秋がない」と感じる年でも、自分の暮らしのなかに“秋をつくる”ことはできます

小さな秋を見つけて、自分の心を温めながら冬を迎えるエネルギーにしていきましょう。

「秋バテ」の症状にお困りの際は、我慢なさらず医療機関をご受診ください。
また、心の寂しさなどにお困りのときは、ひとりで抱え込まずに、カウンセリングをご活用ください。

「11月、もう今年も終わり…」と感じやすい時期ですが、まだあと2ヶ月もあります!
今年「やりたかったなぁ」と思っていることをちょっとでも形にしながら、2026年を迎えるエネルギーを一緒に育てていきましょう!

皆さまにとって、素敵な2026年が迎えられる準備ができる2ヶ月間になりますように。
そして、皆さまの「秋冬」が、心あたたかく満たされる季節になりますように、心から願っています。

それではまた次回のコラムでお会いしましょう!

▶︎大切な人との関係性構築についてはこちらのコラムをご覧ください。
【関係性の相互性からみる心の発達】水野コラム

こちらのコラムでは、「大切な人との関係性をどのように築いていくか」について、日々の中で使えている考え方やスキルをご紹介しています。大切な人を大切にすること、大切にできることは、「自分自身を大切にすること」にも繋がる大事な作業です。
「自分はここにいて良いのだ」「もっと頑張ろう!」など、安心感や、モチベーションにもつながる大事なことです。

大切な人との関係性構築にぜひお役立てください。

Writing by 水野


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