COLUMNコラム

【精神科医が解説】より良い夫婦・パートナー関係のために<No.3 男女における『気遣い』の違い>

こんにちは!所属精神科医のT.Sです。

このコラムでは、

私が精神科医として患者さんと接する中で手に入れ、磨き上げてきた様々な武器
つまりは「幸せになるコツ」

を紹介しています。

現在、『より良い夫婦・パートナー関係のために』という連載を掲載しております。

繰り返しになりますが、精神科医として日々診療を行う中で、夫婦・パートナー関係の悩みを抱えている患者さんは、本当に、本ッッッッ当にたくさんいらっしゃいます!!
悩みが夫婦、パートナー関係そのものである場合もあれば、実は今の困りごとの背景に隠れている場合もあります。

そしてもちろん、この問題は精神科や心療内科に通院している方々のみならず、どなたでも抱えうるお悩みのはず。

そこで、今回も引き続き『対人関係療法』という強力な武器を使いながら、夫婦・パートナー関係の問題に切り込んでいきます!
ぜひご一緒に、メンタルトレーニングに励みましょう!

なお、今回も引き続き、水島先生のこちら↓の書籍で勉強させていただいた内容をもとに話を進めていきます。
繰り返しお伝えしておりますが、私にとってはもはやバイブルのような本です。
少しでも興味の湧いた方は、ぜひ手に取ってみてください!

『対人関係療法で改善する 夫婦・パートナー関係 水島広子 著』

…そして、ちなみに。

「関係性に悩む相手がそもそもいないんだよ!!」ということでお困りの方には、過去に私が掲載したマッチングアプリに関するコラムが参考になるかもしれません!

私はマッチングアプリの回し者でもなんでもないのですが、現代の出会いの手段として、使い方を間違えなければ有用なものだと考えています。
その使い方について、気をつけなければいけない点などを詳しく解説しておりますので、ぜひご一読いただけると幸いです。

それでは、本題に移っていきます。

ごく身近な関係だからこそ、丁寧な対応が必要

まず最初に、前回までのコラムで紹介した内容について、大切なポイントのみまとめておきます。

〇対人関係療法における『重要な他者』である夫婦・パートナーとの関係は、人間のメンタルヘルスを健康に保つうえで非常に重要である
〇この関係は、実はかなり微妙なバランスの上に成り立っていて、ちょっとしたきっかけで破綻する可能性を秘めている
〇しかし、近しい存在がゆえに『元々全く別の人間である』という感覚が乏しくなり、自分とは違う一人の人間として相手を尊重できなくなる危険性がある

本来であれば最も尊重されるべき存在であるにも関わらず、コミュニケーションが不足したり雑になりがちな側面も同時に存在しているわけです。

「これだけ自分と一緒にいるんだから、何も言わなくても分かってもらえても当然」
「一蓮托生の仲なんだから、きつい言い方をしても理解してもらえる」

このような甘えや思い込みからミスコミュニケーションが生まれ、結果として関係性が悪くなり、それぞれのメンタルヘルスに悪影響を及ぼすのです。

夫婦、パートナー関係は『揺るぎのないもの』『何も考えなくても良い方向に進んでいくもの』という思い込みは厳禁です!

『バッテリー女』

突然ですが皆様は、ネット上の『バッテリー女』という話をご存じでしょうか?

男女の考え方の違いから生じるアンマッチを表す逸話としてネット上に度々登場する、いわゆる”コピペネタ”というものです。

夫婦、パートナー関係を考えるにあたっては良い題材になるかと思いますので、まずはこちらからご紹介します。

以下、そのまま引用してみますので、まずはご一読ください。
(男女どちらかを蔑む意味合いはありませんので、その点はご理解ください!)


女『車のエンジンがかからないの…』
男『あらら?バッテリーかな?ライトは点く?』
女『昨日まではちゃんと動いてたのに。なんでいきなり動かなくなっちゃうんだろう。』
男『トラブルって怖いよね。で、バッテリーかどうか知りたいんだけどライトは点く?』
女『今日は○○まで行かなきゃならないから車使えないと困るのに』
男『それは困ったね。どう?ライトは点く?』
女『前に乗ってた車はこんな事無かったのに。こんなのに買い替えなきゃよかった。』
男『…ライトは点く?点かない?』
女『○時に約束だからまだ時間あるけどこのままじゃ困る。』
男『そうだね。で、ライトはどうかな?点くかな?』
女『え?ごめんよく聞こえなかった』
男『あ、えーと、、ライトは点くかな?』
女『何で?』
男『あ、えーと、エンジン掛からないんだよね?バッテリーがあがってるかも知れないから』
女『何の?』
男『え?』
女『ん?』
男『車のバッテリーがあがってるかどうか知りたいから、ライト点けてみてくれないかな?』
女『別にいいけど。でもバッテリーあがってたらライト点かないよね?』
男『いや、だから。それを知りたいからライト点けてみて欲しいんだけど。』
女『もしかしてちょっと怒ってる?』
男『いや別に怒ってはないけど?』
女『怒ってるじゃん。何で怒ってるの?』
男『だから怒ってないです』
女『何か悪いこと言いました?言ってくれれば謝りますけど?』
男『大丈夫だから。怒ってないから。大丈夫、大丈夫だから』
女『何が大丈夫なの?』
男『バッテリーの話だったよね?』
女『車でしょ?』
男『ああそう車の話だった』


いかがでしょうか?

この文章を読んで、「分かるわー!!」と思った人も少なくないのではないでしょうか?
事実、このネタが度々ネット上で注目されるのは、これを読んだ一定数の人たちが共感できるからなんだろうと思います。

先のコラムからお話している通り、私は男女での決めつけをするつもりはありませんし、その決めつけこそ夫婦、パートナー関係の理解を阻害すると考えています。
ですので、上の文章の男女を置き換えて考えていただいても構いません。

とはいえ、男女には生物学的な性別の違い、育ち方や社会での扱われ方の違いなどから、『男性は〇〇』『女性は△△』という一定の”傾向”が存在することもまた、否定できません。
現に、このような形のすれ違いから争いに発展したケースが、少なくとも私の周りでは非常に多いのです。
(自分自身も心当たりがあります…笑)

ではこの内容について、もう少し掘り下げてみることにします。

男女が考える『気遣い』の違い

上の文章の男女で特徴的なのは、『”問題解決のために何をすべきか”にフォーカスする男性』と、『困っているという”心情”にフォーカスしている女性』の対比です。

あくまで傾向の話ですが、男性はすぐに解決策を提案したがるものです。
そして、その問題を解決することこそ『気遣い』だと考えます。

女性から何かを相談された場合、男性は全力で『その悩み事を解決する現実的な手段』を考えがちです。
例えば「家事が大変なのよ」と妻から相談された夫が、「ロボット掃除機とか食洗器を買えばいいよ」と答えるようなものですね。

これは勿論、相手の力になりたいと思うからこその行動なわけです。

だって、その問題を解決したいから相談してきたんでしょ?

これが多くの男性の思考なわけですが、女性のニーズとマッチせず、むしろトラブルに発展するケースが少なからず存在するのです。

ではどうして揉めてしまうのかというと、ここで女性側が求めているのは『自分の気持ちに寄り添ってくれること』であることが多いからです。

女性側が欲しかったのは、「そうだよね、いつも大変な家事をありがとう」という労いの言葉だったのかもしれません。

現実的な解決方法ではなく、どれだけ自分の気持ちに寄り添ってくれるかこそが『気遣い』だと感じているのです。

聞き役に回れる男性はモテる、とよく言われますが、それは女性が本当に必要としている対応が出来ているからなのかもしれませんね。
「夫はすぐにアドバイスしてくるから、気軽に話すことが出来なくて…」と嘆かれる女性、実は結構多いんです。

「どうしたらいいかな」という言い方をしていても、それは必ずしも「具体的な解決策を今すぐ提示してほしい」とイコールではない、と意識しておきましょう。

ただし、これを男性側が全て汲み取って対応しろ、というのもやや酷な部分がありますので、女性側からも「具体的なアドバイスが欲しいわけじゃないんだけど、ちょっと聞いてくれる?」という前置きなどが出来るとスムーズかもしれません。

さて、ここまで読んでいただいた方の中には、このように感じた方もいるかと思います。

「話を聞くだけだと、現実的には何も解決してないよね?それって何の意味があるの?」

…これに関しては、長くなってしまったので次回のコラムで説明しようと思います。
次回の更新をお楽しみに…!

(どうしても早く答えを知りたい人は、水島先生の↓を購入して読んでください。笑)

『対人関係療法で改善する 夫婦・パートナー関係 水島広子 著』

違うからこそ、助け合える

今回は、男女それぞれが抱えやすい”傾向”を題材に、夫婦・パートナー関係で生じやすいトラブルに触れてみました。

男女に限らず、人それぞれ考え方は違うもの。

前回のコラムでもお伝えした通り、夫婦やパートナーとなって共に過ごすうち、次第に『お互いが全く別の人間である』という感覚を忘れがちです。
そのため、『当然、自分がするのと同じように相手も振舞ってくれるだろう』と考えてしまうこともあるでしょう。

お互いの違いを面倒だと思わずに、「この人の気遣い方は、自分とは違うのかもしれない」という視点を持ってみましょう。

そして違いがあるからといって、必ずしもどちらかに揃える必要はありません。
何故なら、違う部分があるからこそ自分では想像もできなかった解決策を提案してくれたり、一人では乗り越えられない壁を突破することができるからです。

これらのポイントを十分に理解していただければ、夫婦・パートナー関係をより良いものにすることができるはず。
私も人生まだまだ勉強途中です。一緒に学んでいきましょう!

次回以降の連載も、ぜひ楽しみにしていてくださいね!

それでは、本日はこのあたりで。
また次回のコラムでお会いしましょう!

今回の連載シリーズはこちら↓

【精神科医が解説】より良い夫婦・パートナー関係のために<No.1 導入編>
【精神科医が解説】より良い夫婦・パートナー関係のために<No.2 まず二人の関係性を知る>
【精神科医が解説】より良い夫婦・パートナー関係のために<No.3 男女における『気遣い』の違い> ←今回の記事
【精神科医が解説】より良い夫婦・パートナー関係のために<No.4 全ての不満の正体は “ずれ” >

【精神科医が解説】より良い夫婦・パートナー関係のために<No.5 ”関係改善” という目的を忘れない>
【精神科医が解説】より良い夫婦・パートナー関係のために<No.6 パートナーの家族との関係性>
【精神科医が解説】より良い夫婦・パートナー関係のために<No.7 >夫婦・パートナー関係が子どもに与える影響

 

※パートナーや結婚相手を探してマッチングアプリの沼にハマっている方は、ぜひ私のこちらのコラムもご一読ください。

※過去のコラムはこちら↓からご覧いただけます。

【メンタルヘルス】精神科医T.Sコラム
Writing by T.S


《お知らせ》
▶オンラインカウンセリング(メンタルトレーニング、コーチング)を導入しております。
どうぞ、ご利用ください。詳細はこちらをご覧ください。
オンラインセッション

▶弊社監修「ユーキャン・心理カウンセリング講座」
受講生様からの講座内容に関するご質問へ私どもがご回答をしております。
私たちとご一緒に、学びを深めて参りましょう!
「心理カウンセリング講座」が”チャレンジ企画”にピックアップされました! 

 

▶『本当の自分を見失いかけている人に知ってほしい インポスター症候群』
その苦しさ、自信のなさ、不安…インポスター症候群だからかもしれません
SNS全盛の今の時代、心穏やかに過ごすために知っておくべきインポスター症候群を徹底解説

オンライン
カウンセリング
カウンセリング予約