COLUMNコラム

【精神科医が解説】今日から始めるアンガーマネジメント 基本編

こんにちは!所属精神科医のT.Sです。

このコラムでは、

私が精神科医として患者さんと接する中で手に入れ、磨き上げてきた様々な武器
つまりは「幸せになるコツ」

を紹介しています。

学生の皆さん、ついに夏休みが終わってしまいましたね…無念!
私の友人は誕生日が8月31日、つまり夏休み最終日で、毎年その日に会うと嬉しいやら悲しいやら複雑な顔をしていたのを思い出します。

さて、毎年夏休み前、あるいは夏休み中になると、診察で患者さんからこのような相談をよく受けます。

「夏休みで子どもがずっと家にいるので、お互い爆発しないか心配です。どうすればいいでしょうか…」
「夏休み中なので、子どもはストレスも無く落ち着いてますが、私のイライラがピークです…助けてください…」

もはや夏の風物詩と言って良いくらいで、体感的には、親子関係の悩みで受診する患者さんの半数~8割近くが、このようなことを話されます。笑

私たちが日々抱える感情の中でも、「怒り」と上手に向き合うことは、私たちの日常生活において非常に重要です。
とりわけ近しい存在である家族や恋人との間では、些細なことから大きな口論に発展することも少なくありません。

本来喜びや幸せを分かち合うべき相手と喧嘩ばかりを繰り返し、怒りの感情を抱え続けるのは、かなりしんどいものです。

大切な人を大切にするために。

今日は、アンガーマネジメントについて一緒に学んでいきましょう!

「本当は怒りたくないのに…」それ、本当?

まず本質的に覚えておいてほしいことがあります。

人間って、怒る生き物なんです。
なんなら、「怒りたい」生き物かもしれません。

この人が怒ってるところを見たことがない、っていう人でも、出さないようにしてるだけで確実に怒ってます。

本当は人間って、その怒りをストレートに表現したいものなんです。
ただキャパシティが大きいか小さいか、怒りを外に出そうとするのか中に留めようとするのか、程度の差しか無く、人間はみな等しく怒る、なんなら怒りたい生き物なんです。

「非暴力、不服従」で有名な、マハトマ・ガンディーっていますよね。

どんなにやられてもやり返さない、他人を思いやる寛大な人!みたいなイメージがあるかもしれませんが、親族に対しては極端な禁欲を強制して反発され、よく喧嘩してたみたいです。

ガンディーでも怒るんです。そりゃ、私たちだって怒りますよ。

なのでまず、「自分は ”怒りたい” と思ってしまう、しょうもない存在なんだ」と認めてください。

怒りを感じること自体は、人間として当然のことです。怒りそのものを遠ざけようとしては、怒りをコントロールすることなど決してできません。

受け入れましょう。問題は、その怒りをどう扱うか、です。

「怒り」が持つ圧倒的パワー

怒りは、人間の心の中に一瞬にして芽生えるものです。そして、愛情や喜びを上書きしてしまう力を持っています。

自分が怒っているところを想像してみてください。

頭に血が上り、胸の中がモヤモヤしてどす黒い感じがして、大声を出したくなったり、何かを投げたくなったり叩きたくなったり…

そんな状態で、どれだけ頑張っても「クッッッッソ!!!今めっちゃ幸せだなァアアッッ!!!!」って思えませんよね?

怒りは色でいうと「黒」に似ていて、たとえ少量であったとしても、交わったものを一色に染めやすい性質を持っています。

「楽しくない、つまらない」と感じるとき、大なり小なり、心のどこかに怒りの感情があります。
逆に、「楽しいな、幸せだな」と感じるとき、そこに怒りは無いはずです。

なのでまずは、「怒りはあらゆるポジティブな気持ちを台無しにしてしまう」ということを、しっかり理解しておきましょう。

そのうえで、次は「怒りはどこから来るのか」について考えてみます。

怒りの根っこにあるものとは?

怒りが生まれる要因はいくつかありますが、概ね構造やパターンは決まっていて、

①「自分は~だ」「~は…べきだ」に縛られている
②「自分は正しい」と確信している

以上のような場合、怒りは生まれてくるものです。

順番に見ていきましょう。

①「自分は~だ」「~は…べきだ」に縛られている

「自分は男だ」「自分は親だ」「自分は天才だ」「自分は偉いんだ」「自分は守られるべき存在だ」…

自分にラベルを貼るとき、そこにはエゴが生まれやすくなります。
つまり、自己中心的で、人の気持ちを考えられなくなります。

自分に対していろいろな概念を強く持ち続けていると、一体どうなるのでしょうか?

他人と関わる中でこれらの概念が壊れたときに、怒りが生まれるのです。

「男の俺に向かって、女のお前が…」
→自分は女より秀でた「男」なんだぞ!

「親の私に向かって、子どものあんたが…」
→私はあんたを管理する立場の「親」なのよ!

自分の概念、立ち位置を意地になって守ろうとすることで、他者に対して攻撃的となり、怒るのです。

もちろん、これは自分だけでなく、他人にラベルを貼る場合も同様です。

その場合、「女は男の後をついてくるべき」「子どもは親のいうことだけ聞いていればいい」というような、「お前は◯◯べきだ」という思考に陥ってしまいます。

このように、「自分や相手に対してラベルを貼る」という行為は、怒りの元となりやすいので注意が必要です。

ちなみに、高慢な考えだけではなく、「私はダメ人間だ」「私は劣っている」と思うのも、ある意味ではエゴであり、怒りを呼ぶので気をつけましょう!

 

②「自分は正しい」と確信している

これも重要なポイントですが、これを読んでいる皆さんの多くも自覚があることと思います。

怒りの大元には必ず、「自分が正しくて、相手が間違っている」という思いが存在します。
「自分にとって正しい◯◯」があって、それが現実とズレているときに、人は怒るのです。

「自分はこう言ったのに、そこでお前がこう返したから、俺は怒ったんだ」
「あなたのダメなところを直そうとして、私は注意をしただけなんだ」

しかしここで厄介なのは、本当にそれが事実かどうか分からないことがあるいうことと、そもそも事実だとしても本当に「自分が正しい」のか分からない、ということです。

「自分はこう言ったのに、そこでお前がこう返したから、俺は怒ったんだ」
→それって、本当?実はもっと違う言い回しをしていたのでは?

「あなたのダメなところを直そうとして、私は注意をしただけなんだ」
→それは本当に ”ダメ” な行い?あなたがそう思ってるだけではなく?

 

いやいや、ちょっと待ってくれ!
世の中には、人を傷つけてはいけない、というような「絶対に正しい」ことがある。
それを破った人がいたら怒るのは当然だし、悪くないはずだ!

そう思う人もいるかもしれませんが、それは誤りです。

相手が間違っていると思うなら、単にそれを指摘すればいいだけなのです。
なのにわざわざ怒るということは、あなたは怒りたいんです。

根っこでは自分が正しいと思っている。そして、自分が正しいんだから、怒っても良い。だから、怒る。

人は「自分が確実に正しい」と思うとき、「間違っている」相手に対してどのように振る舞っても良い、と勘違いしてしまう傾向があります。
当然、我慢する必要を感じていないわけですから、コントロール下に置かれていない怒りが暴れ出します。

でも、常に正しい人なんて、この世には一人もいません。
絶対的に正しいと思えるようなことでも、その中には1%の「誤り」が含まれているかもしれません。

あなたの為だから、とは言うけれど、実は自分の正しいと信じていることを押し付けているだけかもしれません。

「自分が正しい(と思う)からといって、怒ってもいい理由にはならない」ことを覚えておきましょう。

次回は実践編

今回の記事では、「怒り」という感情について触れた上で、怒りの根本にある潜在意識について説明しました。

私も自分で書きながら、「あぁ、どうしてあの時あんなに怒っちゃったんだろう…」と反省しっぱなしです…

アンガーマネジメントを学び始めると、多くの人が「頭ではわかっていても、実践できない」という壁にぶち当たります。

でも、この世のあらゆることって…勉強でも、仕事でも、英会話でも、スポーツでも、救命措置でも…

まず頭の中で理解していないと、実際の行動には移せませんよね。

それと同じことです。

まずは何度も勉強し、頭に叩き込み、自分に常日頃から言い聞かせること。これが重要です。

その繰り返しが、次第にあなたを ”怒りから開放された人生” に導いてくれます。

根気強く、気長にメンタルトレーニングを続けましょうね!

さて、分量がかなり多くなってしまうので、このあたりで記事を分けます!

次回はいよいよ、アンガーマネジメントの実践編。

生涯付き合っていかなければいけない「怒り」という厄介な感情を、どのようにコントロールして手懐けるか。

その具体的な方法を紹介する予定です。

楽しみにしていてくださいね!

それでは、本日はこのあたりで。
また次回のコラムでお会いしましょう!

※過去のコラムはこちら↓からご覧いただけます

【メンタルヘルス】精神科医T.Sコラム


 

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Writing by T.S

 

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