COLUMNコラム

【遊びをもちいて子どもとの関係を育む方法】③アテンディングを実践する上で気をつけること

こんにちは、所属カウンセラーの古宇田です。

若者の居場所支援という視点から、気になる話題がありましたので、まず取り上げたいと思います。こども家庭庁の小倉こども政策担当相が7月初めに東京の歌舞伎町のいわゆる「トー横」エリアを視察したというニュースを見ました。トー横とは、新宿歌舞伎町にあるTOHOシネマズの横や周辺のエリアの俗称であり、そこに集まる若者たちのコミュニティやSNSでのハッシュタグの名前でもあるようです。トー横界隈は深夜帯に未成年が集まり、犯罪の温床となっているケースがあるため話題になっている言葉で、警察が出動することも多いようです。

今回の小倉こども政策担当相の視察後には「安心して過ごせる居場所、そして犯罪に巻き込まれない安全な居場所づくりをしていかなければならない」と述べ、若者の居場所支援の強化をしていく考えを示しました。トー横に集まる全国からの若者は、もしかすると家庭に安心できる居場所がない若者が多いのかもしれません。そしてトー横では、そうした若者同士が安心して受け止め合う機能も、ある部分ではあるのかもしれません。より安全で安心な居場所づくりが今後作られることを期待したいと思います。

前回のコラムでは、アテンディングのためのガイドラインについてお伝えしました。アテンディングの核心は、「今そこにいる、あるがままの子どもに注目すること」です。遊びを通して子どもと関わる際に、このアテンディングの取り組み方を意識してみることで、子どもの新たな一面を発見することもあるでしょう。
詳しい内容は前回コラムをご覧ください。
【遊びをもちいて子どもとの関係を育む方法】②アテンディングのためのガイドライン

さて今回は、引き続き「遊びをもちいて子どもとの関係を育む方法」から、子どもとの関わりや子育てのヒントになるトピックについてご紹介したいと思います。今までお伝えしてきたアテンディングですが、実際に子どもへ対応する際にアテンディングを意識して取り組むため、困った場面アテンディングすることをためらう場面が出てくることも予想されます。どのような場面で、どのように気をつけることが必要かをお伝えしていきたいと思います。

【アテンディングすることをためらわせる場面とその対応】

大人のなかには、常に何かにせかされ、忙しすぎると感じていて、子どもの遊びに参加することに気が進まないという人もいるかもしれません。しかし、子どもと大人が一緒に遊ぶことには、親密さを深める、そしてお互いにとって満足感のある相互作用とすることができます。大人は、同年代の他の子どもとは違い、子どもが遊んでいる内容を描写的にコメントし、褒めることを通して、子ども自身が周囲の環境を探索するのを手助けし、より遊びを促進させることができる立場にいます。そのため遊びは大人に、子どもが成長し発達し続けることへの大切な機会を気付かせてくれます。

子どもの遊びは大人にとって、退屈な瞬間があると愚痴をこぼす人もいるかもしれません。子どもが同じ絵本を何度も見たがったり、玩具で何度も遊びたがったりするなどのとき、同じ遊びを繰り返しすることに付き合うことは、確かに退屈になることもあるでしょう。しかし、遊びは子どものニーズを反映すべきであって、大人のニーズを反映することは控えることが望ましいと考えられます。

アテンディングの良いところは、集中的に行うことができ、短時間で済むという点です。アテンディングに使う時間はせいぜい10分ほどです。この短い10分という時間、子どもに全神経を集中して関わる必要があります。そしてその間は、スマホを横目で見たり、夕食の献立を考えたりすることは避けましょう。子どもは、大人がこの10分という集中した時間を最大限に効果的にするため、大人が全精力を注いで注目してくれているということを経験する必要があるのです。

大人からの明確な指示や、大人の期待を伝えることによってこそ、子どもの遊びは有益なものになると信じている人もいます。実際、日常的な養育のなかで、子どもを指導し、教える機会は山ほどあります。これとは対照的にアテンディングは、大人が子どもにより敏感に反応し、創造的な方法で関わることのできる数少ない機会でもあります。

非協力的で破壊的な遊びをする子どもが相手の場合、大人は特に自分のコントロール権を手放すことは難しいと感じるでしょう。そのような子どもと大人の相互作用は、とかく指示的で批判めいたものになりがちです。しかしそんなとき、大人にアテンディングのスキルを使うように勧めることができたなら、大人はその子どもに対して、子どもらが思いもよらなかった形の相互的で協力的な、満足感のある経験を与えることができるでしょう。

私が子どもたちと接する場面で、アテンディングをすることで、子どもがとても集中し敏感に反応してくれることに驚かされることがあります。一方でそうした様子と正反対の、いつも心配そうで気持ちが落ち着かない、不安定さを抱える子どももいます。そのような子どもは自分がリードすることが苦手であり、気が進まず、大人が遊びを用意してくれるのを期待しています。そのような子どもに対してこそ、大人はあらゆる場面を通して、子どもが自発的に行動し、考えたりすることを促す必要があります。また、大人からの指示や手助けの回数を減らすようにすることが大切です。

大人のもう1つの心配は、玩具の武器や人形を使った攻撃的な遊びは奨励したくないということでしょう。攻撃的な遊びは知らず知らずのうちにエスカレートし、子どもの興奮のレベルを引き上げることにつながる場合があります。そんなときは、そのような攻撃的遊びから大人から身を引き、子どもの行動がより落ち着いたときにアテンディングを始めると良いでしょう。

【アテンディングのための追加ガイドライン】

子どもが「無作法な振る舞い」をするとき、どうしたらよいでしょうか。子どもが無作法な振る舞いを始めたときは、大人は子どもから離れ、一時的に別のことをすることによってそのような振る舞いを無視するようにすることが必要です。そして子どもが適切な行動を始めたらすぐに子どものところへ戻り、注目を与え続けるようにします。

また子どもがひどく攻撃的で破壊的なことを始めたら、大人はその遊びを一時中断させることも必要でしょう。例えば、こんな感じで伝えると良いでしょう。「あなたが玩具を投げ散らかすから、2分ほど遊びを止めなければならないよ」と。大人は、権限内でできるあらゆる方法を使って遊びを進め、子どもの遊びが破壊行為に終わらないようにする必要があります。

遊びの終わる時間になったとき、どうしたらよいでしょうか。遊びが盛り上がり、とても楽しい体験になっているとき、それを止めることは大人でも難しいことです。大人は次のように伝えることで、子どもに遊びを止めるための気持ちの準備をさせることができます。「あと2分であなたとの遊びをやめなくてはならないよ」と。

子どもが抵抗したときは、大人はそれを無視しても大丈夫です。そして終わりの時間になったら、次のように言います。「もうやめる時間になったよ。あなたと一緒に・・・をやれてとても楽しかったよ」と。

これ以上大人を遊びに引き込むことはできないということを子どもに認識させる必要があります。同時に、この特別な時間は定期的に持つことができるもので、明日もまた一緒に遊べる時間があるということも認識させる必要があります。大人はその後、子どもに1人で遊び続けることを促すこともできます。

2人以上の子どもとアテンディングをする場合、どうしたらよいでしょうか。多くの大人が直面する問題の1つが、さまざまな個性とニーズを持った子どもたちに注目を与える必要があるという場合です。

ひとりひとりに時間を取ることができるなら理想的ですが、いつもできるとは限りません。子どもたちが全員で、ある1つの遊びをしているときに、2人以上の子どもに同時にアテンディングを実施することは可能です。大人は順番に1人ずつアテンディングを行い、それぞれに注目とご褒美の言葉を与えることができます。

ここに書かれた以外にもさまざまな「どうしたらよいでしょうか」があると思います。基本は、安心安全に遊べることをベースに、子どもが主体的に遊べる環境を大人が作ってあげることが大切です。そこに温かな眼差しの注目があれば、子どもにとっては最高の体験になるのではないでしょうか。

【最後に】

実はこのアテンディングをやってみると分かるとは思うのですが、最初はかなり不自然なものだと感じられます。大人がぎこちなく感じ、何を言っていいかわからないようなときがあるかもしれません。たいていの大人は、疑問を口に出さずにはいられません。なぜなら、私たちの多くにとっては、このアテンディングの方法は、根付いていない習慣だからです。しかしアテンディングを繰り返すうちに、自然とできるようになってきます。アテンディングを続けることができたなら、子ども自身と大人の関係性にもたらされる良い体験を感じることができるでしょう。今までお伝えしてきた「アテンディング」ですが、今までのことを通して気付かれたことを、子どもとの関わりで活かし、実際に子どもと大人自身の体験の変化を感じてもらえると幸いです。

次回8月のコラムは夏休みを頂くため、お休みとさせていただきます。9月から再開いたしますので、9月からのコラムを楽しみにお待ちくださいね!

【参考資料:『フォスタリングチェンジ』著:カレン・バックマンら・2017】

【遊びをもちいて子どもとの関係を育む方法】シリーズはこちらからご覧になれます。
【遊びをもちいて子どもとの関係を育む方法】①肯定的な注目による子どもへの関わり
【遊びをもちいて子どもとの関係を育む方法】②アテンディングのためのガイドライン

さまざまな社会生活の変革という過渡期での不安やストレスは、さまざまな形で表出されることがあります。ポジティブな考えを持つきっかけとして、そして安心・安全な人との関わりを通して生きる力を養うサポートもカウンセリングの一側面とも考えています。子育てや子どもの抱える不安やストレスに関してのご相談もお受けしております。

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Writing by古宇田エステバン英記

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