こんにちは!所属精神科医のT.Sです。
このコラムでは、
私が精神科医として患者さんと接する中で手に入れ、磨き上げてきた様々な武器
つまりは「幸せになるコツ」
を紹介しています。
気づけば2023年も半分が過ぎました。
文字通り「気づけば」という感じで、年々時間が経つスピードが加速しております。
「あれっ、いつの間に7月になってたの?6月の記憶ないんだけど…」
「ついこの間大学を卒業したと思ったら、もう社会人5年目…?」
こんな感覚、みなさんも味わったことがあるでしょう。
そして、時の早さを実感したり話題にすることが、年々増えていくように思いませんか?
なんなら私、毎月びっくりしてます。えっ、もう◯月なの?って。
「年をとると天気や日付の話ばかりするようになる」と言いますが、どうしてなんでしょう?
子どものときは、1時間が、1日が、1ヶ月が、1年が、今よりもっと長かったような気がするのに…
なぜ、大人と子どもで時間の感覚がここまで違うのでしょうか?
子どもの時間感覚
「たかしくん、気づけばもう7月だね」
「本当だ!いやぁ、つい最近小学3年生になったばかりだと思ってたけど…時が経つのは早いねぇ…(しみじみ)」
子どもの頃、よくこんな会話したな〜という記憶、皆さんにはありますか?
少なくとも私には…全然ありません。
こんな渋すぎる小学生、なかなかお見かけしませんよね。
どうしてなんでしょうか?
具体的に計算してみると、5歳の子供にとって1時間は、その人生の1/43800に過ぎません。
ところが、50歳の大人にとっては1/438000となります。
まず単純に、「自分の全人生の中で “1時間” が占める割合」が、子どもと大人では全然違います。
これも、大人が時間経過を早く感じる一因で、子供にとっては時間が遅く感じる理由の一つとも言えます。
でも一方で、私にはこんな記憶もたくさんあるのです。
「学校が終わって友達と遊んでいたら、いつの間にか帰らなきゃいけない時間になっていた」
よく考えたら不思議なんですが、
多くの子どもは、1日があっという間に過ぎていく。
けれど、「時が経つのは早いなぁ」という感覚を強く意識することは、大人より少ない。
ちなみにこの矛盾、大人でも同じように起こっています。
大人の時間感覚
私たち大人は、口を開けば “時が経つのは早いなぁ” と驚く一方で、
「や、やっと一日が終わった…長かった…」
「ついに月曜日が来てしまった…また長い1週間が始まる…鬱だ…」
「えっ、次の給料日までまだ3週間もあるの!?」
のように、“時が経つのは遅いなぁ” とも嘆きますよね。
でも、その後 “気づいたら” もう1週間が終わっていて、給料日が来ていて、春も夏も秋も冬も終わっていて、今年が終わろうとしています。
多くの大人は、短いスパンで見ると、しょっちゅう「時が経つのは遅いなぁ」と感じている。
しかし、最終的には「なんだかんだで結局、時が経つのは早いなぁ」という感覚の方が強くなる。
というわけですね。何故なんでしょう?
私は最近、その理由の1つとして、こんなことをよく考えるのです。
多くの大人が、時間が経つ遅さよりも早さを強く意識するのは、
強い “後悔” や “焦燥感” といった感情で裏付けされているからではないか?
“終わり” の認識
大人が「時が経つのは早い」と話す時、
「時が経つのは早いなぁ…いやぁ、本当に良かった!」
このように、ポジティブな文脈で話すことって、実はあまりないですよね。
どちらかというと、
「もう1年も半分終わったのに、年始に立てた目標を全然達成できてない」
「あっという間に1年が経って、気づけばまた1つ歳を取ってしまった」
というように、ネガティブな文脈で使われることが多いのではないでしょうか。
私はこの理由を、「大人になるにつれ、人生の “終わり” を意識するようになるからではないか」と考えています。
良くも悪くも、多くの子どもは “遠い未来” のことは考えません。
子どもが想像する “終わり” は、それこそ夏休みの終わりくらいの近い未来まで。
見通しを立てるのがある程度得意な子どもがいたとしても、人生の終着点を見据えて生きている子どもは、そうそう見かけません。
ところが、少しずつ時間が過ぎ大人になっていく過程で、子供の頃の無限と思えた時間が、有限のものと認識されるようになってきます。
なんだか体の調子が悪い日が続いたり、少し動いただけで疲れたり、なかなか体重が落ちなくなってきたり、健診で引っかかったり、身内や友人が亡くなったり。
そういったことを経験するうちに、次第に「自分に残された時間」を意識し始めるようになります。
「自分の人生はこれでよかったのか?」という疑問が頭をよぎることもあります。
そんな中、ふとした時に「あっという間に時間が過ぎてしまった」という事実まで突きつけられたら、どう思うでしょうか?
過去に無駄に過ごした時間に対する後悔の念や、残された時間がさらに短くなってしまったという焦燥感を、強く感じるのではないでしょうか。
そしてそういった感情が結びつくことで、「時間が経つのは早い」という認識がさらに強まっていく。
私はこのように考えたのです。
しかし、それが全て悪いとも思いません。
「時間が経つのは早い」ことで焦りを感じたり、過去の時間の過ごし方を後悔するということは、その分「自分の残りの人生を、もっと良いものにしたい」という気持ちがあるということですから。
大人が子供に伝えるべき “時間の価値”
いよいよ今月の終わり頃から、学生は夏休みに突入します。
多くの親は、時間が有限であること、時間はあっという間に過ぎてしまうことを、身をもって知っています。
そこに少なからず、後悔や焦燥感を感じています。
そしてだからこそ、「自分の子どもに人生を無駄にしてほしくない」という思いが強まります。
夏休みのような長期休暇には特に、何もせずダラダラと過ごしている我が子を見て心配な気持ちが募り、「このままじゃだめだ!」「勉強しろ!遊んでる場合じゃない!」と叱ってしまう親もいるでしょう。
ただ大抵の場合、子どもは厳しく一方的に叱られても反発するのみで、「人生は有限なんだ、少しも無駄にしちゃいけないんだ!」と素直に悟る子どもはほとんどいません。
私たち大人に必要なのは、子供たちに死を意識させたり、厳しい言葉を投げかけるのとは違う形で、子供たちに時間の価値を教えることです。
時間とは何か、時間をどう使うべきかについて、子どもたち自身が考えていけるように手助けをすることです。
その方法は人それぞれ、家庭によっても違うため、正解はありません。
親自身がその一瞬一瞬を楽しんでいる姿を、子どもに見せてあげるというのも良いでしょう。
家族で食卓を囲みながら、時間の過ごし方について話したり、場合によっては親自身の経験を語ってあげるのも良いかもしれません。
自分や自分の子どもにとってどんな手段が最適か、あれこれ頭を捻って考えてみてください。
時間は一度過ぎ去れば戻ってこない、何にも代えがたい貴重なもの。
この事実を早い段階から子供たちに伝え、彼らが将来自分の時間をより有意義に使う手助けをしてあげてください。
そうすれば、大人になった彼らが「時が経つのは早いなぁ」と感じたとしても、それは後悔や焦りではなく、「自分の時間を大切に使えたな」という満足感や成長の証として感じることができるでしょう。
それでは、本日はこのあたりで。
また次回のコラムでお会いしましょう!
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