COLUMNコラム

【メンタルヘルス】他人の期待に振り回されず、自分らしく生きるために

こんにちは!所属精神科医のT.Sです。

このコラムでは、

私が精神科医として患者さんと接する中で手に入れ、磨き上げてきた様々な武器
つまりは「幸せになるコツ」

を紹介しています。

この記事は5月末〜6月はじめにかけて執筆していますが、藤井聡太竜王が最年少で偉業の7冠を達成したり、大谷翔平サンはほぼ毎日ニュースでホームランを報じられたり、とにかく若者たちの活躍が目覚ましいですね!

数年前から、テレビで活躍が報じられる人たちが自分より年下なことが増えてきて、時の残酷さと自分の老いを実感しておりますが…

それにしても、あの若さで日本中、ひいては世界中の期待を背負い、しかも期待されている以上の結果を出すわけですから、本当に並大抵ではないですよね。

そして一方では、4代目市川猿之助さんの事件のような、悲惨な出来事も報じられています。

ある記事によると、市川猿之助さんは「人からどう見られているのか」にかなり敏感だったとか。

もちろんこの記事の真偽は不明なので私も憶測で喋るわけにはいきませんし、現時点では詳細には取り上げません。

しかし、周りからの期待やプレッシャー、「どう思われているのか」という思いが、時に人を追い込んでしまうというのは事実です。

 

つい先日も診察にて、1人の患者さんにこんな悩み相談をされました。

人を大切にするあまり、自分が苦しいです

「どうしても自分より他人を優先してしまい、”相手の期待に100%応えなければいけない” と考えてしまいます。
でもその結果、言いたいことは言えないし、思った通りに振る舞えないので苦しいです。」

このような悩みを抱えている人、実は結構居ます。
あなたの周りにもいるのではないでしょうか。

あるいは、あなたもその1人かも…?

さて、ここで私が、あなたが完璧な人間である必要がないことを証明します。

まず最初に、このお悩みについての私の回答をお伝えします。

それは、「人の期待や気持ちに100%応えるのは不可能だから、諦めよう」です。

深呼吸して落ち着いてください。これは絶望的な話ではありません。

逆に、自分自身を許し、他人の意見に翻弄されることから解放される、というお話です。少し安心しましたか?

「読み手主義」

会話をするとき、「自分の言葉が相手にどう伝わるんだろう…」と気になりますよね。

「こんなことを言ったら怒らせるんじゃないかな…」
「さっきの言葉、やっぱりあの子を傷つけたんじゃないかな…」

心配になりますよね。

これは、「読み手主義」という考え方と深く関わっています。

読み手主義とは文学理論の1つで、「同じ言葉や文章でも、解釈は読み手によって異なる」という考え方です。
しかし文学だけでなく、現実のコミュニケーションを考えるときにも、大変参考になる理論なのです。

例えば。

「ピザ」と聞いたとき、あなたは何を想像しますか?

モッツァレラとトマトのマルゲリータ?
それともハワイアンのパイナップルとハム?
あるいは、野菜たっぷりのビーガンピザを思い浮かべるかもしれません。

人はそれぞれ、違う背景や経験、価値観を持っています。だからこそ、同じ言葉でも様々な解釈が生まれます。

さて、「ピザ」というシンプルな単語ですら、これだけ違いが生じるわけです。
しかし、もちろんこんな単純な単語だけでは会話は成り立ちませんね。

ではここで、もう一度質問します。

「自由」と聞いたとき、あなたは何を想像しますか?

 

…どうでしょうか。極端に説明が難しくなりませんでしたか?

このように、「自由」「平等」「幸せ」「楽しい」のような抽象的な概念になるほど、人それぞれの解釈が大きく異なり、共通の見解が得られにくくなります。

でも、これらの単語って、別に珍しくもなんともありませんよね。
みなさんも普段の会話の中で、特に気にもせず普通に使っているはずです。

そう考えると、コミュニケーションにおいて言葉のすれ違いが生じるのは、実は至極当然のことと言えます。

つまり、あなたがどれだけ全力を尽くして誠意を込めて話しても、絶対にどこかですれ違いは生じうるし、受け取る人によっては全く異なる意味に解釈されてしまうということです。

言葉は必ずしも一定の意味を持たない

同じ言葉を聞いても人それぞれ解釈が違う、ということは理解していただいたかと思います。

そして実は、それだけではありません。

繰り返しになりますが、読み手主義の考えによると、「読者の解釈がテキストの意味を決定する」ため、その解釈は読者によって異なります。

しかしここで無視できないのは、たとえ同じ読者であっても、時間や状況が変われば、それはもはや「別人」です。
そして別人であるからには、受け取り方が変化するということです。

つまり、「言葉は、人が違えば解釈が違うし、たとえ同じ人でもその時次第で解釈が変わる」ということです。

これが読み手主義の特徴の1つ、「意味の不確定性」です。
読み手主義において、テキストの意味は決して固定的ではなく、常に変動するとされます。

辞書で言葉を調べると、その定義が出てきますよね。
でも、実はその言葉が使われる時間や状況、人によって、その都度意味が異なってくるということです。

例えば、「俺たち、仲間だろ!?」というセリフを、映画版のジャイアンが言っているのか、土曜日のジャイアンが言っているのかで、まったく意味合いが変わってきますよね。

ではもう少し、実際のコミュニケーションに寄せてみましょう。

例えば目の前の人が「私は大丈夫です」と言ったとしても、本当に “大丈夫” なのでしょうか。

その人が泣いているのか笑っているのかだけでも、受け取り方は随分変わります。
また、あなたと相手の関係はどうでしょうか。あなたが相手にとって守るべき存在であれば、無理をしてでも大丈夫と言うかもしれません。
そもそも、相手にとっての “大丈夫” の定義とはなんでしょうか?命の危険が無いことを”大丈夫”と表現していませんか?だとしたら、なにか悩みはあるのかもしれません。

このように、考えることは無限にあるし、状況によっては、そのどれもが正解にも間違いにもなりえるということです。

人の期待や気持ちに100%応えるのは、不可能

私達は全員、他人と全く違う人生を歩み、異なる経験をしています。
そして言うまでもなく、他の人の人生をそのままそっくり体験することは不可能で、他人と完全に共有することができません。

その上で、私たちは自分の「経験」によって、感じたことをどのように解釈するかを決定します。

「今日の練習はハードだった」というセリフを、バンドマンが聞くのとサッカー選手が聞くのでは、想像する “ハードな練習” のイメージはまるっきり変わってきますよね。

また、私たちが何を「思っているか」は常に「文脈」に依存しているので、たとえ同じ言葉でも、状況や背景によって意味が変わります。

さらに、私たちが「どのように感じるか」は、声のトーンや表情、身体の動きなどの「非言語的な要素」によっても大きく左右されます。
これらの非言語的な要素は、言葉以上に強力な情報を伝えることができますが、同時に、それぞれが持つ微妙な違いを完全に捉え、他人に伝えることは非常に難しいのです。

さて。

ここまで読んできた皆さんは、そろそろこのように考える頃ではないでしょうか。

 

もう、無理じゃん。コミュニケーション。

 

分かります、その気持ち。
最初に私が言ったように、人の期待や気持ちに100%応えるのは不可能なんです。

言葉が必ずしも一定の意味を持たないのだから、「自分が言いたいことを正確に伝える」ことは出来ません。
言いたいことを伝えられない相手に対して、その人の気持ちを100%理解し、100%期待に応えるなんて…到底無理だと思いませんか?

完全に分かり合えないからこそ、できることがある

だからといって、絶望する必要は全くありません。最後に大切な話をします。

人によって解釈が違うということは、実は私たちの生活や人間関係を豊かにしてくれる要素でもあるのです。

同じ日常でも、色々な人が色々な視点を持つことで、新たな発見や学びが生まれるのです。

もしも全ての人が全く同じ解釈を持つ世界だとしたら、どれだけつまらないか想像がつきますか?

例えば、あなたが「この映画良かった!」と友人に話したとき、その友人が「私もそう思った」と即座に答えたら、それ以上の会話は生まれません。
しかし、もし「私はそうは思わなかった、このシーンが物語に合っていないと思った」という反論があったら、「なるほど、その視点は無かったな…」などと、そこから更に深い会話や理解が生まれるでしょう。

それでもなお、「やっぱり、人の期待や気持ちに応えられないのは悲しい」と思うあなたに、ここで一つ提案があります。

「100%期待に応える」のではなく、「100%期待に応えようと努力する」ことを目指してください。

この2つ、似ているようで実は全く違うことです。

誕生日プレゼントを期待する友人に、友人が期待するドンピシャのプレゼントを用意する必要はありません。

ただ、「あの子は○○が好きで、この前は○○を買ってたから…」と、相手のことを考えて行動すること。

私達が目指すべきはそこです。
そして逆に言えば、私たちにはそこまでしか出来ないのです。

可能かどうかは別として、その努力自体が大切なのです。それが人間関係を築き、深い理解を生む一歩となります。

(それに、思ってもみなかったプレゼントをあなたから受け取ったことで、相手の世界が広がるかもしれません!)

もしあなたが自分自身を厳しく責め、完璧を求め続けているなら、少し手を緩めてみてください。

全ての人の期待に応えることはできません。そして、それはあなたの責任ではありません。

だからと言って、すべてを諦めてしまう必要もありません。

自分自身を許し、コミュニケーションを通じて深い理解を追求することで、より良い人間関係が築けることでしょう。

それでは、本日はこのあたりで。

また次回のコラムでお会いしましょう!

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Writing by T.S

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