こんにちは!所属精神科医のT.Sです。
このコラムでは、
私が精神科医として患者さんと接する中で手に入れ、磨き上げてきた様々な武器
つまりは「幸せになるコツ」
を紹介しています。
2023年が始まったかと思えば、もう5月。
皆さん、5月病には悩まされておりませんでしょうか?
そもそも5月病とは、新年度が始まり、新しい環境に移ることでストレスや不安を感じる現象を指します。
新しい環境において、
自分がどのような立場で、どのような仕事を担当することになるのか、という不安。
これまでの日常生活や仕事のルーティンが変わることに適応できないストレス。
周りの人たちと自分を比較することで感じる、自己評価に関する不安やプレッシャー。
これらのストレスや不安が積み重なることで様々な問題が起こるわけですが、その一つに挙げられるのが「睡眠障害」です。
5月病から、朝起きるのが辛くなる、寝過ぎてしまう、昼夜逆転生活になる、といった睡眠障害を起こすことがあります。
このような状態が続くと、睡眠の質が低下して疲れがたまってしまうため、さらにストレスや不安を増幅させる可能性がありますので、注意が必要です。
さて、今回の記事では、そんな5月病と前回までの連載の内容も踏まえて、「早起き」に焦点を当ててお話していこうと思います。
早起きできる人が羨ましい。いっそ、憎い。
そう思っていた時期が、私にもありました。
そして、早起きが少しずつ定着してきた今、こう断言できます。
早起きで、人生は変わります。
前回までの連載で私は、「今年こそは◯◯をやるぞ!」と決めた目標を発表し、その進捗状況を報告してきました。
そしてその中で、私が「自分にとって究極の課題」としてきたのが、この早起きでした。
趣味は寝坊、布団は友達。
スヌーズを押す速度なら、高橋名人をも置き去りにする自信があります。
雷でも起きず、地震でも起きず、何個もの目覚まし時計、目覚ましアプリが愛想を尽かして私の元を去っていきました。
2022年。
私は普段は東海地方の病院勤務ですが、東京で3日間にわたり開催される講習会がありました。
職場は出張扱いで休ませてもらい、交通費、宿泊費、参加費の全てを職場が負担してくれました。
しかし、万が一遅刻して1コマでも取りこぼそうものなら、受講と認定されず、次回はまた1年後。
絶対に寝坊など許されない出発当日の朝、目が覚めたら新幹線出発の17分前でした。
「っっあぁあ!!」という謎の鳴き声が出たのを覚えています。
さらに、これは早起きが苦手な同志たちは分かってくれるはずですが、起きられないくせに「朝やればいいか^^」の精神が、しっかり育ってるんですよね。
自分を信じることをやめない、なんて言っちゃたりして?^^
なので、あろうことか宿泊準備を何もしておらず、それでも新幹線に間に合ったのが奇跡なんですが、受講票以外ほぼ何も持たずに東京に向かったので、現地で3日分の服を買う羽目に。とんでもない予想外出費。
極めつけはそのときに買ったセーター、帰宅後なぜか洗濯乾燥にかけてしまって縮み上がり、寿命3日でその生涯を終えました。
なるべくしてなっている。
こういった自堕落で自分を嫌いになるイベントは、目覚めても続くこの悪夢は、朝しっかり起きられないところからすべて始まっているんです。
この状況は、なるべくしてなっている。
変わるしか、ない。
そう誓いました。
つい4日前のことです。
早起きのための作戦
睡眠調節は、主に脳幹部に存在する少数の相互連絡系あるいは中枢が、互いに興奮性ないし抑制性の制御を行っている、というのが一般的な見解です。
レム睡眠とノンレム睡眠、交感神経と副交感神経、メラトニン、セロトニン、ノルアドレナリン…
これまでに精神科医として培った経験、身につけた睡眠生理の知識、その全てを総動員し、思考しました。
そして私はまず、アラーム音を ”けたたましいサイレン” から、休日の朝の公園を思わせるような ”小鳥のさえずり” に変えることにしました。
理由としては、睡眠生理、脳内伝達物質の観点から…
とかは正直全部忘れて、「うっさい音で起きても気分悪いわ!」という、快不快のみで決めました。
理論が感情に敗北した瞬間でしたが、実はこれがかなり良かった。
今までのサイレンは、「眠っていたのに、突然強制的に覚醒状態に持っていかれる」ようなイメージ。
1音目から確実に聞き取れるけど自然な覚醒には程遠く、とにかく不快でしかない。
一方小鳥のさえずりは、鳴り始めてから1〜2分してはじめて「あれ、なにか鳴ってる?」と気づきます。
「徐々に睡眠から覚醒状態に浮かび上がってくる」イメージで、自然な覚醒に近く、快でしかない。
そう、私は今まで、嫌がる自分に鞭打って強制的に目覚めようとしていた。
そうしないといけない、自分を律しなければいけないと思っていた。
逆だったんです。
本当は自分に優しくして、少しでも気持ちいい方に自分を誘導したほうが、効果的だったんです。
嫌々やるより、楽しみながらやる人のほうが何においても成果を上げるのと同じ。
なんて気持ちのいい朝だ!このまま起きれば、きっと素敵なことが待ってるぜ!さぁ、最高な一日のスタート、切っちゃえよ!
このように、とにかく自分の機嫌を取り、「乗るしか無い…このビッグウェーブに!」とノリノリの状態にまで持ち上げるために、全力を尽くしましょう。
出来ることは全部やる、使えるものは全部使う
とはいえ、小鳥のさえずりだけで解決するほど、伊達に30年以上寝坊してません。
なんせ「優しいアラーム音は、一定時間を過ぎると ”睡眠をサポートするBGM” に変貌する」という史上最悪の裏切りに、私は何度も絶望してきましたから。
私はこの裏切りを、「”Et tu, Brute?”(ブルータス、お前もか?)現象」と呼んでいます。
そこで「おこしてME」というアプリを使い、パズルを解かないとアラームが止まらないよう設定し、小鳥に続いて畳み掛けることにしました。
さらに、寝室は西側で日が当たらないので、「hue」というスマート電球を使い、起床時刻の30分前から徐々にライトが明るくなるように設定しています。テクノロジーの時代に生まれて本当に良かった…
そして最後のダメ押しで、ベッドから届く場所に目薬を置いておき、アラームを止めたらすぐに目薬をさす!
これもかなり効果的で、是非実践してほしい方法です。
眠気だと思っていたけど、実は単に目が乾燥して開けられないだけだった、という人もいるのです。
私がこれに該当しているのか分かりませんが、これまでに比べ格段に目覚めやすくなりました。
とにかく、気持ちよく自分を目覚めさせるために、出来ることは全部やり、使えるものは全部使う。
ちなみに、発達障害のせいもあって睡眠障害を抱えている、という患者さんも少なくないですが、スマホでもなんでも、使えるものは積極的に使ったほうが良いでしょう。
スマホを自由に使える時間を朝に設定したら、寝坊せずちゃんと起きるようになった子供もいます。
バタフライ・エフェクト
バタフライ・エフェクト、という言葉をご存知でしょうか。
「小さな原因が、思わぬ大きな影響を与える」ことを指す言葉で、「蝶の羽ばたきが、数日後には遠く離れた場所で竜巻を引き起こす可能性がある」という例えから生まれました。モスラは関係ありません。
つまり、わずかな変化が膨れ上がって、未来に大きな影響を与えるということです。
そして実際、早起きというたった一つの習慣が、私の生活に大きな変化をもたらしました。
早起きし、朝シャワーを浴びて髪の毛もちゃんとセット、優雅にコーヒーを飲みながら朝食を食べ、なんなら出勤前に筋トレもしちゃったり、奥さんとドラマ1本見ちゃったり。
そんな朝から一日が始まると、とにかく一日中ずっと「気持ちよすぎるッッ!!」んです。
なんだか仕事でも調子が良いし、「なんで急にお洒落してるんですか!?」と職員から聞かれるたび、「俺、生まれ変わったんで^^」とドヤ顔です。
まだ早起き始めて4日目なのに、溢れんばかりのドヤ顔です。
仕事や勉強に集中できるようになると、今まで後回しにしていた資格の勉強、レポートにも手が回るようになります。
まさか全く無関係に思えた「早起き」と「資格試験の勉強、レポート作成」が、このような形で結びつくとは夢にも思いませんでした。
こうして、私が立てた目標のうち達成率の低かった項目が、芋づる式に達成できるようになったのです。
小さなことからコツコツと
バタフライ・エフェクトは、私たちが日常生活で起こす小さな行動や選択が、未来に大きな影響を与えることを示しています。
今回の早起き然り、健康的な食生活を維持することや、定期的な運動をすることなどなど、今日の小さな行動が明日の未来を、人生を変えることがあります。
それは逆に言うと、私たちが今日怠けたり、不健康な食生活を送ったり、運動不足だったりすると、その影響は将来にも及ぶということです。
駄目だよなぁ、変わらなきゃなぁ、と自分で思いながら生きているのは、不快です。気持ちよくありません。
不快なままでは、不快な未来しか生み出せません。
だからこそ、私たちは今日、小さな行動を積極的に変えることで、未来の自分自身を助けることができるのです。
このように小さな行動が未来を変える可能性を考えると、私たちは自分自身だけでなく、周りの人々にも影響を与えることができるということに気づきます。
私たちが健康的な生活を送り、ポジティブなエネルギーを発することで、周りの人々にも良い影響を与えることができるのです。
千里の道も一歩から。
小さな行動を積み重ね、大きな未来を切り拓こうではありませんか!
それでは、本日はこのあたりで。
また次回のコラムでお愛しましょう!
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