COLUMNコラム

【子どもの貧困問題への取り組みを考える】①現代社会における貧困とは?

こんにちは、所属カウンセラーの古宇田です。

コラムでも取り上げました「こども家庭庁」が発足されて、早1ヶ月が経とうとしています。日常で何かがすぐに変わることはないとは思いますが、昨今の子どもの自殺の増加に対して、こども家庭庁がそうした状況を鑑みて、自殺対策室を設置しました。警察庁、文部科学省、厚生労働省と連携し、子どもの心のケアに対しての体制作りの強化を迅速に図る動きから、こどもまんなか社会を目指していく取り組みがされていると感じました。さまざまな要因が自殺の増加として考えらますが、子どもの命を守るための対策が早急に望まれます。まずは身近な人が子どもの声に耳を傾けることが必要です。

【こどもまんなか社会を目指す】コラムシリーズはこちらからご覧になれます。
【こどもまんなか社会を目指す】①こども家庭庁の成り立ちと役割
【こどもまんなか社会を目指す】②こども政策とこども家庭庁が大切にする3つの姿勢
【こどもまんなか社会を目指す】③こども家庭庁の体制
【こどもまんなか社会を目指す】④子ども基本法とは・・・

さて「子どもの貧困」という言葉をどこかで耳にしたことはないでしょうか?
現在、社会的に注目されるようになった「子どもの貧困」は、子どもを不利益な状況に放置することに対する問題意識が高まってきたからだとも言われています。

貧困の概念は、以前では「飢え」や「ホームレス」などの生存が脅かされる状態として考えられていましたが、20世紀には「健康で文化的な生活」を基準に、そこからの格差を問題とする考え方へとシフトしていきました。

また最近では、所得の格差だけではなく、「社会との関わり」や「社会参加」の欠如や格差を問題とする視点、また「働くこと」や「教育を受ける機会」から排除されていることも問題とされるようになってきています。

先進国の中で依然高いと言われる日本の子どもの貧困率ですが、日本の取り組みによってやや改善は見られているようです。国が取り組みを強化している背景には貧困の連鎖が社会の格差を固定化させてしまうという懸念があるからです。

貧困の問題は、社会的コストの拡充、労働力の質の低下、国の経済力の低下、医療や所得保障の問題、社会的安定が損なわれる恐れがあると考えられており、国としての子どもの貧困対策を推進する背景にもなっています。

【貧困の概念について】

イギリスで貧困問題に取り組む民間組織であるCPAG(Child Poverty Action Group)が、貧困概念を説明する際に用いた3つの資本の欠乏・欠如から貧困にはどのような問題が孕んでいるのかを考えてみたいと思います。

①経済的資本の欠如・・・現代社会における生活は、自身のもつ経済的な資源を、生活に必要な資源に交換することによって成立しています。交換するための所得を持たなければ、生活資源を入手することができない。個人によって持たない原因は異なるものですが、「ない」「不足」は、生存が脅かされる大きな問題でもあります。

②ヒューマン・キャピタルの欠如・・・ヒューマン・キャピタルとは人間がもつ知識や技能を資本として捉えた概念であり、人的資本と表現されます。具体的には資格や学歴としても考えられます。自身の能力を労働力に転換する力の欠如、あるいは、得られた所得を必要な資源に転換する力の欠如が貧困の構造を構成しているとされています。そしてヒューマン・キャピタルの欠如は、低い教育レベルや低い雇用可能性と関係しています。ヒューマン・キャピタルを構築していく場は、学校だけでなく、家庭教育も大切とされています。

③ソーシャル・キャピタルの欠如・・・つながり、近所や友人との関係性、信頼できるコミュニティの欠如により、社会的孤立の問題が発生します。社会的孤立の状況は、コミュニケーション力や自己効力感、雇用の情報へのアクセスなどに影響がでることも考えられます。

これら3つの欠如は複雑に関連しています。また3つが重複することで、困窮状態は深刻化・固定化することになってしまうと考えられています。

例えば、教育を充分に受けられず、安定した仕事に就く可能性が狭まることで、生活困窮に陥ることもあるかもしれない。また世帯の経済的な事情により、その子どもが教育を受ける機会が狭まることも、のちの困窮状態を生み出しかねない。仕事に就くことが難しくなると、社会的な孤立状態にもなりうることで、社会的スキルが低下し、さらに就職が難しくなることで、経済的に困窮する場合もあるかもしれない。これらはほんの一例に過ぎません。

こうした3つの欠如が重複することで、負のスパイラルから抜け出すことが、かなり難しくなることも付け加えておきたいと思います。また子どもの貧困問題を検討する場合には、子どもの生活問題と親も含めた世帯全体の貧困問題の2つが併存していることに注意が必要とされています。

【最後に】

今回は現代における貧困についてお伝えしました。現代における貧困は、ある基準におけるところからの格差を問題とする相対的な貧困という考え方へと転換しています。また多様な貧困の概念が出現することで、「社会的剥奪」「社会的排除」といった言葉が、貧困を説明するために用いられるようになってきています。個人の貧困状況から脱するための力をどのように身に着けるかという視点への関心の高まりがあるなかで、次回は日本の子どもの貧困への取り組みについてお伝えしたいと思います。次回コラムも楽しみにお待ちください。

【参考資料:『子どもの貧困調査』編著・山野則子・2019】

コロナ禍に限らず、さまざまな社会生活の変革という過渡期での不安やストレスは、さまざまな形で表出されることがあります。ポジティブな考えを持つきっかけとして、そして安心・安全な人との関わりを通して生きる力を養うサポートもカウンセリングの一側面とも考えています。子育てや子どもの抱える不安やストレスに関してのご相談もお受けしております。

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Writing by古宇田エステバン英記

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