COLUMNコラム

【学齢期の子どもの心理】「チック」について考えてみる②

🔶はじめに🔶

こんにちは。所属カウンセラーの安澤です。

昨年末からのチックのコラムは続編となりますが、年度は変わり、2023年度となりました。

道を歩いていると、至る所で桜満開の木々を拝見して、春の訪れを感じさせられる今日この頃です。そして……

新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。
進級生の皆様、ご進級おめでとうございます。
新社会人の皆様、ご就職おめでとうございます。

昨年度は4月末でのご挨拶だったので時期遅れでしたが、今年度はこの丁度良い時期に伝えらえることを嬉しく思います。
昨年度の今頃はまだコロナ禍のトンネルの深部におり、まだまだゴールは見えなかったのですが、今年度はややゴールが見えつつあるようなところまできているのでないかと淡い期待を抱いています。

もちろん、新型コロナウイルスはもとより、ウクライナ情勢も依然混沌としていますし、地震等の災害も各国で繰り返されており、物価の高騰も止まらず、混乱や不安を招くニュースは後を絶ちません。
しかし、WBCの日本優勝のみならず各国選手の大活躍、甲子園球児のひたむきな野球への姿勢、競馬ファンとしては3月末のドバイワールドカップの日本馬の優勝は感動的なものでした。他にも勇気づけられるニュースは多数ありました。

ここで昨年4月に私のコラムで掲載した冒頭のつぶやきを今一度、載せたいと思います。
なかなか難しいことではありますが、だからこそ常に意識づけするようにしている内容であるため、自戒の意を込めて、一つのメッセージとして受け止めていただければ幸いです。

~メッセージ~

私自身は、何かに直面した時、以下の視点を持つよう努めています。
前向きな発想に基づくものです。
そして、ほとんどの出逢った方々にお伝えしてきた内容です。

真っ白いTシャツのシミを見つけると、そのシミばかりに目が留まってしまうものです。
その習慣はなかなかすぐには消えないかもしれませんし、すぐに消す必要もないかもしれません。
ただ、Tシャツの白い部分を見続けることもとても大事なことではないでしょうか。
もっと言うと、シミだらけのTシャツがあったとしても、白い部分を見続ける視点を持ち続けても良いのではないでしょうか。

さらには、個人的には、Tシャツにシミが出来た経緯に着目して、そのシミをどう洗濯していくか、そのシミが消えなくてもどう向き合っていくかということも考えるかもしれません。

いずれにせよ、ネガティブな出来事があっても、しっかりと誰かの手を借りつつ、しっかりと向き合い、様々な視点で考え続けること。そして、連想していく中で創造していくこと。

一人では苦しいですが、傍にいる、信頼の出来る誰かと共有しながら、今年度も、気持ちを無駄にすることなく吟味していけたらと考えています。

~おわり~

私自身は新年度だからといって、気持ち新たにというつもりはなく、むしろ初志貫徹を大切に過ごして参りたい気持ちでいます。その中で、自分自身が成長出来るもの、奮い立たせられるもの、勇気づけられるもの、ハッと気づかせられるものなどを取り入れて、自分自身を上書きコピーしていけたらと考えています。

チックへの対応

さて、前置きが長くなりましたが、今回は、「チックについて考えてみる」の続編となります。主にチックへの対応について述べていきます。

新たな環境での生活のスタートは、どうしても期待と不安の混在があり、ストレスを蓄積しやすい時期と言えます。特に子どもたちは、そのストレスを言葉で上手く表現することが難しい場合があります。このような時にもチックの症状は表れやすいです。もちろん、大人にもそういうことはありえますが、大体は学齢期の子どもたちによく見られる症状だとは思います。

子どもたちも大人にも見られるチックの特徴については、前回簡単ながらお伝えしました。
【学齢期の子どもの心理】「チック」について考えてみる①

そのチックの症状を見つけた時、誰しも「ん?」と思いますし、「どうしたらいいだろう」と考える方もおられるでしょう。これまでもチックの対応については、私自身にもよく相談がありました。多様な種類のチックがあるため、かかわり方、対応の仕方も様々であり、その都度、相談される方と一緒に考えてきました。

私自身がチックへの対応を行う際に、経験的に大切にしていることは、「その相談者の生活観に即した、可能な対応方法を考えること」です。理論的なこと、専門的なことももちろん共有しますが、とはいえ、生活場面の理解がなければ、実践的な対応としては意味を成しません。たとえそれが一時的な効果であるとしても、それによって親子が少しでも気を紛らわせられるのであれば、その方法は立派な対応方法だと考えています。

そのスタンスを大切にした上で、ざっくりした分かりやすい表し方をすれば、「基本的な心構え」と「各チック症状に合わせた対応法」、「あまりにひどい場合の受診含めた対応」で分けています。
この3つの対応方法に即して、以下に説明していきますが、まずは「基本的な心構え」についてです。

🔷基本的な心構え🔷

まず、基本的な心構え・心づもりについて取り上げます。どういう対応をするにしても、以下のような意識づけが大前提となるかと思いますので、取り上げていきます。

🔷子どもの意思に関係なく、不随意な運動であると認識する。

子ども自身、チックをわざとやっている訳ではありません。気づいていても、気づいていなくても、自分の意思とは関係なく生じてしまう症状です。この認識がないと、周囲の人たちは、「またやってる」、「何度言っても分からない」、「いい加減にしなさい」等と、思ったり言ってしまったりしてしまいます。まずは、子どもが、チックをしたくてしている訳ではないということを思うことが大切です。

子ども自身も、チックが出てしまったり、誰かに注意されたりしたとしても、自分が悪い訳ではありませんから、責めるようなことはする必要ありません。

🔷チック症状は、基本的には年を重ねていくにつれて、減ったり消えたりしていく。

学齢期、特に小学生の時期はよく見られて、「えっ…チックじゃん…」と思うこともしばしばありますが、年齢が上がるにつれて大体は自然と、徐々に減っていく可能性が高いでしょう。逆に意識し過ぎたかかわりをすると、余計に不安を与えて長引くリスクもあるため、「時期が経てば、良くはなっていくな、きっと!」という位に、まずは思っていただいた方が良いかと思います。

🔷チックについて怒鳴ったり指摘したりすることはしない。

周囲の人たちが気になったとしても、「止めなさい!」、「気になるんだけど」、「何やっているの?」と怒鳴ったり指摘したりすることは、子ども自身に余計に緊張や不安、恐怖心をもたらすだけであり、チックの症状を止めることには到底繋がりません。子どもはしたくてしている訳ではありませんから、怒鳴りや厳しい指摘はしないよう細心の注意を払うよう努めることが大切です。

🔷もし子どもに確認するとしたら、チックの背景にあることについて優しく声掛けしたり、その内容を聴いたりする。

やはり周囲の人たちは、子どもにチックの症状が表れているのを見ると、どうしても気になってしまいます。特に保護者の方は「どうしよう…注意はだめだし…」、「またやっている…気になって仕方がないけれど、このままでいいのかな」と心配されると思います。極力は触れないかかわり方が良いですが、もし声掛けをすると言うならば、チックの背景にある不安や心配事に焦点を充てることが大切です。

「何か心配なことある?もし困っていることがあるなら、話を聞くからいつでも言ってね」、「〇〇のこと、大丈夫になった?一緒に考えるよ」とチックには触れずに、チックの背景に考えられる内容について投げ掛けをしてみたり、子どもがネガティブな気持ちを言い出したら、ただひたすら耳を傾けるようにしていくことが大切です。

🔷子ども自身が気にしている場合には、安心出来る声掛けを行う。

子どもも音声チックで音を気にしたり、運動性チックが長時間続いて変な感じを抱いたりする場合もあるかもしれません。誰かに言われ続けて気にしている場合も充分にあります。とは言え、子ども自身にはどうして良いか分かりませんし、誰かにも言いづらいでしょう。周囲の大人たちが、もし子どもが気にしているような発言があったり、チックで辛そうにしていたりしていたら、まずは無条件に耳を傾けつつ、「大丈夫だよ」、「そのうち治ってくるものなんだよ」、「気にしないようにすることが大事だよ」と伝え、安心感を与えることが大切です。

子ども自身は、どうしても気にしてしまうと思いますが、周囲の大人で言える人がいれば、辛いことを伝えてみましょう。もし言えない状況ならば、チックが気にならないように、違うことを考えたり、場所を変えて違うことをしたり、好きなことをしたりしましょう。

🔷出来る限り子どもがストレスを溜めないように生活出来るよう心掛ける。

チックの原因には、生物学的な原因もあると考えられるようになっています。つまり、ストレスだけではなく、遺伝的になりやすい子どもたちもいるかもしれません。しかし、なりやすい子どもたちであれ、なりにくい子どもたちであれ、いずれにせよ、ストレスを溜めてしまうことが、そのチック症状を増悪させてしまうリスクがあります。
子どもによってストレスの発散方法は様々ではありますが、少しでも子どもに自由な時間や一緒にいてあげたり遊んだりしてあげて、ストレスから離れ、楽しい時間を増やし、安心して過ごせるようにすることが大切でしょう。

🔷すぐに発達障害ではないかと思わないようにする。

確かに注意欠如多動症や自閉スペクトラム症、強迫症との関連や合併しやすい傾向があるとも言われますが、あまりその視点は強めず、あくまで目の前の子どもの気持ちや子どもにとってどうしたら不安を和らげられるかの視点を大切にすることが重要です。仮に疾患について以前に言われたり、診断がついていたりしたとしても、専門家に相談してから対応の術を考えていけばOKです。

🔷通常の生活を心掛けるようにする。

どうしてもチックのような症状が目に留めると、その症状を何とかしようと思いがちになってしまいます。それは止むを得ません。しかし、何とかしようとする周囲の人たちの思いと、子どもたちの不安が重なり合うと、余計にギスギスした緊迫感のある中での生活となり、安心した生活から掛け離れ、ストレスが蓄積される暮らしになってしまいます。チックの症状があったとしても、通常の家庭での生活が出来ていたり、学校生活でも問題がない様子であったりすれば、その生活の流れを大切にすることが必要です。

🔷上記の心構えについて、親族や周囲の関係者と共有する。

チックの症状については、子ども本人と対応する大人だけが考えていけば良いという訳ではありません。子ども自身に関係する人たち、例えばきょうだいや祖父母、子どもの友人の保護者、担任や養護教諭、学童の指導員、習い事の先生などにも、上記の心構えについて伝えておかないと、身近な人だけが心づもりをしても違うところで起きて欲しくないことが起きてしまいます。余り伝えたくない内容かもしれませんので、事細かには必要ありませんが、ただチック症状への心構えについては、子どものためにも知っておいてもらうことが良いと思います。

🔷チックの症状について一人で抱え込まず、少しでも気になったら相談する。

医療レベルかどうかも含め、親族だけで判断をせず、スクールカウンセラーや教育相談、大学付設の臨床心理センター、民間のカウンセリングオフィスなどでも構いません。気になったら早い段階から相談して対応を一緒に考えていくと良いでしょう。

🔶さいごに🔶

今回は、「チックへの対応」の中で、「基本的な心構え」について述べてみました。本当ならば、一つ一つの様々な種類のチックへの具体的な対応についても軽く触れられたらと思いましたが、文章量が多くなりましたので、ちょっと先になりますが、次回に取り上げることにしました。

新年度、良いことも悪いこともあるかもしれません。環境が変わり、心臓がバクバクしている人もいらっしゃることでしょう。みんな同じ気持ちを抱いています。一人ではありません。そういう気持ちを誰かに共有するのも良し、胸に秘めたままでも良し、私たちのリラックス出来る方法で、気持ちを整理していければと思います。

そして、どんなに不安になっても、失敗したとしても、必ず時は過ぎます。

1日1つ、自分へのご褒美を忘れずに、1日1日を地道に、悔いなく過ごしていきましょう。

それでは、また!!

🔶お知らせ🔶

親子関係の問題、お子様とのかかわり方、育児、DVのほか、発達段階(幼児期、児童期、思春期、青年期、壮年期)、発達面の課題、非行、ひきこもり、ストレス・不安・躁うつ・強迫・依存など様々な精神症状に関すること、自己理解、対人スキルといった個人や関係性に関わる内容、不登校、いじめ、特別支援、高校への進路支援など学校と関連する内容など、様々なご相談に対応させていただきます。

昨今、コロナ禍で閉鎖的な風潮が加速化する中、お一人に悩まれ続け、辛い思いをされている方も多くおられると思いますが、一人で抱え込まず、誰かに吐きだして、少し軽くなったり、気持ちに余裕が生まれたりしていくことも時には必要かもしれません。

人それぞれ必ずご自身で感じ取る力、考える力は備えられています。しかし、精神的に余裕がない時には、その力を発揮することが難しくなります。ちょっとだけ、ゆっくり、じっくり、のんびりと、呟いたり、ご自身と見つめ合ったり、誰かと共有したりすると、ほっこりと、リラックス出来て、ご自身の感じ取る力や考える力が増していければ何よりです。

何か思うところがありましたら、いつでもご相談をお受け致します。

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Writing by 安澤 好秀

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