COLUMNコラム

【学齢期の子どもの心理】「チック」について考えてみる①

🔶はじめに🔶

こんにちは。所属カウンセラーの安澤です。

だんだんと、ぽかぽか春の陽気に包まれてきた今日この頃。
みなさん、いかがお過ごしですか?
2月のコラム冒頭に重ねて申し上げ、くどくなりますが、1年もまもなく4分の1が終わろうとしています。早いですね。。。

「コロナ不安」も少しずつ減ってきたのか、近くのスーパーに買い物に行く時に、外でマスクをしている人が少なくなっている印象があります。

もちろん、まだまだ安堵する気持ちまでには至りませんが、ここ数年の年度変わりの時期のどんよりした空気感から開放されてきているような、そんな感覚を得ます。

恐らく、映し出されている光景には、私の心の中のものが映し出されているのでしょうが、少しずつトンネルから出て来られているのかなと感じています。

さて、卒業シーズン。児童、生徒、学生の卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。
子どもも大人も、出会いと別れの季節であり、センチメンタルになりやすい時期です。

児童、生徒、学生たちには、春休みに、思う存分時間を使っていただき、楽しく、安心する一時を過ごして欲しいなと心より思っております。
大人の方々はなかなか時間を作れないかもしれませんが、あわよくば、1日程度お休みを取り、「普段からやりたいけれど時間がなくてやれない」ということのうちの1つでも良いので、胸の奥に詰まっている願望を放出して欲しいと願うばかりです。

新年度に向けて期待と不安の混在する時期、心身のコントロールも難しくなりますが、ご自身に一つでもご褒美を上げてあげてくださいね。

さて、前置きが長くなりましたが、今回のコラムのテーマは、「チックについて考えてみる」です。
なぜ急に「チック」?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私も理由は分かりません(笑)
きっと緊張と不安と興奮の時期が関係しているのかもしれません。
そして、「心理社会的モラトリアム」からも脱しつつあり、先を見据えてという理由で、まずは「チック」について取り上げてみようと思います。

私が勤めている様々な場所で、「チック」の症状を直接目にする機会は多く、相談されることも多々あります。これまでに保護者からの相談のほか、教員研修など行い、子どもと関わる方々に対して、「どのようにチックと向き合えば良いか」という視点で対応してきました。その視点を大切に、説明していけたらと考えます。

チックとは…

チックについては、至るところで取り上げられており、よくご存じの方もいらっしゃるかと思います。

チックは、子どもによく見られる、自分の意思に関係なく繰り返し勝手に生じる発声や身体の動き(運動)です。
専門的には、「突発的、急速、反復的、非律動性の運動または発声」と言われています。

おおよそ就学前から学齢期(4歳~11歳)の子ども、特に男児に出現しやすい症状となります。そして、基本的には、一過性のチックが多く、成人になる頃までにチック症状は軽快すると言われています。中には、大人になってからもチック症状が見られる場合があります。

チック症状は、他の障害と合併しやすい傾向があると言われています。例えば、注意欠如多動症や自閉スペクトラム症、強迫症などが挙げられます。いずれも子どもによく見られる疾患となります。

まず、チックについて簡単に説明してみます。

🔷チックの種類🔷

チックには、「運動性チック」と「音声チック」があります。

「運動性チック」については、「持続時間の長短」によって「単純性運動性チック」と「複雑性運動性チック」に分けられます。

「音声チック」は、「言葉や意味の有無」によって「単純性音声チック」と「複雑性音声チック」と分類されます。以下に説明してみます。

🔷単純性運動性チック

一番目にすることが多いチックです。目の瞬きでパチパチが多くなっている様子、突然の首振り、急な首や肩のすくみ、唇がピクピクした動き、顔をしかめる様子などのシンプルな身体の動きや運動です。

🔷複雑性運動性チック

度々目にすることがあると思います。手を振ったり指を動かしたりする、飛び跳ねる(ジャンプする)、足を地団駄のように踏み鳴らす、身体をクネクネさせる、頭を同じように動かし続ける、自分を叩く、相手の真似をする、卑猥な動きなど、複数の、複雑な身体の動きや運動を言います。

🔷単純性音声チック

よく耳にすることがあると思います。風邪ではないのに咳払いをしている、鼻をすする、「あっ、あっ」と声を出す、「ンゥン、ンゥン…」と喉を鳴らす、「ヒューヒュー」などと言う、舌打ちなど、言葉ではない音を鳴らすものです。

🔷複雑性音声チック

時々見かけることがあるかと思います。「バカ」といった相手を非難するような言葉、下ネタのような言葉、甲高い奇声などです。意味のある言葉や文章、汚言などになります。

分かりやすく、表にしてまとめてみます(図-1)

図-1 チックの分類

診断基準

【ICD‐11】

2022年1月に、WHO(世界保健機関)で発効されたICD-11(国際疾病分類)では、チックについて、「一次的チック」または「チック症」という名称になっています。ICD‐10では情緒障害の分類でしたが、神経発達症の分類に括られています。

【DSM‐Ⅴ】(2013,2014)

2013年に発表されたアメリカ精神医学会のDSM‐Ⅴ(精神疾患のための診断と統計のマニュアル第5版)においては、チック症群・チック障害群に分類されています。
また、「暫定的チック障害/チック症」、「持続性(慢性)運動または音声チック障害/チック症」、「トゥレット障害/トゥレット症」の3つが主なチックの診断基準となります。

🔷「暫定的チック障害/チック症」

1種類または多彩な運動チックおよび/または音声チックが起こります。最初にチックが始まってから1年以上は続きません。発症は18歳以前です。

🔷「持続性(慢性)運動または音声チック障害/持続性(慢性)運動または音声チック症」

1種類または多彩な運動チック、または音声チックがどちらかが起こります。両者がどちらも見られることはありません。そして、疾患のある時期に存在したことがあるとしています。チックの頻度は増減することがありますが、最初にチックが始まってから1年以上は続いています。発症は18歳以前です。

🔷トゥレット障害/トゥレット症候群

チックの中で最も重症の型です。多彩な運動チック、および1つまたはそれ以上の音声チックの両方が、同時に存在するとは限りませんが、疾患のある時期に存在したことがあります。チックの頻度は増減することがありますが、最初にチックが始まってから1年以上は持続しています。発症は18歳以前です。

チックの原因

現在では生物学的な要因が強いと考えられている一方、1つの要因というだけではなく、様々な要因が絡んで生じると考えられています。
もともと自然に行っていた習慣、癖で行っていた運動(動作)、行為、発声が、様々な理由からチック症状として化していることも考えられます。

🔷身体的・心理的要因

日々の身体的な疲労、精神的な不安、緊張・興奮が増加してストレスが蓄積される中で、生じやすくなると言われています。

🔷環境的要因

心理的なストレスを生じさせる環境の変化(場面切り替え)、緊張を伴うテストや発表する時、難しいことや分からないことに直面した時、誰かから注意や叱りを受けた時など、他方で、誰かの真似をし続けている中で学習してしまった時など、周囲や環境の影響を受けることもあると考えられています。

🔷生物学的要因

チック症やトゥレット症は遺伝子の影響を受けています。出産の際に生じた合併症、父親の高年齢、低出生体重、妊娠中の母親の喫煙なども関連していると考えられています。発達に偏りのある子どもは、見通しを立てにくく、変化に弱い場合があり、チックが誘発されやすいとされています。

🔶さいごに🔶

今回は、「チックとは何か」、「チックの種類と特徴」、「チックの診断基準」、そして「チックの原因」について取り上げました。ご存じの方が多いと思いますし、多数の書籍やネット情報にも記載されており、新鮮さはないかもしれませんが、改めて整理出来る機会となればと思います。

また、ご存じない方、目新しい情報と感じられた方にとっては、「こういうのもあるんだなあ」と思っていただき、普段の生活でもしかしたら遭遇するかもしれない時に、相手を理解するための1つの手掛かりとして思っていただければありがたいです。

共通して言えることは、チックの症状を見掛けても、あまり深刻に考え過ぎないことが大切かと感じています。一人で考え込むと、不安になりがちですし、否定的な情報が記憶に残ってしまいますから、もし気になるようでしたら、お近くの方、相談出来る方に、呟いたりご相談したりするのが、安心に繋がっていくでしょう。

次回は、主に「チックの対応、心構え」について述べていきます。
新年度を迎え、緊張と不安、そして興奮の連続の時期となりますが、リラックスしながら過ごしていきましょう!!

それでは、また!!

🔶参考文献🔶
【著】アレン・フランシス【訳】大野裕ら 2014 DSM-5 精神疾患診断のエッセンス DSM-5の上手な使い方
【監】日本精神神経学会 2013 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

🔶参考資料🔶

ICD-11の発達障害関連の情報まとめ│一般社団法人 こども発達支援研究会 (kohaken.net)

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昨今、コロナ禍で閉鎖的な風潮が加速化する中、お一人に悩まれ続け、辛い思いをされている方も多くおられると思いますが、一人で抱え込まず、誰かに吐きだして、少し軽くなったり、気持ちに余裕が生まれたりしていくことも時には必要かもしれません。

人それぞれ必ずご自身で感じ取る力、考える力は備えられています。しかし、精神的に余裕がない時には、その力を発揮することが難しくなります。ちょっとだけ、ゆっくり、じっくり、のんびりと、呟いたり、ご自身と見つめ合ったり、誰かと共有したりすると、ほっこりと、リラックス出来て、ご自身の感じ取る力や考える力が増していければ何よりです。

何か思うところがありましたら、いつでもご相談をお受け致します。

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過去の【学齢期の子どもと心理】コラム by 安澤 好秀


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Writing by 安澤 好秀

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