COLUMNコラム

【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:「守ってもらう感覚」を体感しよう!-自己理解のススメ-

所属カウンセラーの水野です。

7月に入りました。
なんと!今年は、6月中の梅雨開けとなりましたね。

前回、雨の日の楽しみ方についてもお伝えしましたが、少しお試しいただけましたでしょうか?
前回のコラムはこちらです⬇︎
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:良好な関係性に導く10のポイント
暑い日の楽しみ方も探していかなきゃなぁ・・・と思っています。

6月前半は、涼しい日も多々あり、疲れが出て、体調を崩していらっしゃる方を多くお見受けしました。そして、後半は一転して猛暑日が続き、早くも熱中症のニュースが日々取り上げられていましたね。

体温調整が難しい日々です。自律神経も乱れやすくなっています。
皆さまも、体の疲れが出てきているのではないでしょうか。

猛暑によって、冷房にあたりながら過ごす日々となりますので、
体を冷やし過ぎないよう、お風呂に少しでも浸かっていただき、ふかーく息を吸い、ゆっくーり息を吐き出す「深呼吸」を日々の生活の中に取り入れながら、引き続きリラックスできる時間も作りながらお過ごしください。そして、更なる暑さに向けて、エネルギーを補給してくださいね。

体のエネルギー補給も大切ですが、心のエネルギー補給も同様にとても大切です。
共感されることを通して、心はエネルギー補給されます。

心のエネルギー補給のためには、大切な人を大切にすること、大切にできることが、必要不可欠なのです。

私のコラムでは、「大切な人との関係性をどのように築いていくか」についてお伝えしています。

これまでのコラムはこちらです⬇︎
【関係性の相互性からみる心の発達】水野コラム

数ヶ月に渡り、自分の気持ちに目を向けて、整理すること、自己理解についてご説明して来ました。

本日は、「守ってもらう感覚の大切さ」観点から、「良好な関係性において自己理解はなぜ必要なのか」理解を深めてみましょう。

自己理解が良好な関係性に導く理由

「大切な人を大切にすることとは、自分の核を守りながら、相手の核も守ること」です。
*自分の核…無意識に積み上げたご自身の過去の体験、信念、文化、誇りなどの大事にしているもの、願望など、自分の個性を創り出す大切なもののこと。

このことを達成するためには、
1.自分の核を知る
2.自分の核を守る
3.自分の核について説明する
4.自分の核を相手にも守ってもらう
5.相手の核を知る
6.相手の核を守る
7.相手の核を守っていることが相手に伝わる
この1〜7の条件が必要です。

大切な人を大切にすること、大切にできることは、「自分自身を大切にすること」にも繋がる大事な作業です。従って、「1.自分の核を知ること」から「7.相手の核を守っていることが相手に伝わる」までの全ての条件が達成されてこそ、自分を大切にすることに繋がるのです。

自己理解を深めることは、上記1〜7の条件を達成する上での第一歩です。

なぜなら、自己理解を起点として以下のプロセスが生じるからです。

① 自己理解を深めることで、自分の核を意識化できるようになる
② 自分の核を意識化できることで、自分の核を自分で守れるようになる
③ 自分の核を守れることで、自分の核について相手に伝わりやすい形で説明できるようになる
④ 自分の核について相手に伝わりやすい形で説明できることで、相手にも守ってもらえるようになる
⑤ 自分の核を相手にも守ってもらえることで、相手の核も同じように守ろうとするモチベーションが高まる
⑥ 相手の核も同じように守ろうとするモチベーションが高まることで、相手の核を知ろうとできるようになる
⑦ 相手の核を知ろうとできることで、相手の核について知ることができるようになる

そして、「相手の核について知ることで、相手の核を意識化できるようになる」というように、自分や相手を主語とした形で、①〜⑦が繰り返されます。

つまり、自己理解を起点に、「共感」の循環を生むこともできるのです。

①〜③は、自分で行う作業です。
④〜⑥は、相手との共同作業です。
そして、⑦は、相手の核を尊重し、再度自分自身の中で行う作業となります。

「同じ趣味の人と関係性が築きやすい」とよく言われますが、それは、上記と同じようなプロセスや心理が無意識的に生じやすいからです。

例を挙げて考えてみましょう。

山登りが好きなAさんが、同じく山登りが好きなBさんに出会ったとします。

A1:「私、山登りが好きなんです。」
B1:「私も、山登りが好きなんです。」
A2:「そうなんですか!どちらの山に行かれるんですか?」
B2:「〇〇山に行きます。Aさんはどちらですか?」
A3:「〇〇山に行きます。山登りいいですよね!」
というように、同じ趣味をお持ちの方同士の会話が弾む様子は想像できますね。この先も会話を弾ませ、仲は深まっていきそうです。

では、上記の会話を分析してみましょう。

前提として、趣味とは、自分自身が好きなこと(自分の核のひとつ)であると理解しており、大切に守っているものでもあります。これは、プロセス①〜②にあたります。

A1:Aさんは、「山登り」が自分の好きなこと(自分の核のひとつ)と理解しているので、Bさんに「私、山登りが好きなんです」と説明できています。これは、プロセス③にあたります。

B1:Bさんは、Aさんが「好きだ」と言った山登りに対し、「私も」と回答しています。これは、Aさんから言われた「好きだ」という気持ちを、受け止めている(守っている)ことと捉えられます。これは、プロセス④にあたります。

A2:「私も」と回答してくれたBさんに対して、Aさんには、プロセス⑤が生じています。そして、Aさんは、「どちらの山に行かれるんですか?」とBさんへの理解を深めようと質問しています。これは、プロセス⑥にあたります。

つまり、
プロセス⑤「自分の核を相手にも守ってもらうことで、相手の核も同じように守ろうとするモチベーションが高まっている状態」を生じさせたことにより、プロセス⑥「相手の核について知ろうとする行動」に繋がっているのです。

このプロセス⑤と⑥が起きた後のBさんの反応(B2)を見てみましょう。

B2:Aさんに質問されたBさんは、Aさんに関心を示されている、受け止めてもらっている(守ってもらっている)感覚を得ています。(プロセス④)そして、Bさんにも、同様にプロセス⑤が生じ、Bさんは「Aさんはどこが好きか?」と質問しています。これは、プロセス⑥にあたります。

このことは、プロセス⑤によって生じた、プロセス⑥「相手の核について知ろうとする行動」連鎖していくことを示しています。

「大切な人を大切にすることとは、自分の核を守りながら、相手の核も守ること」と一文で表されているものの、そこには様々な達成条件や、プロセスがあるように見受けられます。

しかし、これを達成させることは極めてシンプルです。
プロセス⑤を生じさせれば良いのです。それによって、「良い循環を生める」ということなのです。

プロセス⑤を生じさせるためには、プロセス①〜③の自己理解プロセス④「相手に伝わりやすい形で説明し、守ってもらえるようになること」が大切なこともご理解いただけるかと思います。

プロセス⑤「自分の核を相手にも守ってもらうことで、相手の核も同じように守ろうとするモチベーションが高まっている状態」とは、「共感」に通ずる心理です。「相手に共感するモチベーション」が高まっている状態と言えます。

プロセス⑤を生じさせることが大切なのは、大切な人との関係性においてだけではありません。
子育てや職場においての、「指示」をする場面でも同様の原理です。

「怒られたら怖い」という恐怖心から、相手を動かすこともできます。しかし、このことは、負の連鎖しか生みません。なぜなら、人は恐怖には、慣れていくからです。慣れた相手に対しては、より強い恐怖を生むことでしか対応ができなくなるのです。

「共感」を生じさせることでこそ、人は繋がりを感じることができ、人の心は動くのです。

「守ってもらう感覚」の大切さ

職業柄、様々な子どもたちに出会う機会があります。
近年の子どもたちが抱える悩みは多岐に渡っており、友人関係、家族関係に加え、ネットによるいじめ、摂食障害、虐待、自傷行為など、様々です。

先ほども、「大切な人を大切にすることとは、ご自身の核を守りながら、相手の核も守ること」であるとお伝えしました。

しかし、子どもたちと関わる中で、この「守ってもらう感覚」を感じられていない子どもたちが深い悩みを抱え、苦しんでいる現状を目の当たりにします。

子どもから悩みや問題を打ち明けられた時、
「親には言わないで」
と、言う子どもがいます。

それは、「怒られるから」ではありません。
親に「心配をかけたくない」と必死に訴えるのです。
自分のせいで親を「傷つけたくない」と言うのです。

その対応は専門家としても、とても難しいと感じています。
子どもたちに関わる、いち心理士(心理師)、そして大人として、その子に、小さな体で「必死に守ろうとしているその親」にどのように対応すれば良いのか・・・
正解のない心理学、子どもの育成に関わっているとは理解しながらも、やはり難しいのです。

彼らと話している時、
「しっかりしている」と感じられることが多くあります。
冷静で、多角的な視点で物事を捉え、大人の気持ちに寄り添う。子どもと話している感覚にならないのです。
しかし、彼ら話の中には、「その子自身の気持ち」は出てはこないのです。出てこないどころか、「しっかりできていない自分」を責め、「迷惑をかけて申し訳ない」と謝るのです。

「守ってもらう感覚」が養われずに育った子どもたち、「しっかりしている」彼らは、支援の手が入ったとしても、すぐに「守られる側」にまわることはありません。
私たちにまずできることは、子どもたちが必死に守ろうとしている親の存在も認め、その子と一緒に親を守る存在であると、子どもたちに体験してもらうことからスタートするのです。ひとりで抱え込まないこと、その感覚を体感してもらうことが第一ステップとなるのです。

「守ってもらう感覚」を感じられていない子どもたちの問題のひとつとして、ヤングケアラーが挙げられます。
子どもの人権やヤングケアラーの問題については、古宇田が詳しくお伝えしておりますので、ご参考にされてください⬇︎
【児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)】ひとりの人間としての権利を考える
【日本におけるヤングケアラーの現状】ケアを担う子どもたち

「親からの無償の愛」と言われることもありますが、
その「無償の愛」を与えているのは、親ではなく、むしろ子どもたちの方なのではないか・・・
と、子どもたちと接している中で、感じることがあります。

「親は子どもが必要な物を与えるから」という理由以上に、子どもは「自分の親だ」という理由で、いかなる親であっても、受け入れ、慕い、否定せず、かばい、幸せを願っている。厳しい状況におかれている子どもであればあるほど、必死にその存在を守ろうとしているように見受けられるのです。

「幼少期に形成した愛着関係は成人になってもそのまま受け継がれる」
「幼少期に形成した愛着関係が成人になった際の関係性上で再現される」

議論の余地がありつつも、愛着理論において、そのような研究結果が出される理由もよくわかる気がします。
それほど、子どもたちは、心を使い、その存在や、関係性を必要とし、愛しているのです。

しかし、犠牲を払い、傷つきながらも、大人を必死に守る「責任」は子どもたちが担う必要のあるものなのでしょうか。

私が高校時にホームステイをしていた時のことです。電車に乗り遅れ、門限の時間を大幅に遅れて帰ったことがありました。
電車に乗り遅れ電話した際、ホストマザーからの心配を感じつつも、「どうして約束を守れなかったのか」と咎めらている様子も感じ取れました。心配をかけた申し訳なさと、約束が守れなかったことを咎められるかもしれないと気が気でない私は、ビクビクしながら帰宅したのです。

私はドアを恐る恐る開けました。玄関で出迎えてくれたホストマザーは一言、
「あなたは、親元を離れて生活してしっかりしているように見えるけど、まだ17歳なのよね。」
と言いました。そして、怒るどころか、優しく家に招き入れ、お風呂に入るよう言ってくれたのです。

「まだ17歳」
その言葉は、決して、「まだまだ、子どもね。」といったような、非力で未熟な子どもとして、私を見下した言葉には聞こえませんでした。

他者に迷惑をかけずに、しっかり自立して生活していくこと
寮生活において、「自分の責任は自分で負えるよう必死に努めてきた」私にとって、「まだ17歳」その一言は無意識的な私の頑張りを受け止めてくれたように感じられたのです。

「私ってまだ17歳だったんだ」「あー私ってまだ子どもだったんだ」と、今ある自分自身をしみじみと感じたことを今でも鮮明に覚えています。その時の私は、「大人に守られるまだまだ非力な子ども」を体感したのですが、決してそれは居心地の悪いものではありませんでした。
「ひとりで頑張らなくて良い」「心配をかけても良い」ということ、そして「子どもを心配をするのも大人の役目なのだ」と言ってもらえた気がしたのだろうと思います。今振り返っても、きっとこれが「守ってもらう感覚」なのだろうと感じています。

「人権が尊重される権利」は、大人でも、子どもでも、対等です。
子どもも尊厳のあるひとりの人間として、尊重されるべき存在です。

しかし、子どもたちは大人に守られるべき存在です。
この点においては、やはり「対等」にはなり得ないのではないでしょうか。

自立を促すこと−守ること
そのバランスをとることは、子育てにおいて、最も難しいことかもしれません。
他者に迷惑をかけないように、心配をかけないように、自立できるように、育てることももちろん大切です。

それと同様に、しっかり大人に守ってもらうこと、「守ってもらう感覚」を体感することは、将来、子どもたちが成長し、関係性を築いていく上でとても大切なのです。

「守ってもらう感覚」を体感すること
それは、「守るということ」がどういう状態であるかを知ることに繋がります。
そして、「自分自身を自分で守る」、自立ができるようになるのです。
自身の自立を通し、相手を「守る」方法を知ることができるようになります。ひいては、自分を「守ってくれる」相手を見つけられるようになるのです。

この「守ってもらう感覚」が大切なのはお子さんたちだけではありません。どの人にとっても、どの関係性においても、大切な感覚です。

子ども時代に、「守ってもらう感覚」を持てないまま、育ったという方もいるかもしれません。
先ほども記載しましたが、「幼少期に形成した愛着関係は成人になってもそのまま受け継がれる」「幼少期の愛着関係が成人期の関係性上で再現される」との愛着理論もあります。
残念ながら、幼少期に戻り、「守ってもらう感覚」を再体験することはできません。

しかし、「今ある関係性を通して、愛着のスタイルを変容させることも可能」との研究もなされています。

従って、大切なのは、「今ある関係性」を充実させることです。

何度もお伝えしているように、良好な関係性は、「スキル」を身につければ築きあげれるものです。
「スキル」を身につければ「今ある関係性」を充実させることは可能になるのです。

その「今ある関係性」の中で、「守ってもらう感覚」を体感していきましょう。

このコラムを通し、みなさまが、「自分の核が守られている感覚を感じながら、相手の核も守れる」スキルを身につけ、今ある大切な人との関係性の中で、自分や相手を「知ってもらう−知ろうとする」「共感してもらう−共感する」良い循環を生める第一歩にしていただけると幸いです。

まとめ

今回のコラムでは、
・自己理解が良好な関係性に導く理由
・「守ってもらう感覚」の大切さ
についてお伝えさせていただきました。
自分の核を知り、相手に伝わりやすい形で伝え、相手にも守ってもらうことが大切なのです。

良好な関係性は、お互いの努力によって成し遂げられます。自分だけの努力ではどうにもできないこともあるのかもしれません。

しかし、「自分だけではどうにもできない」と悲観的になる前に、
自分の気持ちに目を向け、整理し、自己理解を深めること

子どもは子どもらしく。
その人はその人らしく。

今あることを受け止めていくことは大切なことです。

良好な関係性のために、まずは自分でできることから始めてみましょう。

では、これ以上の猛暑にならないことを願って!
また次回8月にお会いしましょう!
こまめに水分補給をしていただき、熱中症にはくれぐれもお気をつけくださいね。


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Writing by 水野

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