COLUMNコラム

【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:良好な関係性に導く10のポイント

所属カウンセラーの水野です。

5月は暑い日もありましたが、5月とは思えないような寒い日もあり、体温調節がなかなか難しい日も多かったかと思います。

6月に入り、いよいよ梅雨入りですね。

季節の変わり目は、自律神経や体調を崩しやすく、同じように心の変化も起きやすくなります。湿気が多いと、呼吸も浅くなりやすいので、ふかーく息を吸い、ゆっくーり息を吐き出す「深呼吸」を日々の生活の中に取り入れながら、ゆったりリラックスできる時間も作りながらお過ごしください。

皆さまは、雨の日をどのようにお過ごしですか?

となると、公共交通機関も混みますし、買い出しもしづらくなります。個人的には、湿気で髪がまとまらなくなり、肌のベタベタも気にかかり、なかなか面倒くさいなと思うことも多くあります。

その一方で、雨の日も悪くないなと思うこともあります。
かの有名なミュージカルソング“Singin’ in the rain”を聴きながら、水溜りをピチャピチャ跳ねながら、電柱の周りをくるくるしている空想に浸る時もあれば、傘は持っているのだけれど、雨にじっとり濡れながら帰りたいアンニュイな気分の時も、電灯に照らされて白く光りながら次々とビニール傘に降る雨粒の大きさを確認し、その雫が滑り落ちていく様をぼーっと見ていたい時もあります。

そのように過ごしていると、雨の日だからこそ体験できた様々な思い出をふと思い出せる時があります。

皆さまも、雨の日のお気に入りソングはありますか?
少し憂鬱な気分にもなりやすい雨の日ですが・・・雨に唄ったり、雨の憂鬱さにどっぷり浸ったり、すり抜けたりしながら、ご自身の気分に合わせた雨の日の楽しみ方を探してみて下さいね。

さて、私のコラムでは、「大切な人との関係性をどのように築いていくか」について、日々の相談対応の中で感じていることや、自身の体験を振り返りながら、一緒に考えさせていただけたらと思っています。

前回のコラムはこちらです⬇︎
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:言葉の語尾に隠れた「もともとあった気持ち」を見つける方法
今までのコラムはこちらです⬇︎
【関係性の相互性からみる心の発達】水野コラム

数ヶ月に渡り、自分の気持ちに目を向けて、整理すること、自己理解を深める方法についてご説明して来ました。

「自分の気持ちに目を向けて意識化すること」「自己理解」は、大切な人との関係性を築いていくための、いわば、下ごしらえです。

下ごしらえは省いても構わないけれど、やはり丁寧にとられている出汁は、格別に美味しく、深みの出るものです。

「自分の気持ちに目を向けること」とは、素材と向き合うこと
「自分の気持ちについて考え、整理すること」とは、その素材の質を理解し、形を丁寧に整えることです。

「関係性」とは、自分−相手の素材を持ち寄って、一緒のお鍋やフライパンに入れて調理することです。

お互いの素材を活かすためには、まずは、自分の素材を理解し、活かす方法を考えることが不可欠なのです。それが、結果的に相手の素材を活かすことに繋がるのです。

調理の段階に入っていく前に・・・今回は、下ごしらえの集大成!
良好な関係性を築くために理解しておきたい10のポイント
をお伝えしたいと思います。

良好な関係性を築くために理解しておきたい10のポイント

まずは、関係性を理解する上で大切な概念をおさらいしておきましょう。

自分の中での不一致…自分の気持ち、考え、行動(言葉)が一致していないこと。

おいておいた気持ち…日々の生活を回すため、自分の感じた気持ちを意識化せずに、「おいておいている気持ち」のこと。「自分の気持ちをおいておくこと」自体は、社会に適応していく上で大切なスキルであるが、「自分の気持ちをおいておくこと」が慢性化すると、「感覚が麻痺してしまう状態」を引き起こす可能性がある。

自分の核…無意識に積み上げたご自身の過去の体験、信念、文化、誇りなどの大事にしているもの、願望など、自分の個性を創り出す大切なもの。

もともとあった気持ち…自分の核が創り出す、自分の自覚している気持ちのより深層にある気持ちのこと。もともとあった気持ちは、相互的な関係性を経ることや、色々な刺激によって異なる気持ちに変換される可能性がある。

それでは、良好な関係性を築くために理解しておきたい10のポイントをご紹介しましょう。

<1>大切な人を大切にすること、大切にできることは、「自分自身を大切にすること」にも繋がる大事な作業であること

大切な人が自分を見て笑ってくれると温かい気持ちになります。その気持ちは、「自分はここにいて良いのだ」「もっと頑張ろう!」など、安心感や、モチベーションに繋がる大事な感情です。自分、相手を大切にするために必要な作業です。

<2> 「大切な人を大切にできること」はスキルであること

「大切な人を大切にできること」はコミュニケーションと同様に、練習して習得できるスキルです。従って、その方法さえわかれば、自分で身につけられます。関係性がこじれていたとしても、スキルを身につけ、自分たちの対応によっては改善のしようがあるということです。

<3> 自分だけで、頑張りすぎないこと

「良好な関係性はお互いの力で生み出すもの」
つまり、自身だけで、頑張りすぎないことが大切です。お互いがお互いにとって「うまくいく方法」を考え、実践することを通して、良好な関係性に繋がります。

<4> 大切な人を大切にできない時、自分も傷ついているということ

大切な人を大切にできなかった時、傷ついているのは相手だけではありません。自分も傷ついているのです。まずは、「共感されること」を通して、自分の傷つきを癒し、エネルギー補給をすることが大切です。そして、大切な人を許容する心のスペースが確保できるのです。

<5> 自分の気持ちに目を向け、自分の状態を把握すること

自分の気持ちに目を向けて、日常の生活をまわすために、「おいておいている自分の気持ち」を自分の意識の中に戻し、認めることが大切です。自分でも理解していない気持ちを相手に伝えるのは、限りなく難しいことです。まずは自分で「自分の気持ち」に目を向け、自分の状態を把握しましょう。自分の状態を把握し、考え、整理することで、相手に伝わりやすい形で「自分の気持ち」を伝えることができるようになるのです。

<6> まずは「自分の気持ち」を相手に大切にしてもらうこと

共感されることで安心感が生まれます。自分の気持ちが共感されると、「相手の気持ちにも共感しよう」というモチベーションが自然と高くなり、相手にも共感を示せるようになります。相互に共感し合えるループを作ることができるのです。

<7> 大切な人を大切にすることとは、ご自身の核を守りながら、相手の核も守ること

人は、無自覚に自分のもともとあった気持ちを「相手も同じように持っている」「相手も同じように持つべきだ」と相手に強く主張し、相手の言動を受け入れられないことがあります。「自分の信念はこうだ!」「自分はこういう体験をして成功してきた!」とお互いに主張しあっていては、「もともとあった気持ち」に正解も不正解もないため、押し問答になってしまいます。お互いの自分の核や「もともとあった気持ち」が尊重されることを通して、関係性は良好になるのです。

<8> 関係性の目的を意識し直すこと

大切な人との関係性を育んでいる目的は、「お互いを大切にし合うこと」です。身近な関係性においては、関係性の目的が曖昧になりがちです。関係性にこじれが生じている場合は、早い段階で、お互いが一緒にいる目的は「大切にし合うことだった」と意識し直し、修正することが大切です。

<9> 「今ここで、目の前にいる人との関係性」に焦点を当てて考えること

人は、過去−現在−未来の連続体として存在しています。自分の過去や未来の体験が現実を上回って体験されると「今ここで、目の前にいる人」を見失ってしまうことがあります。過去の体験や未来の願望も生きていくためには大切なものです。しかし、過去や未来に囚われ、「今ここで、目の前にいる人」が見られなくなってしまっては、本末転倒です。大切にしたいのは、「今ここで、目の前にいる人であること」を意識し直してみましょう。

<10> 試行錯誤していること自体が、「大切な人を大切にすること」であること

初めからうまくいくことはありません。大切な人を想い、考え、実行する試行錯誤していくこれらのプロセス自体が、「大切な人を大切にすること」なのです。

これら10のポイントの理解」は関係性においてのベースとなる部分です。

「うんうん」と頷かれながら読まれた方も、忘れていた所があるという方も、目新しいと感じた方も、しっくりこないと感じた方もいらっしゃるかもしれません。

要所要所で思い出すこと
忘れていた項目はどれなのかに気がつくこと
それだけでも、自身の行動は変わります。自身の行動の変化は、関係性の変化にも繋がることです。

いつも忘れている項目が同じ場合もあれば、
その時、たまたま忘れている、あるいは、いつもは頷けたものもピンと来ない場合もあるかもしれません。

心理テスト感覚で読み直し、自身の状態を把握し、意識化してみてください。
そして、自分の反応の意味について考えるきっかけにしていただければ幸いです。

時薬に頼ること

「あぁかっこう。あのときはすまなかったなあ。おれは怒ったんじゃなかったんだ。」と云いました。

これは、宮沢賢治作、「セロ弾きのゴーシュ」の最後の一節です。

『ゴーシュは、町の活動写真館でセロの弾く係りとして働いていましたが、音楽団の中では一番下手で、肩身の狭い思いをしていました。そんなゴーシュのもとに、三毛猫、かっこう、狸、野ネズミが次々とやってきて、セロが上達する手助けをします。そして、その手助けの甲斐あって、ゴーシュのセロの腕は上達し、仲間にも団長にも認められる。』
という物語です。

かっこうは、ゴーシュに音感を教えてくれました。しかし、かっこうの言う通りに弾いていること、かっこうの方がうまいことが生意気に感じて苛立ち、ゴーシュは、かっこうを追い出してしまいます。

その後、セロの腕を上達させたゴーシュは、演奏会を成功させ、家に帰ります。
そして、窓を開け、いつかかっこうが飛んで行ったと思った遠くの空を眺めながら、かっこうに「あのときはすまなかったなあ。」と謝るのです。

このように、当時は一生懸命で、見えていなかったことが、時間の流れとともに、その意味に気がつけるようになることもあるのではないでしょうか。

コロナ禍の中で、著名な方が急逝されるニュースを耳にします。
つい先日も、小さい頃からテレビで慣れ親しんできた方がもうお茶の間を賑わすことがないという現実に、なんとも言えない心寂しい思いでおりました。

そして、昨年末に、急逝される前に神田沙也加さんが、インスタグラムにて「時薬に頼りすぎることなく」と書かれていたことを思い出しました。

「時薬」とは何なのでしょうか。

時間に身を任せていれば解決するのか・・・

人は、時間の経過の中で様々な体験をしています。
その中で、考え、学び、それが成長に繋がっている。
つまり、時間が解決しているわけではなく、結局自分の力なのではないか、
時間が解決してくれているように見えるのは、結局「自分が変化を生んでいるからなのではないか」と思っていたのです。

そして、私の紹介している「自分の気持ちに目を向けて、意識化する」「自己理解を深める」などのアプローチは、自分自身と向き合い、意識化することを通して、自身や自身の関係性に変化を生んでいく、自分を起点にした「よりよくするための」アプローチです。

つまり、謂わば、「時薬に頼らない」アプローチなのです。

繰り返しお伝えしているように、「自分の気持ちに目を向けて、意識化すること」「自己理解を深めること」などの下ごしらえは関係性を構築していく上で、とても大切なことです。

そして、「時薬に頼らない」アプローチとともに「時薬に頼るアプローチ」も、とても大切です。
ゴーシュのように、「時間の流れに身を任せること」で、見えていくこともあるからです。

見えていなかったことが時間が経ってから、見えるようになること
その意味に気がつけるようになること
自分のしたことを振り返り、時には反省し、時間が経ってやっと申し訳なかったと感じられるようになることもあるのではないでしょうか。

そして、同様に、赦せるように、赦されるようになることもあるのだと思います。相手も、自分も。

それは、意識している瞬間に、あるいは、ふとした瞬間に訪れることもあるかと思います。

できれば、その存在が、目の前にいる間に、謝ったり、赦せたり、赦されたりすることが望ましいのかもしれません。
そう望んでいたとしても、自分の意識や時間が味方する時も、そうではない時もあるのかもしれません。

自分の意識・時間、その両方が自分の中で力を発揮してくれる時に備えて、まずは、自分と向き合い努力してみること
そして、時間に身を任せてみること
そのバランスをとりながら、過ごすことが大切なのではないかと思っています。

そうすると、ふと自分の意識していないところにも目が向き、新しい発見があるのかもしれません。

まとめ

今回のコラムでは、
・良好な関係性を築くために理解しておきたい10のポイント
・時には、時薬に頼ることも大切であること
をお伝えいたしました。

次回は、本日お伝えした良好な関係性を築くために理解しておきたい10のポイントを達成するのに大切な、自己理解に大切なアプローチ- まとめ –をご紹介したいと思います。

この後は、いよいよ調理の段階、「大切な人とどのように関わるか、どのような方法で、どのような料理を作るのかの段階」に入って参りますので、もうしばらく、下ごしらえにお付き合い下さいね。

では、また7月にお会いしましょう!

 


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Writing by 水野

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