COLUMNコラム

【児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)】ひとりの人間としての権利を考える

こんにちは、所属カウンセラーの古宇田です。

3年ぶりとなる行動制限のないゴールデンウイークが明けて、しばらく経ちましたがいかがお過ごしでしょうか。ゴールデンウイーク中の各地ではコロナがなかった頃の賑わいを取り戻し、そうした風景を目にし、どこかほっと一安心しました。

ゴールデンウイーク期間中の祝日である「こどもの日」は1948年に「子どもの人格を重んじ、子どもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」お休みの日と決められたそうです。そして最近では5月5日の「こどもの日」から1週間を児童福祉週間として、子どもや家庭、子どもの健やかな成長について国民全体で考えることを目的とし、児童福祉の理念の普及・啓発がさまざまな行事などとして行われました。その一端を担うため今回のコラムのテーマでは【児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)】ひとりの人間としての権利を考えるをお伝えしていきたいと思います。

 


【子どもの権利条約ができるまで・・・】

「人権」という考え方が生まれたのは18世紀頃です。実際に「人権」の大切さが考えられるようになって、さまざまな取り組みが行われるようになったのは第二次世界大戦が終わってからのことです。第二次世界大戦において、さまざまな人権侵害が横行しました。そのため国際社会における人権意識の芽生え人権の保障が世界平和の基盤であるという考えが主流となっていきました。

「全ての人々が生命と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利」「人間が人間らしく生きる権利であり、生まれながらに持つ権利」と誰しもがどこかで聞いたことのある言葉ではないでしょうか。

そして社会で弱い立場に立たされている子どもたちの状況も注目されるようになり、子どもの権利の実現を目指し、今からおよそ30年前の1989年、世界の国々や国際機関が協力して、世界のすべての子どもがもつ権利を定めた「子どもの権利条約」が作られました。子どもの権利擁護をうたった条約ができたことによって、世界のあらゆる子どもの権利を守っていこうとする約束が形となった瞬間でした。

日本も1990年に署名し、1994年に批准しました。現在196の国と地域がこの条約に入っており、これほど世界に広まった条約は他にはないというほどに、子どもの人権を守ることが日本を含めた世界で当たり前となっているのです。実は日本が批准したことによって、虐待問題への社会的関心を広げると同時に、虐待防止運動への強い後押しになったとも言われています。

続いて「子どもの権利条約」について詳しく内容を見ていきましょう。

 

【子どもの権利条約における4つの一般原則・・・】

「子どもの権利条約」は前文を含めた54条からなっています。そこには18歳未満の子どもが権利をもつ主体と位置づけ、大人と同じく、ひとりの人間として持っている権利を「子どもの権利条約」は認めています。加えて成長過程にあり、弱い立場にある子どもたちには保護や配慮が必要な側面もあるため、子どもならではの権利も定めています。そして大切な4つの一般原則があります。

◆命を守られ成長できること(生命、生存及び発達に対する権利)
すべての子どもの命が守られ、もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療、教育、生活への支援などを受けることが保証されること。

◆子どもにとって最もよいこと(子どもの最善の利益)
子どもに関することが行われるときは、「その子どもにとって最もよいこと」を第一に考えること。

◆意見を表明し参加できること(子どもの意見の尊重)
子どもは自分に関係のある事柄について自由に意見を表すことができ、大人はその意見を子どもの発達に応じて十分に考慮すること。

◆差別のないこと(差別の禁止)
すべての子どもは、子ども自身や親の人種や国籍、性別、意見、障がい、経済状況などどんな理由でも差別されず、条約の定めるすべての権利が保障されること。

子どもの発達に応じてその権利が実現するよう指導する責任はまずは親(保護者)にあること、国は条約にある権利が実現するような法律などを整え、利用できる最大限の手段を用いることなども定めています。

 

【子どもの権利を実現するために・・・】

「子どもの権利条約」ができてから、この30年近くで子どもたちを取り巻く状況は大きく改善されてきています。世界全体における5歳未満の子どもの死亡率は約半分に低下し、発育不良である子どもが約5000万人も減少しました。また危険な労働を強いられる子どもの数も減り、男女間における教育格差も縮まってきています。一方でまだ子どもの権利が十分に守られていない、守り切れていない状況もあります。こうした現状を今後改善していくためには、子ども自身がもつ権利について知り、学ぶことがとても大切であり、すべての人が条約に書かれた権利が実現されるよう取り組む必要があります。

生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利という「子ども権利条約」に定められている大まかな4つの権利が子どもたちには保障される必要があるとしています。条約に目を通してみると、どれも当たり前の権利ばかりで、基本的には守られていると思われるものです。しかしどこかでそうした当たり前が、守られていないケースも見受けられます。

子どもの権利を実現するためには、まずは自分の権利をしっかりと考えることが必要なのかもしれません。自分の権利が守られなかった、守られたかったという思いがあると、子どもの権利を守るという視点が欠けてしまうのではないでしょうか。そうしたこともひっくるめて子どもの権利について考える、さまざまな人と話す、そして協力していく姿勢が、子どもの権利実現に向かうのだと考えています。

 

【最後に】

一般的に「権利や人権」「義務や責任」を果たすこととセットという言われ方をすることがあります。しかし子どもの権利や人権の分野においては「義務や責任」を果たさない限り権利は認められない、というものではありません。もちろん他者の権利との衝突があるため権利の濫用をしてよいものでもありません。守られる大切な権利を子どもの視点から考えることが大切であり、そのために「子どもの権利条約」はとても参考になると考えています。

ちなみに現在の日本における子どもの人権の課題として、いじめ、体罰、児童虐待、児童買春やインターネットを介した性的搾取が取り沙汰されています。今一度、子どもが本来ひとりの人間としてもっている権利という視点からこれらの課題を見直してみる必要があるのではないでしょうか。

【参考資料:外務省HP「児童の権利に関する条約」、法務省HP「子どもの人権を守りましょう」、公益財団法人日本ユニセフ協会「子どもの権利条約カードブック」2019】

長期に渡るコロナ禍での不安やストレスは、さまざまな形で表出されていることがあります。ポジティブな考えを持つきっかけとして、そして安心・安全な人との関わりを通して生きる力を養うサポートもカウンセリングの一側面とも考えています。子育てや子どもの抱える不安やストレスに関してのご相談もお受けしております。

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Writing by古宇田エステバン英記

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