COLUMNコラム

【子どもアドボカシー】話をしても良いという安心感

こんにちは、所属カウンセラーの古宇田です。

日本には春と夏の季節の合間に梅雨があります。じめじめして、蒸し暑くなんとも言えない時期です。私はこの時期があまり好きではありません。晴れる日も少なく、なかなか気分が晴れやかになることもなく、気持ちもどんより。ただ最近は梅雨の時期を楽しもうとも思っています。ここ数年のコロナ禍で、逆境に負けない気持ちが知らず知らずのうちに身についてしまったのかもしれません。この梅雨の時期にしか味わえないことを探して楽しみたいと思います。

さて今回のテーマにあります「アドボカシー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?普段あまり聞くことのない言葉だと思います。アドボカシーは、福祉や医療の世界で使われることが多いのですが、実はさまざまな場面でこの言葉が必要になってきているのです。前回のコラムでは児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)についてお伝えしましたが、アドボカシーは権利と非常に関係のある言葉なのです。私のコラムでは、子どもの視点に沿った内容となっていますので、子どもに関連したアドボカシーについてお伝えしていきたいと思います。

今回のコラムとも関連があります前回のコラムはこちらからご覧になれます。
【児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)】ひとりの人間としての権利を考える

 


【子どもアドボカシーとは・・・】

聞きなれないアドボカシーというワードは、日本語では「権利擁護」「代弁」などという意味を持つ言葉です。ちなみにアドボカシーは社会的に弱い立場にある人の意見表明を代弁・擁護することとして考えられています。自立生活を支援するため、可能な限り本人の意思を尊重しながら、権利侵害を防止し、権利を擁護する活動であり、つまりは権利を侵害されている人のために声をあげることがアドボカシーなのです。例えば成年後見制度はアドボカシーの一例です。そしてアドボカシーをする人のことを「アドボケイト」といいます。アドボカシーとアドボケイトはセットで知っておくと良いかと思います。

子どもの声を聴き権利を守る活動という意味で「子どもアドボカシー」という言葉があり、子ども権利条約における4つの一般原則の中にある「意見を表明し参加できること(子どもの意見の尊重)」が深く関係しています。

欧米では、子どもアドボカシーのことを、「子どもの声を運ぶこと」「子どものマイクになること」「子どもの声を持ち上げること」などと説明されています。本来のアドボカシーは子どもに限らず、高齢者、障がい者など、本来個々人がもつ権利をさまざまな理由で行使できない状況にある人に代わりその人たちの権利実現を支援する機能をも持ち合わせています。

昨今日本においては、福祉サービスを利用する子どもたちのアドボカシーの重要性が認識され、現在その制度化に向けて厚生労働省で検討が進んでいます。

なぜ子どもアドボカシーがなぜ必要なのかを見ていきましょう。

 

【子ども固有のアドボカシーの必要性とは・・・】

子どもに関連する法律に「児童福祉法」というものがあります。そして近年の法律の改正によって、子どもの権利の理念が取り入れられたのが5年ほど前のことです。これは子どもが自ら意見を持って表現する主体であることを示すことへと繋がる重要なターニングポイントとなりました。

そのような法律などの影響によって子どもアドボカシーの検討は、少しずつ行われてきていましたが、近年発生している子どもの虐待死事例をきっかけに、その必要性がさらに加速してきています。子どもアドボカシーが必要な理由には2点あると考えられています。

◆子どもは大人に比べて色々な点で無力であり、社会的にも法的にも弱い立場に置かれています。そのため権利侵害を受けやすい状態にあることが一つの理由です。

◆かつては子どもを保護の対象と捉える伝統的な子ども観がありました。しかし子どもの権利条約によって、保護の対象から権利の主体へと新しい子ども観へと転換してきたことで、子どもの参加や意見表明が大切なものであることが認識されてきているという事情が二つ目の理由です。

さまざまな子どもに関わる決定が、子ども抜きで実は行われてきた歴史があります。それはもちろん子どもを思っての大人側の優しさや配慮でもありましたが、このようなあり方を方向転換し、あらゆる場で子どもの参加を促進することが子どもアドボカシーの役割となっているのです。

続いては子どもアドボカシーの理念についてお伝えします。

 

【子どもアドボカシーの4つの理念・・・】

子どもアドボカシーの拠り所となる理念は、子どもの権利を実現するための子ども自身と市民運動から生まれ、欧米で研究され、各国政府が制度化していくことで、全世界に広がってきたという過程があります。子どもアドボカシーの価値観を示すものでもあります。子どもの権利擁護や子どもアドボカシーの第一人者でもある堀正嗣氏により4つにまとめられています。

1 セルフアドボカシー
アドボカシーの本質はセルフアドボカシーであり、意見表明をする子ども自身が声をあげることです。過去にもさまざまなシーンで声を当事者があげてきたことで、権利を確立してきた歴史もあります。加えて子どもアドボカシーの声をしっかりと支援する「代理人によるアドボカシー」であるアドボケイトの役割も同時に子どもアドボカシーには大切です。

2 子どもは権利行使主体
子どもたちは、教育を受けるだけ、保護されるだけの受け身の存在ではなく、大人と同じ人としての尊厳を持つ一人の人間です。子どもが自分に関係するあらゆる決定に権利を行使する主体として参画する権利があります。

3 差別への異議申し立て
子どもの権利条約第12条では「子どもの意見を聴き考慮することなしに子どもに影響を及ぼす事項について決めてはならない」としています。「子どもだから」といって子どもの声が軽く扱われること、子どもであることで子どもの意見表明を差別されることなく、大人が子どもの声に誠実に応答する義務があることを考える必要があります。

4 ライフスタイル
アドボカシーは子どもも大人も障がい者も健常者も女性も男性も、その他一切の属性に関わりなく、みんなが平等という考え方でもあります。自分の権利を大切にして、他の人の権利も大切にするそういった人になることが生き方そのものとしてアドボカシーを身に付ける一歩になります。

私も日々子どもと関わる仕事に携わっていますが、自分では意識してはいるものの、子どもアドボカシーの4つの理念に触れて、今一度子どもの意見表明ということに対して肝に銘じなければならないと思いました。子どものためであると思って、大人だけで子どものことについて決めてしまうことがあるなと思い返してみると意外とあるかもしれないと「はっ!」とさせられました。もちろん子どものためを思ってのことです。可能な限り子どもの意見を取り入れてはいるのですが、そこに子どもが参加するという視点は本当に必要だと感じています。そうなっていくよう働きかけをまずは身近なところからしていきたいと考えています。

続いては子どもアドボカシーの6つの原則についても見ていきましょう。

 

【子どもアドボカシーの6原則・・・】

子どもアドボカシーの理念をまとめた堀正嗣氏によると6つの原則が子どもアドボカシーには必要であるとしています。カナダやイギリスの先進的な子どもアドボカシーのエッセンスが詰め込まれており、アドボカシーサービスを提供するための基準にもなるものです。

◆子ども主導
4つの理念である「セルフアドボカシー」と「子どもは権利行使主体」に立って、子どもがアドボカシーを導いていくこと。

◆エンパワメント
子どもがアドボカシーできるよう、子どもの力を発見し、その力を使って自分で話をするのを助けること。

◆秘密を守る
プライバシーを常に尊重し、子どもの同意なしに他に漏らさないこと。ただし子ども自身や他の人に重大な害が及ぶことを防ぐため、また裁判所が命じた場合は秘密を伝えることがあると子どもにきちんと伝えること。

◆独立性
子どもアドボカシーをするアドボケイトが、全ての利害関係から自由であること、それを子どもがちゃんと信じることができるようにすること。

◆機会の平等
性別、人種、宗教、文化、年齢、民族、言語、障がい、セクシャリティを理由によってアドボカシーが妨げられないようにすること。

◆子どもの参加
アドボカシー活動のすべての段階に子どもたちが参加することで、子どもアドボカシーがより効果的になること。

子どもの視点に立った子どもアドボカシー6つの原則は、実は子どもに限らず誰にでも当てはまるものでもあるのではと考えています。自分の意見を表明することにはこうした原則があることで、心理的安全性を持ったうえでアドボカシーできるのではないかと思います。

 

【最後に】

声を聴くことは、聞き手がいてはじめて聴かれることになり、それが声になります。本来、声を発する時点で、聴く行為を求めるという側面があるといえます。「こころの声」「からだの声」など表現することもあり、声には意味を伝える言葉に限らず、人の内面を相手に伝えるという働きもあります。そうした「声」をまずは聴くこと、もしかするとアドボカシーはまず聞くことから始まるのではないでしょうか。話をしてもよいという安心感に繋がらなければ、本当の意味での「意見表明」もできないかもしれません。子どもの家族や周囲の大人の支えが必要なのです。子どもの声を聴いた大人が子どもと共に声をあげていくことが子どもアドボカシーです。

世の中のさまざまな「声」に耳を傾けていき、それを代弁していけるようにこれからもさまざまな視点でコラムをお送りしたいと思います。みなさまも身近な人の「声」、そしてご自身の「声」にも耳を傾けて頂ければと思っています。

次回7月のコラムはお休みをさせて頂きます。8月にまたお会いしましょう。

【参考資料:『子どもアドボケイト養成講座』著:堀正嗣、「子どもアドボカシー制度の導入」著:吉澤あやね】

長期に渡るコロナ禍での不安やストレスは、さまざまな形で表出されていることがあります。ポジティブな考えを持つきっかけとして、そして安心・安全な人との関わりを通して生きる力を養うサポートもカウンセリングの一側面とも考えています。子育てや子どもの抱える不安やストレスに関してのご相談もお受けしております。

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Writing by古宇田エステバン英記

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