COLUMNコラム

【学齢期の子どもの心理】『インターネット依存』という状態について考えてみる①

こんにちは。所属カウンセラーのY.Yです。

冬休み、お正月と皆さまゆっくり心と身体を休められましたか?

1月も間もなく終わりを迎え、遅れ馳せながらではありますが、新年のご挨拶をさせて下さい。

明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。
そして、読者の方々のご健勝とご多幸を心より祈念しております。

新型コロナウイルスのオミクロン株が、あっという間に日本国内にも広がり、コロナ不安はいまだ払拭されていません。
新年会のシーズンではありますが、私たちのコロナに対する予防策やヘルスケア次第で感染防止は可能なのだろうと思います。

個人的には、色々と出掛けたいので、早くGo to事業の再開を祈りつつ、1日1日の予防意識を持ち続けたいものです。
2022年の末には、こういった「コロナ」という言葉を、ここで出さなくて済むような世の中にしていくためにも、私自身も自覚を強めていきたいと思います。

さて、昨年末に申し上げていた通り、新年から新しいコラムテーマになります。
テーマは、【『インターネット依存』という状態について考えてみる】です。

昨今、インターネットに関する社会的な問題が幅広く存在しています。「インターネット依存(過剰使用)」、「ネットいじめ」、「LINEいじめ」、「ネット詐欺」、「SNSと非行」など多岐に渡ります。その中で、今回は「ネット依存」について取り上げます。

私は、10年ちょっと前に、インターネット依存について研究したことがあります。その時よりもインターネットの利用目的も多岐に渡り、アプリも様々なSNSツールやオンラインゲームが開発され、オンラインを通じた対人交流も盛んに行われている印象を受けています。
そして、現在も子どもや保護者、そして教職員からネット依存(過剰使用)について度々相談を受けています。

また、ここ2年間のコロナ禍において、ネット依存の問題はさらに社会で大きな問題になっています。外出制限が掛かることも多々あり、自宅でオンラインゲームやSNSなど、様々なインターネットのツールを用いて過ごすことも増え、ストレスもたまっていく一方で、必然とネットに没頭していった方々も多いのではないでしょうか。ネットから抜け出せなくなった子どもたち、それに悩み続ける保護者の方々もかなりいらっしゃると思います。

こうした理由から、この場でもネット依存について取り上げ、私自身がこれまでお伝えしてきた内容や経験について触れていきたく思っています。
今回のテーマも「いつまで続くんだ」と感じられることがあるかもしれませんが、出来る限りコンパクトにまとめるよう努めていきます。しかし、確約は出来ません(笑) ご理解ください。

そして、最初は、堅苦しい文章になってしまうこともご了承ください。詳細は他の書籍や論文に譲りますが、どうしても、「インターネット」と「依存」を組み合わせた新しい概念でもあり、具体的で実利的な対応策を述べるにしても、「インターネット依存」の歴史や捉え方についての丁寧な説明が必要だと考えています。

 

そもそもインターネット依存って何?

「インターネット依存(以下、ネット依存)」は、現代では、行動依存(嗜癖)の一つとされています。つまり、インターネットを行う行為(行動)を止めたいと思っていても、止められずに続けてしまう状態を言います。

最初は興味本位や楽しく行っていたものが、段々と夢中になってしまい、違和感はありながらも、自分でネットを止めることのコントロールが難しく、ずっとネット(とりわけオンラインゲームやSNS)にはまり続けている状態です。

「酒は飲んでも飲まれるな」という言葉がありますが、その言葉で説明するならば、「ネットは使っても(ネットに自分を)使われるな」ということです。やり過ぎると、その世界に飲み込まれてしまいます。
子どもたちはお酒を飲みません。もちろん、大人も子どももドラッグは禁じられています。そういった酒や薬という「物への依存」ではないのですが、身近にあって、子どもたちにとっても気楽に楽しめる世界がネットの世界です。
その世界にはまっていくことで、様々な場面で子ども自身も、周囲の人々も、困り果て、疲れ果ててしまう現象が「ネット依存」ですし、現代の大きな社会的問題となっています。


★備考★
後に出てくる「addiction(アディクション)」という言葉は、日本語では「嗜癖」と訳される方が適しています。
嗜癖とは、「最初は何か目的がある行動だったが、その行動を好み、続けていくうちに、自分ではコントロール出来ない位にまで、その行動にのめり込んでいること」と捉えていただいてOKです。
依存とは、「抑えがたい欲求と追い求める行動が繰り返されること」に重きを置きます。
依存と嗜癖は概念的に違いがあります。ただ、日本では、嗜癖も依存のカテゴリに含めて説明することもあること、用語の混乱を招いて理解が複雑となることを避けるため、この文章上では、便宜的に「依存」で統一させていただきます。


ネット依存の歴史

「ネット依存」は、1991年に精神科医兼心理学者のIvan Goldberg(イヴァン・ゴールドバーグ)が人々の依存する姿を通俗心理学の観点から風刺したことに端を発します。そして、インターネットに対しても依存は形成されるとして、「DSM―Ⅳ ※1」で「Internet Addiction Disorder(インターネット依存症)」として定義しました。

その後、1996年にK.Young(キンバリー・ヤング)がDSM-Ⅳの「病的賭博 ※2」の診断基準を参考に、「Internet addiction(インターネット依存)」を「インターネット使用者のコントロール不能な状態、ネットにはまっている時間が増大していること、弊害が生じているにも関わらず、止めることが出来ない状態」と定義しています。

日本より先に、IT産業の推進を政策として推し進めた韓国では、「ネット依存」が社会的な問題となり、2002年には86時間オンラインゲームをし続けた男性が突然死しました。この衝撃的なニュースにより、韓国政府も、ネット依存の問題について緊急で対策を講じてきた経緯があります。中国でも、ネット依存の若者の増加に伴い、ネット依存専門の国立診療所が建設されています(Wired News,2004)。

最近では、ネット依存の中でも、オンラインゲームが、世界各地の人々に広く行われるようになりました。一度ゲームを行うと、その行動を抑えることが難しく、行く末には、心身のリズムや生活リズムが乱れていく実状があります。
オンラインゲームは、他のインターネットの利用目的以上に、はまりやすさが診断基準に当てはまると言われています。
これらを背景に、2019年に、世界保健機関(WHO)は、国際疾病分類(ICD※3)にゲーム障害を加えました。そして、この2022年1月、最新のICD-11(11版;最新の診断基準)に改定され、公表されることになっています(樋口,2019)。

※1 DSM: The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. アメリカ精神医学会の精神疾患の分類と診断の手引第Ⅳ版のこと。現在はDSM-Ⅴまで発行されている。

※2 病的賭博:DSM-Ⅳの「14:他のどこにも分類されない衝動制御の障害」の中にある診断カテゴリ。「賭博」は「ギャンブル」と考え、「病的賭博」は「ギャンブル障害」という捉え方で良い。様々な場面でギャンブルに捉われ、その欲求を抑えられず、自らでコントロール困難で生活に支障が出ている状態と言えよう。

※3 ICD: International Statistical Classification of Diseasesの略称。 WHOが策定している『疾病および関連保健問題の国際統計分類のこと。世界各国の診断基準として使用されている。

日本の『インターネット利用』と『ネット依存』について

日本も各国に追随する形で、情報化社会が急速に発展し、インターネットが普及しています。総務省の調査(2019)によると、インターネットの利用率は、2019年現在で日本の人口の89.8%が利用していることになります(図―1)。

即ち、インターネットを利用している人は、1億人を超えています!!

図-1 総務省 通信利用動向調査 インターネット利用率(個人)

さらに、総務省の端末別のインターネット利用率の調査(2019)では、「スマートフォン」(63.3%)が端末として最も利用されていることが分かりました(図-2)。
スマートフォンは、パソコンと同等の機能や様々なアプリを移動しながら利用出来るため、パソコンよりも利便性があることを示すものだと考えられます。

実際、私も、電車やバスでの移動中でも、ほとんどの乗車している方が、スマートフォンで連絡を取っていたり、ゲームをしたり、音楽を聴いたりしている様子を、毎日のように見掛けます。

図-2 総務省 通信利用動向調査  インターネット利用端末の種類

上記の調査結果だけでも、インターネットが、現代の人間には欠かせないものであり、1日のほとんどの時間、何かしらの端末を手に取り、インターネットを利用していることが窺えます。

特に、便利なスマートフォンが普及すると、インターネットと向き合う時間はエスカレートしていき、その分だけネット依存の傾向も高まっていくことは容易に想像出来ます。

そのネット依存について、日本では、小林ら(2000)が、K.Young(1998)を参照して、「寝食を忘れてインターネットにのめり込んだり,インターネットへの接続を止められないと感じるなど,インターネットに精神的に依存した状態」と最初に詳しく説明をしています。その後も、ネット依存の問題は深刻化するばかりであり、様々な研究や調査が行われています。

2018年には、厚生労働省の研究班により、「飲酒や喫煙等の実態調査と生活習慣病予防のための減酒の効果的な介入方法の開発に関する研究」で、2012年と2017年でのネット依存に関連する比較研究も実施されました(図-3)。

図-3 厚生労働省研究班による「飲酒や喫煙等の実態調査と生活習慣病予防のための減酒の効果的な介入方法の開発に関する研究」より

この調査結果から判明したことは、ネット依存が疑われる中高生が、2017年の推計値で93万人に及んでいたことです。
2012年では52万人だったのが1.8倍も増加したことを意味します。
そして、中学1年生から高校三年生まで全ての学年で「病的使用」率も「不適応使用」率も高い結果となっています。

この依存度が増加するにつれて、「成績低下」、「居眠り」、「遅刻」も認められています。さらには、女性を中心に友人関係のトラブルも生じています。依存の状態が悪化すると、睡眠リズムの乱れや体調不良の訴え、そして不登校やひきこもりに繋がるリスクがあります。

ネット依存の原因

ネットのツールは様々ですが、ネット依存になりがちな現代のツールは、やはりオンラインゲームやSNSが主なものなのだろうと考えます。ネット依存が生じる背景として、年齢や精神疾患(発達障害など)が一因に挙げられています。
それ以外にも、環境要因という身の回りの状況と、心理的要因というネットを利用する子ども自身の心の動きが重なり合いながら、依存度が高くなっていくのだろうと考えています。以下に具体的な理由を取り上げてみます(図-4、5)。

図-4 インターネット依存が生じる環境要因

図-5 インターネットが生じる心理的要因

あくまで一例ですが、環境要因と心理的要因の詳細について取り上げてみました。
結果的に、どれか一つの理由で依存が強まるというよりは、複数の理由が絡んで、ネット依存になっていくリスクがあるのでしょう

上記の理由の他、私自身の意見も付け加えたいと思います。
人は様々な個性があり、背景があると思いますが、誰にせよ「人との繋がり」は大いに求めているのだろうと思います。とは言え、現実世界での人との関わりを苦手に感じる人たちがいるのも事実です。その人々にとっては、ネット世界ほど気が楽になれる環境はないでしょうか。自分の素性を出さなくて良いのですから。

そして、ネットの世界は、本当に自由で、「万能感」を抱きやすい空間です。相手との間でも、一人で好きなことをしていても、何でも自分の意のままにコントロール出来るという感覚に浸りやすいです。この感覚は、リアルな世界でずっと体験出来るものではありません。

対人コミュニケーションが苦手な人、自分に劣等感を感じている人、どこかで自分が役立ちたいと感じている人、現実逃避をしたい人、どことなくリアルな世界で「不安」を感じ取っている人からすると、ネットの世界は心地良く、安心出来る空間でしょう。「この場にずっといたいな」「ここでなら自分を出せるな」「何を言われても平気だな」「この世界なら思い通りに出来る」などと思うようになり、その世界にはまっていくようになります。

そこにはまり続けると、逆に現実世界に戻ることへの抵抗や不安が生じ、ネット世界から現実世界へと戻らず、心地良いネット世界に居座ることになります。オンラインゲームで楽しむなり、SNSを通じて投稿する中で存在感を感じ取ったりしながら、さらに気分は高められ、止めることが難しくなります。ひたすらネットサーフィンして時間を使っていくこともあるでしょう。このスパイラルから抜け出せなくなり、さらなるネット依存の悪循環に苛まれていくのです。

このようなスパイラルに深く陥らないためにも、早々の段階で、ネット依存のサインや症状を発見し、対処していくことが、ネット依存の予防ともなりますし、事態の深刻化を避けるのに最も重要なのだろうと感じています。

【まとめ】

「インターネット依存(以下、ネット依存)」は、現代では「行動依存(嗜癖)」の一つに分類される。

●1996年にK.Youngが、「Internet addiction」を「インターネット使用者のコントロール不能な状態、ネットにはまっている時間が増大していること、弊害が生じているにも関わらず、止めることが出来ない状態」と定義した。

●総務省の調査(2019)によると、日本のインターネットの利用率は、2019年現在で日本の人口の89.8%が利用していることになる。つまり一億人が利用しているということになる。

●日本では、ネット依存が疑われる中高生が、2017年の推計値で93万人に及んでいた。2012年では52万人だったのが1.8倍も増加したことを意味する。

●ネット依存になる理由も様々だが、環境因と心理的要因が重なり合いながら、依存度が高くなっていくのだろうと考える。具体的な理由は図―4の通りである。

●ネット世界では、人は万能的に、自由に何でも出来るという感覚になりやすく、その世界から抜け出しにくくなる。このスパイラルがさらなるネット依存の悪循環に苛まれていく。この事態を回避するには、早々にネット依存のサインや症状に気づき、対処していくことが重要である。

【終わりに】

今回は、「ネット依存の概念と歴史」、「ネット依存の実状」、そして、「ネット依存の要因」について簡単に述べました。この後も延々と語れるのですが、切りがないため、ここで一度ストップします。
今回は、どうしても概念的な説明のため、堅苦しくなってしまいましたが、次回は、ネット依存のメカニズムについてもう少し掘り下げつつ、より日常生活で活用的な内容となる、「ネット依存のサインや症状」などについて触れていきたいと思います。

今年は様々なテーマを取り上げられるといいなあと思います(笑)
宜しくお願い致します。

【引用・参考資料】
【和書】
・妹尾栄一 (2005) 臨床精神医学 34(4) 精神医学用語解説(294)インターネット依存
症 アークメディア
・髙橋三郎・大野裕・染矢俊幸(訳)(2006)DSM-Ⅳ-TR 精神疾患の分類と診断の手
引 新訂版 医学書院
・安澤好秀(2009)インターネットへの依存傾向の実態と心理的要因に関する一考察-強
迫および回避との関連性を主眼に- 臨床心理学研究.7 東京国際大学
・Allen Frances(著) 大野裕ら(訳) (2014)DSM-Ⅴ 精神疾患診断のエッセンス DSM
-Ⅴの上手な使い方
・飲酒や喫煙等の実態調査と生活習慣 病予防のための減酒の効果的な介入 方法の開発に関する研究 (2018) 厚生労働省
・情報通信白書 インターネットの利用状況 (soumu.go.jp)(2020)総務省
・財団法人 日本インターネット協会 (2021) インターネット白書
・樋口進 (2019) Q&Aで分かる子どものネット依存とゲーム障害 少年写真新聞社

【洋書】
・Young, K. S. (1998). Internet addiction: The emergence of a new clinical disorder. Cyber Psychology & Behavior, 1, 237–244.

 


 

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Writing byY.Y

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