COLUMNコラム

【学齢期の子どもの心理】「不登校」という現象について考えてみる⑧

みなさん、こんにちは。所属カウンセラーのY.Yです。

秋の季節に身を寄せながら、段々と肌寒くなる日々を感じる今日この頃。
みなさん、こころとからだ、温められていますか?

ヒンヤリして、体調の崩しやすい季節です。また、緊急事態宣言は解除されたとはいえ、コロナ不安・コロナストレスと共にする日々です。他にも人間関係の問題を始め、多くのストレスを感じることがあるでしょう。
「ドキドキ」、「ソワソワ」することも多いと思います。

人は、マイナスな出来事に目が向けられがちで、その状態がずっと続くと、どんどんマイナスなイメージが大きくなり、不安も大きくなっていきます。

しかし、日々の生活の中には、必ず「ホっと」、「ほっこり」するエピソードもありますし、実は見方を変えると「悪くないな」と考えを改めることも出来ます。
どこかでちょっぴりと休憩した時、例えば公園のベンチ、喫茶店、自宅のベランダや縁台といったところで、「ホッと」、「ほっこり」すること・ものなどをイメージしてみて下さい。些細なことですが、それがメンタルヘルスのケアの一つとなります。

さて、今回は『「不登校」という現象について考えてみる』の第8弾です。今回のテーマは、「不安・恐怖対象の拡大」です。
「え?何、まだ終わらないの?」と思われる方がいらっしゃるかもしれません…と思っているのは私の心中だけなのかもしれません(笑)
今回、触れたいのは、まさに、このメカニズムについてです。

夏休みを挟んでから学校に行きずらくなった子どもたち、そして思い悩む保護者の方々も少なくないかと思います。この2カ月、登校への不安感や恐怖心は一人で悩み続けていると、必然と高まっていくものです。その心の動きについて理解しておくこと、その動きは自分だけではないことを、この場で共有しておくことが今回の内容です。

人は不快な気持ちを抱くとどうなるか?

人は、何か嫌な出来事を体験して不快な気持ちや気まずい気持ちになった時、その場面を何度も思い出しては、「大丈夫かな」とか「あの時、~だったかな」など、ネガティブに考えてしまいがちです。

みなさん、心当たりありませんか?

その嫌な体験をした時、例えば人に言えないこと、言いづらいこと、言いたくないことだとしたら、どう対処しますか?

自分以外の人に言えぬまま、心の中にため込んでいくことが多いのではないでしょうか。それから暫くの間は、ずっと毎日のように思い浮かび、悩み続けます。

心から信頼出来る誰かがいれば、その人に言うこともあるでしょうし、それが出来れば少しは気持ちが楽になるでしょう。

しかし、なかなかそう上手くはいかないもので、「周りに迷惑をかけちゃいけない」、「言ったら余計に嫌なことが起きるかもしれない」「自分が悪いと思われる」「自分の○○がバレるかも」など、色々な不安が自分自身に襲い掛かるため、どうしても自分で誰かに相談することのストッパーを掛けてしまいます。

不登校の子どもが不快な気持ちを抱く時ってどんな時?

子どもの誰しもが嫌な体験をしたら不快な気持ちを抱きます。中には一人で抱え続ける強い忍耐力があったり、すぐに誰かに相談したり出来る子どももいるでしょう。
一方、嫌な出来事がきっかけで学校に行きたくない気持ちになり、不登校になる場合も多々あります。

不登校となる子どもも、私の心理コラムで触れた不登校になる様々な理由から、揺さぶられ、不快な気持ちを抱くようになります。
【心理コラム】学齢期の子どもの心理・『不登校』という現象について考えてみる①

そのうち、人間関係(友人らとの関係・教職員との関係・保護者との関係)にまつわる、いじめや体罰、虐待といった問題があります。これらを通じた、物理的および精神的苦痛を得る、支配-服従関係に見られる「暴言・暴力行為」は、段々と、被害を受けた子どもの心の傷を大きくしていきます。「怖い」「会いたくない」「仕返しされる」「自分がいけない」「我慢すればいい」など思うようになります。そして、自分自身の問題にも及び、心身の不調をきたす方向に進んでしまいます。

また、自分自身(情緒不安定・性格・学習の遅れ・環境への適応困難)といった問題も言いにくく、誰かに言うには相当の勇気や覚悟が必要です。誰かに伝えた後の「悲観的なイメージ」があるからです。「自分のことを悪く言っている」、「変な風に見られている」、「悪いことが起きる」といった、嫌なことばかりが脳内を占めていき、一歩踏み出すことがとてつもなく不安で怖いからです。

不登校の子どもの不安や恐怖の気持ちはどう変化する?

不登校となると、物理的にも誰かと会う機会が減少しますし、精神的にも心にため込み続ける傾向が強くなります。私の心理コラムでも触れましたが、心の中に抱く不安や恐怖は拡大していく一方なのです。
【心理コラム】学齢期の子どもの心理・子どものストレスのあらわれ方

その不安や恐怖といった感情を抱いたきっかけが、「学校」にあれば、物理的にも精神的にも学校との距離は遠のいていきます。

小林(2006)によれば、不登校が進む中で、良くも悪くも、子ども自身の情動が強められるメカニズムには、二つの法則があると論じています。

① 繰り返せば繰り返すほど、その情動は強くなる。
② ある特定の新しい場面や状況で、別の場面や状況が同時に加えられると、別の新しい場面や状況でも、同じような情動が起きやすくなる。

そして、この法則の下で、学校への行きづらさが増していき、登校しないことによる「安堵感」を覚え、その判断や行動が増していくと説明しています。

子どもが抱く不安・恐怖対象の移行プロセスについて

私自身も、この二つの法則の通りに、子どもの情動が強められていくと感じています。
ここでは、学校での人間関係がきっかけとなる場合を中心に、私自身が経験を通じて感じ取ってきた、段階的な不安と恐怖の移行プロセスについて取り上げていきます(図-1)。

図―1 子どもが抱く不安・恐怖対象の移行プロセス

上の図では、小さな楕円から大きな楕円までの7つの項目を書いています。小さな楕円から大きな楕円への膨らみは、「不安・恐怖の対象の拡大」と考えて下さい。右横に双方向の矢印を描いています。この「不安・恐怖の対象」は、拡大していく方向だけではなく、大きな対象から再び小さな対象へ縮小していくこともあります。その心の動きは、子どもたちの状況やペース、タイミングで異なり、大きくなったり小さくなったりを繰り返すこともあります。

それでは、小さい順に、7つの楕円の項目について触れていきましょう。

「特定の対象」
例えば、「からかってきた友人」や「いつも注意してくる先生」などの一人の存在に向けたものです。また、特定の学習活動(授業・テスト、課題の提出、宿題など)や部活動、行事などの限定的な時間や空間です。最初はその一時的な、部分的な対象に対して不安や恐怖の気持ちを抱きます。この段階で対応出来れば、子どもは一番安心出来ます。子ども自らは言いにくいですから、可能な限り、大人が気づくことが求められます。

「特定の対象の周辺」
上述した説明で進めると、「からかってきた友人の周りにいる友人たち」や「いつも注意してくる先生のように注意してくることが多い先生」です。学習活動も、授業の一部だけではなく、その科目全体や宿題のある他の授業などへの拒否感が増してきます。この場合、クラスでは一部の仲間に近づかない、嫌な授業だけは出ないという現象が生じてきます。

「クラスという空間」
クラスという空間に抵抗感が生じてきます。からかってきた友人やその周りの友人がいるクラスに入りにくくなります。学校を休んでいると、他のクラスのメンバーも心配してきます。決して悪気のある心配ではなくても、ネガティブに考えている子どもにとっては、その注目をマイナスに受け止めてしまいます。「クラスの他の人たちもみんな自分のことをどう思っているんだろう…」、「何を思われているか分からないから、クラスのみんなに会いたくない」などと悪い方向に連想していきます。

「学年のいる階や廊下」
クラスに留まらず、広範囲に行くのを避けたくなります。どのような事情であれ、「自分が学校を休んでいることが友人から友人へと広まり、みんな知っているんだろうな」と感じ、不安と恐怖の対象が、学年全体に広まっていると思い込んでいくようになります。実際に噂が全体に広まっているのかどうか事実を抜きにして、不登校の子どもたちの中ではどんどんその考えが膨らんでいくことがあります。

「学校の玄関・校門」
学校全員を対象として「会いたくない」「話せない」となります。玄関や校門で少しでも会ってしまうのではないかと考えるだけで不安な状態になりえます。可能ならば、この段階までに、特定の対象との話し合い、指導や環境づくりを行うこと、また、子どもと関われる・話が出来る対象を、誰でも良いので学校と保護者で必ず確保しておくことが重要となるでしょう。

「学校そのもの」
登校を試すことが難しくなります。学校不安や学校恐怖の状態であり、学校を目に留めるだけで辛くなる状態です。
どの時間帯であれ登校を無理強いできません。誰か関われる教職員がいるならば、電話や手紙、オンラインなどを通じて、子どもが元気かどうか、声を聞くこと、雑談(学校の話題以外の話)が出来れば良いでしょう。子どもと関われる大人がいないならば、保護者と確実に繋がること(連絡を取り続けること)が重要です。他方、保護者は、学校と関係しない場所への外出が可能であれば、ぜひ親子で出掛けて欲しいです。

「制服・学校の話」
学校について見るとか聞くのレベルではなく、学校に関する全てのものについて、子どもが過剰に反応してしまい、不安や恐怖を抱くレベルです。それくらいに学校への拒絶感は大きく、関連するものに触れるだけで嫌なことを思い出しては自己嫌悪に苛まれ続けてしまうため、とにかく学校関連のものを全て見えないように、そして耳に入らないように工夫することが、子ども自身も周囲の大人も大切なことでしょう。

楕円が大きくならないように

不登校の子どもの場合には、自宅や一人でいる時間に、色々と考えてしまいます。不安や恐怖の気持ちが、次第に特定の対象から広範囲の対象に拡大していきます。そして、もともとの学校に行けないきっかけとなった「特定の対象」というよりも、全てが理由で「学校に行けない」という気持ちに至ります。この状態が続けば続くほど、学校への復帰は難しくなりますので、これまでのコラムで紹介してきた不登校の対応のように、徐々に「人とかかわること」、「外に出ること」を目標に、エネルギーを充電していきます。

正直、「学校」だけが対象ならばまだ良い方だと考えることも出来ます。もっとリスクなのは、学校での出来事がきっかけとして、対人関係への自信を失い、人と話すこと、目を合わせること、集団の場での発表、集団場面にいることが困難となり、学校以外の場においても、同様の現象が起きてしまう場合です。即ち、「対人不安・恐怖」「視線恐怖」「社交恐怖」といった症状です。この症状が顕著な場合、受診することを勧めますが、そもそも外出が難しく、受診が難しくなります。だからこそ、このレベルになる前に何かしらの工夫が必要となります。

子どもであれ、保護者であれ、教職員であれ、周囲の大人であれ、上述したような子どもの心の動きが生じていることを踏まえた上で、今後の手立てを考えていくことが重要です。

【まとめ】

●いじめや体罰、虐待といった問題や自分自身といった人間関係の問題は、とても人に言いにくく、大人が気づけるよう工夫することが必要である。
●学校に不安や恐怖の一因がある場合、物理的にも精神的にも学校との距離が遠のいていく。学校に対する段階的な「不安と恐怖の移行プロセス」に触れ、7段階について心に留めて対応していくことが一案である。この心のプロセスは、子どもの状況やペースに応じて行き来する。
●これまでのコラムで紹介してきた不登校の対応を通じて、徐々に「人とかかわること」、「外に出ること」を目標に、エネルギーを充電していくことが重要である。
●「対人不安・恐怖」「視線恐怖」「社交恐怖」といった症状が顕著な場合、受診の検討も必要である。そして、この段階にまで至らないように、様々な対応が求められる。

今回は、心の中の「不安感や恐怖心の拡大」について述べました。どんよりした気分になったかもしれません。しかし、見方を変えれば、不登校の子ども自身ならば、整理する機会や他の子どもも同じ気持ちになるという確認の機会になったかと思います。周囲の方々ならば、子どもが抱く気持ちに少し近づいたことを意味するかもしれません。そのような考える機会となり、次に進む一歩となれば幸いです。

不登校のコラムも残り2回となりました。後2回だけお付き合い下さい(笑)

次回は心のダイナミクスとは少し離れた実務的な話になりますが、非常に重要なテーマ「不登校児の進路選択」についてです。
それほど取り上げられない内容だと思いますので、ここで取り上げてみます。ぜひご一読下さい。

【引用・参考資料】

小林正幸 2006 不登校児の理解と援助 問題可決と予防のコツ 金剛出版

 


 

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Writing byY.Y

 

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