皆様、こんにちは。
公認心理師の小高千枝です。
毎年夏の時期は、海外駐在や留学中にオンラインでご対応をさせていただいていたクライエント様が一時帰国をされ、対面での再会。そして、9月に入る前に戻られるという。。。再会とお見送りが重なる時期です。
弊社のカウンセリング現場では、新年度を迎えるような感覚にもなり、この季節は毎年ご相談が増えてまいります。
4月と同様に、9月もまた「新しい生活のはじまり」を迎える方が多いため、私たちにとっても もうひとつの新年度 のような感覚を覚えます。
また、日本ではまだまだ「カウンセリングの敷居は高い」と感じられる方も少なくありませんが、弊社へご相談にいらっしゃる方の中には、海外駐在や留学、あるいは長期にわたる海外生活のご経験を持つ方も多く、海外ではカウンセリングが文化として身近であり、皆さまも 心のホームドクター のような感覚でご利用くださっています。
冒頭でお伝えしましたように、日本での滞在期間にカウンセリングを受け、その後再び赴任先や留学先に戻られる方もいらっしゃいます。そうした方々は、帰国後も オンラインを通じて定期的に心のメンテナンス を継続され、生活の場がどこにあっても安心してご利用いただけるようになっています。
日本での時間が、”ホーム”という安心できる環境の中での「心を整えるための大切な節目」となり、その後の海外生活でも安定した心の基盤につながっているのです。
1. 生活の変化と心理的影響
新しい生活をスタートする際、人は期待や楽しみと同時に、不安や緊張を感じるものです。心理学では、このような出来事を ライフイベント(life event) と呼びます。ライフイベントは心身に大きな影響を及ぼし、ストレス反応(stress response) として表れることがあります。
例えば、海外駐在の場合は、ご本人の職務上の適応だけではなく、ご家族が新しい生活環境に馴染むための課題も多く発生します。
言語や文化の違いによるストレス、社会的サポートネットワークの乏しさなどから、家族全体に心理的負担がかかることも少なくありません。こうした状況では、家族システム(family system) 全体が新たなバランスを模索する必要があります。
一方、留学やボーディングスクールに通う方の場合、問題の中心がご本人の中にあり、おひとりで抱えてしまう傾向があります。
学業や生活の自立が求められることによるプレッシャー、文化的孤立感やアイデンティティの揺らぎ、同年代との比較による自己評価の変動など、発達課題と重なりながら心理的な影響が現れることが多く見られます。特に若い世代では、ソーシャル・アイデンティティ(social identity) の形成過程において葛藤が生じやすいのが特徴です。
このように、同じ「海外での生活」というライフイベントであっても、ご本人やご家族の立場によって、心身への影響や必要とされる心理的サポートの形は大きく異なります。
今年は例年に比べ特に、ご家族みなさまで海外生活を始められるケースも多く、日本から送り出すご家族にとっても、また残るご家族にとっても、適応課題(adaptation task)が増える傾向にあります。そうした変化の過程に寄り添い、安心して生活を整えていただけるよう、私たちは 心のホームドクター として心理的サポートをご提供しています。
2. 残暑がもたらす心身の不調
暦の上では秋ですが、9月もなお厳しい暑さが続きます。強い残暑は、自律神経系(autonomic nervous system) のバランスが乱れやすく、次のような心身の不調が現れることがあります。
▼睡眠の質の低下(入眠困難・中途覚醒・熟睡感の欠如)
▼消化機能の低下(胃痛・食欲不振・下痢や便秘)
▼頭痛やめまい、倦怠感といった身体症状
▼集中力・意欲の低下
▼イライラや不安感などの情緒不安定
これらは、いわゆる 自律神経失調の典型的なストレス反応 として見られるものであり、身体症状が心理的な不安や落ち込みにつながる「心身相関(mind-body interaction)」の代表例ともいえます。
特に季節の変わり目は、暑さから解放される安堵感と同時に、環境の変化に体が追いつかず、心身のアンバランスを感じやすい時期です。
ケアの方法や具体的な対処、休養・生活リズムの調整等については、別途記事で詳しく取り上げてまいりますので、ぜひあわせてご参考いただければと思います。

3. 心の伴走者として
9月は新しい環境や挑戦が始まる時期であり、同時に心身が揺らぎやすい季節でもあります。海外駐在や留学といった大きなライフイベントは、ご本人だけでなくご家族全体に影響を及ぼし、また季節の変わり目の自律神経の乱れは、日常の小さな不調を積み重ね、気づかぬうちに心理的な負担となることもあります。
こうした変化の中で大切なのは、「不調をゼロにする」ことではなく、「揺らぎを受け止めながら、心身を整えていく」視点です。
心理学では、人は環境に適応する過程でストレスを経験し、そのプロセスの中で回復力=レジリエンス(resilience)⇒「しなやかに立ち直る力」を育んでいくといわれています。揺らぎや葛藤を否定するのではなく、それらを伴走者とともに見つめ直すことが、安心して前へ進む力となります。
私たちは「心のホームドクター」として、日本でのご対応はもちろん、どの国にいても、どの季節を迎えても、皆さまが自分らしく歩んでいけるように、心の伴走者として寄り添い続けます。
どうかこの9月が、皆さまにとって実り多く、穏やかなはじまりのひと月となりますように。
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