COLUMNコラム

【トラウマインフォームドケアという関わり】⑤子どものトラウマ反応について

こんにちは、所属カウンセラーの古宇田です。

最近、日本での共同親権の導入について注目しています。現行制度では、離婚後の親権は父親か母親の一方が持つ「単独親権」ですが、「共同親権」導入となれば、両親が合意すれば共同で子育てをすることが可能になります。合意が難しい場合は家庭裁判所が判断することになり、家庭内暴力などの懸念がある場合は単独親権が選択されることになる可能性があります。

一般的に、共同親権は、親が離婚や別居した場合に、両親が子どもの養育に関する決定を共同で行う制度です。共同親権の課題としては、親同士の意見の相違が生じた際に決定が難航することが挙げられます。また、親同士のコミュニケーション不足や対立が子どもにストレスを与える可能性もあります。しかし、共同親権は子どもにとっても多くの良い面があります。まず、両親との関係を維持できるため、心理的な安定感や安心感を持ちやすい環境が整います。また、両親から異なる視点や経験を学ぶことができ、幅広い視野を持つことができます。さらに、共同親権を持つ親が連携して子どもの成長や福祉に貢献することで、子どもの幸福度が向上する可能性があります。共同親権は、両親が協力して子育てに関わることで、子どもにとってより健全な成長環境を提供する制度と言えるかもしれません。「共同親権」の導入に関して今後も注目していきたいと思います。

さて前回の【トラウマインフォームドケアという関わり】④こころのケガになりうる出来事では、トラウマという子どものこころに衝撃を与える出来事やトラウマになりうる出来事についてお伝えしました。

子どものトラウマはさまざまな出来事によって引き起こされますが、特に身体的、精神的、性的な虐待や自然災害、事故、戦争などの非常事態は、深い影響を与える可能性があります。これらの出来事は安心感や安全感を奪い、心の安定を脅かし、子どもが恐怖や不安、抑うつなどの感情を抱えることにつながりかねません。

子どものトラウマは深刻であり、適切なサポートや心理的なケアが重要です。さらに家庭や社会全体が子どもたちを理解し、支え、安心感を提供することが必要です。そのようなサポートがあれば、子どもたちは健やかに成長し、トラウマから回復することが可能です。

さて今回は引き続き【トラウマインフォームドケアという関わり】シリーズより、子どものトラウマ反応についてお伝えしたいと思います。

【子どものトラウマ反応】

トラウマを体験したのち、子どもの心身には色々な反応が現れます。多くは自分の状態を大人のように言葉で説明することが難しく、特に小学校低学年以下の子どもはそうしたことから、身体の反応が多くみられます。また思春期という難しい時期にある子どもは、時にトラウマによるつらさや苦しさを反抗的な態度ゲームなどへの没頭という形で反応を示す場合もあります。

年齢による反応の違い、行動の変化などトラウマの影響による反応の示し方は複雑ということを理解することが大切です。またどこまでが発達上の課題なのか、どこからがトラウマ反応なのかという、発達とトラウマの関係の線引きの判断も難しいところです。場合によっては、子どもが大人を心配させないように明るく元気に振舞うことで、いっそうトラウマ反応を分かりづらいものにさせてしまうことにも注意が必要です。

そのため、子どもが抱えるトラウマに関する理解を深めるためには、以下のポイントが大切となります。

1.年齢による反応の違い:年齢によって子どものトラウマへの反応は異なります。幼い子どもは言葉で感情を表現することが難しく、行動やしぐさを通じて感情を表現することがあります。

2.行動の変化に注意:トラウマを抱える子どもは、通常の行動に変化が見られることがあります。過度な怯え、対人関係の回避、注意力散漫、怒りっぽさなどが典型的な反応です。

3.再トラウマ化(リトラウマティゼーション):トラウマを経験した子どもが似たような出来事に再び直面することを再トラウマ化と呼びます。再トラウマ化は、過去のトラウマがまだ癒えておらず、新たな出来事がそれを引き起こすことで発生します。これにより、過去のトラウマが再び感じられ、心的な痛みや苦しみが再燃する可能性があります。

※「リトラウマティゼーション」は、心理学や精神医学の領域で使われる重要な概念の一つです。この用語は、英語の「Re」(再び)と「Traumatization」(トラウマ化)を組み合わせたもので、「再トラウマ化」と訳されます。この概念は、トラウマ体験をした個人が、そのトラウマ体験や関連する刺激と再び直面した際に、再びトラウマを経験する現象を指します。つまり、トラウマ体験が過去の出来事であっても、それに関連する何らかの刺激や状況に再び接することで、そのトラウマが再び活性化され、苦痛や不安を引き起こすという現象です。

一般的に考えられている子どもの心身や行動面でのさまざまなトラウマ反応についても確認しておきましょう。

1.身体の反応
・眠れない、途中で目が覚める、眠りが浅い
・食欲がない、逆に食欲が過剰に増える
・息苦しさ、胸の痛み、動悸
・手足の震え、発汗、発熱、腹痛や頭痛、だるさ

2.精神的な反応
・出来事の場面を思い出したくないのに思い出してしまう、怖い夢を見る
・出来事に関係するものを見ることが苦痛で、避ける
・イライラ、癇癪を起す、集中力がない、ぼんやりしている、過剰に警戒している、音などに敏感になる
・怯えた様子、落ち込み、ハイテンション、情緒不安定
・他人を怖がる
・出来事について自分が悪かったと思う
・性被害に特有な、自分がけがれてしまった感覚を抱く

3.行動面の反応
・赤ちゃん返り(指しゃぶり、おねしょ、甘える)
・電気を消して眠れない、一人で眠れない
・学校の勉強の成績が落ちる
・登校、登園渋りをする
・友達とのトラブルが増える、友達と遊びたがらない
・自傷行為(リストカット、抜毛など)
・性化行動(性被害に特有:自慰様行為、性的非行、性的関心の増大)
・遊びの変化(ゲーム、スマホ、ネットへの没頭)

日常生活を送っているとトラウマがなかったとしても上記の中には、しばしば起こり得るものもあります。大切なのは、子どもにとってトラウマとなり得る体験が生じたあとに、起きてくる反応であることを念頭に、子どもの様子を積極的に見守るという姿勢を持つことです。また子どもがトラウマを体験すると、保護者も強いショックを受け、同様に心身にさまざまな反応が現れるとも言われています。

【最後に】

子どもの心のケアとトラウマへの理解は、子どもの未来を大きく左右します。トラウマは、心に深い傷を残す可能性があります。そのため、子どもが健やかに成長し、安心して生活できるように、私たちの理解とサポートが欠かせません。

こころのケガになりうる出来事や子どものトラウマ反応を理解し、適切な支援を提供することで、子どもがトラウマから回復し、前向きな未来を築いていける可能性が高まります。我々大人が子どもたちの心を理解し、子どもたちの側に立って支えることは、自信や安定感を育むことにつながります。子どもたちが安心して語り合える環境を作り、子どもの声に耳を傾けることが大切です。そして、トラウマを乗り越え、心の傷を癒していく過程で、私たちは子どもを見守り、励まし続けることが求められます。

【参考資料:『トラウマインフォームドケア“問題行動”を捉えなおす援助の視点』著:野坂祐子・2019、『実践トラウマインフォームドケア』著:亀岡智美・2022、『こころとからだがえがおになる本』公益社団法人被害者支援都民センター】

【トラウマインフォームドケアという関わり】シリーズはこちらからご覧になれます。
【トラウマインフォームドケアという関わり】①環境要因によって形づくられる子どもの発達の質とは・・・
【トラウマインフォームドケアという関わり】②なぜ今の時代に必要とされているアプローチなのか
【トラウマインフォームドケアという関わり】③子どもの気になる行動の背景を理解するためのヒント
【トラウマインフォームドケアという関わり】④こころのケガになりうる出来事

社会生活の変革という過渡期での不安やストレスは、さまざまな形で表出されることがあります。また、被災地の皆さまにとっては日々変化を遂げる環境の中で、ご心配を抱えた状況の方がいらっしゃることと思います。心身の安全最優先でお過ごしいただければと願います。ポジティブな考えを持つきっかけとして、そして安心・安全な人との関わりを通して生きる力を養うサポートもカウンセリングの一側面とも考えています。子育てや子どもの抱える不安やストレスに関してのご相談もお受けしております。

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Writing by古宇田エステバン英記

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