COLUMNコラム

【子どもの貧困問題への取り組みを考える】②子どもの貧困への対応

こんにちは、所属カウンセラーの古宇田です。

今年のゴールデンウィークは、気持ちの持ちよう的には、コロナ禍前とどこか同じ気持ちになる人が大勢いるのではないでしょうか。それを表す一つの動きとして、大型連休中に国内旅行をする人がコロナ禍以前の2019年と同じ水準まで回復するという見通しを旅行会社がまとめました。また新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけについて、政府は2023年5月8日に、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方針を立てています。こうした世の中の動きに合わせて、今まで人と「会う」という機会を制限せざる得なかった状況が変わろうとしています。

「会う」ことには、目の前にいる人と同じ瞬間を共有したり、生身の目の前の人の声を受け取る、そして自分の声を受け取ってもらうことでの繋がりを我々人間は必要としていると考えています。コロナ禍を通して感じ、そして改めて気付かされたことといってもいいかもしれません。今一度このゴールデンウイーク中にさまざまな「会う」ということを通して読者のみなさまにも、なぜ「会う」ということが大切なのかを感じていただければと思います。

さて前回は、子どもの貧困という問題意識の高まりとともに、現代における貧困の捉え方の変化、そして貧困の概念についてお伝えしました。
詳しくはこちらをご覧ください。【子どもの貧困問題への取り組みを考える】①現代社会における貧困とは?

貧困における負のスパイラルから抜け出すために、貧困の世代間連鎖の解消と人材育成子どもを中心にした切れ目のない施策が国の貧困政策の基本方針でありゴールとなっています。具体的には、教育の支援、生活の支援、保護者の就労支援、経済的支援の4つの支援の方向性が示されています。

【国の貧困政策への動き】

上記の貧困政策の具体的内容としては「文部科学省・厚生労働省における子どもの貧困対策の総合的な推進」の中で以下の項目が挙げられ、さまざまな対策がなされています。幼児期、義務教育、高校学校等、大学・専門学校における各段階における支援や、段階をまたいでの施策があり、まさに総合的な視点で取り組みがなされています。

・教育費等の負担軽減のために・・・
幼児教育・保育の無償化
要保護児童生徒に対する就学援助
高等学校等就学支援金
高校生等奨学給付金等
高等教育の修学支援(授業料等減免・給付型奨学金等)
特別支援教育就学奨励費
生活保護(教育扶助等)
生活福祉資金

児童養護施設等で暮らす子どもへの支援などがあります。

学ぶことを支える取り組みの充実に向けて各自治体による地域の実情に合わせた実施が必要となってきます。子どもの学習や生活支援を通じて、子ども本人と世帯の双方にアプローチし、子どもの将来の自立を後押しすることで、貧困の連鎖を防止することも目的となります。

・学校における指導・相談体制の充実のために・・・
幼児教育推進体制を活用した地域の幼児教育の質向上強化事業
スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーの配置充実
貧困等に起因する学力課題の解消のための教員定数の加配配置
補習等のための指導員等派遣事業
夜間中学の設置促進・充実
各学校段階を通じた体系的なキャリア教育の充実
地域を担う人材育成のためのキャリアプランニング推進事業
学校給食・食育総合推進事業
帰国・外国人児童生徒等に対するきめ細かな支援事業

外国人の子供の就学促進事業などがあります。

学校における子どもの学習や生活支援の連携先として小学校・中学校や教育委員会、行政機関では70%近くあるものの、義務教育を終えたあとの高校等、児童相談所・児童家庭支援センターや食料・教材等支援関係団体(フードバンク等)、こども食堂などでは30%未満となっています。これは、子どもへの支援の切れ目がこうしたところに表れているようにも考えられ、今後こうした子どもに関わる関係機関の切れ目ない連携がさらに必要になってくることでしょう。

・地域の教育資源の活用のために・・・
地域と学校の連携・協働体制構築事業
高校中退者等に対する学習相談・学習支援の促進
国立青少年教育振興機構が実施する青少年の自立する力応援プロジェクト
地域における家庭教育支援基盤構築事業等

生活保護世帯を含む生活困窮世帯・ひとり親家庭の子ども等への学習・生活支援などがあります。

これら支援は「貧困の連鎖」を防止するため、生活保護受給世帯の子どもを含む生活困窮世帯の子どもを対象に実施されています。生活保護部局や学校等が連携し、生活保護世帯を含む生活困窮世帯に対して、子どもの学習・生活支援事業の周知を行い、事業の参加を促すことが必要とされています。

また各自治体が地域の実情に応じ、地域資源の活用、地域の学習支援ボランティアや教員OB等の活用等、創意工夫をして取り組んでいます。学習支援のほか、集団行動を学ぶ体験学習や将来を考えるきっかけとなる職業体験、子どもと保護者に対する相談等を実施することも大切です。支援にあたっては、地域の子ども食堂や企業、専門職等と連携して実施することが目指されます。

こうした取組を通じて把握した子どもの家庭が抱える課題等については、必要に応じて学校や自立相談支援機関と連携・情報共有を行うことも、今後の子どもの貧困対策には必要なことだと考えられます。

一方で事業実施の課題として「対象となり得る子どもは一定数いるものの、利用につなげることが難しい」ことが調査で明らかになっており、その解消のために「(活動場所への子どもの移動手段のための)送迎手段の確保」「学生ボランティア等の確保」が必要と報告されています。しかし貧困を抱える家族や子どもをこうした事業につなげることには、上記内容だけでない、貧困の抱える根の深さも考慮しないとならないと考えています。子どもの貧困と地続きになっている問題も総合的に捉えていくことが大切です。「子ども」ではない人たちや、「貧困」ではない人たちを含めた「私たちの問題」だと言える社会に向かうことを願うばかりです。

【最後に】

令和5年の4月から、子どもの貧困対策は「こども家庭庁」に管理・管轄の権限が渡されたことで、今後はこども家庭庁のもと、さまざまな視点から今まで以上に子ども貧困対策が展開されることが期待されます。子どもの貧困は、いろいろな問題と絡んでいます。それは今の社会が抱える問題の縮図がそのまま反映されているとも言ってもいいかもしれません。改善や解決は、それだけに一筋縄ではいかないでしょう。多様性が必要とされている現代だからこそ、「子どもの貧困問題」に立ち向かえるさまざまな施策が今後も検討され実現に至るには、大人たち、そして子どももそこに参加し、意見を出し合いながら、対話を通じて、協力をしていくことが必要になってくるのではと考えています。

【参考資料:「子どもの貧困の対応について』厚生労働省・2022】

【子どもの貧困問題への取り組みを考える】シリーズはこちらからご覧になれます。
【子どもの貧困問題への取り組みを考える】①現代社会における貧困とは?

さまざまな社会生活の変革という過渡期での不安やストレスは、さまざまな形で表出されることがあります。ポジティブな考えを持つきっかけとして、そして安心・安全な人との関わりを通して生きる力を養うサポートもカウンセリングの一側面とも考えています。子育てや子どもの抱える不安やストレスに関してのご相談もお受けしております。

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Writing by古宇田エステバン英記

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