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ひとりの人間としてみるということ・性別と社会問題(ミソジニー、フェミサイド)

皆様、こんにちは
メンタルヘルスケア&マネジメントサロン代表・公認心理師の小高千枝です。

秋の夜長が楽しみな季節になってきましたね。
緊急事態宣言も延長となり、秋の行楽シーズンどころではないかと思いますが
秋を自宅で身近で感じながら、2021年の後半も皆様なりに心が満たされるお時間をお過ごしいただきたいと思っております。

さて、先月は小田急線車内で発生しました「小田急線無差別刺傷事件」につきまして
情報番組など複数のマスコミでコメントをさせていただき、事件の背景にある容疑者心理について
<ミソジニー><フェミサイド>の傾向やそういった背景があるのでは?といった認識に
世間の興味関心の高さを感じることとなりました。

そして、女性支援をしている立場としましても、ひとつの社会問題として取り上げていただけることで
今回の容疑者が必ずしも「そうだ」と、断定的な見方をするのではなく
女性に対する憎悪犯罪が発生する背景について、皆様の意識が高まり
事件を社会全体で未然に防ぐことができる世の中になってほしいと強く強く感じました。

それでは、ミソジニー、フェミサイドともに一部の情報をお伝えすることに過ぎませんが
マスコミでお話しました一部をお伝えさせていただきたいと思います。


心の根底にある女性嫌悪・蔑視はミソジニー傾向があるためか

今回、3つの番組にて「ミソジニー」そして「フェミサイド」についてコメントをさせていただきました

▶フジテレビ「バイキングMORE」
https://odakachie.com/info/media/10960/

▶TBS「サンデー・ジャポン」
https://odakachie.com/info/media/10951/

▶Amazon Exclusive『JAM THE WORLD – UP CLOSE』
https://odakachie.com/info/media/11086/

一般的に「ミソジニー」「フェミサイド」の考えに至ってしまう原因・背景

「ミソジニー」になる傾向がある男性は、根底に男尊女卑の思想があり
「男である自分の要求に応えない女」を許せないという、女性に対する独自の理想の高さがある
女性に好かれないことが要因ではなく「自分を受け入れないことが悪い」という考えの持ち主であり、自己防衛心、自己保身のあらわれであるとも捉えられ
女性との間において競争社会で戦おうとしている感覚も持ち合わせており
「女なんて結局。。。」という不信感や女性蔑視から、ミソジニーになることもある。

女性に好感を持たれている人は「ミソジニー」の考えは持たないのか?

努力を重ね魅力的な男性になれても「ミソジニー」になることもゼロでない
自分を認めなかった女性への憎悪や、魅力的になった自分自身に対し、根底から自信を持つことができず
「経済力」「ルックス」「知名度」などで女性が評価をしているといった思い込みてなども発生し
自分の本質に目を向けてくれていないと感じ、女性に対する不信感を抱いてしまう傾向もある。

今回の事件に関し容疑者に”ミソジニー傾向がある”と分析した理由

▽人生に対する強い劣等感を抱いている中で、女性をキーワードに生活をしている様子が見られた

女性に認めてもらえない不満感(長期的な欲求不満)、また男尊女卑的な言動自分自身の理想や要求に応じない女性を嫌悪し、
攻撃的な意識をもっている

など。。。

無差別な犯行におよぶ人物の特徴・傾向

① 長期的な欲求不満(他者へはもちろん、自分自身に対する強い劣等感を抱いている)
② 他罰・他責傾向
③ 社会的・心理的孤立(社会的にも不安定な立場が続いている)

などが要因であるとも言われています

今回の事件は、容疑者が社会人になるにつれてアンチソーシャル(非社交的)な環境となり
自身の世界観が強化されすぎたこともひとつの要因であるのではないかと感じました。
そして、自分自身の行動や思考、価値観を正しいと思い込む(思い込もうとした)など

そういった中で、世間に対する欲求不満、自分の人生が上手くいかないことは自分のせいではないといった他罰的思考から
自己肯定感や自尊心の欠如など、マイナス感情が長期的に常に心に渦巻き、日頃から感じていた女性嫌悪・女性蔑視の考えから、今回の事件に至ったと現時点では感じます。

女性に対する嫉妬心

現代社会において男女平等であるとうたわれてはいますが、実際のところ男尊女卑的な文化は根強く残っていると私自身は感じています。(ここでは具体的には提示いたしません)
そういった中で、男性社会における「男として〇〇であるべき」「男として〇〇でなければならない」と性役割が(男性の中では)無意識の中で課せられているため
容疑者は男性社会のおける向き合い(戦いや挑戦)を放棄してしまったようにも感じました。

また、そういった傾向があると仮定した中で

女性に対する嫉妬心が芽生え(女性は男性を頼り経済的にもサポートがあり羨ましい、受身でいられる、責任を負わない、など偏った考え方から)
その嫉妬心を認めることができない、もしくは気が付いていないことから
性役割の拘りの強さとともに、男尊女卑的な価値観が更に深まり、ミソジニー傾向が表出したことも言えるかと思いました。

男性社会の中での存在価値を得ることができず、根本的にある女性に対する偏見など歪んだ価値観から偏った正義感を女性にぶつけ、攻撃をすることでストレスを解消しようとしているようにも感じます。

▶ミソジニー(女性嫌悪)
女性嫌悪、女性や女性らしさに対する嫌悪や蔑視。嫌悪感、差別思想を持っている人。
ミソジニーの逆を意味する対義語として「ミサンドリー」。男性嫌悪、男性蔑視を意味する

▶フェミサイド(性別を理由に女性を標的とした憎悪犯罪)
「女性であること」を理由にした殺人
世界保健機関(WHO)は2012年の報告書でフェミサイドについて
「一般的に、女性であることを理由にした意図的な殺人として、理解されている。しかしより広い定義では、女性または少女のあらゆる殺害を含む」

<WHOが示す4つのフェミサイドのタイプ>
・親密な人(現在もしくは前の配偶者やボーイフレンド)による殺人
・「名誉」関連殺人(性行為をしたことや婚外の妊娠などを理由に殺害される。多くの場合、加害者は家族の評判を守る、伝統に従うなどの方法として見ている)
・持参金関連(主にインド亜大陸で見られる慣習で、結婚する女性が献上する「持参金」が不足するといったトラブルに起因するもの)
・親密な関係ではない人による殺人(性暴力を伴うこともある)

ミソジニーは女性嫌悪。ただ、女性に構って欲しい

女性に対し嫌悪を抱き、軽蔑しているものの、女性に構ってほしい、自分を特別に扱ってほしい、女性から奉仕されたい→女性をコントロールしたいと思っています。

「ミソジニー」もしくは「フェミサイド」の考えに至ってしまう前に社会全体としてできることとは?

前述通り、男女平等が謳われる現代ですが、男尊女卑の思想は色濃く残っているため、社会全体としてもこの問題とは向き合わなくてはいけないと思っています。
「ミソジニー」「フェミサイド」のような偏った思想がある場合、そういった価値観や思考を自分なりに受容し
自分の思いや自分の言動・行動を少しずつ軌道修正していくことで、問題が生じないようにもできると思います。

ジェンダーについて問われている社会でもあります。「人」を「人として見る」こと。
性別などで判断するのではなく、人間としての魅力を理解し合うことも大切になってくると感じるのです。
(健康的な価値観の持ち主で)ひとりでも信頼できる人がいるのであれば、そういった人の周りで人間関係を広げていくと
「女性=嫌悪」ではなく、女性でも良い人がいる、性別関係なく付き合うこともできるようになっていくこともあると思います。

私自身、被害者側のカウンセリング経験は非常に多く、被害者も男性嫌悪や男性蔑視が芽生えてしまうこともあるため、気持ちを十分に受容し、まずは傷が癒えること第一に見守りながら
男性に対する抵抗感や強迫観念を少しずつ手放していけるよう、また、意識の軌道修正をはかるためのセッションを展開するようにしています。

今回の記事では「ミソジニー」「フェミサイド」についてお伝えさせていただきましたが、小田急線無差別刺傷事件の容疑者が「ミソジニー」「フェミサイド」であると断定したものではなく
こういった傾向がある人物がいるということを心に留めていただいた中で、正しい情報を選択し皆様にとっての平和な日常生活に繋げていただきたいと思っております。

また、今回の事件の影響により「電車が怖い」「通勤・通学ができなくなった」「知らない人と同じ空間にいられない」など恐怖心や不安感が強くなられ、精神的な被害を訴える方も多くでていらっしゃいます。
形に見えない「恐怖」「不安」「抵抗感」は知らず知らずのうちに大きな心の問題へと繋がる可能性もございます。
不調を感じられましたら、おひとりで抱え込まず信頼できる方や専門機関へ相談をするようになさってください。
早期ケアを心掛けることで、早い段階で日常生活を取り戻すきっかけを掴むことができます。

言葉がひとり歩きすることの怖さは、ネット社会における便利さゆえの問題です。
皆様の中で同調圧力にのまれることなく、ご自身にとって意味のある正確な情報を日常に取り入れ、豊かな毎日をどうぞ、お過ごしください。

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