こんにちは!所属精神科医のT.Sです。
このコラムでは、
私が精神科医として患者さんと接する中で手に入れ、磨き上げてきた様々な武器
つまりは「幸せになるコツ」
を紹介しています。
このコラムを書いている7月末現在、パリオリンピックで日本代表選手の金メダルラッシュが続いております!
普段ほとんどスポーツ観戦はしないのですが、こういうときだけニュースやSNSに張り付く私です。
実は私、幼少期に器械体操をやっておりましてね…
あの体操界のレジェンド、内村航平選手と同じ試合に出たこともあるのですよ…ふふ…!
(同じ電車に居合わせたことがある、レベルの自慢)
それもあって、今回の体操の逆転金メダルは猛烈に嬉しかった…!
個人的には、かつてアテネオリンピックで、冨田選手の鉄棒着地で日本が金メダルを取った瞬間の映像が本当に至高で、それこそ何回見ても心臓がバクバクするのですが、今回の橋本選手が鉄棒着地で逆転をキメた瞬間も、それはもう同じくらい感動しましたとも!!
でも私、選手が本番で失敗するところをリアルタイムで見てしまうと、もう胸が締め付けられてしまって、その後見られなくなってしまうんですよね…
なので、ニュースやSNSで結果を確認してから映像を見返す派なのです。
それに比べて、4年に1度しかない、そして世界中が注目する中で、普段通り、あるいは普段以上の力を発揮できるオリンピック選手たち。
メンタルの化け物としか言えないですね。
さて、何事においても、その道のプロ、一流と呼ばれる人たちは、同じく一流のメンタルを兼ね備えているもの。
今日も私とメンタルトレーニングに励み、一緒に一流のメンタルを手に入れましょう!
前回までのおさらい
現在『より良い夫婦・パートナー関係のために』という連載を掲載しております。
『対人関係療法で改善する 夫婦・パートナー関係 水島広子 著』という名著を参考にしながら、対人関係療法を駆使して夫婦・パートナー関係の問題に切り込んでいきます!
ここで一度、対人関係療法について簡単にまとめつつ、前回までのコラムで紹介した内容を振り返ってみます。
対人関係療法とは…
夫婦・パートナーなどの『重要な他者』との関係を最重要課題として取り組む、心理療法のひとつ。
夫婦・パートナー関係は、近しい存在がゆえに「自分とは違う一人の人間」として相手を尊重できなくなったり、男女の性差に伴う違いも相まって、実は揉め事に発展しやすい性質がある。
人は「攻撃された」と感じると、防衛反応として自分を正当化したり、逆に反撃してしまうもの。
しかし対人関係療法では、対人ストレスを「自分もしくは相手の落ち度、人格の問題」ではなく「役割期待のずれ」として見ていく。
それがたとえモラルの問題であったとしても、つまりは「どの程度まで求めるか」という個人差であり、感覚の違い、「ずれ」であると認識する。
生じている問題を、相手への不満ではなく「お互いの間のずれ」として捉えることで、「お互いが参加して作り上げるもの」という感覚が強まり、目指すべき一つの人間関係の輪郭が見えやすくなってくる。
そして、良好な夫婦・パートナー関係を築くにあたって、この「ずれ」にいかに取り組めるかが最重要ポイントになる。
そしてそのためにも、「あくまで目的は、夫婦・パートナー関係を改善することなのだ」ということを常に頭の片隅に置きつつ、話し合いの習慣を作っておくのが良い。
さて、これまでは重要な他者であるパートナーに焦点を絞ってお話をしてきました。
今回は、もう少しその周囲にまでスポットを広げてみようと思います。
パートナーの家族との関わり
いわゆる「嫁・姑問題」のように、パートナーの家族との関係に悩んでいる人たちは、私が日々の診療をする中でも本当に沢山いらっしゃいます。
まさに嫁姑の関係こそが悩みの本質であるという方もいらっしゃいますし、本題はそうではなくても、話の節々に相手家族への不満が出てくることも少なくありません。
大切なパートナーの、そのまた大切な家族なわけですから、円満な関係でいられるに越したことはありませんし、喧嘩したいと思う人などいないでしょう。
それでも、「嫁・姑問題」というワードが世間一般で通用してしまうほどに、もはや人間関係を考える上では避けては通れない問題となっています。
そもそも、どうしてそのような事態に陥ってしまうのでしょうか?
よく考えてみると、実はパートナーの家族との関係には、そもそも「うまくいかない要素」が数多く潜んでいるのです。
【精神科医が解説】より良い夫婦・パートナー関係のために<No.2 まずは二人の関係性を知る>
こちらの記事でも解説しているのですが、夫婦・パートナー関係を考えるうえで、見落としがちな重要ポイントがいくつか存在します。
〇夫婦やパートナーといえど、実は共有できている時間や経験はかなり少ない
〇自分と相手との境界線が曖昧になりやすく、その結果相手を「自分とは全く違う他人」と考えられなくなる
夫婦・パートナー同士の間には、本来あげればキリがないほどの違いがあります。
しかし、その距離の近さや共同体意識ゆえに、「相手の問題は自分の問題」という感覚に陥りやすく、相手を別人格の一人の人間として尊重できなくなると、相手の気持ちに配慮した発言や行動が出来なくなってしまいます。
だからこそ、その溝を埋める努力が絶対に必要なのです。
そこで改めて、パートナーの家族との関係について考えてみると…
パートナーでさえ共有できている時間や経験は少ないのですから、それがパートナーの家族となったらより一層少ないはずです。
しかしその一方で、「家族になったんだし」という漠然とした感覚から、これまた境界線が曖昧になりやすい側面も残しています。
つまり、夫婦・パートナー関係はただでさえ「ずれ」に取り組むのに苦労するものですが、パートナーの家族との関係はその何倍も難しいものなのです。
「夫婦・パートナー関係というのは絶対的なものではなく、お互いが何の配慮もしなければ、ふとしたきっかけで破綻してしまう可能性を秘めている」と過去に説明しましたが、パートナーの家族との関係はその域にも達していません。
つまり、「お互いが何の配慮もしなければ、継続はおろか、そもそも良い関係性を築くことすらできない」ものなのです。
なんとなく、で上手くいくものではないということです。
「家族になったんだし、きっと上手くやっていけるだろう」という根拠のない思い込みは、残念ではありますが大変危険です。
むしろ、「そもそも上手くいかないものなのだよね」という前提から入った方が、今後関係性の修繕に取り組みやすくなるかもしれません。
まずはその共通認識を持っておきましょう。
それぞれが自分の家族に責任を持つ
これ以上に良い表現が浮かばなかったので、『対人関係療法で改善する 夫婦・パートナー関係 水島広子 著』(第9章)からそのまま抜粋させていただきました。
「それぞれが自分の家族に責任を持つ」
水島先生もこちらの著書で述べられておりますが、やはり私自身も、この考え方がベストだと考えます。
繰り返しになりますが、パートナーの家族と共有できている時間や経験は、パートナーとの間以上に少ないものです。
少ないというより、ほとんど無い、と言っても過言ではありません。
例えば、「姑がいつも自分に怒ってくる」という悩みを抱えている奥様がいたとします。
しかし旦那様に話を聞いてみると、「僕の母親は妻のことは好きなんです。怒っているわけではなくて、元々そういう喋り方なだけなんです」ということは、往々にしてあることなのです。
幼少期から長い時間を共に過ごしてきた旦那様からすれば、実母の喋り方を聞けば「本当に怒っているのかどうか」はなんとなく分かるものです。
むしろ実母の言い回しに、他者から見た「違和感」を感じることすらできないかもしれません。
しかし奥様は違います。
義母がどんな環境で育ち、どんな性格で、どんな言葉遣いが普通なのか、ほとんど何も知りません。
自分の育った環境、考え方を物差しにするしかないので、そこに「違和感」が生じ、やがて義母を疑ったり、憎んだりという関係性に発展しかねないのです。
これを防ぐには、やはりその家族のことをよく分かっている各々が、自分の家族に責任をもって対処するのがベストです。
さて、ここで「自分の家族に責任を持つ」とは言うものの、具体的にどうすれば良いのでしょうか。
ここですべきは、まずパートナーに求める自身の希望を明確にしたうえで、家族の性格や現状をもとに、現実的な役割期待としてパートナーに依頼するのです。
「俺の母親とうまくやってくれよ」という姿勢ではなく、「うまくやる」の内容をより具体的な形に落とし込む必要があります。
そこで、例えば「半年に1回は子どもを連れて一緒に遊びに行ってあげてほしい」「たまにでいいからLINEをしてあげてほしい」など、パートナーとの話し合いの上で現実的に可能な方法を探り、依頼するのが良いでしょう。
「それぞれが自分の家族に責任を持つ」というのは、言い換えれば「パートナーの家族関係はパートナーの問題」ということです。
そう簡単に切り分けられないよ、と思うかもしれませんが、前提としてこの認識を持っていた方が上手くいくことが多いのも事実なのです。
場合によっては「重要な他者」のポジションから外す
パートナーの家族と同居の場合、やはり密に関わる関係であることは確実なので、これまでに解説した「夫婦・パートナー関係」にある程度準じて、ずれの是正に取り組む必要があるでしょう。
ただし、人は上手くやろうと意識すればするほど、焦ってミスしたり、上手くいかない部分が際立って見えてしまうものです。
眠らなきゃと思うほど眠れないのと同様に、パートナーの家族との関係も、良くしなければと思うあまりに空回りしたり、逆に期待通りに動いてくれない相手に対して苛立ったりしてしまうもの。
そもそもが難しい関係性からスタートしているわけですから、必ず上手くいくとも限りません。
ある程度は「テキトー」で良いんです。
そして、もしも同居するわけではなければ、さらに力を抜いてしまってもいいかもしれませんね。
それでも、パートナーの家族と接する機会は0ではないでしょう。
相手に巻き込まれないようにするには、自分なりに境界線をしっかり引いておくことが必要です。
場合によっては、自分の対人関係の中で、パートナーの家族を「重要な他者」ではなく、「友人・親戚」あるいは「職業上の役割における人間関係」くらいにまで距離を離して捉えなおすのも有効です。
ある程度は親しく付き合いつつ、難しい部分は「所詮他人だしね!」と割り切る。
もしくは、嫌な客に対して「仕事だからしょうがない」と考えるのと同じように、努力すれば仲良くなれるという期待を手放し、一定の関係を割り切る。
最も「重要な他者」である夫婦・パートナー関係のために、そのような考え方を持つことが役に立つ場面もあるでしょう。
家族になったんだからと、自分たちが無理をしてまで距離を詰める必要はありません。
これまではパートナーとの関係性に焦点を当てて来ましたが、今回の記事では少しその対象を広げ、パートナーの家族にも目を向けてみました。
そして、ここまで計6回の連載を続けてまいりましたが、ついに次回が最終章となります!
対人関係療法における考え方は、人生のあらゆる場面で役に立つこと間違いなし。
僕もまだまだ勉強が浅いですが、それでも学び始めてから「対人関係療法を知っていたおかげで乗り切れた」(あるいはかすり傷で済んだ)という場面が、すぐに何個も思い出せるほどに沢山あります。
時間があるときにでも、これまでの連載記事も適宜見返しつつ、次回の最終章に備えていただけたら幸いです。
それでは次回の連載も、ぜひ楽しみにしていてくださいね!
…そして、最後に。
「そもそも相手がいないんだよ!シングルじゃなくてペアで金メダルを取りたいんだよ!!」ということでお困りの方には、過去に私が掲載したマッチングアプリに関するコラムが参考になるかもしれません!
私はマッチングアプリの回し者でもなんでもないのですが、現代の出会いの手段として、使い方を間違えなければ有用なものだと考えています。
その使い方について、気をつけなければいけない点などを詳しく解説しておりますので、ぜひご一読いただけると幸いです。
それでは、本日はこのあたりで。
また次回のコラムでお会いしましょう!
今回の連載シリーズはこちら↓
【精神科医が解説】より良い夫婦・パートナー関係のために<No.1 導入編>
【精神科医が解説】より良い夫婦・パートナー関係のために<No.2 まず二人の関係性を知る>
【精神科医が解説】より良い夫婦・パートナー関係のために<No.3 男女における『気遣い』の違い>
【精神科医が解説】より良い夫婦・パートナー関係のために<No.4 全ての不満の正体は “ずれ” >
【精神科医が解説】より良い夫婦・パートナー関係のために<No.5 ”関係改善” という目的を忘れない>
【精神科医が解説】より良い夫婦・パートナー関係のために<No.6 パートナーの家族との関係性> ←今回の記事
【精神科医が解説】より良い夫婦・パートナー関係のために<No.7 >夫婦・パートナー関係が子どもに与える影響
※パートナーや結婚相手を探してマッチングアプリの沼にハマっている方は、ぜひ私のこちらのコラムもご一読ください。
※過去のコラムはこちら↓からご覧いただけます。
【メンタルヘルス】精神科医T.Sコラム
Writing by T.S
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