所属カウンセラーの水野です。
9月に入りました。
まだまだ暑さは残りますが、9月は夏から秋に移り変わる季節ですね。
食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋!!など、
秋から連想されるワードは様々ですが、みなさまは、秋と聞いて何をイメージされますか?
美味しい旬のもの、楽しいイベントもありますので、コロナには引き続きお気をつけいただき、できる範囲で楽しみも作りながら過ごしていただけるといいなと思っています。
私の9月の楽しみは、「お月見」です。きたる、9月10日は、中秋の名月です!
1年の中で月が1番綺麗なのは「秋」と言われています。
空気中の水蒸気が少ない時期なので、月がぼやけずに、くっきり、はっきり見えるのだそうです。
お月見は、平安時代から人々に楽しまれて来ました。
それぞれの時代における「月」にまつわる文学を通して、その様子を垣間見ることができます。
百人一首には、月を詠んだ歌がなんと100首中、12首もあります。鎌倉前期に書かれたとされている無名草子の中では「捨てがたきもの」として、月が1番に挙げられています。かの有名な歌人、小林一茶も「名月を とってくれろと 泣く子かな」との句を詠んでいますね。夏目漱石は、”I Love You”を「今夜は月がきれいですね」と訳しています。私の時代のヒロインもセーラームーンでした。笑
人々は、月の満ち欠けに、人生の浮き沈みや、情緒の移り変わりを投影したと言われています。
故郷を思う時、故人を忍ぶ時、思い出に浸る時、自分のもとを去った恋人を想い心揺れる時・・・
月は、心寂しい夜の私たちを守り、寄り添う、ダークヒーローのような存在として、私たちの心に古代から存在して来たようです。
例えば、源氏物語を書いた紫式部は、
「めぐりあひて 見しやそれとも分かぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな」
<やっとめぐり会えたと思ったのに、貴方なのかもわからない間にいなくなってしまった。出たと思ったらすぐに 雲に隠れてしまう月のようだわ>
という和歌を詠んでいます。
ワクワクして待っていたのに、その時間があっという間に終わってしまう
やっと会えたと思ったのに、すぐにその人がいなくなってしまう
現代の私たちも、この紫式部がしたためたような心揺れる感覚を感じたことがあるのではないでしょうか。
時代が変わり、使う言葉は違えど、人の心の普遍さが和歌を通して感じられます。
月や和歌を通して、紫式部の心と繋がれるのです。
現在は、様々な情勢が相まって、心が疲れてしまうことばかりですね。
想像力を使うことでも、心はエネルギー補給されます。
今年の中秋の名月は、土曜日!ということで、お休みの方もいらっしゃるかと思います。
お月見を機に、時代を遡り、お気に入りの一句を見つけてみるのはいかがでしょうか。
お月見団子とお気に入りの一句を片手に、紫式部や小林一茶と一緒に、名月を眺める・・・
心の休まる時間をぜひ、お過ごしいただけたらなと思います。
さて、紫式部と心を通わせたところで・・・
私のコラムでは、「大切な人とどのように心を通わせていくか」「大切な人との関係性をどのように築いていくか」について、日々の相談対応の中で感じていることや、自身の体験を振り返りながら、一緒に考えさせていただいています。
大切な人を大切にすること、大切にできることは、「自分自身を大切にすること」にも繋がる大事な作業です。
「自分はここにいて良いのだ」「もっと頑張ろう!」など、安心感や、モチベーションにもつながる大事なことです。
今までのコラムはこちらです⬇︎
【関係性の相互性からみる心の発達】水野コラム
前回のコラムでは、現在の情勢を心理学的な知見から分析し、無意識的に皆さまが体験されていると思われること、「おいておいている気持ち」を、意識の中に戻せるよう、振り返りを行いました。これらは、「自分の気持ちの整理」に役立ちます。
前回のコラムはこちらです⬇︎
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:夏休みに、心のエネルギー補給をすること-「おいておいた気持ち」に目を向けて-
今回のコラムでは、次のステップである「自分の気持ちを整理してみること」、整理するための3つのポイントについて、関係性を「お引越し」に例えて書かせていただきたいと思います。
自分の気持ちを整理するための3つのポイント
なぜ「自分の気持ちに目を向けて、整理すること」が大切なのか、
それは「自分の気持ち」を相手に大切にしてもらうためです。
そのためには、相手に伝わりやすい形で伝える必要があります。
自分でも理解していない気持ちを相手に伝えるのは、限りなく難しいことです。従って、まずはご自身で「自分の気持ち」に目を向け、考え、整理することが大切です。
相手に伝わりやすい形で「自分の気持ち」を伝え、共感されることで安心感が生まれます。自分の気持ちが共感されると、「相手の気持ちにも共感しよう」というモチベーションが自然と高くなり、相手にも共感を示せるようになります。共感のループを作ることができるのです。
自分の気持ちを整理するためには、3つのポイントがあります。
特に、関係性にこじれが生じている時は、
① どちらの「もともとあった気持ち」が要因なのか
② 関係性の課題なのか
③ 刺激は何か
これら3つのポイントで分析して、整理してみましょう。
① どちらの「もともとあった気持ち」が要因なのかを分析することで、お互いの「もともとあった気持ち」を理解し、自分の気持ちと相手の気持ちに気がつくことができるようになります。
② 関係性の課題なのかを分析することで、お互いの課題として一緒に問題を解決していけるようになります。
③ 刺激は何かを分析することで、自分がどのような刺激に反応したのか?を説明できるようになります。
今回からは、② 関係性の課題なのかを分析することについて詳しくお伝えします。
自分の核や「もともとあった気持ち」に気づき、自己理解を深めること
今回のテーマである「関係性の課題」を理解するためにも、以前からお伝えしている<自分の核や「もともとあった気持ち」に気づき、自己理解を深めることの大切さ>についての理解が不可欠です。
「関係性の課題」の説明に入る前に、改めておさらいしたいと思います。
もともとあった気持ちとは、自分の核が創り出す、自分の自覚している気持ちのより深層にある気持ちのことです。もともとあった気持ちは、相互的な関係性を経ることや、色々な刺激によって異なる気持ちに変換される可能性があります。
自分の核とは、無意識に積み上げたご自身の過去の体験、信念、文化、誇りなどの大事にしているもの、願望など、自分の個性を創り出す大切なものを指します。
これらは、当然のように、相手にも存在しています。良好な関係性のためには、「自分-相手、お互い自分の核を尊重すること」が大切です。
「自分-相手、お互い自分の核を尊重する」ためには、自分の「もともとあった気持ち」に気づき、自己理解を深めることが大切です。
その理由は、主に2つあります。
ひとつめは、自分の核や、「もともとあった気持ち」への理解を深めることで、そこには、「正解も不正解もない、好きなところ、コンプレックスも含めて、自分を作る大切なものである」と気がつけるようになるからです。自分のそのような部分を知ることは、相手にも同様にそのような大切な部分があると想定できるようになるのです。それは、相手の「大切なもの」を想定しながら、話し合えるようになるということです。
ふたつめは、自分の核や、自分の「もともとあった気持ち」への理解を深めることで、相手に自分の大切な部分について、説明ができるようになるからです。説明することを通して、やっと相手から大切にされる可能性を開くことができるようになるのです。
「自分-相手、お互い自分の核を尊重する」が大切だとは言っているものの、それは実はとても難しいことです。自分と、当然のように違う相手の核を知り、尊重することはどの人にとっても、とても難しいのです。
なぜなら、人は「違い」を感じると、違和感や不快感を感じて、その結果、相手の言動を受け入れられないことがあるからです。
人は「違い」を感じると、違和感を感じます。この違和感は、不快な刺激として私たちに体験されます。また、自分と相手の境界線が曖昧である親しい関係性においては、自分の核と相手の核は「当たり前のように一致している」と思いやすい傾向にあります。従って、「違い」は、より強い違和感と体験され、「自分の核を攻撃されている」とまで感じられることがあります。不快な刺激を受けたり、攻撃されたと感じると、自分のもともとあった気持ちを「相手も同じように持つべきだ」と相手に強く主張してしまうことも起こります。つまり、親しい関係性であれば、より強く主張してしまうということです。しかし、自分の核や「もともとあった気持ち」に正解も不正解もないため、押し問答になり、関係性にこじれに繋がってしまうのです。
このような、自分-相手の自分の核や「もともとあった気持ち」を強く主張し合う状態が生まれないようにするためにも、自分の「もともとあった気持ち」に気づき、自己理解を深めることが役立ちます。
そして、どちらの「もともとあった気持ち」が要因なのかを整理する方法として
① 自分の言葉、気持ちの時制を確認してみる方法
② 自分の言葉、気持ちの語尾を確認してみる方法
をご紹介しました。
詳しくはこちらをご覧ください。⬇︎
①【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:自分の気持ちを整理するための3つのポイント-「今」の関係性を大切にすること-
②【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:言葉の語尾に隠れた「もともとあった気持ち」を見つける方法
ここまでお読みいただいたところで、自分-相手の核、「もともとあった気持ち」を尊重することが、「大切な人を大切にすること」に繋がるのだとご理解いただけたかと思います。
それでは、「関係性の課題」について考えていきましょう。
関係性の課題をお引越しに例えて考えてみる
「関係性の課題」には、2つのパターンがあります。
ひとつめは、お互いの「もともとあった気持ち」を、「今ここで、目の前にいる相手との関係性」の中でどのように扱うかを決めていく時の課題
ふたつめは、お互いの関係性の中で新たに「共同のもの」を生み出していく時の課題
です。
これら2つのパターンの「関係性の課題」を引っ越して来た新居のお部屋に例えて考えてみましょう。
今回のコラムでは、ひとつめの、お互いの「もともとあった気持ち」を、「今ここで、目の前にいる相手との関係性」の中でどのように扱うかを決めていく時の課題ついてご説明したいと思います。
新居に引っ越して来る荷物の中には、自分や相手がもともと持ってるものを「持ち込む」ことがあります。この、お互いの共同の部屋の中に「持ち込むもの」が、自分の核や、もともとあった気持ちです。
お互いに「持ち込んだもの」をこの部屋の中で使うのか、どこに配置するか、或いは、捨てて買い換えるのか・・・つまり、どのように扱うかは、相談して決めることになります。
この相談が、お互いの「もともとあった気持ち」を、「今ここで、目の前にいる相手との関係性」の中でどのように扱うかを決めていくということです。
この相談は、穏やかに行われるばかりではありません。
相手が持ち込む荷物の中には、残念ながら自分の好みではなかった場合もあるからです。
相手の部屋にある分には、何も思っていなかったり、目をつぶったり出来ていたものでも、自分も住む部屋に「持ち込まれる」となると、どうしても嫌ということがあります。関係性が近くなることで、相手のものが受け入れられなくなることがあるのです。
どうしても嫌な場合はどうしたら良いのでしょうか。
「嫌だから持ち込まないで!」と言っても、角が立ち、口論になるのは目に見えています。
「持ち込まれたもの」は、相手が過去に買ったものです。しかし、それが共同の部屋に持ち込まれてしまった以上は、今、それをどのようにこの共同の部屋の中で扱うか、自分と相手で相談して決めていく必要があるのです。
自分–相手の核、もともとあった気持ちは、主に過去の体験によって形成されています。それらが、「今」共同の部屋に持ち込まれた以上は、それらが相手の大切なものであると想定し、相手が持ち込む理由や、大切である理由を聞くこと、説明してもらう必要があります。
どうしても嫌な場合においても、それを選んだ経緯、それとの思い出、なぜそれが大切なのか・・・
説明されると、そのものが持ち込まれることを許容できる場合があります。
自分-相手の核、もともとあった気持ちは、それぞれが所有し、その責任もそれぞれにあります。将来的に共同のものになるものもあるのかもしれませんが、引っ越し当初は共同のものではありません。
「持ち込まれた」=すぐに「共同のもの」になるわけではないのです。
共同のものにしていく、或いは、どこまでを共同にしていくのかを決めることが関係性を育むということです。
「尊重すること」とは、必ずしも、それを好きになる、好きにならなければならないということではありません。
相手の大切な一部を、どこまで自分の中に取り入れていくか、自分の核と相談しながら、相手と一緒に相談して決めていくことなのです。
まとめ
今回のコラムでは、
・「自分の気持ちを整理してみること」、整理するための3つのポイント
・自分の核、「もともとあった気持ち」についてのおさらい
・関係性の課題のひとつである、お互いの「もともとあった気持ち」を、「今ここで、目の前にいる相手との関係性」の中でどのように扱うかを決めていく時の課題を「お引越し」に例えて
書かせていただきました。
今回ご紹介したように、引越しには、「持ち込まれるもの」がある一方で、「足りない物」もあります。「足りないもの」「新たに必要なもの」については、2人で新しく準備する必要があります。
その準備する過程で生じる難しさが、もうひとつの関係性の課題である、お互いの関係性の中で新たに「共同のもの」を生み出していく時の課題です。
こちらについては、次回のコラムで、引き続き引越しを例に書かせていただきたいと思います。
それでは、また10月にお会いしましょう!
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