COLUMNコラム

【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:夏休みに、心のエネルギー補給をすること-「おいておいた気持ち」に目を向けて-

所属カウンセラーの水野です。

私のコラムでは、「大切な人との関係性をどのように築いていくか」について、日々の相談対応の中で感じていることや、自身の体験を振り返りながら、一緒に考えさせていただけたらと思っています。

大切な人を大切にすること、大切にできることは、「自分自身を大切にすること」にも繋がる大事な作業です。
「自分はここにいて良いのだ」「もっと頑張ろう!」など、安心感や、モチベーションにもつながる大事なことです。

今までのコラムはこちらです⬇︎
【関係性の相互性からみる心の発達】水野コラム

8月に入りました。
7月は社会の情勢的に、感情が揺さぶれられることが多い日々となりました。
皆さまは、いかがお過ごしでしたでしょうか。

忙しい現代社会を生きる私たちは、大きく気持ちを揺さぶられたとしても、強くショックを受けたとしても「自分の気持ちをおいておいて」生活せざるを得ません。なぜなら、「自分の気持ち」ひとつひとつに気づき、立ち留まり、その気持ちとどのように向き合うか考え、相手に伝えるなどの行動をとっていては、日常生活を円滑に送ってはいけないからです。日々の生活を回すため、「自分の気持ちをおいておいて」一生懸命やりくりしているのです。

しかし、「自分の気持ちをおいておくこと」が長期化すると、その感情が溢れ出し、コントロールが効かない状況になることがあります。そして、「自分の気持ちをおいておいた」結果、自分を取り巻く人たちや大切な人との関係性がこじれてしまうこともあります。

そのような状況になる前に、「おいておいた気持ち」に目を向け、意識の中に戻して振り返ること、そして、小出しにすることが大切です。

そうはいっても、今が大変だからこそ「自分の気持ちをおいておく」という状況が生じているのですから、全ての気持ちを意識の中に戻すことは難しいかと思います。
ゆったりと時間がある時に、安全に、行うことが大切です。

8月ということで、夏休み中の方、夏休みが間近の方もいらっしゃることと思います。
少しゆっくりできるこの期間を利用して、「おいておいた気持ち」に目を向け、意識の中に戻し、振り返る機会を持っていただけると良いなと思っています。

ということで、今回のコラムでは、「現在の情勢の中で皆さまが無意識的に体験していると思われること」を心理学的な知見から分析し、少し一緒に振り返りをしてみたいと思います。

湧いた気持ちを「おいておくこと」はできても、「なかったこと」にはできません。そして、「おいておくこと」にもエネルギーは使われています。消耗しきる前に、心のエネルギー補給必要です。

自分の「おいておいた気持ち」と向き合う中で、実は「自分にとって大切な気持ちもあった」と気がつくことがあります。「おいておいた気持ち」の中にある、実は「自分にとって大切な気持ち」は、「共感されること」によってエネルギー補給されます。

・「おいておいた気持ち」に目を向けること
・「おいておいた気持ち」を意識の中に戻し、振り返ること
・自分の気持ちを小出しにすること
・心のエネルギー補給をすること
・共感されること
これらのことを通し、結果的に大切な人を大切にできること、お互いに共感し合えることに繋がのです。

それでは、ここまでをご理解いただいたところで、今回の内容に入っていきましょう。
大切な人を大切にできるために・・・自分の気持ちに目を向けること、心のエネルギー補給にお役に立てると幸いです。

「おいておいた気持ち」について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください⬇︎
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:自分の気持ちに目を向けてみる-「おいておいた気持ち」を意識の中に戻すこと-

無意識にさらされているストレス

「コロナが早くなくなりますように」
ここ3年、多くの子どもたちが七夕の短冊に表す「願いごと」です。
笹の葉には、「コロナが早くなくなりますように」と書かれたカラフルな短冊がひしめき合っています。

子どもたちの願いとは裏腹に、夏休みと同時にコロナ感染者数は再度急増しました。

コロナとの共存、経済を活性化させる必要性を求められる一方で、コロナから引き続き身を守るように求められています。

熱中症の危険性が取りただされ、冷房の利用が促されている一方で、電力のひっ迫により、「節電」も促されています。そして、電気代も高騰しています。

早めに来た暑さにより、食物の成長が早く、値崩れしている食材もある一方で、円安の影響で様々な食材が値上がりしています。

このような「矛盾した2つのタスクを同時に処理することが求められる状況」は、「ダブルバインド」と呼ばれています。この「ダブルバインド」の状況に身を置くことは、私たちに相当なストレスをかけると言われています。「ダブルバインド」だけでも、相当なストレスであるのにもかかわらず、現在、私たちは生活をしているだけで数々の「ダブルバインド」に、無意識にさらされているのです。

このような状態に疲弊しているのは、子どもたちだけではありません。
大人たちもです。
前回のコラムで、「守ってもらう感覚の大切さ」について記載しましたが、
子どもたちを守る、大人たちにも今、「守ってもらう感覚」が必要なのではないかと感じています。

「守ってもらう感覚の大切さ」について詳しくは前回のコラムをご覧ください。
前回のコラムはこちらです⬇︎
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:「守ってもらう感覚」を体感しよう!-自己理解のススメ-

安全の欲求が満たされることの大切さ

子どもたちが「ケーキ屋さんになれますように」「サッカー選手になれますように」など、夢見る気持ちを「願いごと」として表すには何が必要なのでしょうか。

コロナは誰のせいでもない。
猛暑も誰のせいでもない。
今私たちを取り巻いている大変さは誰のせいでもない。
私たちの力ではどうにもならないこと・・・
そう、「仕方のないこと」なのかもしれません。

この「仕方のない」とは、少し難しい感情です。
「状況への理解」を意味していることと同時に、「諦め」の意味も孕んでいるからです。

7月10日、参議院選挙がありました。

「物価上昇」「消費税」「雇用」「憲法改正」など、私たちが安全に安心して生活できるようになるために必要なことが、選挙の争点として挙げられていました。これらは、アメリカの心理学者マズローが提唱した「欲求段階説」の中の、安全の欲求に含まれるものです。

マズローは、人間の欲求を5段階にわけ、ピラミッド型の構造になっていると提唱し、それぞれの欲求が満たされた上で、次の欲求に向かっていくとしました。

①生理的欲求・・・食欲、睡眠欲、性欲など生きるための基本的な欲求
②安全の欲求・・・戦争、天災、病気に合わず、衣食住の安定が保たれ、生活の維持を求める欲求
③所属と愛の欲求・・・自分を受け入れてくれる家族や集団、他者から愛されたい欲求
④承認(自尊)の欲求・・・他人から賞賛、尊敬されたい。社会的に認められたい欲求
⑤自己実現の欲求・・・理想の自分を実現させたい欲求

そして、①〜④は、欠乏欲求、⑤は、成長欲求と表されています。
欠乏欲求とは、満たされていない場合は、私たちには「欠如」として体験されるものです。従って、特に、①生理的欲求と、②安全の欲求は物質的欲求であるため、満たされない時の不満が強くなる欲求と考えられています。
成長欲求は、自己が持っている力を達成しようとする欲求です。①〜④の欲求が満たされた時に生まれる欲求であるとされています。

今回の選挙の争点である「物価上昇」「消費税」「雇用」「憲法改正」などは、「安全の欲求」に含まれるもの、「生活が安定し、安心して暮らす欲求」です。
マズローの提唱している理論に基づくと、この欲求の充足なく、③所属と愛の欲求、④承認(自尊)の欲求、その先にある成長欲求である⑤自己実現の欲求には向かわないわけです。

つまり、七夕の短冊に、「ケーキ屋さんになれますように」「サッカー選手になれますように」などの自己実現を目指した「願いごと」が子どもたちによって、表されるようになるためには、②安全の欲求が満たされ、③〜④も満たされていく必要があるのです。

長期化するストレス状況による「学習性無力感」

争点が私たちの生活が安定し、安心して暮らす欲求である「安全の欲求」に関連深いトピックだったのにも関わらず、それでも、投票率はあまり上がりませんでした。

投票率が、上がらない理由として「関心のなさ」という言葉で表されることがしばしばあります。しかし、争点が、私たちの「安全の欲求」に関連深いトピックであるのにも関わらず、「関心がない」とは、どういうことなのでしょうか。「安全の欲求」に関するものなのであれば、「関心」を超えて、本来であれば「最優先項目」にもなりえるはずのものなのです。

表面上に矛盾して見える事実の背後には、意識されていない(抑圧された)感情があることがあります。

では、「安全の欲求」に深い関連のあるトピックへの「関心のなさ」という矛盾の背後にはどのような感情が隠れているのでしょうか。

様々な「ダブルバインド」の状況が続いていること
「安全の欲求」が満たされていない状況が続いていること

回避できないストレス状況に長年さらされた時、人はどのようになるのでしょうか。

こちらもまたアメリカの心理学者、セリグマンは「学習性無力感」という概念で表しました。
人は回避不可能なストレス状況に置かれると、その状況に対して抵抗することさえしなくなる、その状況から逃れようと努力することすら行わなくなるという現象です。

長年のストレスが人々に心にもたらす影響は、とても大きなものです。
そして、頑張ろうとすればするほど、それは無意識に溜まっていきます。

溜まったものは発散してあげなければいけません。
それは、相手のことも、そして自分のことも傷つけない形で発散してあげる必要があるのです。

アンガーマネジメントという考え方があります。
これは、言葉の通り、「アンガーをマネジメント(コントロール)すること」です。
決して、怒りを我慢をしたり、抑圧したりするものではありません。

我慢はいずれ、爆発してしまうのです。

そして、怒りの背後には、
その怒りに至るまでにおける傷つき
相手を傷つけてしまうことへの傷つき など
必ず、悲しさや傷つきがあることも忘れてはいけません。

心で繋がること・共感の大切さ

私たち心理士(心理師)は、強い憎しみ、自傷などを持つクライエントさんと関わる機会が度々あります。

他者を傷つけたくなる気持ち、自分を傷つけたくなる気持ち、
私たちは、精一杯その気持ちに共感を示します。

しかし、相手を傷つけること、自分を傷つけること、
実際のその行動に対しては、心理士(心理師)としても共感を示すことはできません。
理屈を超えて、共感はできない。どんな理由を並べても、正当化はできないのです。

理屈を超えて、共感はできない、どんな理由があっても正当化はできないと言いながらも、
どのような気持ちで、その手で、他者を、自分を傷つけるのか・・・
心理士(心理師)としての性でしょうか。
その行動の背景にある気持ちについて、想像せずにはいられません。

衝動性が高く、手が出る子どもに聞きます。
「お友達に手を出すのが悪いのはわかっている?」
たいていは「わかっている。」と答えます。
そして、手を出すことを心地よいと感じている子はほとんどいません。

悪いとわかっていること、自分すらも心地よくないことをしてしまっているのです。

それでも、手を出す理由は、「追い詰められているように感じたから」という理由がほとんどです。自分が追い詰められた時「手を出す」以外の方法を知らないのです。

一生懸命、大人に「手を出すことはいけないこと」と叱られても、子どもからすれば、「わかっていること」を度々言われているに過ぎません。そして、度々言われてもできない自分を「ダメなやつだ」と責めている子もいます。

「どうして手を出したの?」「なんで?」
「手を出すこと」で怒られている子であればあるほど、これらは聞き飽きているでしょう。そして、そもそもそれが悪いことだと既に理解しているのですから、「悪いことをしたことで責められている」ように感じて、理由を言っても仕方ないと、言うことを諦めてしまうのです。こちらもまた、子どもの中で生じる「学習性無力感」と捉えることができます。そして、言わないことを更に責められ、パニックを起こし、また怒られるという悪循環をたどります。

「自分を責める」「言っても仕方のない相手」に口は開きません。それは、子どもでも大人でもそうです。

「君がこんなに怒ったってことはよっぽどのことがあったんだね」と子どもに伝えると、徐々に理由を説明してくれることがあります。説明してくれることを通して、次からはどうすれば良いか、一緒に考えることができるようになるのです。

このような方法は「甘い」と言われることもあります。
「しっかり叱らなければならない。反省させないといけない。」と言うのです。
確かにそういう場合もあるのかもしれません。

しかし、「手を出したとき」大人が子どもに指導、あるいはしつけをする目的は、その失敗を繰り返さないようにすることであり、「反省をさせること」ではないのです。繰り返さないための一つの手段として、「反省」があるのかもしれません。しかし、必ずしも、「その失敗を繰り返さない」という目的を達成するために、「反省」という手段を通過する必要はないのです。

「手を出す」以外の方法を教えるのが大人の責任でしょう。そして、それ以外の方法がとることができた時、すなわち、相手も自分も傷つけずに対処できた時に一緒に喜べること、その存在としてそこにいることが大人である意義なのだと思います。

「怒られたら怖い」という恐怖心から、相手を動かすこともできます。しかし、このことは、負の連鎖しか生みません。なぜなら、人は恐怖には、慣れていくからです。慣れた相手に対しては、より強い恐怖を生むことでしか対応ができなくなるのです。
「共感」を生じさせることでこそ、人は繋がりを感じることができ、人の心は動くのです。

まとめ

今回のコラムでは、

▷大きく気持ちを揺さぶられた場合、時間のとれる時に「おいておいた気持ち」を自分の意識の中に戻し、振り返りを行い、心のエネルギー補給することが大切であること

▷現在の私たちを取り巻く情勢について
・ダブルバインド
・マズローの欲求段階説
・セリグマンの学習性無力感の観点を用いての分析

▷恐怖心ではなく、「共感」を生じさせることでこそ、人は繋がりを感じることができ、人の心は動くこと
をお伝えしました。

今回は、心理学的な知見から分析を行いましたが、皆さまが振り返りをされる際は、
・頑張ったことは何か
・しんどかったことは何か
・楽しかったことは何か
など、自分が達成して来たこと、自分の気持ちなどについて、お好きな飲み物やお菓子を食べながらゆったり自由に掘り下げていただけると良いと思います。

私たちの「安全の欲求」が満たされる日は残念ながらすぐには来ないかもしれません。
そうであれば、「安全の欲求」の充足を今は少し保留にして、その次にある「所属と愛の欲求」つまり、「大切な人との関係性の中で満たされること」を達成できるよう、意識的に先取りするのもひとつの手だと思うのです。それは、順番に達成していくより、少し難しいことなのかもしれません。しかし、「安全の欲求が満たされていない中で頑張っていることだ」とお互いに理解しながら、進んでいけると良いのではないかと思います。

「大切な人を大切にできるスキル」をこのコラムを通して皆さまにお届けできるよう、私も引き続き、工夫しながら書かせていただきますので、どうぞよろしくお願い致します!

くれぐれも熱中症にお気をつけいただき、素敵な8月をお過ごしください。
それでは、また9月にお会いしましょう!

*今回のコラムで少し触れさせていただいた「アンガーマネージメント」について、弊社の森下(メンタルトレーナー)は、講座を開催しております。ご興味がございましたら、こちらも合わせてご覧ください⬇︎
【御礼】怒りをコントロールするメンタルトレーニング講座を開催いたしました


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Writing by 水野

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