所属カウンセラーの水野です。
新年を迎えてから、あっという間に一か月が過ぎました。皆さまはいかがお過ごしでしょうか?
暖冬かと思いきや、居座り寒波なども相まって、寒さもいよいよ本番です。朝、布団から出るのに少し勇気がいる季節ですね。街にはバレンタインのチョコレートが並び始め、人とのつながりや「誰かを想う気持ち」に、自然と目が向く時期でもあります。
子どもたちにとっても、友だち関係や周囲との距離感に心が揺れやすい季節かもしれません。だからこそこの時期は、日々の関わりの中で、親子の心の状態にそっと目を向けてみる時間が大切だと感じています。
2025年9月からの連載コラムでは、4回にわたり、「折れない心」について書かせていただきました。
そこでお伝えしてきたのは、「折れない心」とは、強く我慢できる心をつくることではなく、折れそうなときに「しなる柔軟な心」であることです。
また、お子さまの「折れない心」を育てる土台には、
1.保護者の方ご自身の安心感
2.心のキャパシティが大切にされていること
3.子どもに体験してほしい3つのこと
4.ご家庭が安心して戻ってこられる場所(安全基地)であること
これら4つのポイントがとても大切であることをお伝えしてきました。
これらの視点は、子育て中の方だけでなく、大人が自分の心と向き合い、無理なく過ごすためのヒントにもなります。多くの方にとって、日常の中で活かしていただける内容になっていると思いますので、良ければご覧ください。

折れない心=強さではなく、しなやかさ
「折れない心」と聞くと、強くて揺れない「鋼の心」をイメージする方も多いかもしれません。けれど、私がこの数年で強く感じるようになったのは、心に必要なのは「硬さ」よりも「しなやかさ」なのではないか、ということです。
私事で恐縮ですが、私は希少な骨の疾患で、ここ3年間、脚の手術を繰り返してきました。骨を壊す細胞の影響で骨が薄くなっていく病気で、医師から何度も「骨折しないように」と言われていました。
それは、骨が「折れた」か「折れていない」かで、予後が大きく変わるからです。骨折してしまうと、病変の広がりのリスクが増えたり、そこまでの骨が使えなくなったり、歩けるまでの期間が大幅に延びたりします。さらに、骨が完全に折れてしまうと手術方針そのものを変更せざるを得ない場合もあります。
病巣のある骨が、たとえ「卵の殻ほど」しか残っていなくても、「わずかでも繋がっている状態」と、「完全に折れてしまった状態」では、天と地ほど違う。そんな局面を何度も経験するうちに、ふと、これは心も同じなのではないかと感じるようになりました。
落ち込んでも、しぼんでも、ヒビが入ってもいい。ギリギリでもいい。
心も「完全に折れなければいい」
わずかでも繋がっていれば、そこを支点にして休み、補強し、回復へ向かうことができます。けれど、一度ポキッと完全に折れてしまうと、立ち上がるまでに、より多くの時間と労力が必要になるかもしれません。
お子さまや保護者の方と関わらせていただく一心理士(師)として、経験を通して、子どもの頃から「折れない心」を育んでいくことの大切さを強く感じました。
どれだけリスクマネジメントを行っていても、大人も子どもも心の危機は訪れます。成長の過程で、対人関係の悩みや災害、喪失体験など、予期できるものもできないものも含め、さまざまな出来事に向き合っていくでしょう。
また、近年においては、「やりたいことがない」「自分には価値がない」「生きていても仕方がない」「自分は周りに迷惑をかけている気がする」といった悩みを抱える方が、子どもから大人まで少なくありません。 そうした方々は決して弱いわけではなく、むしろ自分に厳しく、頑張り屋で、我慢を重ねながら日々を懸命に生きていらっしゃるように感じます。
だからこそ今、心をさらに鍛える方向ではなく、
心をやわらかく保ち、折れそうなときに「しなる」力を育てていく視点が求められているのではないでしょうか。
とくに子どもにとっては、
心が揺れたとき、失敗したとき、疲れたときに、
「どこで」「どのように」立て直せるかがとても重要になります。
そしてその土台は、家庭の中で、保護者との関わりを通して育まれていきます。
そこで今日のコラムでは、折れない心=しなやかな心を育むために、
ご家庭で大切にしていただきたい4つの視点をご紹介していきます。
1.子育てで最重要なのは「安心して関われること」
子育ての相談で「何がいちばん大切ですか?」と聞かれたとき、私はいつも
「保護者の方(主たる養育者の方)が、お子さまと安心して関われること」とお伝えしています。
理由は2つあります。
1つ目は、保護者の気持ちの安定が、子どもの安定につながるから
2つ目は、「自分は笑ってもらえる存在なんだ」「自分は大切にされているんだ」と感じられることが、愛着関係や自己肯定感、自尊心の土台になっていくから
です。
では、無理して笑いかければいいのでしょうか。そうではありません。我慢は破綻するからです。無理を重ねるほど、「この子といるのがしんどい」という気持ちが強くなり、怒りや罪悪感の循環に入ってしまうことがあります。そしてその罪悪感が、さらに関係を苦しくしてしまうこともあります。
「子どものために頑張る」という思いを原動力にされていること自体は、とても大切で、尊いものだと思います。
ただその頑張りが、知らず知らずのうちにご自身の心を削る形になっていないか、一度立ち止まって振り返ってみることも必要です。
まずは、保護者の方ご自身の心の安全を確保すること。それが結果的に、子どもの安心や安定につながっていきます。

2.自分の心のキャパシティを守ること
ここで大切になるのは、強い心をつくることではなく、折れそうになったときに、「しなること」、つまり、柔軟さだと感じています。
硬いものは、限界を超えた瞬間に折れます。でも、しなやかなものは、形を変えながら衝撃を受け流し、元に戻る力を持っています。
私たちが苦しくなるとき、心の中に「強いか弱いか」「耐えられるか脆いか」という軸敷かなければ、どうしても自分を責めやすくなります。「自分は弱いから」「ダメだから」と感じてしまう方も少なくありません。
けれど、自分が弱さと感じているものは、本当に「弱さ」しょうか。
むしろ、我慢に我慢を重ね、頑張り続けてきたからこそ、限界を超えてしまっている可能性もあります。
心のキャパシティには限りがあります。そのキャパシティを超えた状態が続けば、心や体に不調が現れるのは、自然な反応とも言えるでしょう。
だからこそ大切なのは「もっと頑張る」方向ではなく、「少しでも楽に生きられる」方向へ、力の使い方を調整していくことだと思います。
自分の心の容量を感じ取り、守ることは、
折れない心を育てるための、最初の大切な一歩なのです
柔軟な心のイメージ:鉄の箱とシリコンの箱
心の柔軟さをイメージするために、同じ大きさの立方体が2つあると想像してみてください。
ひとつは硬い鉄でできた箱、もうひとつはシリコンでできた箱です。
どちらの箱にもすでに同じ量の物が入っていて、
残っている空きスペースは「1cm角のサイコロがひとつ入るくらい」しかないとします。
硬い鉄の箱には、
その空きにぴったり合う、1cm角以下のサイコロしか入れられません。
形や大きさが少しでも違えば、受け入れることができないのです。
一方、シリコンの箱であればどうでしょうか。
少し形を変えながら、1.5cm角くらいまで受け入れられるかもしれません。
同じ1cmでも、立方体ではなく、丸い形や三角の形であれば、
無理なく収まる場合もあるでしょう。
柔軟な心は、「決まった形でないと受け入れられない」のではなく、自分の型を守りながら、必要な分だけ形を変えて対応できる心です。ただし、何でも受け入れればよいわけではありません。シリコンも無理を続ければ破れてしまいます。
大切なのは、自分の心のキャパシティを感じ取り、守りながら形を変えること。
それが、折れない心、すなわち「しなやかな心」を育てていくための、
重要な視点なのだと思います。

3.子どもに体験してほしい3つのこと
保護者の方から「どんな体験をさせるとよいですか?」と聞かれたとき、私は次の3つをお伝えしています。
1.心穏やかに過ごせること
2.人といて楽しいと感じられること
3.求めた援助が受けとめられること
1つ目は、感情が揺れたときに戻ってこられる 「心の軸」や「安心の感覚」を、体感として身につけていくことです。 落ち着いていられる感覚を知っているからこそ、揺れても立て直すことができます。
2つ目は、人と関わることのあたたかさを知り、 「自分と一緒にいて楽しいと思ってくれる人がいる」 という実感を育てることです。 この感覚は、自己肯定感や人との距離感を支える大切な土台になります。
3つ目は、助けを求める勇気を持ち、その声が受けとめられる経験を重ねることです。 「困ったときは人に頼ってもいい」「頼っても関係は壊れない」「お互いさま」 という体験は、困難な状況の中でも人とつながり続ける力を育てていくことになります。
これら3つの体験は、どれかひとつだけがあればよいものではなく、 日々の生活や関わりの中で、少しずつ、重なり合いながら育っていくものです。
4.家庭は「全てを教える場所」ではなく「戻ってこられる場所」
家庭は、子どもにとって、「自分はどんな存在か」「世界は安心できる場所か」を映し出す、最初の鏡であり、「自分はどんな存在か」「世界は安心できる場所か」安心基地です。
一方で、子どもの人格形成のすべてを、家庭だけで担う必要はありません。 子どもは成長とともに、学校や地域、友だち、さまざまな大人との関わりの中で、多様な価値観や関係性を学んでいきます。
むしろ大切なのは、家庭が 「何でも教える場所」「すべてを完璧に整える場所」であることよりも、疲れたとき、揺れたときに、安心して戻ってこられる場所であることが肝心です。
その意味で、保護者の方が「ここは人の手を借りよう」「ひとりでは難しいから相談しよう」と行動する姿を見せることは、子どもにとってとても大切な学びになります。
それは、「困ったときは人に頼っていい」という、生きていくうえで欠かせない感覚を、言葉ではなく体験として伝えることにつながるからです。
家庭が「すべてを抱え込む場所」ではなく、 外の世界とつながりながら、安心して戻ってこられる場所であること。 そのあり方こそが、子どもの折れない心を、静かに支えていく土台になるのだと思います。

まとめ
本日のコラムでは、折れない心を育むために〜ご家庭で大切にしたい4つのポイント〜をご紹介しました。
「折れない心」とは、強さを鍛え上げることではなく、「折れそうなときにしなる柔軟さ」を育てること。そして、そしてそのしなやかさは、無理を重ねることで身につくものではありません。「ここまでなら大丈夫」「これ以上は少し休もう」と、自分の心のキャパシティを感じ取り、守る経験の積み重ねによって育まれていきます。
子どもも大人も、心が安心し、穏やかでいられるときにこそ、目の前の相手の気持ちに自然と目を向ける余裕が生まれます。誰かを支える力は、まず自分自身が安心できていることから始まります。
だからこそ、最優先にしたいのは、保護者の方ご自身が「安心して関われる環境」です。その安心は、言葉にならない形で子どもに伝わり、親子の心の中に、揺れても戻ってこられる場所(安全基地)をつくっていきます。
「折れない心」は、少しずつ育っていくものでもあり、同時に、ふとした瞬間に育まれるものでもあります。日々の小さな安心や、人の温かさに触れる時間の積み重ねが心を支えることもあれば、ほんの一瞬の出来事が、あとになって心の拠りどころになることもあります。
たとえば、「小さい頃におじいちゃんと一緒に飲んだメロンクリームソーダが美味しかった」というような、何気ない記憶。
楽しかったり、嬉しかったりしたその一瞬を、まるで写真を切り取ったように思い出せることはありませんか。そうした記憶は、出来事そのものだけでなく、体感と結びついた形で心に残り、後の人生でふとしたときに、心をそっと穏やかに、そして奮い立たせてくれることがあります。この自分を奮い立たせる気持ちが自己肯定感でもあります。
それは、メロンクリームソーダの美味しさという味覚だけを覚えているのではなく、その時間の中で感じていた安心感や、自分に向けられていた温かな眼差し、その場に流れていた穏やかな空気ごと、体感として心が記憶しているからなのだと思います。
「折れない心」は、日々の暮らしの中にある積み重ねと、ふと心がゆるむ瞬間。そのどちらもが、知らず知らずのうちに心を形づくっていきます。「日々の暮らしそのものが心を育てている」という感覚を、ふとしたときに思い出していただけたらと思います。
忙しい日々の中では、自分自身で振り返ることが難しいと感じる時もあります。そんなときには、カウンセリングをひとつの手段としてお役立てください。困っていることや、しんどさ、不安をひとりで抱え込まず、言葉にしていくことで、少しずつ整理されていくこともあります。
次回のコラムでは、実際に子育て相談をお受けする際に、私が用いている関わりや技法についてご紹介します。いずれも、特別な場面だけでなく、日々の生活の中でご自身にも取り入れていただけるものです。よろしければ、またご覧ください。

▶︎【折れない心を育む】心理士(師)が伝えるシリーズ
各回には、お子さまと一緒にご家庭でできるワークも掲載しておりますので、ご参考にされてください。
◎「子育てで大切なこと」〜 子育て相談をお受けする時の視点-part1 –
◎「自分の心のキャパシティを守る大切さ」〜 子育て相談をお受けする時の視点-part2 –
◎「子どもに体験させたい3つのこと」<親子でできるワーク付> – part3 –
◎安全基地って何?「子どもにとっての家庭・家族の役割」<親子でできるワーク付>-part4-
▶︎大切な人との関係性構築についてはこちらのコラムをご覧ください。
【関係性の相互性からみる心の発達】水野コラム
こちらのコラムでは、「大切な人との関係性をどのように築いていくか」について、日々の中で使えている考え方やスキルをご紹介しています。大切な人を大切にすること、大切にできることは、「自分自身を大切にすること」にも繋がる大事な作業です。
「自分はここにいて良いのだ」「もっと頑張ろう!」など、安心感や、モチベーションにもつながる大事なことです。
大切な人との関係性構築にぜひお役立てください。
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