所属カウンセラーの水野です。
皆さまには、清々しく新しい年をお迎えのことと、心からお慶び申し上げます。本年もどうぞよろしくお願い致します。
年末年始は、昨年の疲れを癒し、少しゆっくりとお過ごしいただけましたでしょうか。 仕事や学校が始まり、日常へと戻られる時期かと思いますが、急に頑張りすぎず、心や身体を少しずつ慣らしながら、ご自身のペースで日常に戻っていただけたらと思います。
現在、私のコラムでは「折れない心を育む」(柔軟なしなる心を育む)というテーマのもと、親子関係や子育て、親子でできるワークなどを中心にお伝えしています。
ありがたいことに、これまで私は、産前から18歳までのお子さまをもつ保護者の方、そしてお子さまご本人からのご相談を、年間約500件、累計で5,000件以上お受けしてきました。
当然ながら、まったく同じご相談は一つとしてありません。ひとりひとりのお話を伺いして、一緒に考え、試し、時にうまくいかない経験も共有しながら、万能な方法はないながらも「その方々にあったうまくいく方法」を少しずつ積み重ねてきました。
そのため、今私が持っているノウハウは、今までご相談にいらしたお母さま(保護者の方)とお子さまと一緒に作りあげたものと言えるでしょう。私も皆さまに教えていただいてきたのです。
全く同じご相談はない一方で、共通しているお悩みや不安があることも事実です。他の保護者の方も同じようなお悩みを抱えていることをお伝えすると「自分だけではなかったのですね」と、ほっとされた表情を見せてくださる方も少なくありませんでした。ひとりで悩まれていると、それが「自分だけの問題」なのか、「多くの方が通る道」なのか分からず、不安を深めてしまうことがあります。
しかしながら、「子育て相談」は、他の悩み事に比べて相談のハードルがより高いと言われています。
「自分の子どもが否定されるのではないか」「ダメな母親(保護者)だと思われるのではないか」という不安が喚起されやすく、それが相談をためらわせる要因になるのです。
大切なお子さまを育てているからこそ生じる不安であり、その気持ちはとても自然なものだと思います。
このようにニーズは高いにもかかわらず、相談につながりにくい現状を踏まえ、これまで私が関わらせていただいた子育て相談の中から、共通して見られたテーマを少しずつシリーズ化し、コラムとしてお届けしていきたいと考えています。
本日はその【part4】として、心理士(師)の視点から「家庭・家族の役割」について考えていきます。

子どもに体験してほしい3つのこと
前回のコラムでは、保護者の方からよくいただく
「子どもに、どのような体験をさせるとよいのでしょうか?」
というご質問について触れました。
私はこの問いに対して、次の3つをお伝えしています。
1.心穏やかに過ごせること
2.人といて楽しいと感じられること
3.求めた援助が受けとめられること
1つ目の「心穏やかに過ごせること」は、感情が揺れたときに戻ってこられる“感情の軸”を育てる体験です。家庭での安心できる時間や関わりが、その土台になります。
2つ目の「人といて楽しいと感じられること」は、人との関わりにあたたかさや心地よさを感じられる体験です。「自分と一緒にいて楽しいと思ってくれる人がいる」という実感は、自己肯定感を育て、他者との距離感をやわらかくしてくれます。
3つ目の「求めた援助が受けとめられること」は、勇気のいる体験ですが、自分や相手を守る力につながる、とても大切な経験です。
これら3つの体験を尊重されて育った子どもは、自分を大切にしながら、他者と関わり、助け合い、支え合う力を育んでいきます。 そして、これらの体験に欠かせないのが、「家庭・家族の役割」なのです。
子どもにとっての家庭・家族の役割
子どもたちは、家庭や家族との関わりを通して、人生の基盤となる大切な価値観や道徳心を学んでいきます。それは、「こうしなさい」と教えられることで学ぶというよりも、日々の関わりの中で、無意識のうちに体験として積み重ねられていくものです。
たとえば、
・失敗したときに、どのように声をかけられたか
・困ったときに、大人がどう振る舞っていたか
・感情が揺れたときに、それがどのように扱われていたか
こうした日常の一場面一場面が、子どもにとっては
「自分はどんな存在なのか」
「世界は安全な場所か、危険な場所か」
「人は信頼してよい存在か」
を学ぶ材料になります。
小さな子どもにとって、自分自身について最初に教えてくれる存在は、家庭や家族です。家庭は「自分とはどんな存在か」を映し出す、「最初の鏡」であるとも言えるでしょう。
・あなたは大切な存在だ」
・そのままでここにいていい
・困ったときは助けを求めていい
といったメッセージは、言語的にも、体感や関係性などの非言語を通しても伝わっていきます。
この意味で、家庭・家族が子どもに与える影響が大きいことは紛れもない事実です。家庭は、子どもにとって最初の「安心基地」であり、外の世界へ踏み出すための拠点でもあります。
一方で、ここで強調しておきたいのは、
子どもの人格形成のすべてを、家庭だけで担う必要はないということです。
子どもは成長とともに、
保育園や幼稚園、学校の先生
習いごとや部活動の指導者
児童館や地域の大人たち
など、さまざまな人と出会い、多様な関係性の中で育っていきます。
家庭は「すべてを教える場所」ではなく、 子どもが外の世界とつながっていくための、安心して戻ってこられる場所(安全基地)であることが大切なのです。
保護者だけで抱えきれないことがあるのは、決して特別なことではありません。 むしろ、保護者自身が、援助を求めることは、子どもにとって非常に重要な学びになります。
保護者が
「ここは助けを借りよう」
「ひとりでは難しいから相談してみよう」
と行動する姿を見て、子どもは
「困ったときには、人に頼ってもよい」
「助けを求めることはお互い様である」
という生き方を学んでいきます。
自分が援助を求めることに寛容でいられる人は、他者からの援助の求めにも、同じように寛容でいられるのです。
また、自分や家族が周囲の人に支えられている様子を見ることで、 「この世界には、自分や家族を助けてくれる人がいる」 「家族以外にも、安心できる大人がいる」 という、世界の広がりを体感するのです。
家庭の役割とは、すべてを完璧に整えることではありません。 子どもが安心して失敗し、揺れ、立ち直っていけるような「土台」をつくること、 そして、必要に応じて外の力とつながっていくことを、自然なものとして示していくことなのだと考えています。

安全基地の感覚を育む、家庭でできる親子ワーク
それでは、ご家庭でも取り入れやすい、3つのワークをご紹介します。
このワークは、本日取り上げた、
1.家庭が「写し鏡」としてどのように機能しているか
2.家庭が「戻ってこられる拠点」として感じられているか
3.援助を求めることが許される関係性か
を、それぞれ別の問いから観察してみることを目的としています。
1.「ママ(パパ/おうちの人)って、どんな人だと思う?」「どんな風に見えているかな?」と尋ねる
この質問は、家庭の中で、親という存在が子どもにどのように写っているかを知ることにつながります。つまり、家庭が「写し鏡」としてどのように機能しているかを理解するための問いです。
子どもは、日々の関わりを通して、
「自分は大切にされているか」
「自分はどのような存在か」
「大人とはどのような存在か」
「人は信頼できる存在か」
などを学んでいます。
この問いは、親を評価するためのものではなく、子どもの感じ方や見え方を知り、尊重するための問いです。
<ポイント>
否定や言い直しをせず、「そう見えているんだね」と受け取ります。
正解かどうかよりも、子どもに自分たちが「どう写っているか」に目を向けることを大切にします。また、「親がどう見えているか」は、「子ども自身が自分をどう見ているか」につながっていることもありますが、一喜一憂せず、その時々の子どもの見え方を大切にしていきましょう。
2.「いま、あなたが頑張っていることって、何かなぁ?」と尋ねる
この問いは、子ども自身が、自分の「頑張り」や「取り組んでいること」を言葉にし、それを家庭の中で受けとめてもらう体験につながります。
家庭が、子ども本人や、子どもが大切にしていること・頑張りたいことに関心があることを伝える問いでもあります。
また、「成果を求められる場所」ではなく、頑張っている途中の自分でも戻ってこられる場所として感じられているかを確かめる意味を持ちます。
自分の努力を見守ってくれている人がいるという感覚は、子どもに安心感や安定感をもたらします。
<ポイント>
できているか、うまくいっているかは問いません。
過程や気持ちに目を向けてもらえていると感じられることを大切にします。
また、子どもが「ない」と答えた場合は、親の立場から「こんなことを頑張っているように見えるよ」と伝えるのもひとつの方法です。
3.「いま、してほしいことはある?」「わたしたち(大人)にできる、助けになりそうなことはある?」と尋ねる
この問いは、自分のニーズや困りごとを言葉にし、援助を求めることが許される関係性であると体験することにつながります。
援助を求める経験は、「困ったときは人に頼ってよい」「助けを求めることはお互い様である」という感覚を育て、他者と支え合う力につながっていきます。
<ポイント>
すべてを叶える必要はありません。
ニーズに添えない場合は、きちんとその理由を伝え、別の方法を伝えることや、一緒にできる方法を考えることも有用です。
言葉にしてもよい関係であること、困った時に一緒に考えてくれる人がいることを体験することが、この質問の目的です。
これらの問いは、答えを正しく出すためのものではありません。 これらの問いかけを通して、子どもたちは、自分の心の中に目を向け、他者と繋がる準備をしていきます。
今回のワークにおいての3つの問いは、ご家庭の中で
「どう写っているか」
「どこに戻れるか」
「助けを求めてよいか」
を、親子で静かに確かめる時間そのものが、安全基地の感覚を育てていくことにつながるでしょう。長い時間をとる必要はありません。聞けそうなタイミングで、試してみてください。

まとめ
本日のコラムでは、折れない心を育むための「家庭・家族の役割」についてご紹介させていただきました。
1.家庭・家族は、日々の関わりを通して、子どもが「自分はどんな存在か」「世界や他者を信頼してよいか」を学ぶ、最初の鏡であること
2.家庭は、子どもの人格形成のすべてを担う場所ではなく、外の世界と繋がりを感じながら育つための、安心して戻ってこられる拠点(安全基地)であること
3.保護者が援助を求める姿を見せることは、子どもにとって「困ったときに人に頼ってよい」という生き方を学ぶ重要な経験になること
4. 自分が援助を求めることに寛容でいられる人は、他者からの援助の求めにも、同じように寛容でいられること
をお伝えしました。
どれだけリスクマネージメントしていても、心の危機はやってきます。それは、子どもたちが自然と成長していく中で、心身の成長伴う対人関係の悩み、災害や喪失体験など、予期できるものも、できないものもを含め、子どもはさまざまな危機に向き合うことになるでしょう。
その危機と向き合い、乗り越え、更なる成長に繋げていける心の機能を養っていくこと、つまり、折れない心、すなわち「しなやかにしなる柔軟な心」を育てていくことが、家庭・家族における大切な役割と考えます。
また、「他者と支え合う」という穏やかな時間を過ごすことは、子どもにとっても、大人にとってもとても尊いことかと思います。困っていること、しんどいこと、不安なこと、自分の中で抱え込むのではなく、言葉にしていくことで、整理されることもあります。その際にも、ぜひ、カウンセリングをお役立てください。
皆さまにとって、「穏やかな時間」が多く体感できる2026年になりますよう、心からお祈り申し上げます。
重ねてになりますが、本年もどうぞよろしくお願い致します。
▶︎大切な人との関係性構築についてはこちらのコラムをご覧ください。
【関係性の相互性からみる心の発達】水野コラム
こちらのコラムでは、「大切な人との関係性をどのように築いていくか」について、日々の中で使えている考え方やスキルをご紹介しています。大切な人を大切にすること、大切にできることは、「自分自身を大切にすること」にも繋がる大事な作業です。
「自分はここにいて良いのだ」「もっと頑張ろう!」など、安心感や、モチベーションにもつながる大事なことです。
大切な人との関係性構築にぜひお役立てください。

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