COLUMNコラム

【児童虐待、トラウマそして複雑性PTSD:前編】こころの傷つき体験を乗り越える力とは・・・

こんにちは、所属カウンセラーの古宇田です。

2021年も残り僅かとなりました。今年もコロナに振り回される1年となりましたが、新規感染者数も激減し、心なしか平穏が戻ってきたような感覚もあります。しかしながら気を引き締めつつ、年末に向けて気持ちをこころ穏やかに明るく過ごしていきたいと思います。

さて私が働いている児童養護施設と絡めまして今回は児童虐待そしてトラウマ複雑性PTSDに関連するコラムをお伝えします。折しも11月は厚生労働省が「児童虐待防止推進月間」と定め、児童虐待問題に対する社会的関心の喚起を図るために、集中的な広報・啓発活動を2004年度から実施していますので、少しばかり私も協力できればという気持ちに駆られました。


子ども虐待防止
オレンジリボン運動

虐待が増えたのか、あるいは社会全体の意識が向けられるようになり通告する事例が増えているのか定かではありませんが、昨今の児童相談所での「児童虐待相談対応件数」は依然として増加傾向にあります。また昨年からのコロナ禍でさまざまなコロナ不安を抱えることで、今まで家庭で良い意味で鳴りを潜めていた潜在的な課題が表面化し、家庭の力が損なわれてしまうケースなども見聞きします。

そしてPTSDという言葉は今となっては耳にすることも増えましたが、複雑性PTSDという言葉をニュースで聞き、これから一般的にも認知されていくのかなと感じ、児童虐待と共に子どもへと与える影響についてお伝えして、トラウマを抱えた子どもとどのように向き合って行くのが良いかを考えていきます。大きなトラウマに限らず、日常の小さなトラウマに対しても何かしらの参考になればと願っています。

【虐待という言葉と近年の状況】

「abuse」という英語は、日本語の「虐待」に近い意味を持っています。そして「abuse」には「乱用」という意味もあります。そういった視点から見ると、児童虐待という言葉には、大人側の権利を過剰に乱用し、子どもの権利を損なうという側面もあるのではと考えています。個人や社会全体で子どもの権利を守ることから、虐待の根を減らしていくことが出来れば良いなと日ごろから感じています。

さて「虐待」と聞くと、身体的な暴力などをまず連想すると思いますが、「虐待」にはいくつかの種類があり、①身体的虐待②心理的虐待③ネグレクト④性的虐待の4つに分類されています。

厚生労働省のHPでの定義では、
①身体的虐待は「殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束するなど」
②心理的虐待は「言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)、きょうだいに虐待行為を行うなど」
③ネグレクトは「家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かないなど」
④性的虐待は「子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にするなど」としています。

内容的に耳を塞ぎたくなる事柄ばかりですが、虐待という言葉にはこのような状況が子どもに生じているということを赤裸々に表しているのです。しかしこうした環境であっても、日々の生活の中には親から愛される瞬間もあるはずだと信じていますし、実際そうした瞬間が子どもの生きる力として支えになっていることが、子どもと関わる中で感じることもあります。

近年、児童相談所に通告されるこれらの種別で多いのが心理的虐待となっています。心配されるのは、家庭内で両親のDVを目撃することが心理的虐待の内容としてもっとも多く、かつ心理的な悪影響を与えかねないということです。これらに類する環境下で育つことが不適切と児童相談所に判断され、様々な観点からも保護が必要となると、児童養護施設などで家族と離れて暮らすケースもあります。

全国の児童養護施設では近年何かしらの虐待で保護されてやって来る子どもが確実に多くなっています。また必ずと言っていいほど4つの虐待がいくつか重なりあっていることが目立ちます。このような虐待が与える影響はどのようなものなのか、続いてみていきたいと思います。

【児童虐待とトラウマ、そして複雑性PTSD】

まずはこの児童虐待、子どもの心身の発達への影響がとても懸念されており、さらにはこうしたこころの傷つき体験がトラウマとなり、さまざまな状態を引き起こします。そして長期に渡り虐待的な環境に置かれることで、複雑性PTSDの症状などを呈する状態になり得ます。
その原因となるトラウマとして、逃げることの出来ない場所における監禁、繰り返されるいじめや、さまざまな形の児童虐待などがあります。これらが対人関係の中で繰り返し起こることで、極度の恐怖に長期間暴露されるために複雑性PTSDの発症リスクとなっているのです。

人によって同じトラウマ体験がどのように感じられるか、受け取られるかについては、その人が逆境にあってもめげることなく頑張れる力(レジリエンス)や周囲の環境、そして人との関係が影響してくると考えられています。そのためトラウマ的な体験、つまりこころの傷つきの大きさや深さは、一人ひとり違うということなのです。
年齢別にみられやすいトラウマ症状、そして複雑性PTSDにおける症状などについては次回の後編で詳しくお伝えしたいと考えています。

【最後に】

トラウマのような嫌なことを忘れることは難しくても、毎日楽しいことや夢中になれることを新しく思い出にして、何度も何度も上書きしていって包み込んでいけば、少しずつトラウマも薄くなっていくのではないかと思ったりします。そこには人の支えが必ず必要となってきます。現に私の働く児童養護施設では、そのような日常の営みによってトラウマから回復していく子どもたちを沢山見てきました。

次回の後編ではトラウマや複雑性PTSDにおける症状、そしてトラウマへの対応や予防に必要なこと、またレジリエンスということについて、そしてこころの傷つき体験を乗り越える力がどういうものであるのかをお伝えしたいと思っています。

【子ども虐待防止オレンジリボン運動について】

2006年から子ども虐待防止のシンボルマークとしてオレンジリボンを広めることで、子ども虐待をなくすことを呼びかける市民運動としての活動が行われています。
冒頭にあるイラストは子どもの虐待をなくす運動の象徴として、オレンジリボンを読者の皆さまへ知って頂ければと思い、載せました。オレンジリボン運動に関心がある方はリンク先をご参照ください。
子ども虐待防止「オレンジリボン運動」

長期に渡るコロナ禍での不安やストレスは目に見えない形で出ていることもあります。ポジティブな感情を持つきっかけの1つとしてカウンセリングも何かの役に立つと考えています。子育てや子どもの抱える不安やストレスに関してのご相談もお受けしておりますので、どうぞご利用ください。
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Writing by古宇田エステバン英記

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