所属カウンセラーの水野です。
ご無沙汰しております。
夏休みが終わり、新学期が始まりましたが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。
まだまだ暑さは続きますが、しっかりとした水分補給、心の安らぐ時間を持ちながら、生き延びてまいりましょう!
術後の療養につき、長らくコラムを更新できずにおりましたが、またこのように皆さまにお会いできて、とても嬉しく思います!!
今後も不定期になるかと思われますが、皆さまのお役に立てますよう、徐々に頻度をあげて更新できるよう、復活していきたいと思っています。
この生活の中で、自分のこと、心理士(師)としての10年間、自分のしてきたこと、してこられなかったこと、今後していきたいこと、様々なことを振り返り、考える時間がありました。やはり、自分のアイデンティティの核として、「心理士(師)」があることに救われていました。
この時代ですので、オンラインでも仕事をすることができ、カウンセリングの現場に少しでも携わり続けられていたこと、クライエントの皆さま、この環境に改めて感謝申し上げます。
ありがたいことに私は、今まで、産前から18歳までのお子さまがいらっしゃる保護者の方、お子さま自身からのご相談など、年間約500件お受けしてまいりました。
累計5000件あまり、対応させていただいたことになりますが、ひとつとして同じご相談はもちろんありません。ひとりひとり、ひとつひとつご相談をお伺いして、一緒に考え、試し、時にうまくいかないことも共有しながら、万能な方法はないながらも「うまくいく方法」を少しづつ蓄積して来ました。
従って、今私が持っているノウハウは、今までご相談にいらしたお母さま(保護者の方)とお子さまと一緒に作りあげたものと言えるでしょう。私も皆さまに教えていただいてきたのです。
全く同じご相談はない一方で、共通しているお悩みもあります。お悩みを一緒に考えている中で、他の保護者の方も同じようなお悩みを抱えていることをお伝えすると「自分だけじゃない」と安心していただけることが多くありました。ひとりで悩まれていると、自分だけの悩みなのか、他の方も通る道なのかわからず、悩みを深めてしまう可能性があるのです。
しかしながら、子育て相談をするのは他の悩み事よりも難しいと言われています。なぜなら、「自分の子どもがダメなのではないか」「ダメな母親と思われるのではないか」との不安が喚起されやすく、その不安によって相談がしにくくなるのです。大事なお子さまを育てているのですから、その不安も当然のことかと思います。
従って、ニーズはありながらも、子育て相談をしたくてもできない方が多くいらっしゃるのが現状です。
そこで、今まで私がお受けしてきた子育て相談の中で、様々な方がお困りになっていた共通のお悩みについて、今後はコラムを書かせていただこうと考えています。
本日は、その前段として、「子育て相談をお受けするときの心理士(師)としての私の視点」についてご紹介させていただこうと思っています。この考え方は、子育てだけでなく、様々な問題や困難に向き合ってたり、解決したりする際に役立つかと思いますので、子育て中の方以外も是非、ご覧いただけたらと思います。

心折れないこと
私事で恐縮なのですが、私は希少な骨の疾患で、この3年間、度々脚を手術してまいりました。そこで、大きく学んだことがありました。
それは、「折れないこと」が大事だということ。
私の疾患は、骨を壊す細胞によって骨が溶け、骨の一部が薄くなっていってしまう疾患なのですが、手術前の様々な局面で、「骨折しないように」と医師から指示されていました。「折れた」と「折れていない」とでは天と地の差だと。「折れ切れてしまったら、繋ぎ直すのはとても難しい」ということなのです。
なぜなら、骨折してしまうと、
-骨を壊す細胞が骨の外に漏れ出て他の骨に飛んでしまう恐れがあること
-骨折したところまでの骨が使えなくなってしまうこと
-歩けるまでの時間が数ヶ月伸びてしまうこと
そして、骨が完全に折れてしまうと、手術の方法も全て変更しなければならないためでした。
病巣のある私の脚の骨は「卵の殻」ほどしかなくなっていたのですが、それでも「折れている」のと「卵の殻ほどでも繋がっている」状態とでは全く予後が異なったのです。
このような骨が「完全に折れるか」「折れないか」の瀬戸際を繰り返している生活の中で、
「折れた」のと「僅かでも繋がっていること」とでは天と地の差だということは「心」も同じなのではないかと感じたのです。
心がひとたび「ポキッ」っと完全に折れてしまったら、もう一度立ち上がることができるまで、多く労力と時間が治療にかかってしまうかもしれません。
しかし、折れ切れず少しでも繋がっていれば、繋がっているところを大切に、強みとしながら、補強していくことができます。少しの休息をとって、リハビリにすぐ入ることができると思うのです。
落ち込んでも、しぼんでも、ヒビが入っても、スレスレの状態でも……
心も「完全に折れなければいい🟰折れ切れなければいい」
つまり、「僅かでも繋がっていればいい」のです。
そこで、「心折れ切らない」ために重要なことは何か。
硬さではなく、柔軟さだと思うのです。折れそうになった時に、「しなること」
つまり、心折れないためには、強い心を作るのではなく、柔軟な心を作ることによって、生き延びていけるのではないかと思うのです。
私たち、心理士(師)は、クライエントさまが「心折れないため」に何ができるのでしょう。
・折れない心を一緒に育んでいくこと
・折れる前に気がつき、補強するなど予防的に関わらせていただくこと
そして、お子さまに関しては、お母さまをはじめ、保護者の方々と協力して、折れない心を育てていく一助になれるかと思います。
現代社会において、折れない心、折れそうになった時に「しなる」柔軟な心を育むことは重要な課題です。
なぜなら、「やりたいことがない」「自分には価値がない」「生きていても仕方ない」「自分は周りに迷惑をかけてしまう」などのお悩みを抱える方が多くいらっしゃるからです。
そのような方々は、自分に厳しく、頑張り屋さんで、一生懸命我慢し、鍛錬に鍛錬を重ねていらっしゃるようにお見受けします。
心を鍛える方向よりも、心を柔らかくしていける方法を一緒に模索していきましょう。

子どもに安心して関われること
さて、子育ての話に移りましょう。
「先生は子育てで何が大切と考えていますか?」と尋ねていただくことがあります。
その時に私は、
「お母さまがお子さまと安心して関われること」
とお伝えしています。
※ここで記載している「お母さま」とは、「お子さまの主たる養育者の方」を指しています。
その理由は、主に2点です。
1.お母さまの気持ちの安定感が、お子さまの安定感に繋がるから
2.「自分は笑ってもらえる価値があるんだ」とお子さまが感じられるから
そして、この「2」こそが、今後の人生において重要です。なぜなら、愛着関係や自尊心、自己肯定感の基礎として育っていくものだからです。
では、大人たちは無理して、我慢して、子どもに笑いかければいいのでしょうか。
そうではありません。我慢は破綻するからです。
我慢は、心を強くするものではありません。むしろ、心を打ち砕く要因になるものです。
従って、無理して関わり続ければ、逆に、「この子といるのがしんどい!」という気持ちになる可能性もあります。それでは、「2」の目的が達成されません。逆効果なのです。
「しんどいと子どもに対して思うこと」、その時間が長く続くことで、子どもに対して、ご自身の思ったように関われない保護者の方は多くいらっしゃいます。
怒る、怒鳴る、手をあげる
突き放す、無視する
など、その反応は様々です。
そして、私のところにいらっしゃる時には、罪悪感で傷つき、その行き場のない罪悪感によって、更にお子さまにつらくあたるという望ましくない循環になっていることも多くあります。
更に言うと、このような状況で、インターネットに書いてあるような「褒める子育て」は無理な話です。現在のお母さまは勉強家の方が多いですので、「どのような子育てが推奨されているか」よく調べた上で、カウンセリングにいらっしゃいます。
そして、「褒めることができない自分」に罪悪感を感じながらも、「褒めるところがないお子さま」に対して怒りを強めてもいらっしゃるお母さまも多くおられるのです。
これでは、「褒める子育て」を謳うのも本末転倒な気がします。なぜなら、結果的にお母さまは「お子さま」への怒りを強めているのですから。(「褒めること」は大切ですが、「叱らない子育てが良い」と個人的には一概には思いませんので、その話はまた後日させていただきたいと思います。)
関係性と心の発達の連載の中でも繰り返し書かせていただいたのですが、
「大切な人を傷つけたとき、その相手以上に自分が傷ついている」のです。
関係性上に感じられる罪悪感は、関係性を拗らせる要因になります。早い解決が望まれます。そのために、ひとりで抱えないことが大切です。
お母さまがお子さまと一緒にいて、
「傷つかない環境を作ること」
「安心して関われる環境を作ること」が何よりも大切なのです。
「お母さまの気持ちが尊重されることが重要」というとお子さま中心でないように思われるかもしれませんが、そのことが結果的に、お子さまの安心・安定に繋がるのです。
まずは「お母さま(保護者の方)のお気持ち中心」でぜひ考えてみてください。子育てにとって、最重要なことです。

まとめ
本日のコラムでは、「子育て相談をお受けするときの心理士(師)としての私の考え方」についてご紹介させていただきました。
・「折れない心」を育むとは、硬さを鍛えるのではなく、折れそうになった時に「しなる」柔軟な心を育むこと
・ 子育てにおいて最重要なことは、「お母さま(保護者の方)がお子さまと安心して関われる環境を作ること」
をお伝えしました。
「お母さまの安心感に繋がることは何か」
を第一として、子育てのご相談をお受けしています。
このアプローチでカウンセリングを進めていくと、初めは自身の安定が子どもの安定に繋がることにピンと来ていない方も、次第にお母さまが自ら、
「これをしたら自分の余裕がなくなるので、やめた方がいいですね」
「私が我慢しても子どもは喜ばないだろう」
とおっしゃられ、お子さまの気持ちを大切にするのと同じように、お母さま自身の気持ちを大切にされるようになっていきます。
大切な人を大切にすること、大切にできることは、「自分自身を大切にすること」にも繋がる大事な作業なのだと感じられます。
子どもたちは、真実を見極める天才です。
自分の大切な人が、お母さまが、無理をしても決して喜ばないのです。
嘘で褒められても決して喜びません。
大人たちが本心で自分を温かく目つめてくれる眼差しによって、子どもたちの心の穏やかさや、自尊心は育つのだと感じます。
子どもであっても大人であっても、
自分が安心して心が穏やかでこそ、相手の安心や心の穏やかさに寄与できるのです。
本日は、「相談をお受けした時の視点」<子育てで大切なこと>についてご紹介しました。
次回は、「子どもに体験させたい3つのこと」「家庭・家族の役割」についてお伝えしたいと思います!
皆さまお楽しみにしていてくださいね!
▶︎大切な人との関係性構築についてはこちらのコラムをご覧ください。
【関係性の相互性からみる心の発達】水野コラム
こちらのコラムでは、「大切な人との関係性をどのように築いていくか」について、日々の中で使えている考え方やスキルをご紹介しています。大切な人を大切にすること、大切にできることは、「自分はここにいて良いのだ」「もっと頑張ろう!」など、安心感や、モチベーションにもつながる大事なことです。
大切な人との関係性構築にぜひお役立てください。

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