みなさまこんにちは。メンタルトレーナーの森下です。
3月は卒業の季節。僕がサポートしている学校でも3年生たちが卒業して新たなステージに旅立っていきます。
別れと思うと少し寂しい気もしますが、それと同時に新たな出会いもやってきます。
全ての出来事は表裏一体で、良いこともあれば悪いこともあり、楽しい側面もあれば悲しい側面もある。
どうせなら良いことの方に意識を向けられていた方が人生が豊になると思うので、
日々、前向きに進んでいきたいなと感じた春の始まりです。
さて、前回、前々回のコラムに引き続き、代表の小高が心理解説をさせていただいた、ボクシングの村田諒太選手と車椅子テニスの国枝慎吾選手の対談番組「村田諒太x国枝慎吾 〜不可能を可能にするマインド〜」の中でお二人が話していた内容をメンタルトレーナーの観点で紹介していきます!
前回までの記事はこちら
【NHKレジェンド対談「村田諒太x国枝慎吾 -不可能を可能にするマインド-」➀】弱さを受け入れる|メンタルトレーニング
【NHKレジェンド対談「村田諒太x国枝慎吾 -不可能を可能にするマインド-」②】想い・言葉の強さ|メンタルトレーニング
今回(でラストです!)のテーマは「挫折との向き合い方」です。
怪我で苦しんだ国枝選手の経験と言葉にフォーカスして、メンタルトレーニングの観点を交えて解説していきます。
ぜひご覧ください!
人生は自分で切り拓く
車椅子テニスの国枝選手も怪我に悩まされたアスリートの一人。
皆さんもご存知の通り、国枝選手は年間グランドスラム(1年間でテニスの4大大会を制覇)を獲得し、北京パラリンピックではシングルスで金メダルを獲得。
その後、国枝選手は車椅子テニス選手として初のプロに転向し、より上手く、強くなるために、バランスの悪い車椅子の上では「不可能」と言われていたバックハンドショットを磨いていくことになります。
その結果、ロンドンパラリンピックではシングルス2連覇を達成し、全豪オープンや全仏オープンなどでも連覇を成し遂げます。
ですがその反面、磨いてきたバックハンドショットは肘に多大な負荷がかかる、いわば諸刃の剣。肘に選手生命を脅かす怪我をしてしまい、2016年のリオパラリンピックでは怪我の激痛に耐えながながら戦いましたが、ベスト8で敗退し、3連覇を逃してしまいます。
その時を振り返った時に国枝選手の頭の中には引退の2文字がよぎっていたそうで、9割くらいは引退する覚悟をしていたと話していました。
今まで当たり前のようにできていたことがケガの影響でできなくなったり、応援してくれている人たちの期待に応えられなくなってしまうことは、活躍をして注目され続けてきた国枝選手にとっては相当しんどかったのだと感じます。
ですが、国枝選手は「後悔しないようにするためにはどうすればいいか」を考えた時に、「このままでは終わりたくない」と現役続行をするために、今まで鍛え上げてきたフォームを捨てて、肘に負担のないフォームをゼロから作り直す覚悟を決めました。
フォームを変えてすぐの頃はボールもネットまで飛ばず、かつてのショットの面影はなかったそうですが、そんな時でも痛みを感じずにテニスができることを楽しめていたそうです。
皆さんだったらどうでしょう。この状況で楽しむことができますか?
もし、僕が現役時代(メンタルトレーニングを学ぶ前)に国枝選手と同じような状況だったら、怪我をする以前の自分と比較して「なんでこんなことも出来ないんだ」とイライラして投げ出してしまうかもしれません。
あくまでも一般論ですが、通常であったらこのような状況下におかれると、ネガティブに考え過ぎてしまい、
引退の道を選択してしまう可能性があるかと思いますが、国枝選手の場合、前向きに捉えて変わることに臆病にならず、トライアンドエラーをしながら楽しめたのも、テニスを思い切りできる楽しさや、自分なら乗り越えられるという自信(自己効力感)、そして何より周りの人のサポートがあったからこそなんだと、対談を聞いていた中で強く感じました。
試行錯誤し続け、周りのサポートを受け止めながら、努力を積み重ねた結果が、皆さんも記憶に新しい東京パラでの金メダルにつながるのです。
怪我をしたからこそ今がある
当時の国枝選手は、怪我をしていても「周りの期待に応えないと」というプレッシャーと、車椅子テニス界初のプロアスリートという責任感から周りには弱音を吐けない日々が続きます。
悔しい結果に終わったリオパラリンピックの時も、怪我をしていることをバレないように必死で痛みを隠しながら戦っており、自分の本当の状況と演じている状況のギャップがキツいと感じる中で、唯一弱音を吐ける場所が奥様の存在だったそうです。
僕自身、国枝選手はメディアでは常にポジティブな発言をされていた印象があったので、そういうキツい思いをされていたことは初めて知りました。
怪我を治すためにいろんな方法を試してみたけれどなかなか良くならず、最終手段として長期休養をしたけどまだ痛かったという時に、奥様に電話をして「もうダメかもしれない」と泣きながら弱音を吐いたのだそう。
そんな当時を振り返り、国枝選手は「辛かった5年間は意味のある時期だった」と話していました。
怪我あったから今がある、逆を言えば怪我をしていなかったらここまで競技を続けていなかったかもしれなかった。
国枝選手に限らず、怪我で苦しんでいた(いる)アスリートはたくさんいます。
怪我をした直後は、落ち込んだり怒りだったりいろんなネガティブな感情が出てきたりするでしょう。
なんでこうなってしまったのかと過去を悔やんだり、出来ないことばかりを考えてしまってもどかしい気持ちにもなる。
本当に回復するのかと不安も大きくなることもあるでしょう。
でも過去を悔やんだり、出来ないことばかりを考えてでも何も変わりません。コントロールできるのは「今、何を考えて行動するか」です。
国民栄誉賞を受賞したプロ野球選手の松井秀喜選手も大怪我を乗り越えた選手の一人。松井選手が書いた「不動心」という著書の中には怪我をした当時を振り返って「怪我をした自分にありがとうと言えるようにしたい。」と書いています。
なかなかこう考えることはすぐには出来ないかもしれません。もし僕も同じような状況になったとしたらすぐには切り替えられないと思います。
ですが、落ち込むだけ落ち込んだら、今できることは何かを考えて、復帰までのプランに集中し、を前向きに行動していくしかありません。
怪我に限らず、今までに同じような「困難を乗り越えた経験」を積み重ねていれば、自分は乗り越えられるという気持ちになれるはずです。いつかやってくる挫折を乗り越えていくためにも、困難は買ってでもしておきたいですね。
僕もさまざまな選手の心理面のサポートをしていく上で、怪我で思うようなプレーができずに悩んでいる選手もいます。
そんな時には先ほど紹介した、松井選手など怪我を乗り越えて活躍してきた選手の経験や言葉を伝えるようにしています。
今度からは国枝選手の経験や言葉も伝えていきたいと思います。(引き出しが増えました!!!)
ドラマチック体験理論
「ドラマチック体験理論」という理論があります。
これは、熊本大の名誉教授である橋本公雄先生が提唱した理論(2011)で、「困難や挫折、出会いや別れ、大成功や大失敗といったドラマチックな体験をすることで人は成長する」というものです。
「怪我をした」という経験もドラマチックな体験に当てはまります。
可能なことなら順風満帆に、思い描いた通りにことが進む方が良いなと思う人の方が圧倒的だと思います。
僕もそう思います。
でもこの理論から言えば、特に浮き沈みもなく、平々凡々に生きていると成長は緩やかで、あんまり嬉しくはないけれども、たくさん失敗して、たくさん悩んで、たくさん迷ったほうが成長できるわけです。
正直、困難や挫折、怪我や別れなどの渦中にいる最中は辛いし苦しいししんどいかもしれません。
でも、それを乗り越えて数年、数ヶ月経てば、国枝選手のようにその経験に感謝出来るようになるかもしれない。
皆さんも辛かったけど、あの時があったから今があると思える経験の1つや2つあるのではないでしょうか。
僕自身の経験で言えば、競泳選手時代の高校3年間は全くベストタイムが出ずにもがいていた時期がありました。
その時期も泳ぐことは好きで練習を続けてはいましたが、レースになると不安やプレッシャーを強く感じ、苦い経験をたくさんしてきました。
でもその時期があったからこそ、メンタル面に興味を持ったことは事実だし、今のこの仕事につながっているとも言えます。
もしかすると、この3年間がなければ今の仕事はしていなくて、今の仕事をしていなかったら、今の出会いもなくて、奥さんとも子ども達とも出会えてなかったかもしれない。
そう思うと、この3年間には大きな意味がありましたし、大袈裟かもしれませんがその3年間に今を生かされてると言っても過言ではありません。
挫折や成功や、出会いや別れなどを繰り返してきた結果の今なわけで、辛かった時期も振り返れば笑い話にもなるかもしれません。むしろ笑い話にしてやるくらいポジティブになれたのなら、きっと乗り越えられることでしょう。
そう思えるようにするためにも、しんどくて苦しい時には目の前のことではなく、少し先の未来の自分の成長にフォーカスするようにしてみてください。
困難を受け入れて、乗り越えた経験をたくさん持っている人は、どんなことがあっても自分は乗り越えられるという「自信」を手にすることができます。
壁にぶつかったり、しんどいことがあった時は当然辛かったり、挫けそうになることもあるでしょう。
でもそれは同時に「成長のチャンス」でもあります。
ただ、一人で乗り越えようすると心がパンクしてしまうこともあるでしょうから、弱音を吐ける場所を作ったり、周りの人や専門家に頼ることを忘れないようにしてくださいね。
最後に
全3回に渡り、村田選手と国枝選手の対談をメンタルトレーニングの観点からお伝えさせていただきました。
いかがでしたでしょうか?
今回、村田選手、国枝選手の対談を拝見させていただき、「偉大な成績を残したトップアスリートはすごいな!」という感覚よりも、「偉大な成績を残したトップアスリートはすごいな!」という感覚はもちろんですが、それよりも「偉大な成績を残したトップアスリートでも、僕らと同じような悩みを抱えることもあるんだ」と、とても親近感が湧きました。
お二人の試合の場面だけを切り取って見ていると、華やかで輝かしい道を辿ってきたのかなと思うかもしれませんが、
その道は実はデコボコ道で、たくさん転ぶ度に落ち込んだり、逃げようとしたりと葛藤を繰り返し、それでも弱さを受け入れて前へ進んでいく姿に、僕自身勇気と刺激をいただきました。
無敵のヒーローもかっこいいですが、弱さを受け入れて強くなっていくヒーローもカッコいい。
弱さを受け入れる、弱さを認めることは簡単なようで難しいことだと思います。
周りと比較したり、優劣を気にしていたりするとプライドが邪魔してなかなか受け入れることはできません。
自分の心の声に素直な気持ちで耳を傾けられた時に、初めて自分の弱さに気づけるのかなと思います。
そしてそこからは周りがどうこうではなく自分自身がどうなりたいのかを見つめていく。
弱いことは悪いことでも恥ずかしいことでもない。弱さを知ることは強くなる(成長する)ことの始まりです。
自分のペースで、自分がやりたいことに努力してチャレンジしていきましょう!
<前回までの記事はコチラ>
【NHKレジェンド対談「村田諒太x国枝慎吾 -不可能を可能にするマインド-」➀】弱さを受け入れる|メンタルトレーニング
【NHKレジェンド対談「村田諒太x国枝慎吾 -不可能を可能にするマインド-」②】想い・言葉の強さ|メンタルトレーニング
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