COLUMNコラム

【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:相手をどこまで許せば良いのか?~part 3 ~ – 子育てにも役立つ!関係性の責任はお互いにあるということ-

所属カウンセラーの水野です。

「暑さ寒さも彼岸まで」と先人も言っていますが、
地球温暖化が進む現在でも例に漏れず、最近は、めっきり秋めいて来ました。

今夏はとても暑かったので、涼しくなり、少しは過ごしやすいでしょうか?
しかし、涼しくなったはいいものの、最近は「寒暖差疲労」による体調不良もよく耳にしています。
コロナの次は、時期ハズレのインフルエンザなど、
健康面で、気を抜けないことが次から次へ出てきますね。

皆さまはお元気でお過ごしでしょうか?

「毎日を楽しく、安全に過ごせること」
は何よりも大切なことです。

長らくコラムの更新のお休みをいただいておりました。
お待ちいただき、どうもありがとうございました。

私事で大変恐縮なのですが、
実は、昨年末より、脚の膝関節を患い、手術、治療、リハビリ生活を行なっていました。
お陰様で、手術により、病気は完治し、経過もとても良い状態です。
しかし、膝関節の曲がりが、健常には戻らず、少し障害が残る形となりました。

脚の調子は、「3歩進んで2歩さがる〜♪」のような状態で、
「機嫌も良い日もあれば、全くいうことを聞いてくれない」
大きな赤ちゃんを宿しているような気分です。笑

主治医は、「日常生活がリハビリだ」と言っていたのですが、
(え?それだけ?)と内心思っていた私も、「日常生活」がこんなにも大変だとは思っていませんでした。
そうですね。日常生活を過ごしていくということは、それだけでとても大変なことです。

私の場合は、
階段
信号
お風呂
床に落ちたものを拾う
雨の日など

今まで最も簡単に過ごしていた、日々の中で起こる色々な場面が、障壁となり、
不安になったり、緊張したりします。

障害や病気のあるなしに関わらず、
大変なこと、不安になること、緊張すること
それは人それぞれだと思うのです。

ありふれた日常と思われても、
その中で、皆さまも「自然と色々なことを乗り越えていること」をお気に留めておいていただけるといいなと思っています。自分では気がつかなくても、振り返ると思いあたることもあるかもしれません。すでに、色々なことに適応し、頑張っていることに。

「毎日を楽しく、安全に過ごせること」
は何よりも大切なこと。

そして、同様に、
「毎日を楽しく、健康な関係性を築くこと」
もとても大切なことです。
人は、様々な関係性に身を置きながら過ごしています。
従って、「健康な関係性」は、自身の心の健康や日々の幸せに繋がる大切なことです。

皆さまにも、ぜひとも。
「毎日を楽しく、安全に」
「大切な人を大切にする、できる」
健やかなる日々を過ごしていただけるように、おこがましくはありますが、ちょこっとでも私のコラムがお役に立てるといいなと思っています。

さて、私のコラムでは、
「大切な人との関係性をどのように築いていくか」について、
日々の中で使える考え方やスキルをご紹介しています。

大切な人を大切にすること、大切にできることは、「自分自身を大切にすること」にも繋がる大事な作業です。
「自分はここにいて良いのだ」「もっと頑張ろう!」など、安心感や、モチベーションにもつながる大事なことだからです。

引き続き、どうぞよろしくお願い致します

相手をどこまで許せば良いのか?

如何なる関係性においても、自分の思い通りに運ぶことばかりではありません。
そして、「大切な人だからこそ」許すことが難しいことも出てくるのでしょう。

現在のコラムのテーマは、「相手をどこまで許せば良いのか?」ということです。
実は、このテーマに関するご相談はとても多いのです。

特に、家族関係や子育て相談において、
「夫の帰りが遅く子育てをワンオペで行っており相談ができない」
「義父母との関係性がうまくいかない」
「思春期の子どもへの対応にイライラしてしまう」
「子どもはスキンシップを求めてくるが自分はスキンシップが好きではない」
「子どもは学校に行き渋るが、親としては学校に行って欲しい」
など、その内容は様々です。

「相手の行動」が「自分の許容できないこと」に踏み込んでしまうと、
・どこまで妥協すれば良いのか
・許しすぎると相手を甘やかすことになってしまうのではないか
・自分の許容範囲が狭いことが問題なのか
・許せない自分が悪いのか
など、どこまで相手を許容するのかの線引きについて、悩んでしまうのです。

私としては、この悩み、葛藤はとても臨床心理学的な観点からも、とても大切だと思っています。
なぜなら、それは、<心の安全バー>がきちんと作動していることでもあるからです。

<心の安全バー>とは、「自分が安心できる、自分を守る線引きを設ける自分自身の中にある機能」です。<心の安全バー>が作動することで、相手の行動が自分にとって、安全なものかどうか、推し測ることができるのです。

「相手をどこまで許せば良いのか?」と質問している状態とは、
・自分自身の安全感が揺らされリスクを感じている
・リスク回避のための<心の安全バー>が作動している
・今の状態のままでは、関係性上、良くないため、何かしらの対応が必要だと自覚している状態
と捉えることができます。

自分の安全感の保証なしに、相手と安心して関わることはできません。
つまり、<心の安全バー>が作動するということは、
「関係性の修正をする段階にいることをきちんと自覚できている」
ということなのです。

それは、相手が安全な関係性に身をおけることにも繋がります。

「相手をどこまで許せば良いのか?」と考えていくこととは、

自身の安全感を確保しようとする試みのようで、相手の安全感についても同時に考えていくものだと解釈できるのです。

▷心の安全バーについて、詳しくはこちらのコラムをご覧ください⬇︎
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:愛はジェットコースター!?-「楽しさか?」「安心か?」論争に触れて –

「制限」を設けること VS「ありのまま」を受け入れること

「相手をどこまで許せば良いのか?」
について考え、解決していく上で、大切なのは、
できる限り「我慢をしないこと」を目標にしていくことです。

なぜなら、我慢はいずれ破綻するからです。
関係性のこじれなどの、解決する「見通し」の立たない問題により生じる我慢であれば尚更です。

関係性とは、「お互いの歩み寄りによって、相互作用を通して、形成され、成熟していく」と考えられます。

自分だけが我慢している関係性は、後に苦しくなり、「我慢」の結果、こじれが生じ、関係性を余計に難しくしてしまう可能性があります。

「我慢」の前に、「自分はどこまで許容し、どこまでが許容できないのか」について、自分自身で考え、自己理解することが大切です。なぜなら、自己理解なしに、その点を相手に伝えることは難しいからです。

<心の安全バー>は、カウンセリングの観点では、<制限>という言葉にあたります。
カウンセリングにおいて、<制限>は、「努力をお願いするもの」ではありません。それが守られない場合は、「関係性を継続することが難しい」と相手に表明するものです。

先ほどもお伝えしたように、自分の安心感を脅かされた状態で、相手を受け入れることは難しく、お互いの安心感を確保できるからこそ、関係性を育むことができると考えられています。

そして、カウンセリングにおいては、相手の「ありのままを受け入れること」に近づくために、制限>があると考えられています。

傾聴、受容が仕事の大きな部分を担っているカウンセラーにでさえ、相手を受け止めるための「自分の安心感」が必要だと考えられているのですから、日常における対人関係においてであれば、尚更、「自分の安心感」を持って、相手に接していくことは大切なのです。

しかし、なんでもかんでも「だめ!」と禁止されてしまうと、さすがに「ありのまま」が受け止められている気がしないのも事実です。従って、カウンセラーがクライエントに示す<制限>「必要最低限」で設けることがお勧めされています。

▷「制限」について、詳しくは詳しくはこちらのコラムをご覧ください⬇︎
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:相手をどこまで許せば良いのか?~part 1 ~ – 「制限」を理解すること-

▷「必要最低限の制限」の例として、前回のコラムでは、プレイセラピーを例にお伝えしました。
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:相手をどこまで許せば良いのか?~part 2 ~ – 子育てにも役立つ!プレイセラピーを参考に-

「制限」と「責任」

「ありのまま」を受け入れるとされているカウンセリングにおいても、<制限>が課されることに、不自然さを感じる方も少なくはありません。

よくわかります。<制限>を相手に課すというと、少し他人行儀な気がします。
そして、プロのカウンセラーにとっても、時にそれはとても難しい場合があります。

しかし、<制限>はお互いの安心感をもたらすためという理由に加えて、関係性への「責任」をお互いが担っていくことを意味しています。

プレイセラピーにおいては、「おもちゃを壊すこと」に対して、制限が課されています。

その制限があってもなお、
カウンセリングの最中に、怒りでおもちゃを壊した子どもを見て、私も内心・・・
(これは、一生懸命、怒りを表現しているのではないか。「おもちゃを壊してはいけない」と制限をかけては、子どもの感情表現を抑制してしまうのではないか・・・)
と、制限をかけることに、躊躇してしまうことがあります。

見てみぬふりをしたり、「あらあら」と笑って誤魔化すこともできるのかもしれません。

しかし、おもちゃを壊してまでの感情表現は、子どものためにはならない。
なぜなら、おもちゃは、子どもの感情の表象です。
つまり、子ども自身で、自分の気持ちを壊してしまったこと、「壊す」という行動自体に子ども自身は傷ついてしまっていると見立てることができるからです。
そして、一生懸命選んだ大切なおもちゃを壊されてしまっては、カウンセラー自身も安心して子どもに会うことができなくなってしまうからです。

「なんでもかんでも許されること」
は時に、関係性のためにならない、関係性を成熟させていかないものがあります。それは「なんでもかんでも許されて」=ありのままを許されているように見えているだけです。

そして、関係性のためにならないことは、
本来の意味で、「その存在を赦していること」
には繋がらないのです。

つまり、結局、「なんでもかんでも許されてはいない」のです。

▷「子どもにとってのおもちゃの意義」について、詳しくは前回のコラムをご覧ください⬇︎
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:相手をどこまで許せば良いのか?~part 2 ~ – 子育てにも役立つ!プレイセラピーを参考に-

「おもちゃを壊してはいけない」と子どもに<制限>を課すことは、
子どもの表した行動に向き合うことでもあります。
もしくは、おもちゃを壊す前に止められなかった自分自身と向き合うことでもあります。

<制限>を相手に表明するということは、
関係性への責任を担っていくことを相手に伝えることであり、自分でもその線引きを守ることを相手にも表明していることにもなるのです。

つまり、ここで<制限>を課す意味は、
「カウンセラーはおもちゃを壊すことを止められなかった責任は負うが、おもちゃを壊したことへの責任は子ども自身に抱えてもらう」
ということです。

おもちゃが壊れた、おもちゃを壊したということを
関係性の課題として向き合っていくことが大切です。

関係性の責任を負うと言っても、50%-50%の責任ではないかもしれません。なぜなら、カウンセラーはカウンセリングの空間を、クライエントのためになる時間になるよう、そのためにクライエント-カウンセラーの双方の安心感が守られる場所となるように最大限努力する「責任」があるからです。

しかし、関係性の上で起こっている課題であれば、1%でも、責任を負ってもらうことが大切です。それは、責任をおわせていると言えば、堅苦しいですが、その存在の影響を認めていることになるからです。

2人が合わさって関係性になる。
そして、貴方、私の影響で、この課題が生じた。
相手を空気のように扱っていない、いい面も悪い面も含めて、影響をしあっていることを認めること。それが責任ということを理解してもらうことでもあるのです。

関係性は有限であるということ

Axline(アクスライン)は、プレイセラピーにおいて有名な、「プレイセラピーにおける8原則」を提唱したアメリカ出身の児童心理学者です。

彼女は、その8原則の中で、「必要な制限」を与えること、それは、関係性においての「責任感を担っていくこと」を認識させるためでもあると表しています。

※お子さまとの関係性にも役立つものもありますので、ご参考までに8原則を記載します。
① 信頼関係の形成
② あるがままの受容
③ 許容的な雰囲気作り
④ 情緒の的確な察知
⑤ 子どもに自信と責任をもたせる
⑥ 非指示的な態度
⑦ 治療がゆっくり進むことを理解する
⑧ 必要な制限は与える

それでは、具体的に、どうして<制限>を設けることが<責任>を担っていくことに繋がるのか?について考えてみます。

人が物質として存在している以上、物理的に傷つくことは避けられません。
そして、私たちは、時間、空間、身体、命などの限りのある色々な制限の中で生活しています。人という存在は様々な意味で有限なのです。存在しているということは、それだけで<制限>があるということが現実です。

従って、<制限>があるということを、理解していくことは、
・現実を受け入れていくこと
・現実と向き合っていくこと
に繋がると考えられています。

延いては、
・自分自身を理解していくこと
・相手を理解していくこと
に繋がっていくのです。

<制限>の中で生きるということは、物質して生きている人としての責任をになっていくことでもあるのです。

そして、安心感のある空間の中で、そのことを理解していくこと、<制限>と「あるがままを受け入れられること」は共存し得る概念であることを理解していくことは、カウンセリングの中での大きな意義と考えられているのです。

「関係性は相互の努力や歩み寄りによって、形成される」と今までもお伝えしてきました。そして、「努力や歩み寄り」は、「関係性の責任をともに担っていること」が基盤となり、達成されるのです。

まとめ

本日のコラムでは、
「相手をどこまで許せば良いのか?」
について、<制限><責任>の観点から考えてみました。

1.制限は、自分ー相手の安心感を守るために大切であること
2.制限は、自分ー相手が関係性に対して責任を担っていくことを表明していることに繋がる

ことをお伝えしました。

本日のコラムでは、子どもへの対応を中心に、プレイセラピーの概念からお伝えしましたが、このことは、如何なる関係性においても応用できますので、ぜひ、自分の関係性に当てはめて考えてみてください。

関係性に身を置くこと
関係性に責任を担っていくこと
はどちらも勇気のいることです。

「相手をどこまで許せば良いのか?」
の私なりの、現状の答えは、
「自分が無理しないところまで」
です。

しかし、ご自身で、自分が無理をしているのか?を自分自身で推し測るのはとても難しいことです。そのために、私たちカウンセラーがいます。

子どもの行きしぶりや、分離不安、思春期などの対応はとても難しく、
一時的にでも、関係性を難しくします。
そのような時は、自分の<心の安全バー>を揺るがしてくるのかもしれません。

従って、対応している側に全く負荷をかけない状態は稀で、
こちらの安全感が揺るがされることばかりです。

そうなれば、視点は、「相手にどう対応していこう」ということに向き、自分自身は、置き去りになってしまうことがあります。

無理して、無理して、置き去りになった結果、
心の安全バーがかかり、急ブレーキがかかります。

急ブレーキが掛かれば、相手はまた反発したり、追ったりしてくるでしょう。

従って、相手に視点がいきがちな時にこそ、
「自分が無理しないところはどこだろう」
と自分に目を向けることが大切なのです。

その視点の変更は、自分ではなかなか難しいものです。
そのような場合にも、カウンセラーをお役立ていただけます。
「無理していないか」
「無理がないところ、その線引きはどこだろう」
と一緒に考えていきましょう。

あっという間に10月です。
2023年も残りあと3ヶ月ですね!年末にいい1年だったなぁ〜と思えるように、
私もボチボチ「無理がないところ」を考えながら、やっていきたいと思います。

みなさまも、くれぐれも「ご無理なく」(それもなかなか無理しないのも難しいですが・・・)
リラックスの時間を保ちながら過ごしていきましょう。

そして、Trick or Treat! (ハロウィンの日は、好きなお菓子を食べ、ちょっとしたいたずらもしてみてもいいかもしれませんね!ふふふ)

それではまた次回のコラムでお会いしましょう!

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Writing by 水野

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