COLUMNコラム

【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:心のコンパスと対話して…-「内在化」に着目して考える-

所属カウンセラーの水野です。
10月に入りました。

9月には2回、3連休がありましたが、どちらとも台風に見舞われました。
季節の変わり目による寒暖差、低気圧の影響もある中、
みなさま、体調はお変わりなく過ごされていらっしゃいますでしょうか?

「暑さ寒さも彼岸まで」
とはよく言ったもので、台風の通過とともにすっかり秋らしい陽気になりましたね。

地球温暖化など、気候の情勢の変化によって、「日本にも四季がなくなるのではないか」と言われていますが・・・
このように秋の陽気を感じると、まだある日本の四季の存在を感じ、安心させられます。

世の中の情勢が変化している中でも、変わらず在り続ける存在は、とても大切なものです。

9月8日、イギリスでは大きな変化がありました。
70年にわたって在位されてきたエリザベス女王が、96歳でお亡くなりになりました。

そして、エリザベス女王が亡くなったことを受け、孫のヘンリー王子がその声名の中で、
“We are all reminded of the guiding compass she was to so many in her commitment to service and duty.”
「エリザベス女王が奉仕と務めに献身し、多くの人々を導くコンパス、羅針盤になっていたことに気付かされます。」
と表しました。

ヘンリー王子の表した「コンパス」
言い換えれば、「自分自身を導く心のコンパス」の存在は、「自分自身を大切にすること」「自分はここにいて良いのだ」という感覚にも繋がる大事な存在です。これらの感覚を体験することは、結果的に、大切な人を大切にする、できることに繋がります。

私のコラムでは、「大切な人との関係性をどのように築いていくか」について、日々の相談対応の中で感じていることや、自身の体験を振り返りながら、一緒に考えさせていただいています。

本日は、前回の続きである関係性をお引越しに例える – part 2 – をお休みさせていただき、「心のコンパス」について少し、一緒に考えてみたいと思います。

前回のコラムはこちらです⬇︎
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:関係性を「お引越し」に例えて考えてみる – part 1 –

みなさまは、何を「心のコンパス」として、ご自身の進むべき道を決めていらっしゃいますか?

みなさまが、自分の進むべき方向を導き出すのに使っている「心のコンパス」として、
① 自分の中にある心のコンパス
② 自分の中に宿した心のコンパス
の2つを挙げ、本日はご説明していきたいと思います。

自分の中にある心のコンパス

まず、「自分の中にある心のコンパス」とは、自分の核、自分の感覚、気持ち、考えなど、自分との対話を通して、自分の進むべき方向を導き出すものです。

この「自分の中にある心のコンパス」については、
お好きな方も多くいらっしゃるのではないかと思われる、Disney Seaの「シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ」、通称「シンドバッドの冒険」を例に考えてみたいと思います!

この「シンドバッドの冒険」は、シンドバッドがトラのチャンドゥーと一緒に冒険の航海に出て、人魚やクジラと泳いだり、暴れん坊のサルを手懐けたり、宝物を探す旅に出るアトラクションです。これに乗らずしては帰れない、私の大好きなアトラクションのひとつです・・・!

航海の中でシンドバッドは繰り返し、
「人生は冒険だ〜地図はないけれど〜宝物探そう〜信じて〜Compass of your heart〜♪」
「いつでも心のコンパスを信じるんだ!」
と歌うのです。

シンドバッドが指す、この「心のコンパス」みなさまがどのようにお感じになっているのか聞いてみたい気持ちが溢れているところなのですが・・・
私には、「自分の感覚を信じるんだ!」とシンドバッドに励まされているように感じるのです。

シンドバッドが言っている通り、人生は、地図のない冒険です。
道に迷いそうになった時、迷った時、どうしたら良いかわからない時、選択に迫られた時、孤独を感じる時、投げ出してしまいたくなる時・・・

そんな時、目を閉じて、「自分はどうしたいか」と、自分の心に手を当てて、自分と対話をしてみる。そして、自分自身を信じることで、進むべき方向を決めていく。このことがまさに、「自分の中にある心のコンパスに従うことです。

そして、「自分の中にある心のコンパス」に従うことは、
・自分の気持ちに気がつくこと
・自分自身を大切にすること
・自分自身に自信を持つこと
・モチベーションを高めること

に貢献することに繋がるとても大切なことなのです。

しかし、時に、人は、「自分の中にある心のコンパス」「自分はどうしたいか」に従って、自分の進むべき方向を決めていくのが、難しくなってしまうことがあります。

それは、忙しい現代社会を生きる私たちは、「自分の気持ちをおいておいて」生活しているからです。日々の生活を回すため、相手のこと、家族のこと、お子さんのことなどを優先させ、「自分の気持ちをおいておいて」一生懸命やりくりしています。

その結果、「自分の気持ち」「自分はどうしたいか」が見えにくくなってしまうのです。

従って、自分の進むべき方向を決める時、まずは、自分の心の中にも「コンパス」があることを思い出していただきたいのです。
そして、「ご自身との対話を通して、進むべき方向を決める」自分自身を自分で信じる感覚を感じてみてください。このことにより、自己肯定感を高めること、人生に対する満足感を高めることができるのです。

自分の核について詳しくはこちらをご覧ください⬇︎
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:自分らしさをつくる「自分の核」を理解する -身近な人との間で起きやすい心理について考える-

自分の中に宿した心のコンパス

第二に、「自分の中に宿した心のコンパス」とは、他者の価値観や考えを自身の中に取り入れ、自分の心の中に宿した他者との対話を通して、自分の進むべき方向を導き出すものです。

「自分の中に宿した心のコンパス」については、
エリザベス女王の例に戻って、考えてみましょう。

ヘンリー王子は、「エリザベス女王が奉仕と務めに献身し、多くの人々を導くコンパス、羅針盤になっていたことに気付かされます。」と表していました。

エリザベス女王と私たちは、生前であっても、直接対話をすることはできませんでした。
では、どのように、エリザベス女王は、人々の「心のコンパス」になっていたのでしょうか。

仕事や人間関係で困った時、迷った時、自分の判断に迷う時・・・
日々の生活の中で行き詰まりを感じた時、私たちは、他者を想像し、その人だったらどうするかを考え、その考えをもとに行動することがあります。

「〇〇さんだったらどうするかな?」「△△ちゃんだったらどう考え、行動するだろう?」
と、尊敬する人や、上司、身近な友達や家族などを思い浮かべ、
「その人だったらどのように行動するか」と考え、進むべき方向を決める指針とすることがあるのです。

この他者との対話を通して導き出した指針が「自分の中に宿した心のコンパス」です。
他者の価値観や考えを自身の中に取り入れ、自分の中に宿すこと。そして、自分の心に宿した相手との対話を通して、自分の進むべき方向を導き出しているのです。

私たちは、種々の習慣や考え、他者や社会の規範、価値感などを「取り入れ」、自分の心の中に宿して行動しています。
この「自分の中に他者の存在や、他者の価値観や考えを取り入れること」は、心理学の世界では「内在化」と言われています。

「内在化」は、人間関係の初期から行う、関係性を築く上で大切な心の機能です。

「内在化」をお母さんと赤ちゃんとの関係性で考えてみましょう。

生まれたばかりの赤ちゃんは、お母さんの存在を「内在化」できていません。目の前にいなければ、大泣きしますね。自分の目にお母さんが映っていなければ、お母さんは「いなくなってしまった」ことになっているのです。

そして、生後5〜6ヶ月になると、お母さんが手で顔を隠しても、その手の向こうにお母さんがいることを理解できるようになります。これが、いないないばあを喜ぶことができる原理です。「いなくなること」「隠れていること」の違いが理解できるようになるのです。

そこから、心の成長と、母子の温かい相互関係を通して、「内在化」が進み、お母さんが目の前にいなくても、心の中にいると思えるようになります。

目の前にいなくても、ドアが閉まっても、部屋が変わっても、自分が幼稚園や学校に行っても・・・
心の中にお母さんがいると理解できるようになるので、安心して離れることができるようになるのです。

自分の大切な人は心の中にいると思えること、これが「内在化」の機能です。

そして、「内在化」は、私たちに安心感をもたらすとともに、課題に立ち向かう力を与えてくれるものでもあります。

お友達とお砂場で物の取り合いをした時、すぐに泣きながらお母さんに駆け寄っていた子どもも、
小学生になると、嫌なことがあっても、目の前にいないお母さんのことを考え、「帰ってお母さんに聞いてもらおう」と思えるように、
そして、次第に「こういう時お母さんだったら何て言うだろう」と考えられるように、
最終的には、自分の力で解決できるようになるのです。

人は、「内在化」した対象と対話ができるようになります。
「内在化」することにより、目の前に一緒にいなくても、心を通して繋がることができるようになり、自分の進むべき方向を決める指針とすることができるのです。

*現在の科学では、過去-現在-未来を行き来することはできません。しかし、心理学的に考えると、人は自分の核を通して、過去-現在-未来を行き来することができます。こちらは、「内在化」にも通じることですので、ご興味がございましたら、ご覧ください⬇︎
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:自分の気持ちを整理するための3つのポイント -「今」の関係性を大切にすること –

まとめ

人生において起こる様々な難しい局面を、みなさまは、これまでも幾度もくぐり抜けて来ていらっしゃると思います。
そして、同様にこれからもそのような難しい局面はやってくるのかもしれません。

そのような時、
・自分の「心のコンパス」(① 自分の中にある心のコンパス ② 自分の中に宿した心のコンパス)を意識化すること
・自分の「心のコンパス」を大切にすること
・自分や、自分の中に宿した他者との対話を通し、自分の進むべき道を決めていくこと
を大切にしていただけたらと思います。

今回は、「内在化」の例として母子関係を挙げましたが、「内在化」は、色々な関係性上で行われることです。
自分の心の中に、大切な人を宿すことによって、変わりゆくハードな情勢に立ち向かうこと、新たな冒険の旅に出られるようになるのです。

様々な人との関わり合いの中で、その人と一緒にいられる時間は限られています。
「いいな」と思える、価値観や考えに出会えたことに感謝すること
自分の中に取り入れ、「内在化」すること

それは、たとえ会えなくなったとしても、
その人と心の中で対話でき、自身の進むべき方向を導き出すこと、一緒に歩んでいくことに繋がるのです。

一緒にいられる時間を大切に・・・。

そして、「今一緒にいられる人をどのように大切にしていくか」については、私のコラムで引き続き、お伝えして参りますので、今後とも、お付き合いいただけたら幸いです。

それでは、また11月にお会いしましょう!
そして、ハッピーハロウィン!

PS 乗りに行けないまでも、「シンドバッドの冒険」の歌だけでもぜひ、聴いてみてください。きっと、勇気が湧いてくるはずです・・・!
「心のコンパス」を信じて…!2022年ラスト3ヶ月を一緒に乗り切っていきましょうね♪

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Writing by 水野

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