《はじめに》
はじめまして。
所属精神科医のT.Sと申します(実名非公開)。
大学病院などを経て、現在は児童精神にも力を入れている精神科病院に勤務。
「対話を軸として、患者さん自身の回復に寄り添う」をモットーに日々患者さんと接し、研鑽を積んでいます。
さて、初回のこの記事では、精神科医という仕事についての簡単なご紹介と、このコラムを通じてみなさまにどんなことをお伝えしたいと考えているか、お話していきたいと思います。
精神科医ってどんな人?
突然ですが、みなさまは「精神科医」という言葉を聞いたとき、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。
「自分の考えを読まれそう…」
「患者さんの暗い話ばっかり聞いて病んじゃいそう…」
「閉鎖病棟のアレだよね…?」
「医者も変わった人が多そう…」
僕が職業を明かしたときに多いリアクション TOP4 は、悲しいかなだいたいこんな感じです…笑
さて、いきなり期待を裏切るようですが…
精神科医は、俗に言うメンタリストのように他人の考えが読めるわけではありません。
ただし、精神科医・心理士も含め、精神科の治療にあたるスタッフは、患者さんのお話を聞いたり、仕草を観察したり、表情を読み取ったりしながら、
“今この人はどんな状態で、どんな悩みを抱えているのかな?
そしてどんなお手伝いができるかな?”
と考えています。
その治療の基本は、言うまでもなく「対話」です。
この対話を、心理学の領域では心理療法・カウンセリングと言いますが、精神科医が行う場合は「精神療法」と呼びます。
僕たちはこの精神療法を通じて、患者さんの今のあり方、心のぼんやりとした輪郭を少しずつ思い描きながら、まずは「言葉という薬」で治療にあたるのです。
※実際、精神科医の診察では「精神療法」という診療点数がつけられるので、ある意味では薬と同じく、「精神科医の言葉は有料」です。笑
精神科は、人間の「心の闇」を扱う仕事
精神科にやってくる患者さんは、それぞれ千差万別、違う悩みを抱えています。
しかし、その誰しもに共通するのは、「胸を張って”幸せです”と言えない状態」だということ。
別の言い方をすると、心には深い闇が立ち込め、光が差していない…そんな状態です。
そして僕たちが精神療法やカウンセリングを行うにあたって、どうしても患者さんの辛い過去や経験、自分では処理しきれないグチャグチャな感情など、抱えている心の闇に触れざるを得ません。
精神科の治療とは、「患者さんが抱える闇のすぐそばに自分も立ちながら、決してその引力に引きずり込まれることなく、一緒に幸せという光を探し続ける果てしない旅」なのです。
そういう視点で見ると、精神科医は「自分や他人に襲い来る心の闇を扱うエキスパート」とも表現できるのではないでしょうか。
さて、ここでひとつ、考えてみてください。
僕たち精神科医は、常に迫りくる闇と、いったいどうやって戦っているのでしょうか。
人が抱える心の闇を、いったいどうやって振り払っているのでしょうか。
もしあなたもその方法を知ることができたら、とても生きやすくなると思いませんか?
メンタルヘルスケアのコツは、武器を集めること
物質的に豊かになった現代でも、変わらずメンタルヘルスの重要性は叫ばれ続けています。
むしろ衣食住に困らなくなったからこそ、昔に比べてメンタルヘルスの問題が浮き彫りとなり、取り上げられることが増えてきている印象です。
何事も日頃のケアが大事と言いますが、メンタルヘルスケアの場合、怠ると場合によっては闇に飲み込まれ、命を落としてしまいます。
では、メンタルヘルスケアのために重要なこととは、いったいなんでしょうか。
僕はいつも患者さんに、「手持ちの武器を増やしましょう」と説明しています。
ここでいう武器とは、経験や言葉、考え方や生活スタイル、時間の過ごし方やお気に入りのモノなど、ありとあらゆるものを含みます。
つまり「手持ちの武器を増やす」というのは、
「自分を幸せにする手段や方法を、普段からいっぱい集めて取り揃えておく」
ということを意味しています。
前述のとおり、実はこの世界であなたが出会うあらゆるものは、全てあなたの武器になり得ます。
最近読んだ本、友達との雑談、悲しい失恋、死にたくなるほど恥ずかしい失敗、肌触りが好きな服、忘れられない景色…
その全てが、使い方さえ間違えなければ、自分の幸せな人生をサポートしてくれる強力な武器になるのです。
人生の道中で出会った、武器にもなり得る何かを、
・“自分には無意味なものだ…” と、目もくれず置いていくのか
・“磨けば使えそうだな…” と、こっそりポケットにしまうか
それは、あなた次第です。
精神科医という武器屋が、あなたをサポートします
「カフェでコーヒー飲んでただけなのに、気づいたら脳血管手術が出来るようになってたんだよね…」
という脳外科医は、世界中どこを探してもいません。
しかし、
「本読んでたら、”あっ!この考え方、あの患者さんにアドバイスしてあげよう”ってひらめいてさ」
という精神科医は、この世界にたくさん存在します。僕の周りにも大勢います。
精神科は、日々経験した全てを治療に大きく生かすことができる、とても面白い診療科です。
そして中でも強力な武器を手に入れるチャンスがあるのですが…
それが実は患者さんと接するときなのです。
精神科で患者さんと接するということは、患者さんの人生に少しずつ触れていくということです。
そこには、心がほっこりとするシーンもあれば、身の毛がよだつほどの恐怖を感じるシーンもある。
僕は常日頃、「映画を見たり、本を読み進めていくのに似ているなぁ」と思っています。別の世界に迷い込んだような感覚に陥ることもありますね。
精神科医はその世界に身を投じ、手持ちのありとあらゆる武器(投げかける言葉、楽になる考え方…などなど)を用いて、患者さんの心の闇を振り払います。
そしてその過程で、「なるほど、そんな対処法もあるのね」「とっても良いアドバイスが浮かんだぞ!」と、さらに新しい武器を手に入れていきます。
つまり、患者さんが抱える大きな悩みや強い悲しみは、ある意味で僕らが成長するための強力な材料であり糧なのです。そしてその戦利品は、目の前にいる患者さんはもちろん、他の悩める人々を助けるために活かすこともできる。
僕たちは患者さんを治療する側ですが、実は多くのものを患者さんから受け取ってもいるのですね。
人の心の闇に触れ続けることで、その対価として闇を晴らす術を身につける。
僕は、精神科治療に関わるスタッフこそ、「ありとあらゆる武器を取り揃える武器屋」に近い存在になれると信じています。
さて、今後のコラムでは、僕が精神科医として患者さんと接する中で手に入れ、磨き上げてきた様々な武器、つまりは「幸せになるコツ」を紹介していきます。
もちろん、自分に合わない武器を無理に使う必要はないので、全て身につける必要はありませんが…
ストレス無く生きるために必要な考え方や知恵を、少しでもたくさんお届けできるように。
読んでくださったみなさまが、少しでも生きやすく、幸せだと感じられるように。
そんな願いを込めて、コラムを更新していく所存です。
「本当かな…」「効果あるのかな…」と疑問に思っても、まずは一度、実践してみてください。
もしかすると、あなたの人生が大きく変わるかもしれません!
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