COLUMNコラム

【こどもの声を尊重する新しい仕組み】②意見表明等支援員の役割と意義

こんにちは、所属カウンセラーの古宇田です。

前回からのコラムでこどもアドボケイトに関する話題を紹介していますが、テーマの中心であるこどもの声を尊重する新しい仕組みの昨今の動きについてざっと紹介したいと思います。虐待を理由に一時保護されたこどもの声を代弁する「意見表明等支援員」の配置事業が、今年度に児童相談所を設置している79自治体のうち約8割の自治体で実施されています。これは、こどもの意見表明権を保障する改正児童福祉法が今年4月に施行され、自治体に対して努力義務となったためです。

こどもアドボケイトの養成に取り組む、多くの民間団体が2020年以降に設立され、人材確保、独立性の維持、関係者への周知が課題となっています。国の指針では、意見表明等支援員の要件として「都道府県などが適当と認める研修を修了する」と定められており、民間団体や専門職団体も講座修了を委託の条件としている自治体が多くあります。

そういった現状の中で、今回は意見表明等支援員の役割と意義について考えていきたいと思います。

さて前回のコラムでは、改正児童福祉法における「こどもの意見聴取等措置」の重要性と具体的な内容について取り上げました。この措置は、こどもの最善の利益を確保し、こどもの声を福祉や教育の現場で積極的に反映させることを目的としています。児童相談所や施設入所の際に、こどもの意見や希望を聴取し、それに基づいて適切な支援や措置を行うことが求められています。これにより、こどもの権利を尊重し、福祉サービスの質を向上させるとともに、こどもたちが安心して自分の意見を表明できる環境を整えることの重要性を強調しました。
前回のコラムはこちらからご覧になれます。【こどもの声を尊重する新しい仕組み】①こどもの意見聴取等措置の意義

前回コラムを踏まえ、その取り組みを支える役割を担うであろう意見表明等支援員についてご紹介したいと思います。

またコラムの後半では、こどもたちが自分の気持ちをきちんと大人に伝えるための新しい仕組みを知るために、こども向け案内文を用意しました。こどもへ「意見表明等支援員」について伝える必要がある際には参考にしていただければと思います。

【こどものための意見表明等支援員の役割】

児童福祉の分野では、こどもの権利擁護がますます重要視されています。その中でも、意見表明等支援員(以下、支援員)は、こどもが自らの意見を表明するプロセスを支援するために設置された新たな役割です。

支援員の導入は、こどもの権利を保障するための重要な一歩です。児童福祉法の改正により、こどもの意見を聴取し、その声を保護措置や福祉サービスの決定に反映させることが法的に求められるようになりました。しかし、現場ではこどもが自らの意見をうまく表明できない場合も多く、その支援が必要とされています。支援員は、このような背景の中で、こどもの声を代弁し、意思決定に参加させるために設けられた専門職です。

支援員の導入は、こどもの意見形成を助けるとともに、意見を適切に伝える役割を担います。具体的には、以下のような支援が行われます。

① 意見形成の支援:
こどもが自分の考えを整理し、明確にする過程を支援します。支援員は、こどもとの信頼関係を築きながら、こどもが自身の気持ちや意見を理解しやすくするためのサポートを行います。例えば、対話を通じてこどもの考えを引き出し、どのような方法で意見を表現するかを一緒に考えます。

② 意見表明の支援:
こどもの意見を聞くだけでなく、その意見を関係機関に伝える橋渡し役を担います。こどもが意見を述べる際に、支援員が同席して支援するほか、こどもが望む場合には意見を代弁します。これにより、こどもが緊張や不安を感じることなく、安心して自らの意見を表明することが可能になります。また、支援員はこどもの意見を正確に大人に伝えることを使命としており、自己の価値観や意見を介在させないよう細心の注意を払います。

③ 教育と啓発:
支援員は、こどもに対して権利の啓発を行い、自分の権利について知識を持てるよう支援します。例えば、児童養護施設や一時保護所でのこどもたちに対して、権利に関する情報を提供し、どのように相談や意見表明を行うかを教える役割も担います。

④ 信頼関係の構築:
こどもとの信頼関係を築くことが不可欠です。支援員は、こどもが安心して意見を表明できる環境を提供し、こどもが自己表現のために必要な安全性を確保することが大切です。こどもが安心して自分の思いを話せるような環境を整え、親身になって耳を傾けることが支援の出発点です。

【意見表明等支援員に求められる資質】

支援員は、都道府県等が実施する養成研修を修了し、さらに継続的なスーパービジョンや自己啓発活動を通じて専門性を高めることが求められます。これにより、常に最新の知識と技術を持って子ども支援にあたることができます。このように、子ども意見表明支援員には多岐にわたる専門知識と実践的なスキルが求められ、子どもの権利を守るための重要な役割を担っています。

では、こども意見表明支援員としての資質には、どのような要素が含まれているか見てみましょう。

① こどもの権利に関する深い理解:
支援員は、こどもの権利について深い理解を持っている必要があります。これには、こどもの権利条約や国内法に基づく権利保護の知識が含まれます。これにより、こどもの最善の利益を第一に考えた支援が可能になってくると考えられるからです。

② 高いコミュニケーション能力:
こどもとの信頼関係を築き、効果的にコミュニケーションを図る能力が求められます。こどもとのコミュニケーションは、単に言葉を交わすだけではありません。言葉に表しにくい感情や思いを察し、適切に対応するための非言語的なコミュニケーション能力も重要です。

③ 専門的な知識と経験:
支援員は、福祉、教育、医療などの場におけるこども支援の経験や、NPO法人などでの活動経験を持っていることが望ましいとされます。また、弁護士、社会福祉士、公認心理師などの資格を持つことで、より適切な支援ができると考えられます。

④ 独立した立場:
支援員は、こどもと関わる際に独立した立場を保つことが求められます。これにより、こどもが支援員に対して信頼を寄せ、自分の意見を率直に伝えることができるためです。支援員は、こどものために動くことができる独立した立場として、関係機関からの影響を受けず、こどもの最善の利益を優先するということを忘れてはなりません。

【(こども向け案内文)こどもが自分の気持ちを伝える仕組み】

冒頭でお知らせした、自分の気持ちをきちんと大人に伝えるための新しい仕組みを、こどもへ伝える際のこども向け案内文になりますので、こどもの視点になって見てもらえればと思いますし、実際にニーズがあるこどもへの案内文としても参考にして頂ければと思います。


こんにちは!今日は、こどもたちが自分の気持ちをちゃんと大人に伝えるための新しい仕組みについてお話しするよ。これは「こどもの意見聴取等措置(いけんちょうしゅとうそち)」というものです。

「どうして大事なの?」

最近、こどもたちが困っていることや、助けが必要なことが増えています。そこで、大人たちはこどもたちの声をもっとちゃんと聞いて、助けるためにこの仕組みを作ったんだ。

「どんなときに使うの?」

一時保護や施設に入るときや家庭の問題などで一時的に違う場所で生活することになったとき。里親さんの家に行くとき、新しい家族のところに行くときなどです。また特別な支援が必要な例として、学校や医療機関で特別なサポートを受けるときもあるよ。

「どうやって話すの?」

(大人がちゃんと説明):まず、大人が何が起きているのか、どうしてそうするのかを分かりやすく教えてくれるよ。例えば、言葉で丁寧に説明してくれたり、難しかったら絵やカードを使って説明することもあるんだ。

(自分の気持ちを伝える):その後、自分の気持ちや意見を話す機会があるよ。年齢や自分の状況に合わせて、言葉で話したり、絵を描いたりして伝えることができるんだ。

「話したことはどうなるの?」

(記録される):自分の意見や気持ちは大人がちゃんと記録して、みんなで話し合うときに使われるよ。
(ちゃんと考えてもらえる):みんなが自分の意見を考えてくれて、できるだけそれを尊重して決めてもらえるよ。

「フィードバックって何?」

(結果を教えてもらう):決まったことはちゃんと教えてもらえるんだ。そして、どうしてそのように決まったのかも説明してくれるよ。
(納得できるまで説明):もし自分の意見と違う結果になった場合は、納得できるまでちゃんと説明してもらえるんだ。

「お手伝いしてくれる人」

意見表明等支援員(いけんひょうめいとうしえんいん):この人たちは、みんなが自分の気持ちを伝えるのを手伝ってくれる専門の人たちなんだ。相談に乗ったり、一緒に考えてくれるよ。

この新しい仕組みは、こどもたちが安心して自分の気持ちを話せるようにするためのものです。みんなの声がちゃんと大人に届いて、みんなが幸せに過ごせるようにするためにとても大事なんだ。だから、困ったことがあったら、遠慮せずに意見を伝えてみてね。


【最後に】

こどものための意見表明等支援員は、こどもの声を大切にし、その声が社会に届くようにサポートする重要な役割を担っています。こどもたちが安心して意見を表明できる環境を作るために、支援員には専門性と情熱が求められます。支援員として活動するためには、こどもの権利への深い理解と高いコミュニケーション能力、そしてこどもとの信頼関係を築くための資質が必要です。これらの要素が揃って初めて、こどもたちの真の声を社会に届けることができるのではないでしょうか。

このように、こども意見表明等支援員の役割は多岐にわたりますが、その一つ一つがこどもたちの権利を守り、より良い社会を築くための大切なピースとなっています。

【参考資料:「意見表明等支援員の養成のためのガイドライン」こども家庭庁・2023、「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第6 6号)の概要」厚生労働省・2022】

社会生活の変革という過渡期での不安やストレスは、さまざまな形で表出されることがあります。また、被災地の皆さまにとっては日々変化を遂げる環境の中で、ご心配を抱えた状況の方がいらっしゃることと思います。心身の安全最優先でお過ごしいただければと願います。ポジティブな考えを持つきっかけとして、そして安心・安全な人との関わりを通して生きる力を養うサポートもカウンセリングの一側面とも考えています。子育てやこどもの抱える不安やストレスに関してのご相談もお受けしております。

Writing by古宇田エステバン英記


《お知らせ》
▶オンラインカウンセリング(メンタルトレーニング、コーチング)を導入しております。
どうぞ、ご利用ください。詳細はこちらをご覧ください。
オンラインセッション

▶弊社監修「ユーキャン・心理カウンセリング講座」
受講生様からの講座内容に関するご質問へ私どもがご回答をしております。
私たちとご一緒に、学びを深めて参りましょう!
「心理カウンセリング講座」が”チャレンジ企画”にピックアップされました! 

▶弊社監修「ユーキャン・不登校・ひきこもり支援アドバイザー講座」
公認心理師・安澤が監修いたしました!
心理学・福祉そしてスクールカウンセラーの観点からお伝えしております。

▶『本当の自分を見失いかけている人に知ってほしい インポスター症候群』
その苦しさ、自信のなさ、不安…インポスター症候群だからかもしれません
SNS全盛の今の時代、心穏やかに過ごすために知っておくべきインポスター症候群を徹底解説
2024年9月に韓国版・出版開始いたしました!

オンライン
カウンセリング
カウンセリング予約