COLUMNコラム

【こどもの声を尊重する新しい仕組み】①こどもの意見聴取等措置の意義

こんにちは、所属カウンセラーの古宇田です。

今回のテーマである「こどもの意見聴取等措置」は、子どもの権利を尊重し、こどもの声を社会や福祉・教育現場において積極的に取り入れることの重要性を強調するものです。今回のコラムのテーマをとりあげようとした背景には、まず第一に、こどもの意見を聴取することがこどもの自己肯定感や主体性の育成に不可欠であるという認識があります。また、こどもの権利条約に基づき、福祉や教育現場での実践的なアプローチを提案し、こどもの意見を効果的に反映させることを目指しています。さらに、文化的・社会的背景を考慮した適切な方法や制度的枠組みの必要性にも触れ、長期的には社会全体の健全な発展に寄与するとの視点を持っています。こうした意識と意図から、こどもの意見を尊重するための具体的な方法を知ってもらいたいために今回のテーマにしました。

さて、令和4年に改正された児童福祉法において、「こどもの意見聴取等措置」が新たに整備されました。この改正は、こどもたちの権利を保護し、こどもの声を尊重することで、より適切な福祉サービスを提供することを目的としています。

児童福祉法の改正に伴い、こどもの権利擁護が一層強化されることとなりました。特に注目すべきは、「こどもの意見聴取等措置」の制度の充実です。本コラムでは、この措置の背景、具体的内容、そしてその意義についてお伝えします。

 

【背景と目的】

こどもの意見聴取等措置は、こどもの最善の利益を考慮し、こどもの意見や意向を適切に反映させることを目的としています。

こどもの権利や福祉を守るために、社会全体での取り組みがますます重要になっています。特に、児童虐待の増加や家庭環境の問題が顕著になってきており、これらの課題に対応するためにこどもたちの声を直接聴くことが必要不可欠となっています。

児童虐待の相談件数は年々増加しており、その背景には家庭内の経済的な問題や親のストレス、精神的な問題などが影響しています。これにより、こどもたちが安全で健全な環境で育つことが難しくなっている場合があります。さらに、家庭内での虐待や不適切な養育により、こどもたちは心身ともに大きなダメージを受けることが増えてきています。

また、社会全体の変化に伴い、こどもたちが直面する問題も多様化しています。不登校、いじめ、家庭内のトラブルなど、こどもたちの生活環境は複雑化しており、これに対する包括的な支援が求められています。このような背景から、こどもたちの意見や希望を直接聴き、それを福祉サービスに反映させることがますます重要になっているのです。

こどもの意見聴取等措置の目的は、こどもの権利を尊重し、こどもの声を直接政策や支援に反映させることです。具体的には、以下のような目的があります。

①最善の利益の確保
こどもたちが自分の状況や希望を伝えることで、こどもの最善の利益を確保することを目指します。これは、こどもたちが受けるべき支援や措置が、実際のニーズに基づいて行われることを保証するためです。

②こどもの権利の擁護
こどもたちの権利を守るために、こどもが自分の意見を自由に表明できる環境を整えます。これにより、こどもたちが自身の生活に関する重要な決定に参加できるようにします。

③透明性と説明責任の向上
こどもたちの意見や希望を聴取し、それに基づく措置を取ることで、福祉サービスの透明性と説明責任を向上させます。こどもたちに対しても、どのような理由でどのような決定が行われたのかを分かりやすく説明することが重要です。

④包括的な支援の提供
こどもたちの多様なニーズに応じた支援を提供するために、意見聴取を通じて具体的なニーズを把握し、個別に対応することができます。これにより、こどもたちが安心して過ごせる環境を整えます。

このように、こどもの意見聴取等措置は、こどもたちの声を大切にし、こどもの権利と福祉を守るための重要な取り組みです。これにより、こどもたちがより健やかに成長できる社会を目指すことが求められています。

 

【こどもの意見聴取等措置の具体的内容】

改正児童福祉法では、児童相談所や児童福祉施設が、入所措置や一時保護等の決定時に、こどもの意見や意向を聴取することを義務付けています。これにより、こどもたちが自分の状況や希望を伝える機会が確保され、彼らの声が適切に政策や措置に反映されることが期待されています。以下に、こどもの意見を聴取する際の具体的内容を紹介します。

【具体的内容】
①意見聴取の実施場面
意見聴取等措置が必要となる場面は以下の通りです:

一時保護、在宅指導、施設入所、里親委託、指定発達支援医療機関への委託の決定・停止・解除・変更・期間の更新時。自立支援計画の策定・見直し、自立援助ホームや母子生活支援施設への入居・入所時など。これらの場面において、こどもの意見や意向を聴取し、彼らの最善の利益を第一に考えることが求められます。

②意見聴取の方法と配慮
意見聴取は、主に児童相談所職員によって実施されます。こどもの年齢や発達状況に応じた方法で行われ、必要に応じて児童福祉司や児童心理司が担当します。言葉による意見聴取が難しい場合は、絵カードやその他のコミュニケーションツールを用いて最大限の配慮を行います 。

③意見表明等支援事業の活用
意見表明等支援事業は、こどもの意見聴取を支援するために設立された事業です。こどもが自らの意見を表明しやすくするために、意見表明等支援員が配置され、彼らの意見や意向を関係機関に伝える役割を担います。

次に意見聴取の流れとフィードバックについて簡単に触れておきます。

【意見聴取の流れとフィードバック】
①説明と意見聴取
こどもに対しては、児童相談所の役割や現在の状況、一時保護の理由などを事前に丁寧に説明します。この際、権利ノートや図、イラストを用いると効果的です。その後、可能な限り早期の段階で、措置の内容や今後の希望についての意見を聴取します 。

②記録と反映
聴取した意見や意向は、児童記録票に詳細に記載され、援助方針会議等の場で共有されます。こどもの最善の利益を考慮し、可能な限りこどもの意見や意向を尊重するために、十分な検討と議論が行われます 。

③フィードバック
決定内容とその理由は、こども本人に速やかに丁寧かつ分かりやすく説明されます。特にこどもの意見や意向と反する意思決定が行われる場合には、納得が得られるまで説明を尽くすことが重要です 。

 

【意見表明等支援事業の意義】

意見表明等支援事業は、こどもの権利擁護の観点から非常に重要な役割を果たします。こどもの声を直接聴き、それを支援計画に反映させることで、こどもの福祉や権利がより一層守られることが期待されます。また、この事業を通じて、こどもたちが自分の意見を自由に表明できる環境が整備されることも大きな意義があります。

 

【最後に】

「こどもの意見聴取等措置」は、こどもの権利を守り、こどもの声を尊重するための重要な取り組みです。この措置により、こどもたちの意見や希望が福祉サービスに反映され、より適切な支援が提供されることが期待されます。意見表明等支援事業と連携し、こどもたちが安心して自分の意見を表明できる環境を整えることが求められます。これにより、こどもたちの最善の利益が確保され、より良い支援が提供されることを目指されることにつながることを期待します。

【参考資料:「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第6 6号)の概要」厚生労働省・2022、「改正法の施行に向けた検討状況について・資料4」こども家庭庁・2023】

社会生活の変革という過渡期での不安やストレスは、さまざまな形で表出されることがあります。また、被災地の皆さまにとっては日々変化を遂げる環境の中で、ご心配を抱えた状況の方がいらっしゃることと思います。心身の安全最優先でお過ごしいただければと願います。ポジティブな考えを持つきっかけとして、そして安心・安全な人との関わりを通して生きる力を養うサポートもカウンセリングの一側面とも考えています。子育てや子どもの抱える不安やストレスに関してのご相談もお受けしております。

Writing by古宇田エステバン英記


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