COLUMNコラム

【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:相手をどこまで許せば良いのか?~part 2 ~ – 子育てにも役立つ!プレイセラピーを参考に-

所属カウンセラーの水野です。

最長9連休!ネモフィラ渋滞!とも言われていた、ゴールデンウィークももう終盤ですね。

ちなみに…ネモフィラの花言葉は可憐」「すがすがしい心」「あなたを許す」だそうです。
なんともまぁ…そんな青く可憐で透き通るような心でいつもいたいものです。笑

みなさまは、今年のGWはいかがお過ごしでしょうか?

ご旅行に行かれた方、久しぶりに帰省された方、近場での楽しみを見つけられた方、お家でゆっくりされた方、お仕事の方・・・様々な過ごし方があったかと思います。

まだまだ気を抜けないこともたくさんありますが、
少しづつ。少しづつ。コロナ等を気にせず、自分たちで選択できる日常が戻りつつあるかと思います。嬉しい!反面、自由に選択できるからこその責任もあり、大変さもありますよね。

葛藤も多い中かとは思いますが、リフレッシュも大切に・・・
皆さまが健康で、楽しく、過ごされていることを、私は心から願っています!!

さて、私のコラムでは、「大切な人との関係性をどのように築いていくか」について、日々の相談対応の中で感じていることや、自身の体験を振り返りながら、一緒に考えさせていただけたらと思っています。
大切な人を大切にすること、大切にできることは、「自分自身を大切にすること」にも繋がる大事な作業です。
「自分はここにいて良いのだ」「もっと頑張ろう!」など、安心感や、モチベーションにもつながる大事なことだからです。

▷これまでのコラムはこちらです⬇︎
【関係性の相互性からみる心の発達】水野コラム

4月のコラムはお休みをいただきましたので、
5月のコラムが、新年度、最初のコラムとなります。
今年度も引き続き、第1週の金曜日に更新させていただきますので、よろしくお願い致します!

そして、そして、今日は5月5日子どもの日!と言うことで、
今回のコラムでは、
子育てにも役立つ!プレイセラピーで大切とされている「制限」を例に挙げ、
前回のコラムに引き続き、カウンセリングの中でもよくご質問いただく、
「相手をどこまで許せば良いのか?」
という質問について考えていきたいと思います。

▷前回のコラムはこちらです⬇︎
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:相手をどこまで許せば良いのか?~part 1 ~ – 「制限」を理解すること-

相手と自分、そしてお互いの関係性を守るために、ぜひお役立てください。

相手の「ありのままを受け入れること」に近づくために…

制限(心の安全バー)は、お互いの心の核を守り、安心感を確保するために如何なる関係性においても、とても大切です。

▷心の安全バーについてはこちらをご覧ください⬇︎
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:愛はジェットコースター!?-「楽しさか?」「安心か?」論争に触れて-

制限(心の安全バー)とは、自分が安心できる、自分守る線引きや対象を設けることを指しています。そして、その線引きを「相手に課すこと」を指しています。それは、「努力をお願いするもの」ではありません。それが守られない場合は、「関係性を継続することが難しい」と相手に表明するものです。

現在社会において問題として挙げられている、暴力、DV、モラハラなどの様々なハラスメントなどは、
・自分と相手の関係性上に制限が課されていない
・もともとはあったはずの制限が機能しなくなっている
・制限が何かを本人も自覚していない
などの問題点が考えられます。

自分と相手の間に引く線引き(制限)は、もちろん自分にも相手にも見えません。

そして、その線は引くだけでなく、緩められたり、反対にピンッとはったり、太くしたり、細くしたり・・・一度決めたらずっとそのままとは行かず、形を変えていくものです。それは、関係性の進展や後退で変化することもあれば、自分のコンディションによっても変動し得るものです。

それは、人間誰しも、どの関係性であってもそうなのです。

つまり、これらの社会問題は必ずしも「自分は大丈夫」とは言えず、
決して他人事ではないということです。

「制限を相手に課す」というと、
どこか、他人行儀で、距離があり、堅苦しい印象にもなります。

それは、相手の「ありのままを受け入れよう」という風潮があることも起因しているかもしれません。

しかし、私たち人間は、感情があり、波があり、
いつも相手の全てを受け入れてあげられるような神様のような存在ではない。

相手の「ありのままを受け入れること」に近づくために、「制限」があるのです。

なぜなら、「制限」は、
相手が「ダメなこと」をすることを防ぐために設けるのではなく、
お互いの心の核を守り、安心感を確保するために「制限」が設けられている
からです。

何でもかんでも「だめ!」と禁止されてしまうと、「ありのまま」を受け止めようと頑張ってくれていることが伝わりません。従って、「制限」は、「必要最低限」で設けることがお勧めされています。

今回は、「必要最低限」「制限」を課しているひとつの例として、プレイセラピーをご紹介しましょう。

プレイセラピーにおける制限

プレイセラピーとは、原則として子どもを対象にしたカウンセリング(セラピー)です。

言葉をコミュニケーション手段として用いる大人のカウンセリングとは違って、おもちゃ、お絵描き、お砂場などの遊びをコミュニケーション手段として用いる心理療法です。遊びを受容されることで安心感を得ること、自己表現することなどを通し、子どもの自己治癒力が働くと考えられています。

▷子どもの遊びが持つ意味については古宇田が詳しく記載しています⬇︎
【子どもの遊びがもつ意味とは・・・】現代の子どもの遊びと子ども時代の体験

プレイセラピーにおいても、いくつかの「最低限の制限」が存在します。その一つとして、「おもちゃを壊すこと」が禁止されていることが挙げられます。

つまり、プレイセラピーにおいては、「おもちゃを壊すこと」は「クライエントである子どもと、カウンセラーを危険にさらし得る」と考えられています。「おもちゃを壊すこと」を禁止することは、双方を守るために、課されている制限なのです。

どうして「おもちゃを壊すこと」が禁止されているのか?
主な理由を2つご紹介しましょう。

(1)「おもちゃを壊すこと」は、子どもの気持ちを傷つける可能性があるため

プレイセラピーにおいて、おもちゃとは、「子どもの気持ちや感情を表すために大切なもの」と考えられています。時に、感情を表す以上に、子どもの感情を「象徴するもの」つまり、子どもの感情にとって変わる、子どもの感情と同等のものとして扱われます。

従って、「おもちゃが壊れる」ということは、
・子どもの感情が壊れる、傷くということ
・子どもの感情がカウンセラーに受け止めてもらえなかったこと
・子どもが自身の感情をうまく表現できなかったこと
・子どもが自身の感情を自分で壊してしまったこと<自傷>
・子どもが他者(カウンセラー)の物を壊してしまったこと<他害>
・自傷や他害をする前に大人(カウンセラー)に止めてもらえなかったこと
などを意味しています。

つまり、子どもたちは、自分の気持ちが受容されなかったという体験とともに、「カウンセラーは自分を守ってくれる大人ではない」という不信感を抱かせてしまうことなどを意味しています。

子どもは、カウンセラーとの関係性を構築する際に、自分の激しい感情をどこまで受容してもらえるのかを、見極めるために「試し行動」として、おもちゃを破壊する行動に出ることがあります。そして、その子どもの傷つきが大きいほど、破壊行動は強く出る場合があります。

カウンセラーとしては、子どもの「ありのままの感情を受け止めたい」「傷つきを癒したい」という気持ちもあり、おもちゃを壊し得る激しい行動であっても、制限をすぐにかけない場合があります。
そして、どこで、「制限」をかけるのか、それは熟練のカウンセラーであっても悩みながら行っていることも多くあります。

しかし、「おもちゃ」が壊れてしまったら・・・
子どもの「ありのままの感情」を受け止めるどころか、
子どもを加害者にし、子どもに罪悪感を与えてしまう可能性や、壊したことが許されないのではないかという恐怖心も子どもに与えてしまう可能性があるのです。

私自身も、「制限」を伝えるのが遅くなり、おもちゃが壊れてしまったあとの「あっ・・・」という悲しそうな子どもたちの表情や、反対に、壊したショックが大きく興奮状態になる子どもの様子を幾度となく見て、反省して来ています・・・。

つまり、「制限」を設け、課すことによって、子どもを傷つきから守ることにも繋がっているのです。

(2)「おもちゃを壊されること」は、カウンセラーの葛藤に繋がる可能性があるため

プレイセラピーにおいて、おもちゃはカウンセラーにとっても大切なものです。

先ほどお伝えしたように、おもちゃは、子どもたちが自分の感情を表すために用いる大切なものであるため、カウンセラーは選りすぐりのおもちゃを子どもたちのために一生懸命選んでいます。

子どもたちに罪悪感を抱かせないよう壊れにくいものを選んでいる一方で、自身の思い出の物を使ったり、輸入品を使ったりと、買い替えることが困難な物を用いている場合もあります。

つまり、それらが壊されてしまうということは、「子どもたちのために」と思っていたカウンセラーにとっても傷つきに繋がるものなのです。

おもちゃが壊されることが度重なった場合はどうでしょう?
他の子どもが気に入っていたのに…
買い替えるのが難しいのに…
壊すのを止められない、壊す前に制限を設けられない自分はカウンセラーとして失格なのではないか…
また、次に来た時に壊されてしまうのではないか…
罪悪感、憂鬱、恐怖心、不信感など、様々な葛藤を引き起こし、
カウンセラーが安心して、クライエントであるその子どもに会えなくなってしまう可能性があるのです。

子どもの「ありのままの感情」を受け止めるどころか、
・おもちゃを壊されないために
・また壊されたらどうしよう
・自分はちゃんと制限を設けられるのか
などに気持ちが向き、子どもの感情に目が行きにくくなってしまうのです。

これらのような、「おもちゃを壊すこと・壊されること」によって生じ得る、お互いの傷つき、傷つきによる安全感が保てない状況は、カウンセリングという協働作業の上では大きな障害となってしまいます。

お互いが相手に疑念や不信感を抱いたり、傷つけてくる人であると思ったりした場合、
クライエント-カウンセラーという関係性であっても、関係性を育んでいくのは難しいものです。

そうであれば、尚更、カウンセリング外の人間関係においては難しいということです。

ただし、「制限」を設けた場合、相手に共有していた場合であっても、
その制限が守られることが難しい場合もあります。

例えば、今回の例で言えば、
「おもちゃを壊してはいけない」という制限を設け、共有し、課していたとしても、
破壊行動が止まるわけではないということです。

その場合は、カウンセラーの伝え方の問題なのか、子どもの葛藤が大きいのか、関係性上の課題なのかなどを考えることができます。これらを考えられるということは、「対応策」が考えられる、つまり、一緒に解決していくプロセスを一緒に歩んでいく第一歩になるということなのです。

従って、制限が「ある」のと、「ない」のでは、
表出されている行動が同じであっても、その中身は全く異なるということなのです。

まとめ

本日のコラムでは、前回に引き続き、相手を「どこまで許容するか」線引きする上で役立つ「制限」についてお伝えしました。

「いけないこと」をするのを防ぐために、「制限」を設けるのではありません。
・お互いの権利を守り、安心感を確保するため
・相手の「ありのままを受け入れること」に近づくため
に「制限」が設けられているのです。

その結果、安心感を基盤とした関係性上に身を置き、自身の課題に向き合うことによって、成長していくことができるのです。

「ありのまま」を受け入れること
それは、如何なる条件下においても可能なわけではありません。自分の安全感が確保された上でなされることです。

関係性にこじれが生じている時、「相手のありのままを受け入れましょう」と言われることも少なくありません。

しかし、大切なのは、「ありのまま」を受け入れることではありません。
大切なのは、「ありのまま」を受け入れることを難しくしている自分の気持ちについて考ること、その気持ちが癒される方法を探して行くことなのです。

自分の気持ちは「我慢するもの」ではありません。
それを手がかりに、「対応策を考えることに繋げるもの」なのです。

そして、
「自分が傷ついてまで、自分を傷つけてまで、相手を受け入れる必要はない」
ということです。

しかし、人は痛みには慣れていくものです。
傷つきが重なると、心は麻痺していき、何が傷ついているのかわからなくなることがあります。

そういう時のために、私たちカウンセラーがいます。
ひとりで抱えず、お話を通して、一緒に考えていきましょう。ぜひ、お役立てください。

「制限」の理解は、関係性を形創っていく上でとても大切ですので、
何ヶ月も同じトピックで恐縮ですが、また次回も一緒に考えていきたいと思います。

子どもの日が終われば、5月14日は母の日、6月18日は父の日と
それぞれの存在に感謝する日が続きますが・・・

まずは、自分の存在に感謝すること
そして、気を負わずにそれぞれの相手に、そっとでもいいから感謝できる空間があったらいいのかなぁと思っています。

みんなが自分を労れる「自分の日」「Self Thanks Day☆」もあったらいいのに!
とふと思いました☺︎

それでは、紫陽花の季節、
また6月にお会いしましょう!

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Writing by 水野

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