COLUMNコラム

【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:考え方を理解すること-より深くスキルを身につけるために –

所属カウンセラーの水野です。

2022年も後数日となりました。
寒さが厳しくなりましたが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか?

年末は、仕事がバタバタすることに加え、忘年会・クリスマス・年越しなどのイベントも多く、お忙しくされる方も多くいらっしゃるかと思います。
コロナ禍による人との心地よい距離感の維持の難しさに、イベントの多さも加わり、ご自身の時間を確保し、落ち着ける空間を持つことが難しい時期と言えるかもしれません。

さて、今年は、社会情勢においても様々なことがありました。

それを象徴するように、毎年12月12日に発表される「今年の漢字」「戦」であったようです。

ロシアのウクライナ侵攻により、「戦」争の恐ろしさを目の当たりにした一年
円安・物価高による生活上での「戦」い
スポーツでの熱「戦」・挑「戦」も注目されたこと
からだそうです。

皆さまも、このように外的な環境による戦いを目の当たりにしたり、ご自身が厳しい戦いに挑んだり、自分自身と向き合う機会となる戦いにも臨んだ方もいらっしゃるかと思います。

皆さまの「今年の漢字」は何でしょうか。

12月後半の数日は、お好きな食べ物や、飲み物を飲みながらでも、「自分にとってどんな1年だったか」その出来事とともに、「どのように感じていたか」ご自身のお気持ちについても考えるゆったりとした振り返りの時間を少しとっていただき、新たに迎える1年に備えていただけると良いなと思っています。

振り返りを行うことは、気持ちを落ち着けること、自身の今年の頑張りを労うこと、来年に向けての抱負を考えることに繋がるからです。

しかし、目的なく「ゆったりした時間を持つこと」は忙しい私たち現代人には、難しいことがあります。

そこで、「今年の漢字は何にしようかな」と今年の漢字を決めることを目的することで、自然と今年自分が通ってきた道のりの情景が頭に浮かび、振り返りを行うことができます。

ひとりで考えるのも勿論良いですし、ご自身の周りの人と一緒に考え、シェアして見るのもオススメです!
周りの方、大切な人がどんな1年を過ごしたと感じているのか・・・
意外な一面を発見できるきっかけになるかもしれません。

さて、私のコラムでは、「大切な人との関係性をどのように築いていくか」について、日々の相談対応の中で感じていることや、自身の体験を振り返りながら、一緒に考えさせていただいています。

前回のコラムでは、
大切な人を傷つけた時、それは相手を傷つけているだけでなく、「自分も傷ついていること」についてお伝えしました。
大切な人を傷つけた時、自分自身も想像以上に傷ついています。

人は「傷つき」を抱えたまま、相手を癒すことはできません。
つまり、自分が傷ついた状態で、自分が傷つけた相手を癒すことは難しいのです。

従って、「大切な人を傷つけた」時、まずは、ご自身の傷つきを癒すことが大切です。
このことで、「大切な人と良好な関係を築くためのモチベーション」が回復されるのです。

前回のコラムはこちらです⬇︎
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:自分の傷つきを癒すこと -「罪悪感」に着目して考える-

このように、今年は、「大切な人を大切にすること」とは何か。
主に、その「考え方」について記載して参りました。

今までのコラムはこちらです⬇︎
【関係性の相互性からみる心の発達】水野コラム

私がなぜ「その考え方」の理解を重視しているのか・・・
今回のコラムではその理由について、改めて、お伝えしたいと思います。

考え方を理解すること

考え方を理解することとは、その答えに至る「プロセス」や「原理」を理解することでもあります。

社会、数学、理科などの如何なる学問においても、「プロセス」や「原理」を理解することでその事柄への知見を深めることができますね。

先日テレビでやっていた「キリスト教におけるプロテスタントが広がった経緯」を例に考えてみましょう。
プロテスタントが広がる前のヨーロッパにおけるキリスト教の主な宗派はカトリックでした。
カトリックは、教会が聖書の解釈をしており、その解釈は教会によって統一されているので、「教会を大切にするべき」という考え方です。

一方、後に広がりを見せたプロテスタントは、聖書は神の言葉なので、「教会よりも聖書の方を大切にするべき」という聖書主義の考え方で、聖書の解釈は個人の自由ということになっています。

聖書を個人の自由によって解釈するためには、個人が聖書を手に取り、読める必要があります。
同時期(14世紀ルネサンス時代)に、「活版印刷技術」がヨーロッパに広がっていたことが引き金にもなり、聖書を個人へ広げることができたのです。このことが宗教革命に繋がっていきます。

例えば、
「聖書主義はカトリック、プロテスタントのどちらでしょうか?」
「宗教革命はどの時代でしょうか?」
このような問題がテストに出た際、単に答えを暗記していると、忘れてしまったり、混乱してしまう場合があります。一方、その事柄が生じた背景を理解することで、自然に答えを出せたり、それ以外の質問にも応用できるのです。

人の理解、関係性への理解においても同様のことが言えます。

「どうしてその声がけが大切なのか」の原理を理解することで、
「声がけの方法」を忘れてしまっても自分にあった形を導き出すこと他の関係性に応用することができるのです。

「大切な人を大切にする」考え方を理解すること

カウンセリングを行っていると、
「こういう特性の人にはどのように対応したら良いのか?」
「子どもに適した声がけは何か?」
とクライエントに尋ねられることが多々あります。

カウンセラーとして、その特性の傾向やお子さんへの適した声がけのポイントなどの「一般的な解決方法」の答えは知っています。
従って、「ある程度」はその質問に応えることができます。
しかし、その「ある程度」の回答では、クライエントの質問の背後にある困り感に寄り添い、解決することは難しい場合が多々あります。

なぜなら、人(お子さんの)の特性、関係性は人それぞれだからです。

人が感じる相手との関わりの難しさは、
・自分の特性
・相手の特性
・自分–相手との相互作用
・外的の環境の影響
など、様々なことが要因となって生じています。

従って、多角的な観点から理解し、クライエントに適した方法、クライエントの相手に適した方法を模索していく必要があります。

このことを達成するために、状況について良く聞き取り、寄り添う傾聴がカウンセラーに求められています。私たちは、傾聴を通して、具体的なニーズを聞き取り、対応方法などをその方々にあった方法でカスタマイズしているのです。

カウンセラーがクライエントに関心を示し、傾聴の姿勢を保つことで、クライエントは、自身や相手について話すことができます。

そして、自分が気がづいていなかった自己に気づくこと、カウンセラーとの相互関係を通して、関係性についての理解を深めていくことになります。

カウンセリングで得た知見を、カウンセリング外の関係性、つまり、クライエント自身の周囲の人との関係性に応用していくことができるようになることカウンセリングのひとつの目標でもあります。

この「関係性についての理解を深めていくこと」が「大切な人を大切にすることの考え方」です。

人が感じる相手との関わりの難しさが、
・自分の特性
・相手の特性
・自分–相手との相互作用
・外的の環境の影響
など、様々なことが要因となって生じていることを知っていれば、自分でその観点を持って考えてみることができます。

そしてその考え方は、他のケースにも自ら応用することができるのです。

「大切な人を大切にできること」は、スキルであること

「大切な人を大切にできること」は、能力ではありません。「大切な人を大切にできること」は、練習して習得できるスキルです。スキルであるということは、その方法さえわかれば、自分で身につけられるということです。

相手を大切にするためには、「大切に思う気持ち」を、「大切にする」という行動で伝える必要があります。いくら「大切に思う気持ち」があっても、相手に伝わっていなければ、関係性はすれ違ってしまいます。つまり、大切な人を大切に思うことと、大切にすること、大切にできることは、全くの別物なのです。重要なのは、「大切に思う気持ち」をどのように伝えるかを考え、行動することです。

伝え方がうまくいかず、大切な人とすれ違ってしまうケースは少なくありません。大切な人とのすれ違いは、ご自身の傷つきに繋がります。それでは、自分の気持ちを大切にできてはいないということです。自分の気持ちを大切にできなければ、相手を大切にすることにはなりません。

関係性は相互作用しています。「大切に思う気持ち」が相手に伝わってこそ、自分も温かい気持ちになれるのです。自分の気持ちを、自分にも、相手にも大切にしてもらうことで、関係性は育まれていきます。

繰り返しますが、必要なのは能力ではありません。大切なのは、「大切な人を大切にできるスキル」を知り、練習することなのです。初めから上手にできる人はいません。どのようなスキルを習得するか、どのような伝え方が適しているのか、おひとりおひとりで異なります。

このスキルを自分の物にしていくためには、「考え方」を理解していくことが大切なのです。

まとめ

今回のコラムでは、「大切な人を大切にする:考え方を理解することの大切さ」について記載しました。
考え方を理解するのとしないのでは、スキルを学んだ際の身につき方や、応用の仕方に差が出てくるのです。

大切な人を大切にすること、大切にできることは、「自分自身を大切にすること」にも繋がる大事な作業です。
「自分はここにいて良いのだ」「もっと頑張ろう!」など、安心感や、モチベーションにもつながる大事なことです。

コラムという皆さまと「文字」を通して繋がれる空間でゆっくりとお伝えできる機会をいただいておりますので、
単にスキルをお伝えするのではなく、
そこに至る考え方も含めて、また来年も「大切な人を大切にすること・できること」についてお伝えしていきたいと思っています。一緒に考えていきましょう!

本年も大変お世話になりました。
寒さが増して参りましたので、くれぐれもお身体には気をつけられて、良いお年をお迎えくださいませ。
また来年も、コラムを通して、皆さまと一緒に考えさせていただけること、とても楽しみにしています!
引き続き、どうぞよろしくお願い致します。

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Writing by 水野

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