所属カウンセラーの水野です。
11月に入りました。
めっきり寒くなって参りましたね。今年もあと2ヶ月です。
紅葉も見頃を迎えます。秋の訪れとともに、カラフルに色づいた葉っぱや木々たちを、寒さやコロナにくれぐれもお気をつけいただきながら、楽しんでいただけたらいいなと思っています。
さて、私のコラムでは、「大切な人との関係性をどのように築いていくか」について、日々の相談対応の中で感じていることや、自身の体験を振り返りながら、一緒に考えさせていただいています。
大切な人を大切にすること、大切にできることは、「自分自身を大切にすること」にも繋がる大事な作業です。
「自分はここにいて良いのだ」「もっと頑張ろう!」など、安心感や、モチベーションにもつながる大事なことなのです。
前回のコラムでは、シンドバッドの冒険やエリザベス女王を例に挙げ、
「内在化」(自分の大切な人は心の中にいると思えること)、
「会えなくなっても、大切な人と一緒にいられる心の機能」についてご紹介しました。
前回のコラムはこちらです⬇︎
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:心のコンパスと対話して…-「内在化」に着目して考える –
今回のコラムでは、「今一緒にいられる人をどのように大切にしていくか」について、お伝えして参りたいと思います。
11月は、「児童虐待防止推進月間」ということで、
「子育て・子どもとの関係性」を例に、関係性を難しくする「罪悪感」に着目して、お伝えさせていただきます。
自分事と捉えながらも、一線を引くこと
皆さまは、「児童虐待」と聞くとどのような印象がありますか?
もしかしたら、テレビの中の出来事だと思われている方もいらっしゃるかもしれません。
もしかしたら、「明日は我が身だ」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。
この「児童虐待」という問題に向き合う時、そのどちらの印象も大切なアプローチだと感じています。
それらは、「自分事と捉えながらも、一線を引くこと」であるからです。
一生懸命訴えても相手に届かないこと
不安、孤独感や憤り
自分の中ではどうしようもない、コントロール仕切れない、やりきれない感情を爆発させ、「暴力」に繋がることは誰にでも起こり得ることです。
その観点で見れば、児童虐待は、他人事ではないのです。
一方で、コントロール仕切れない感情を爆発させた際にとる行動は、「暴力」が全てではありません。
距離を置く
気分転換をする
話し合う
相談する
話しを聞いてもらう
暴力に頼らない方法は、様々あります。
自分は絶対に「暴力は行わない」と心に決めておくことも大切です。
なぜなら、心に決めておくことで、暴力に繋がった場合において、「自分がそこまで追い込まれているのだ」「もう頑張れないのだ」と理解するバロメーターにできるからです。
根本的な問題は「暴力的な言動」ではありません。
その方法しか見出せなかった「現状」に問題があるのです。
そして、その「現状」の中の問題点を一緒に探すため、私たちカウンセラーがいるのです。
「大切な人を傷つけた時、自分も傷ついている」ということ
「現状」の中の問題点を一緒に探すことに加え、もうひとつ大切な役割が私たちカウンセラーにはあります。
それは、傷つきに寄り添うことです。
大切な人を傷つけた時、自分自身も想像以上に傷ついています。
職業柄、「子どもを怒鳴った」「叩いた」「生まれて来なくて良かったと言った」など
と訴えるクライエントさんとお話しさせていただく機会が多くあります。
もちろん、子どもを恐怖によって言うことを聞かせようとしたり、支配したりする行為は好ましくありません。そして、言葉であっても、行動であっても「暴力」は決して、許されることではないのです。
しかし、「子どもを怒鳴る」「叩く」「傷つける言葉を言う」背景にも必ず理由があります。
そして、現在の保護者の方々は、そのような言動が子どもの精神発達において良い影響を及ぼさないことを、よくよく十二分にご理解下さっている方が殆どなのです。
「理解していても、そうは言っても、そうするしかなかった・・・」
そう言われているようにも感じています。
保護者の方々が訴えられるお話しの中には、必ず「傷つき」が見え隠れしています。
子どもを怒る前にも、
そして、怒った後、怒ったことに対しても傷ついているのです。
人は「傷つき」を抱えたまま、相手を癒すことはできません。
つまり、自分が傷ついた状態で、自分が傷つけた相手を癒すことは難しいということです。
まずは、ご自身の傷つきを癒すことが大切です。
このことで、「大切な人と良好な関係を築くためのモチベーション」が回復されるのです。
関係性を難しくする自分の気持ち:「罪悪感」
子どもに、暴言・暴力を行った後、それ以外の方法を取れなかった自分、自分のした言動に対して、罪悪感を感じている場合が多くあります。
相手に、怒りや悲しみなどのネガティブな感情を相手にぶつけた時、人は罪悪感を感じる傾向にあるからです。
「どうして自分は相手と向き合えないんだろう」「どうして大切にしたいのにできないんだろう」などと感じられるかもしれません。この「どうして?どうして?」のループは、関係性の悪循環に繋がっていくものです。
暴言・暴力を行うこと、それは、「自分はそこまで追い込まれている」「もう頑張れない」ということでもあるのですが、その上に罪悪感を感じることは、追い込まれている自分を、更に追い込む行為でもあります。
「罪悪感」は「反省」とは異なる感情です。
相手に対して「申し訳なかった」と反省する気持ちは、関係性を良好にしていくうえで、とても大事な「振り返り」という機能です。この「振り返り」の機能によって、「次はこうしよう」と作戦を考えることができます。
一方、罪悪感は、関係性において、悪循環を招く可能性があります。
なぜなら、人は、罪悪感を感じると、「相手の傷つきに対してどのように自分がケアするか?」に焦点をあて行動するようになるからです。このことは、相手に過度に気を遣ったり、自分の意向を言わなくなったりという行動に繋がります。
しかし、いくら気を遣っても、自分の意向を言わなくなっても、相手を癒すことはできません。
なぜなら、自分が傷ついた状態で、自分が傷つけた相手を癒すことは難しいからです。
そうすると、「どうして自分ばかりが歩み寄らなければならないのか?」と、
罪悪感は次第に怒りに変わっていく可能性があります。
そして、その怒りは、罪悪感にまた変換され、悪循環をたどります。
関係性の悪循環、ご自身の自信を喪失させるものでもあります。
しかし、ここで思い出していただきたいのは、
関係性の目的は、決して、自分が傷つけてしまった「相手をケアすること」ではないということ、
関係性の目的は、「その大切な相手と良好な関係を築くこと」であるということです。
自分が追い込まれているからと言って、相手に暴言・暴力を行うということは決して許されることではありません。
しかし、「許されないこと」をしたことは、「自分のした全てのことが悪かったこと」ではないのです。
つまり、許されないことをした事実に加え、そこまで自分で耐え、頑張っている自分を受け止め、労うこともまた大切なことなのです。
自分のしたことを反省すること、自分のしてきたことを労うこと、
現実に即して、自分のことを見つめ直すことで、関係性の目的である、「大切な人と良好な関係を築くこと」に立ち戻ることができます。
「良好な関係を築く」という目的に立ち戻った上で、大切な人と向き合うことが大切なのです。
まとめ
本日のコラムでは、
・ 根本的な問題は「暴力的な言動」ではなく、その方法しか見出せなかった「現状」に問題があるということ
・「大切な人を傷つけた時、自分も傷ついている」ということ
・「大切な人を傷つけた時、人は罪悪感を感じる」傾向にあること
・ 罪悪感は、関係性における悪循環を招く可能性があること
・ まずは、自分の傷つきを癒し、「相手と良好な関係を築く」モチベーションを回復すること
・「大切な人と良好な関係を築く」という目的に立ち戻った上で相手と向き合うこと
が大切であるとご説明しました。
本日は、「子育て・子どもとの関係性」を例に挙げてご説明しましたが、これは、如何なる「大切な人」との関係性に応用できることです。
大切な人を傷つけてしまった時、
それは、「大切な人を大切にできないこと」が問題なのではなく、「大切な人が大切にできないことに自分が傷つくこと」、それによる悪循環が生じることが問題なのです。
相手の幸せを願っていても、それに即した行動とることは時に難しいものです。
大切だからこそ、怒りが増幅してしまうこともあります。
「本当に相手の幸せを願っているのなら、そのようなことはしないはず」というご意見もありますが、そう単純でもないのではないかと感じています。
人は、「共感されること」によってエネルギー補給されます。どのような関係性においても、「共感する−共感されること」は大切です。
「現状」の中の問題点を一緒に探すこと、共感されること、自分の傷つきを癒すことにも、カウンセリングをご活用ください。
ひとりで抱え込まず、ご相談いただけたらと思っています。
これまでのコラムにおいても、大切な人との関係性を大切にするヒントをご紹介しています。
ぜひお役立てください⬇︎
【関係性の相互性からみる心の発達】水野コラム
それでは、心のエネルギー補給をしながら、2022年ラスト2ヶ月を一緒に乗り切っていきましょうね♪
また12月にお会いしましょう!
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